Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (119)
「準備整いました」
私専用の特殊な隊服の上に少しでも気品がある様にスカートもバッチリ!
「前回、汚れてしまったスカートは如何いたしましょうか?」
振り返ると、手にスカートを持ちひらっと動かして全体の汚れぐらいを見せてくれる。
うーん、汚れに汚れているスカートだし、もう何年も着てきたから、いいよね?
「破棄の方向で」
「はい、あと、申請されていましたパーツはトラックの直ぐ真横に配置しております」
ぁ!!更に忘れてた!メンテナンスしてない!!
「やらかしたと後悔されている姫様に言伝です、タイヤ周りやスパイクなどの外装部分?で宜しいのでしょうか?そちらの交換作業は終わっているそうで、姫様しか触れない箇所以外は終わっているそうですよ」
ちょっと浮かれすぎたかっと自分を責めていると朗報が伝えられる。
良かった、時間のかかる場所は殆ど終わってるってことじゃん!流石!私直轄の部隊!よくわかってる!!
「ありがとう!それじゃ、まずはさくっと書類作って、その後にメンテンナンスってところかな?」
「はい、では、その様に術式部隊の方達にお伝えしますね」
お辞儀して部屋を出て行こうとするメイドちゃんに
「あ、術式部隊の人達に魔石交換レポートの提出をお願いって伝えてもらってもいい?」
これまた、忘れ物、何処かのタイミングで言おうと思っていてうっかり忘れてた。
あとどれくらい、術式を扱えれるのか逆算するためにも凡その目安は欲しいもんね。
「はい!承りました!失礼します!」
勇気くんが居るであろう方向にお辞儀をしてから優雅にスカートを揺らしながら部屋から出ていくのを見送ると
「では、俺も行くとする、何かあれば直ぐにでも伝令を飛ばしてくれ」
何処かで着替えていたのか、隊服に着替え部屋を出ていく…って私も一緒の方向なんだから途中まで一緒に行けばいいのに!
声を掛ける間も無く部屋を出ていく…むぅ、ちょっとくらい待ってくれても良くない?
まぁいいや、お母さんから渡された書類を読みながら向かうとしましょうそうしましょう!ふーんだ。
机の上に置かれている書類を手に取り、部屋を出ようとすると甘い蜜月を堪能したベッドが視界に映り、昨夜の甘い出来事を思い出し頬がにやけてしまう、てひひ。
一線を超えていないけれども、私はもう立派なレディになりました!てひひ。
向かいながら読み込む書類の内容は、何処でどの様に破損していたのかっていう報告と、直ぐに破損していた箇所を見つけれた理由も書かれていた。
後は、修繕に使ったパーツの種類などなど、こういうマメなところはお母さんだね。
修理をしたのはフラさんだろうね。
何処でどのパーツを使ったのかわかるってのもありがたい、フラさんだとあのあたりを~直しといたってくらいしか報告してくれないんだもんね。
使用されたパーツの型番があれば、以前交換したものなのか、どうかもわかるからね!
…ただ、ただ、気になるのがどうして、ここなんだろう?王都付近でもないし、破損具合もお母さんの見た限りだと千切れてるって感じだし。
不自然に土が盛り上がっていたから、その場所がケーブルが通っている箇所の近くだったため、念のために真っ先に調べてみたら破損していた、っかぁ…
野生の何かがご飯と間違えて噛んだ?んー、そんな野生の動物がいるの?もしくは居たってことだよね?…んー…くそう断面を見れば何となくわかるかもしれないのに、カメラも持たせておけばよかった!
だって…こんな形で断線するなんて予想してなかったんだもん。
そもそも、地中だしなー、いや、掘り起こそうと思えば掘り起こせるだろうから…ぁー、掘り起こされた後とかどうか書かれていないから、それもわかんない!
こういう爪の甘い所もお母さんなんだよなぁ!!ちょっと抜けてるんだよね!!もー!!
っていうか、王都周辺に野生の獣なんて…いないでしょ?
死の50年の影響で数多くの野生動物が死に絶えているし、犬ですら私の実家とか、貴族のご家庭でしか見たことないよ?猫はごく一部の貴族が己の権力や財産をアピールするために飼育していたりするけれど、猫が掘り起こして噛む?んなわけ…
牛?豚?…それらだったらあり得る、畜産の旦那が放牧してたりするから、従業員のミスで逃げた牛や豚が掘り起こして遊び半分で噛んだりしたり引っ張ったりして壊したってのならありえないこともない!!
だとしたら、報告され…ないか、従業員だったら何か掘り起こしたけれど、よくわかんないから埋めといたって考えるだろうからってのも、ある…
可能性を考えれば考えるほど、溢れ出てくる!絞り込む為の情報がたりぬー!
っと少々苛立ちを感じながら急いで地下室へと下りていき、試験管の様子を見ると目を瞑って寝ている、ようなんだけど、ぴくぴくと指先が動いている。
ちゃんと体を適応させようとしているのだろう、驚いたことにこの中で腕でも伸ばしたのかな?昨日と体の向きが違っているし腕の位置も違う。流石は医療班を志しただけある、ちゃんと今できるリハビリが何か試行錯誤しながら前へ進もうとしてくれている。
ユキさんに手を振って奥へ進み重たい扉を開けて大型魔石の状態を確かめる…
大型魔石と繋がっているケーブルに触れて意識を高め流れを確認し、陣の状態をチェックする…うん!祈りが届いている!魔力の流れを感じる!!
だとすれば、魔力の消費に関してはある程度解決、かな?消費スピードを考慮すれば長期戦も視野に入れることができる。
これで問題は無いはずだよね?だとしたら、何でお母さん達は帰ってこないのだろうか?
…何かに巻き込まれている?
もしくは…あー、フラさんの性格を考慮していなかったや、他の場所もチェックしてたりする?
早めに断線箇所を見つけたから直ぐに報告してくれただけで、全部の確認はしてないってことか、その生真面目な感じはフラさんだね、報告は適当なんだけど隅から隅まで徹底的にチェックしようとするのはフラさんだ
取り合えず、報告書に魔力が流れているって書いて教えれば帰還するかな?
そうと決まればサクサクっと書類を用意して伝令班に伝えないとね!
地下室から出ようとする前に…意識を向けてみても彼を感じることが出来ない。
彼を完全に見つけることが出来たら、できたら、彼の器に宿らせて上げれるのに…
手を振ると…何も反応が返ってこない。
少し寂しい気持ちを感じてしまう。
外に出てクィーンの場所に急ぎ足で向かう。
道中で伝令班を見つけることが出来なかった、珍しい?っまぁ、朝だし休憩しているのかも?
目的の場所に到着すると、クィーンの前には各々、自由に過ごしている術式班が居たので、声を掛けついでに、伝令班の姿を見ていないか目撃情報を聞いてみると、伝令班は急ぎで走り回っていて、今のところ近くにいないっか、何かあったのかな?単純に朝だから色んな情報が流れ込んできてるだけっとか?
見つけたら言伝があるから私の所に来るようにと、言伝を術式班、全員に出してからクィーンの下に潜り込んでパーツを交換しては這い出てパーツを箱から取り出して交換するを繰り返していく。
メンテナンスもパーツ交換だから直ぐに終わる。
取り外しやすく設計してあるし、パーツを交換しないで、今あるパーツの汚れを落として再度取り付けるとかじゃないからね、ちゃちゃっと終わらせよう!!
んん~っと体を反り、腕を伸ばし固まった筋肉を伸ばし、ふぅっとひと段落終わったと肺の中にある古い空気を排出させ新しい空気を吸い込んでから音と共に吐き出す、
「メンテンナンス終わり!いくよー!」
術式班に声を掛けると術式班達が声に釣られ集まろうとした、同時に…ありえない音が世界を包みこみ、私達の思考が一瞬で空白へと放り込まれる。
鐘が鳴った
今の状況、戦況を考えれば鳴るはずのない鐘。鳴らす必要がない鐘。
鳴るということは危険を知らせるという事…ありえない音に一瞬だけ思考が停止しそうなる。
か、ね?の、おと?
なんで?こんなにも前線を上げているのに、どうやって敵の接近を許したの?
疑問を感じるのは後!どんな方法を使ったのかなんてどうでもいい!まずは状況を把握!
「敵は何処!?」
視界を直ぐに見晴台に向けると慌てた様子で光を使って連絡しようとしてくれるんだけどお日様の下だとわからない!
「司令官!司令官は何方ですかー!?」
門の方向から大きな声を出しながら走ってくる人物がいる!
「ここ!何があったの!!」
伝令班の一人が全速力で足が絡まる程に慌てて向かってくる!?
「中央部隊で!!は、人型が…はぁ、ふ」
大急ぎで駆け込んできたにしては?人型程度で鐘を鳴らさせたの?
「まま、まど、は」
まど?…魔道具持ち!?っち、厄介なのがきたってことね!
「急いで応援に向かうよ!ありがとう!大急ぎで知らせてくれて」
術式斑が荷台に乗り込もうとすると伝令係が伝え終えたはずなのに口を開く?
「そ、それが、左も右、も!」
「…ぇ?」
ここで同時展開?っち、先生め!ただ黙ってやられるつもりじゃなかったってことね!
ここからだと…中央部隊の敵を大急ぎで仕留めて、次に左と右に私と勇気くんが分かれて応援に出れば何とかなるでしょ!たかが一匹!
急いで向かう為に誰かに運転してもらう為に声を掛けようとするまでも無く、運転を担当する予定だった人物が直ぐにでも発進できるように運転席のドアに触れたのを見た瞬間
「で、伝令!!その伝令につ、ついかー!!左も、ふ、複数です!!!」
他の伝令班も声を荒げながら此方に集まってくる…心が冷えていくのを感じ、頭の中で警鐘を鳴らす鐘が止まらない。
…ぇ?ちょ、ちょっとまって?複数?魔道具持ちが?
何処から、何処に向かえば…優先する部隊を選べって事?
だれをぎせいにするのかきめろってこと?




