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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (125)

「流石だな!」

愛しの旦那の声が聞こえてきたので振り返ると、盾らしき魔道具を持った人型は既に倒されていた。早い…っく、嬉しいと感じる反面、負けた様な気がする!

「流石…じゃないかなー、切り札を使っちゃったもん」

「ああ、成程、悔しそうな顔をするな、次は使えないかもしれないっというわけか余裕を持っての勝利ではない次が辛くなる勝利、辛勝ってところか…」

そうそうっと頷いていると、ほれっと声が聞こえてきたので視線を向けると、何だろう?ボールみたいなのを投げ渡してくれる?

手を広げキャッチして何を渡されたのか直ぐに理解する。


ぁぁ、これ、カース系統の魔道具?

渡された魔道具を両手でぐるぐると回して観察する

ボールだと思ったら、これ眼球じゃん、気持ち悪…


「悪趣味!」

ぽいっと投げ返すとキャッチしてくれるけど、慌てた表情。

「おっと?違うぞ?君を驚かせたくて渡したわけじゃないぞ?悪戯とかではないからな?先ほど、君は、それに汚染されていなかったか?原理を紐解き解呪しなくてもいいのか?」

っむ、さすがは勇気くん、敵の術を知っているからこそ、こういう類にも精通しているってこと?

「大丈夫、清浄なる世界を望んだ聖女たちの歌で消したから」

私に呪いの類は効かない!…だって、私には加護が付いているからね、何処まで耐えられるかわからないけれど、カース系統は私には効かない!

加護だけじゃなく、多くの…多くの…同胞が、過去の私達と共に見守ってくれている、聖女たちの願いを束ねている今代の私にそんなの効きやしない!

お陰様で滅多にないカース系統の魔道具、それらの解析に役立ちましたとも!


それよりも、効果が全くわからなかった他の魔道具は何だったんだろう?

「そっちの盾、みたいな魔道具はどうだったの?」

「ああ、あれはただただ、頑丈な板ってだけで脅威ではなかった、恐らく」

くいっと杖がある方へ顎を向ける…私も薄々感じていたけれど、やっぱり勇気くんもそう思う?どう考えてもそうだよね?


奪われた杖に対するカウンター用の魔道具


そうなると、右側も同じように対策を練っている可能性が高いっか…

だとすれば、あの杖、あの魔道具を持ち歩いていても仕方がないってことになる。


あの杖を持ち歩くというリスクの方が高くなる…

何かの弾みで奪われる方が危険っか…

こうも早くに対策を講じてくるってことは、元より私にあの杖を渡すのが目的だったんじゃないか、罠だったって可能性を感じてしまう。

それ程までに先生は巧妙なんだよなぁ…


ラアキさんと続いて今回もそうだった、こうも何かに対して何かを用意しているのはもう偶然じゃない。

確実に私達が使った術式に対してのカウンターを講じてきている。


超再生を可能とする魔道具、あれの策としては恐らく、爆裂魔道具から放たれる光の粒を受け止めて死んだと油断させてから隙を見て奇襲するためか、もしくは、瞬時に戦線へと復帰するために持たしたであろう魔道具。

光りの粒、それを撃ちだした直後を狙わせるために、光の粒を暴発させるための視認しにくい小さな何かを飛ばしてくる魔道具。

爆発した衝撃に生じて誰かひとりでも、いや、確実に私達の柱となる人物を殺す為の自爆タイプの極限型、恐らく爆発力を高める魔道具を持たされていたっというか、あいつそのものが魔道具だった可能性もある。

眼球を模した気持ちの悪い魔道具、珍しいカース系統、恐らく鎖に対してのカウンターとしての魔道具。

魔道具を壊されるのを見越して壊された瞬間に効果が発揮する閃光の魔道具。

そして、この盾、一見頑丈なだけの変わった素材で出来ている盾、これの本質は、杖から放たれた光の粒を防ぐのを想定しているのか、それとも…


もしかしたら反射する素材で出来ているかもしれない魔道具ってところかな?


…ありえそう、光の粒を撃ちだすのってさ、単純に光の粒が反応しない素材で押し出す構造、つまり、光の粒に触れても反応しない素材がある。

その素材で盾を作って光の粒を撃ち返すことだってできるはず…

それがこの盾だっていう可能性がある。つまり、敵は光の粒の性質をしっかりと把握し理解しているってことになる。


思い返すだけで全部が全部…私が、私達が使ってきた何かに対してのカウンターとして考えつくされた構成!本腰入れて策を講じてきてますね!先生!!


転がっている敵の魔道具を睨みつけていると

「周囲に敵えなし、索敵班も敵を見つけれていないっとなれば、ここは落ち着いたとみて問題はなさそうだな、他の状況はどうなっている?左部隊はどうなった?」

バスターソードを地面に突き建て軽く深呼吸を繰り返しながらも周囲を警戒し、されど、心が落ち着いていないって感じ。

心配するよね、ここだと左部隊も右部隊も、闘っているのか闘っていないのかくらいの状況は知ることが出来るもんね。

つまり、私が左部隊に駆け寄って敵を殲滅している音が聞こえてきていたってことになる。

ちょっと躊躇ってしまうけれど彼なら受け止め切れると信じて素直に話そう

「左部隊は全部撤収してもらっている、今頃、転送の陣を警護している一団を除いて帰還しているはず」

そうせざるを得ない状況だっと呟き頷いている、彼が気になるのはその先…

「ラアキさんが倒れた、でも、安心して何とか生きてる」

ラアキさんが倒れたという言葉で一瞬だけ勇気くんから殺気が零れ出てきた…

彼の中で渦巻く感情を全てをきっと私は理解できない、彼でしかわからない感覚。

お爺ちゃんと慕っている身内、家族を傷つけられた感覚

古き王家と繋がりがある家柄、その子孫が怪我をした、つまりは過去の自分と関りがある血筋が倒されたという感覚


どういう感情が渦巻いているのか、想像もできない。

ここが戦場でなければハグをしてお互いの体温を確かめ合うべきなんだろうね。


「そうか…」

一言、言葉を吐き捨て空を見上げたあと、此方に視線を向けてくる、兜をかぶっていてもわかってしまう作り笑顔。戦士長としての立場を優先したんだね。

「爺さんには悪いが、お楽しみは俺達で味わい尽くして…終わらせてしまおうか」

私達の会話に耳を澄まして聞いている戦士達に声を掛ける様に大きな声で応えている、その声に反応した戦士達が一泡ふかせてやりやしょーぜっと呟きながら小さく笑っている。

感情を押し殺しているのが私にはわかる、バスターソードを握っている手に力が込められているから。


彼なりに心を落ち着かせ冷静になれたのか、込められている力を抜く様に軽く深呼吸をしてから

「これからどうする司令官?俺は見ての通り」

くいっと顎を動かすと、宰相の部隊が撤収を始めている

「うん、その判断で正解、助かる。宰相の部隊には動いて欲しい先があるから」

「何かあったのだな、大丈夫か?心は…」

酷い顔でもしちゃったかな?兜の隙間から見えた瞳を潤わせてしまった

知っておいてもらうべきだ、彼だけに聞こえる様に彼の兜の内側に音を発生させる。

「うん…王都がワームだらけに」

その一言で肩を掴まれ「右部隊は俺が何とかする君は急いで」肩に触れている手を包む様に重ね…ゆっくりと首を横に振る

「私の術じゃ、派手過ぎる」

その一言で全てを察してくれたのだろう。

だとしても、表情が暗いよ?それはどれを心配しているの?私の事?それともこの先の事?それとも、お母さんのことを心配しているの?


彼の表情が物語っている通り、かな?私の事とその先の事だろうね、私だってわかってる、たぶん、その未来に足を踏み込んでしまったら…


もしも、私がお母さんを助ける為に王都に駆けだしたとしても一足遅くお母さんに何かあったのだと知ってしまったら、たぶん、私は狂う…


そうなると王都にいる人達なんて考えないで全てを焼き尽くそうとするかもしれない。ううん、すると思う、私を止めれる人が王都にはいないから。


冷静になった今だからこそ、そういう危険性があるのだってわかる。

冷静に考えて敵の意図を探ると見えてくる。


恐らく、冷静さを失わせるための布石なのだろう。

本当に、本当に!!先生は人の心が無い!!


「…なら、俺が!っと言いたいところだが、お互い」

コクリと頷く、この街にとって離れてはいけない存在だよっと。

バスターソードを握る手がまた力強く握られていく音が聞こえる。

「…俺は、ふぅ」

歯を食いしばって憤りを表に出さない様に息を吐き捨ててる、普段冷静で、感情の起伏が小さい彼でも苛立ちを感じてしまっている。

「戦士長として、次、どうすればいい?」

王としての役目ではなく、戦士としての運命を背負っていると感じることが出来る落ち着き研ぎ澄まされ澄んだ音。

なら、此方にそれに応えるまでってね、司令官として指示を伝えないと

宰相が撤退準備をしているよりも遠くを指さし

「少し下がって、陣を築いて欲しい」

「わかった、彼が陣取っていた場所よりも更に、下がるのだな」

うんうんっと首を縦に振って肯定してから、どうしても下がるということに対して思うところがあるので、つい眉をひそめてしまう。

「悩んでいることがあってね、転送の陣を何処に設置するかってところなんだよね…右はダメ、左は撤退、残すところは…ここしかないかなっていう選択肢を鯖められた状態で選んでいるっていうのが不安なんだよね、止む無く設置っていう、状況…誘導されている気がしない?」

頷く事も無く、此方の言葉を待っているのではなく、一緒に考えてくれている。

「選択肢が無いから仕方がなく設置するのが罠なんじゃないかって誘導されているんじゃないかって感じてはいる、でも、それ以外の場所に置く場所がないのも重々理解している、転送の陣という危険な品物を預けれるとしたら勇気くんや、戦士達の近くが正解だって、私の全てが賛成しているんだけど…」

不安が拭い切れない、正直に言えば悩んでいる、街の広場に転移先を設置している手前、敵に奪われると厄介な代物、これ一つで私達の街は王手をかけられてしまう。

「不安だというのなら、置いて行けばいい、杖と共にな。奪わせはしないさ、少し下がった地点であれば最重要な品物を逃がす時間くらい、俺達が作って見せる、俺達を瞬時に仕留めれる様な品物があるとすればとっくに使っているはずだろ?戦況は押されているかもしれない、後ろを…虚を突かれているかもしれない、でも、まだ終わっていない、俺達が居る、その片割れである俺を信じろ、杖の扱い方も後で共有してくれればいいさ、転送の陣があれば魔石を運ぶのは容易だろ?」

自信満々に…悩んでた私が馬鹿みたいじゃん。

確かにね、杖によって敵を威圧しつつ、転送の陣という機動力も生かすってことか…

この杖と魔石さえあれば攻撃の身にあらず、牽制という方法を使えば、防衛力が高まる。


いざとなれば転送の陣に杖を放り投げて飛ばして、全力で逃げれば何とかなる、って言いたいのかな?


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