Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (121)
走って5分といった距離に到着し「止めて!」その一言で全員が認識阻害のマントを被り息を潜め始め、ケーブルに繋がった私は直ぐに荷台から降り、クィーンの荷台の横や、運転席の上とかに搭載されている秘密道具が入っている箱を、念動力で持ち上げ空中に浮いた複数のボックスと共に前へ駆け出していく
まずは如何にもな奴を仕留める!!
箱の中から私の頭がすっぽり入るくらいの大きな鉄の筒を取り出して、中に装填されている弾をすぐに撃つ!!
鉄の筒から放たれた球体が敵に向かって飛んでいく、こんな状況で目の前に敵が居ようとも余裕があるのか、小さな杖を持った敵は自身に向かっている球体に気が付き、それに向かって杖を振っている。
杖を振るような動作をしている?ぁぁ、そういうこと?
球体をただただ飛ばしたように見えるかもしれないけれど、実のところ、その球体は私と繋がってんだよなぁ!視えたぞお前の魔道具!!
射出機構も念動力!そして、それだけじゃない!球体を包み込む様に念動力を付与している!!
すなわち、球体には念動力によって包まれている!
その念動力から言葉に言い表せない感覚が伝わってきた!
球体に何かが当たる感触が伝わってきた!
恐らく、遠くだと小さすぎて見えてなかっただけで、何か飛ばしてたって事!!戦士や騎士達からすれば、鎧に何か当たってるって感覚だけで気にするような事じゃなかったんだろうね!でも!光の粒からすれば一定の衝撃で爆発する仕組みだから、それによって誘爆させられたってことね!!
つまり、あの人型は光の粒などにいよって遠距離で誰かが何かしらの干渉をしてきたらそれを防ぐように命令させれているってことね!道理で!目の前の敵に固執してないわけだ!!
残念ながら!その球体はね!私の念動力はね!!
その程度の攻撃では軌道を逸らす事なんてできないっての!!
必死に杖を振っても止まらない球体、軌道を逸らすことが出来ないのであれば避ければいいだけ、飛んでいく球体の軌道から避ける為に軽くジャンプして後方に飛び避けようと動く。
避ければいいってことに気が付かないほど低脳ってわけでもない、ってのはね予測済み!
予想通り!あの球体の中身はちょっとどころか、取り扱い要注意な液体なんだから!闘っている騎士を巻き込みたくないからね!!少しでも離れて欲しかった!そう動いてくれるのを待ってたよ!
人型と対峙している騎士が追い打ちをかけようと踏み込もうとするのを見てソニック音波を使って止まってと!っと、制止するように呼び掛けると、突如、兜の中で麗しき乙女の声が響いたもんだからびくっと驚きはねちゃったって感じかな!ごめんね!私達の部隊ならこういったことよくあるから慣れてるけど!王都騎士団さんは慣れてないよね!!
バックステップで騎士との距離を取った人型が自身に向かってきた球体が外れる軌道だと感じ視線を眼前の騎士に向けた、その時を待っていた!
念動力で軌道を変えるのと同時に加速させ球体を敵の胴体にぶつけると同時に歌う!愛する人の旅立ちを!!
球体が豪快に弾けるのとほぼ同時に敵の体が青い炎、っていうか、視認しにくいレベルの火に包まれ、自身に何が起きたのか理解できず突如燃え上がった火から逃げようと転げまわり、周囲に青い炎が飛び散る。
その姿を見た騎士達は、どうしたらいいのかわからず、取り合えず止めを刺そうと近寄ろうとするのでソニック音波を飛ばして止める、まだ早い!
兜の中で突如発生した音声に二度目ともなれば慣れたのか此方を見て敵に指を刺しているのでソニック音波でもう少し待って、貴方も燃えるっと伝えると少し後ずさるようにし距離を取る。
火が落ち着く頃合いを見計らい地面を転がり回りのたうち回っている人型に止めを刺すように指示を出すと、指示を受け取った騎士が周囲に合図を出し一斉に手に持った各々の得物を振り下ろし何かあったのかっていうくらい恨みでも籠ってるかの如く、何度も何度も振り下ろしている…
あの様子であれば、肉塊にでもなって終わるだろうから次!!
パワータイプは…お爺ちゃんが相手してるから何とかなるでしょ!それよりも、これ見よがしな魔道具を持っていたやつとは違って何をしているのか不明瞭な奴!ああいう手合いの方が厄介な気がするんだよなぁ!!先生ならあからさまに怪しい奴と危険な奴、その中に最も危険な奴を混ぜ込んでくるってね!!敵の思考を読む!それもまた大事!!
手が長い奴は集団に囲まれていて身動きが取れていない、防御に徹している、それがまた不気味なんだよなぁ!お前ならその程度の攻撃で怯むはずもないでしょうに!!
近くの騎士達に意識を向けているのであれば!死角を突く!!
遠距離で敵の視認外からの高速の一撃で、敵の意識を飛ばすとしますか!!
空に浮かんでいる箱から一つの小さな矛、槍の矛の部分だけを取り出して、敵の視線に入らない様に低空で撃ちだし、周囲にいる騎士の影を通り敵の真後ろの地面すれすれに矛を持って行くと唐突に視界の隅っこを駆け抜けて突如現れた矛に騎士達が一瞬だけ視線を逸らしそのまま見なかったことにして敵に向かって槍を突き出してくれている!
その配慮に感謝し、座標固定!矛を力いっぱいその場で固定!!その後に!力いっぱい矛を此方に向かって引き寄せる!!歌って!愛する人が転ばない様に!!
んぎぃ!っと歯を食いしばり矛が飛ばない様に固定しつつ、固定した座標から狙った箇所に向けて解き放とうと全力で引き寄せ!!る!!
最大限にまで、力を込めきった後、固定した力を解き矛が有り得ない速度で固定された空間から射出され狙いすました箇所に突き刺さる!そう!後頭骨と頸椎の間をね!!わかりやすく言うと頸椎の一番!アトラスがある場所から抉る様に脳天に向けて矛を突き刺したって感じかな!神経穴に矛の切っ先を打ち込むって感じ!!
激しい音と共に敵の脳天を貫けた!
これで敵もお終い!次!
パワータイプに視線を向けようとした瞬間、嫌な気配を感じ、視線を再度、殺したはずの相手に向け
敵が微笑んでいるように見えた
それが何を意味するのか、長年敵と戦ってきたからこそわかる!わかってしまう!!
「今すぐ離れて!!!!槍をその場に捨てても良いから!!」
全力で叫ぶと騎士達が盾を構えて敵に向けて構えていた槍をその場に放り捨てバックステップで下がり始めるのとほぼ同時に周囲が焦土と化した
騎士の間から突き抜けてくる熱風を防ぐために空中に浮かせた箱を前に出して防ぐ!!
自爆タイプの極限タイプってことね!!
あれ程の規模の爆発…恐らくあれだけのモノだと願いたい…
空中に浮いている箱達を動かし爆発した箇所に視線を向けると
汗が湧き上がってしまう程の熱波によって目が乾きそうになるが状況を確認する
騎士の誉れである槍を捨てて此方の指示に従ってくれてよかった…
誉れを捨てていなかったら…ぞっとする…
用意してある騎士達の鎧は耐熱仕様にしてあるから、ある程度は耐えてくれているみたいだけど…医療班のテントが満員になるのが決まっちゃったかな。
動ける騎士達が熱風で動けなくなってしまった騎士達の鎧を掴み爆心地から遠ざけようと動いてくれている。
非情で申し訳ないけれど!次!私の戦場はここだけじゃない!!
視線をパワータイプに向ける前に嫌な音が聞こえた
金属が凹む音!!
箱から一つの筒を取り出す!ここで使いたくなかったけれどお前には特別にくれてやる!!お前だけは許すわけにはいかない!!!いかなくなった!!!
私の大切な人を傷つける奴にありったけの怒りを込める!!!
「光は熱、光は粒子、光は質量!!光よ!!!敵を穿って!!」
ほーりーばーすと!!!
筒から放たれた光の柱が瞬時に敵の分厚い胸板を貫き大きな穴をこじ開ける。
敵の胴体に風通しの良い穴が開いたのが見えた瞬間、一人の戦士が膝をついて拳で地面を叩き完全に倒れないようにすると地面が真っ赤に染まる
「っらあきさん!!」
急いで駆け寄り、彼の肌にふれ回復の陣を起動させつつ、魔力を彼の中に流し内臓がどの程度損傷をしているのかチェックする
「・・・」
虚ろな瞳で此方を見ている…死なせないっての!!そんな諦めたような顔をしないで!最後の句を歌わせないよ!!
損傷個所は…内臓が裂けてる!?箇所は・・・胃?鎧が凹んで胃にまで衝撃が飛んだってことね!鎧が凹ん圧迫している…それほどまでの衝撃…いや、この状態を逆に利用する!いま、鎧を外すと圧迫が抜けて血が溢れ出る!…それだけじゃない、鎧の一部が皮膚に刺さってるかもしれない…ならまずは止血!!
全力で回復術式によって裂けた箇所を修復し、念動力をラアキさんの口の中から流し込み血を搔き集め取り出す、気道で血が詰まったら死んじゃうからね!
体の内側から力を加えて更に外側から鎧に力を加えてゆっくりと圧迫されている鎧を体内から押し出しつつ、衝撃によって裂けた箇所を念動力で圧迫して、回復力を底上げする回復の陣によって細胞を再生させて、繋ぎ合わせる!!
凹んだ鎧をある程度、元の形に戻すと「っか!」ばちゃっと血の塊を吐き出しひゅーひゅーっと酸素を取り込む音が聞こえる!これで命は大丈夫!
「急いで医療班に向かって!」
彼の肩を叩き指示を出した瞬間、地面に突き刺さっていた彼の拳が私の胸を強く、押し出すように叩かれ、目の前にいた大事な人が視界から消える
首を落とさなかった私の落ち度だって言いたいの?
敵が粉みじんになるまで消し飛ばさなかった私が悪いって言いたいの?
余力を残そうとしている矮小な存在がおこがましいって嘲笑いたいの?
目の前をよぎった太い足を光の刃で切り裂き寸断された大きい足を念動力で吹き飛ばす
重心が崩れ前のめりに体が倒れようとする巨体を支える為に地面に向かって伸ばされた両腕、その支えとなる柱である肘を狙って切断し、念動力で前腕を吹き飛ばすと無様に切られた箇所を地面に突き痛みで叫ぶ、その声が煩わしいと言わんばかりに首を撥ね、空に浮いた頭蓋を打ち砕こうと最大出力で力を加え圧縮する…
此処では絶対に見せたくなかった切り札の一つ…
術士が接近戦に弱いのだと思わせる為に使わないと決めていた切り札
そんなの!!そんなの!!!どうでもいい!!!私の大切を壊そうとする奴らに躊躇いなんてあるものか!!!
支える力を失ったゴミが地面に倒れようとする、そんなものを悠長に眺める気なんて無い!視界を直ぐに大切な人に向け地面を転がっていくのを追いかける
「お爺ちゃん!!おじいちゃん!!!!」
金属が地面に擦られ削れるような音を追いかける様に大切な人の傍へ辿り着くと…
心が狂いそうになる




