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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (117)

不可能ではない、されど危険を伴う術式が成功したことへの感謝を捧げ。

別たれた子供達、ユキさんに明日を祝うように祝福に近い祈りを捧げる。

その最中もずっと抱きしめ続けてくれる、祈りを捧げ終わり、彼の温もりを感じ続けていると

「はぁ…心が躍り、体が火照り、全身が炎となっている。だからだろうか、背中から伝わってくる冷たさが心地よい、心地よいぞ…これ程までに…嗚呼、心が震えている」

背中に回された腕の力が緩まる気配がない。抱きしめる力が緩まることなく、達成感に浸っている。

きっと、高揚する体が火照って仕方が無いんだろうね、彼ほどの成功者で在ろうとこれ程の難題は来るものが有るのかな?なんつってね…彼の評価は成功者かもしれないけれど、彼の歩んできた道を知っているからこそ、理解しちゃう。

彼にとって今までの人生、本当に望むべき結果を得られたことが殆ど無かったことを…

「今日と言う日を記念日にしなくてはな、国を挙げての感謝祭でも開こう、そうしよう。皆も共に騒ぎ歓び、大声で祝ってくれるだろう…嗚呼、これも全て…ありがとう全ては君のおかげだ」

何度も何度も、背中をぽんぽんっと優しく叩かれ続ける。

背中を叩く振動、その一つ一つが私の心の奥に沁み込んでいく。


叩くのを止めると、私を抱きしめたままゆっくりと立ち上がり、くるくると回る。

先ほどの乱暴なワルツとは違う方向に回るのは巻き付いたケーブルから逃れる為。


数回転回ると、巻き付いたケーブルから解放される。

私達を結びつけるように巻き付いた…私達が永遠に離れない様に皆が巻き付けてくれたようなケーブルをぼんやりと眺めていると、ゆっくりと地面に降ろされる。

ちょっと名残惜しく感じてしまう。だって、私としては…あんなにも情熱的に抱きしめてくれることなんて無かったんだもん。どうせならもっともっと、味わいたかったな。

ずっと…ずっと、貴方の体温を感じていたいから、抱きしめてくれていても…良いんだよ?

昂る感情をそのままに乗せる様に視線を熱くし、そして、火照ってくる頬の熱を帯びたまま彼の顔を見つめていると

「すまなかった、つい、感情的になってしまった、痛くなかったか?」

私と違い、彼の心は平穏へと至ろうとしているのか、心配そうに私を見下ろしている。

ううん、平穏ではあるけれど、高揚しているね、だって心配そうに見つめられるけれどさ、私にはわかるよ。表情が輝いているのを。

彼から放たれる眩い輝きは、この世のものとは思えれない、とても清らかで全ての邪念から解き放たれたような雰囲気を纏っている、ううん、違う、やり遂げた者だけが見せるような達成者の表情。故に邪念が無いんだろうね。

彼の中にある柵から解放された衝動は内から溢れ外へと溢れ出ていく、世界で最も美しい水滴に心奪われ吸い寄せられるように…無意識に腕を伸ばしそっと触れる。

「これくらい、へっちゃらだよ?あ、愛する人を守る為、だもん」

自分で言っておきながら気恥ずかしくなり頬が一気に熱くなるのを感じてしまう

「苦労をかけてしまったな、不甲斐ない番いで悪かった」

そっと頭を撫でてくれる。その優しい仕草に目を閉じて顔を上げると

「はは、欲しがりさんだな君は」

優しく唇が重なる…うん、頑張ったご褒美は欲しいよね?にへへ



愛を確かめ合う、っていうよりも、お互いの湧き上がる感情の爆発を確かめ合う様に抱きしめあいお互いの鼓動を感じ続け、お互いの昂る感情が落ち着いてくると逢瀬の時は終わりを告げる。



「…こう、なってみると寂しいと感じてしまう、それはきっと、贅沢なものだな」

私の手を握りながら試験管へと近づき、そっと触れると、薄っすらとユキさんの瞳が開く

「もう、皆は」「ああ、子供達は俺ではなくユキを選んだ、父性ではなく母性…でもないか、年齢の近い友達を選んだという事だ」

…それじゃ、ユキさんの中には複数の魂が宿っているって事?負担にならないのかな?

「君が考えていることは凡そ理解している、それに関しては問題は無いだろう、何年も共に過ごしてきたのだから、共存できるだろう…問題があるとすれば」

繋がれた手に力が込められる、その手を…指を慈しむ様に重ねる、貴方は独りじゃないよっと伝える様に、愛を込める、傍に居ると意志を込める。

「俺が…寂しい何ていうのは良くない、っか」

「そうだよ、会おうと思えれば会えるんだから」

試験管の中でユキさんがそう言っている様な気がする

「そうだな、繋がりは遠くなってしまったかもしれないが、永遠の別れではない、今にして思えば俺達の関係は不思議なものだったのだな、魂で繋がり共存していたっというのも…」

うん、私も過去の私達が忽然と消えたら寂しいと感じるだろうね。わかるよ、その気持ち、内側にある私だけの関係が変わっちゃったらね…

「それにしてもやっぱり、勇気くんは凄いね、到達できたんだね」

そっと試験管に触れるとユキさんが此方を見ているような気がする

「ああ、君の補助が無ければ不可能だった、危ういと感じた時も多々あった…進めば進むほど徐々に意識が朧気になり、自分が誰なのか手を繋いでいる人は誰なのか、共に歩むものと自分との境界線がわからなくなったときは焦ったが、君の補助によってすぐに立て直すことができた、いや、立て直してくれたんだ。試練を乗り越えたからこそ得られるものもある、境界線が分からなくなるという不可思議な感覚を知れたのが大きかった、目標の場所に到達した時、それを軸にユキ達をその感覚につけこみ、自分とは違う空の器、何も感じることが出来ない虚無の存在へと繋げ…」

その感覚が怖く畏怖を感じているのか小さく指が震え温もりを求める様に力が込められていく…

思い出してしまった自我の境界線が消えゆく感覚から逃れたいのか試験管から手を離したので、落ちていく彼の指を捕まえ、優しく両手で包み、子供をあやすように撫でていく。

「ありがとう、君もまた成長したのだな」

そっと頭を撫でてきたと思ったら唐突にキスをされる。もう、アナタだって欲しがりさんじゃん、にひひ。

「・・・んぅ。ぬ?…許せよユキ」

唇を離すと微笑みながらユキさんに許しを乞うている?目の前でいちゃつくなって怒られたのかな?なんつってね…

でも、意識があるのなら伝えてあげないとね。自分の体の現状を

「もう少しだけ、待ってねユキさん、恐らくだけど人も同じだと思うんだよね、体と魂が馴染んでからじゃないと、外に出たとしても呼吸すら怪しくなるから、体が馴染むまで暫くの間は中で待っててね。頃合いのタイミングで外に出れる様にするから、直ぐに動きたいかもしれないけれど、まずは、試験管の中で指先や、目を開いたり口を動かしてみたりして、細部を動かす訓練だけしてもらってもいいかな?酸素に関しては、臍の緒から供給されるから大丈夫、試験管の中はお母さんの中だと思って胎児のように過ごしてほしいかな。暫くの間は狭いかもしれないし寂しいかもしれないけれど…我慢して欲しい」

外に出たとしても最初は赤ん坊と同じで少しずつ外の世界に体を馴染ませないといけないから、リハビリっていうのも、んー?あってるのかな?リハビリと同じで体の機能を取り戻していかないといけないから、その時は私とお母さんできっちりサポートする。

『うん、ありがとう、姫様…ううん、お姉ちゃん』

唐突な第三者の声?周囲を見渡すが他に誰もいない、さっきの声は

「ああ、ユキだ、恐らく魔力を使って声を外に出してみたのだろう、原理は、どうやってるのか俺には理解できないが、ユキは俺を通して君との研究を見続け、学び続け感覚を養ってきた、そして、新たな肉体は」

…うん、ユキさんの肉体も特別製だもんね、だって


あの、戦士長の精子とお母さんの卵子をベースにちょっといじって作った肉体だもん


本当は、何もいじらないで、ユキさんの本当のお母さんの卵子と戦士長の精子だけで培養したかったけれど…この先を見据え、私達の我儘を押し付けてしまった。

彼女の体もまた、スピカと同質、っというか…スピカよりも少し劣っている、かな?

もしもの時に備えさせてもらっちゃった…


なので、王家の血筋としては申し分ない、女王として君臨してくれても問題ないかな?

「たぶん、音って振動なんだよね、その音、空気を振動させる術式を瞬時に構築して試験管の外で発生させて声にしたのかも?…いいなぁ、その術式、後で教えて欲しいくらい」

任意の座標で振動を自由に発動させる芸当、やったことなかった。

触媒があればそれ目掛けて音を飛ばして増幅とかで発生させるっていう原理であれば可能だけれど、単音が精いっぱい、複雑な音色は無理だよ。声何てもってのほか、凄いなユキさんは、それをするには複数の術式を繋げて行って繋げて行って出力できるってのに。

触媒も無く何もない空間を振動させるなんて芸当、私にはできない。

『・・・もっと、はなしたいけど』

「無理はしないで、時間がある時にまた顔を出しに来るから今は眠って体の感覚を掴むことを意識しててね」

試験管の中でユキさんの口元がピクリと動き、ゆっくりと目が閉じられていく。

微笑もうとしたのかな?可愛い。


自然と手がお腹へとうつってしまう


「…全てが終わったら次は君の体だな」

腰に手を回して引き寄せてくれる、うん。全てが終わったらあなたの子供が欲しい。

ううん、私と貴方の子供が欲しい…私もお母様と同じ、愛する人と共に過ごす未来が…欲しい。


抱き寄せられた彼の胸元に体を預け温もりを感じ続ける。この温もりを独り占め出来ている歓びを感じてしまっているいけない私がいる。

でも、少しだけやきもちを焼いている自分もいる寂しさを埋める為?に私を抱き寄せているんじゃないかって勘ぐってしまったから。


むぅ、独占主義なんて無いと思っていたんだけどなぁ?彼の瞳は私だけに向けて欲しいなんて思っちゃってる。

「どうして脇腹をつまむ?いや、抓ろうとしている?」

「んーん!!」

頬を膨らませて自分でも制御できない心の感情を爆発させているといきなり体を持ち上げられる、お姫様抱っこの様に

「何をこじらせているのか、俺にはわからない、でも、何となくだが、その瞳に宿る火で察することは出来る、一夫多妻制の弊害だな、安心して欲しい、今代は王でもない、子を残すという責務を背負っていないんだ、君だけの…傍に居るよ」

そっと、彼の首に腕を回すと、もう何度目かもわからないキスをする、今までとは

違う、唇だけに触れるようなキスじゃなく情熱的なキスを…


「…お風呂、はいりたい、な」








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