Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (127)
ラスト!騎士は持ちこたえてる?あの一撃で敵が倒れているとは思えれない!!
止めを刺す前に他が動いちゃったから!!
騎士の方へと視線を向けると必死に盾を構えて敵の攻撃に耐えてる!…
ん?どうして、一歩も下がらないんだろう?少し間合いを取れば楽に戦え…
騎士の背後に見えた誰かの足を見て状況を瞬時に把握し納得する。
ああ、そういうこと!?
この位置で見えずらかったけれど、後ろに誰かいる!守る為にも引くことが許されない状況ってことだったんだね!
騎士道精神として完璧じゃん!よく守り通した!後は任せて!!
飛ばした矛全てを敵の体から外すと同時に全方向から騎士と小競り合いをしている人型に向けて射出する!
人型は突如、見える視界の至る所から飛んでくる槍先に驚き動きが止まった瞬間、騎士が持つ片手剣の切っ先が喉元に刺さった!
でも、動きが止まってない!最後の悪あがきとして両腕を伸ばそうとしてる!
騎士一人でも道連れにしようっての!?させるわけ!!
伸ばした拳を矛によって拳を撃ち抜く!!
拳を撃ち抜かれ悪あがきが防がれると、動きを止め大地に倒れ込む。
それと同時に騎士の手によって首が撥ね飛ばされ、直ぐに片手剣をその場に捨て後ろにいる人を抱きかかえながら走って離れる。
…あの手際の良さ、騎士部隊の中でも頑張ってる方の人の動き人型の特性をよく理解している、誰だろう?
空中から降り「敵の追撃要注意!」周囲に警戒を促す指示を出してから
手を上げて「やるじゃん!」騎士の方に駆け寄って激励を…うん、やめよう。この先は野暮ってもんだ。
振り上げた手を下ろし、回れ右をする。
極限の集中状態から解放された騎士が膝をつくと凹んだ兜を外し呼吸を整えている、そのすぐ傍には、助けてもらったであろう女性が彼に涙を流しながら寄り添っている、ラブロマンスにちゃちゃをいれるほど、私はガールじゃない、私はもうレディなのだから。
よくやったよ、オリンくん…
逃げる事しか出来なかったあの頃の君じゃないんだね。
空中に浮かせておいた箱を全てクィーンに収納してから
「状況は?」
近くにいた支援部隊に声を掛けると敵が出てきた場所に案内される
「…」
そこには穴があった。
小さめの人型であれば這い出てくることが出来そうなサイズの穴が開いている。
恐らく、ワームによってつくられた穴だろうけど、ワームの姿が無い?
周囲を探ってみるが、ワームらしきものは見当たらない。
今はワームの存在よりも、この穴をどうするのか考えよう。
この穴がある限り、この街は人型問わず、突如湧いてくる敵の襲撃に備えないといけない
穴の大きさ的に大型種は通れそうもないし、パワータイプなどは通れそうもない、楽に通れるのが小型種、中型種も一部通れる可能性がある。
小型種をある程度殲滅しておいてよかった、だけど危険が去ったわけではない。小型種が街の中に侵入するだけでもそこそこの被害が出る。
敵が保有する全ての小型種を殲滅しきったとは思えれない、油断はしないしてはいけない。なら…
「この穴を埋める!」
「っは、はい!」
決意を固める様に口に出すとその声に反応した支援部隊が近くにあるスコップを手に取ろうとしたので
「まったまった!スコップでどうにかなるような穴じゃないから!」
埋めるとは叫んだけど、普通に埋めるわけにはいかない!普通に土で埋めたところで!直ぐに掘り返されるっての!
早とちりだとわかったのか、スコップを元の場所に置いて慌てて此方に戻ってきたので
「まずは…取り合えず直ぐに攻めてこない様に応急処置として鉄板を上に乗せて、更にその上に重しを乗せて敵が出てこない様にするべきかな?だとしても手ごろな鉄板は…」
「姫様ー!拠点づくりの為に用意してあるバリケード用の鉄板があります!」
メイドちゃんがクィーンから降りて此方に向かいながら助言を出してくれる
「じゃぁ、それをつかって!対策できるまでさ、取り合えず塞いどいて!鉄板の数だけど、念のためにこの周囲の地面全部を鉄板で覆う方針で用意しといて!穴の上だけじゃないからね!」
「はい!!」
返事と共に支援部隊が急いでバリケードとして用意しておいた鉄板を取りに走っていく、適材適所!私は対策を練らないと!!
「即席だけど音に反応する魔道具を作ってくるから、少しの間、現場の指揮をお願い!何かあれば知らせて!」
「はい!」
近くにまで、駆け寄ってくれたメイドちゃんに指示を出し研究塔に走ろうと思ったけれど!
「ごめん!背中の外して!」
「はい!」
メイドちゃんに背中を向けクィーンと繋がっているケーブルを外してもらい、あともう一つ策を思いついたので
「後ね、大量の塩って用意できる?もしくは、鉄とか…あと溶鉱炉」
「…ぇっとぉ、お時間があれば、でも、塩も鉄も…」
声の反応でわかる、私自身も難しいだろうなってわかってた。
今すぐに用意なんて難しいよね、溶鉱炉はたぶん、直ぐに汲み上げれるけどね~…
熱した塩と鉄でも空いた穴の奥に向けて流し込んでやろうかと思ったけれど…
「水ではダメですか?」
「蒸気なら有りだけど、沸騰した水では弱い、流し込んでいる過程で熱が逃げちゃうから敵からすれば脅威じゃないかなって、悠長にしてる暇も無し!魔道具作ってくるから!」
後はお願い!っと音を残して研究塔に向かって走る!!
走りながら対策を考える…
燃える水でも流し込んで火をつけて酸素を奪うってのもありだけど…下手すると私達にも被害が出そうな予感がするんだよなぁ、気化してガスになって何処かで燃えても嫌だし…
塩は~…塩害とか発生するかもしれないけれど、ここで農業はしないから別にいいや。
鉄は…中で固まってしまえば敵からすれば動かしにくいだろうし、仮にさ此方に向かっている途中であれば熱した鉄が流し込まれたら慌てて逃げるでしょ?塩も同様!
後は…うーん…お酒でも突っ込んでみる?酩酊するかな?…するわけないか。そんな勿体無いことしたら皆から滅茶苦茶怒られそうだしね。
コンクリを流すのが正解、かも?でも、流している途中で詰まって奥の奥まで流れないかもしれないんだよなぁ…穴の傾斜もわからないし、構造もわからない…あ!しまった、地中にソナーを打って凡そでいいから把握すればよかったんじゃね?みすったなぁ…
色々と考えていると研究塔に到着したので中に入ると、多くの人が突然の襲撃を知っていたのか、机の下や部屋の隅に頭を守る様に隠れていて震えて扉の方へと視線を向けないので
「私!今から敵の襲撃を知る為の魔道具を作るから手を貸して!」
大きな声を研究塔に響かせると、震えていた職員全員が救いを求める様に一斉に此方に駆けよられしがみ付かれる…うーん、そんな時間ないんだけどなー…
突き放すわけにもいかないので、全身が震えて恐怖で涙を流している研究員達を達を宥めていく。
決して無駄な時間じゃないっと言い聞かせる。
だって、フィアーが伝播していく前に、こうやって防いでおかないとさ、恐怖が伝わってしまうと、街全体の動きが悪くなって後手後手に回りやすくなるから発生源を見つけてしまったのなら宥めて鼓舞してフィアーに飲み込まれないようにしないといけないってのは、わかってる。しょうがないっていうのは重々承知してるんだけどね…薬で強制的に恐怖を忘れさせてやろうかって古の考えには至らない!これもまた必要な時間!!ちょっと、そう思ったりしちゃうけれど!そこまで非情にはなれない!…だって、あの薬、依存性があるもん。
泣きついてくる団員を宥める為に、先ほど街中で起きてしまった一連の流れを説明して、次の敵に対する対策をするために急ぎの仕事だと説明すると、研究魂なのか、己の平穏を勝ち取る為なのか、感情を思考が追いこしていったのか、不安に包まれていた表情が直ぐに冷静な研究者としての表情へと切り替わっていく。
これなら、号令を出しても問題なさそう。
「急ぎ!超急ぎの仕事!持ち場について!」
「「はい!!!」」
しがみ付いていた大勢が一斉に離れていき、各々が担当する持ち場へと駆けだしていく。
皆の勢いを失わせないためにも!私も急がないとね!
皆に負けじと自身のデスクへと向かい、必要な道具を引っ張り出して、研究塔の中央にある大きな机の上に工具や設計図を描くための道具を置いて大急ぎで設計図を起こしていく…
頭の中に大まかな仕様書は出来上がっているから、後はスピード勝負!!
設計図を書いて直ぐに渡し、材料を加工してもらっている間に、必要な術式を特殊な紙に書き綴っていく。
簡易的に作られた術式ペーパーと起動用の魔石を繋げて仕様通りに動くのか実験する…仕様通りに反応する!問題なし!これを耐久力がある素材に刻みなおしてもらうので紙を渡すと術式を刻むのを得意とする研究員に渡すと、直ぐに作業に取り掛かってくれる。
後は…試作魔道具が完成するまで、ほんの少し時間がある。
今のうちに出来ることを考える為にも広場に戻ろう。
研究塔の皆に「広場に移動している」と大きな声で伝えると気を付けてっとフィアーに犯されそうになっていた人達とは思えれないくらいしっかりとした返事が返ってくる、さすが研究命の人達、やるべきことがあれば恐怖心なんて忘れてしまう。
っさ!私も次の一手の為に動こう!
研究塔の扉を開き急いで広場に向かう
息を切らしながら広場に戻ってくると、オリンくんが穴を警戒しながら周囲に指示を出してくれている。
ふぅふぅっと呼吸を整えながら状況を知る為に周囲を見渡していると
「姫様!流す為に必要な塩や鉄はまだ用意できていません!」
メイドちゃんが声を掛けてくれる
「だよね、人型に一泡吹かせるほどの塩や、鉄なんて直ぐに用意できるわけも無し」
そうなんですーっと情けない声に不安そうな顔…そうなる気持ちもわかる。
私達が生きている時に、街の中にまで敵が入り込むなんて鳥型以外ありえなかった…
偉大なる戦士長が居た時代でもそうそう無かったはず
過去の私達が得た経験でも入られたら最後、終焉を迎えてしまったときだけ侵入を許していた。
普通に考えれば、敵に侵入を許してしまった時点で、私達の負けが近いのではないかって不安や恐怖が心を押しつぶしてくるだろうね。
今回ので得た教訓として、敵はワームに指示を出すことが…出来るのならどうして今までしてこなかったの?始祖様の壁、その地下を通ることが出来るのに何故しなかった?やろうと思えば出来たってことだよね?
しなかったのではなく、実は潜んでいた?
…いや、そもそも、死の大地で見る平均的なワーム、あのサイズの大きなワームが地中を通れば振動くらいする、それを見逃さない私じゃ…
はっと、気付かされてしまう…
ここ数日、私は街に殆どいなかった、それに多くの人が活発に動き回っている、その隙を狙ったのだと言われたら納得、慎重に慎重にゆっくりと進み王都まで道をつく…まって、王都にワームが出たってことは、王都にも?人型が現れる!?
恐らく、この穴は王都まで続いていると考えると!!
早急にこの穴を塞がないといけない!!
敵が複数の穴を用意できているとは思えれない!
だけど、穴を掘って深さがどこまでいや時間が…掘る時間が無いのであれば液体を使うのが正解っかぁ…
ごめん、お母さん、この街の未来を奪っちゃうかも…
毒を流そう




