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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (116)


近くで感じる多くの魂に呼応する様に私も、祈りを捧げる。


何処か知らない世界で悲しい運命に翻弄された幼き少女の魂に救済を…


祈りを捧げ続ける…感覚は伝わってくる。彼らが奥へ奥へと進んでいくのを…


私を通して彼らに魔力を注ぎ続ける、魔力がある限りマテリアルボディを維持することは理論上は可能…

今の状況は一言で言えば、身を削る、言葉の通り、私自身を魔力を通すケーブルと化し魔力を流し続ける…彼らのボディを守る為に魔量の消費が激しい、魔力を束ね帯として彼らの注ぎ続ける、その工程によって肉体から痛みが伝わってくる。


でもね、この程度の痛みくらい、鼻で笑って耐えてみせらぁ!!

痛みなんて慣れっこ、そうだよね?私?

大勢の瞳が笑って答えてくれる。


痛いのは慣れっこ、だって女の子なんだもんね!!


ぐっと、歯を食いしばり痛みに耐える、祈りをとぎらせはしない、彼らの生末を祝福することを止めない…いざとなれば、内臓の一つや二つ、彼らの為なら捧げる覚悟はとっくの昔に出来ている。


だって、私の家族だもん

守るよ、絶対に…


肉体から伝わってくる痛み、まるで喉に熱く度数の高いアルコールを流し込まれるかのような焼かれる様な痛みが常に伝わってくる。痛みによって集中力が削がれようとする。

そんな状況で、ある言葉を思い出す、私の道しるべとなった人の言葉が思い出され、心に力が湧き上がる。


お母さん言ってたもんね!愛さえあれば耐えられるのが女だってね!


耐えられるのが女だけど!痛み以外にも!

大量に流れ込んでくる魔力を帯にしようと束ねる過程で意識が飛びそうになる!


意識を保とうとする力が薄れると即座に、夢が近づいてくる…

夢が意識を刈り取ろうとしてくる!!


流れ込んでくる魔力を操作し続けると同時に流れ込んでくる祈りも帯となって襲い掛かってくる。


瞳達でも濾過しきれない大量の祈り…

大量の願い…

人々が抱く邪念…

エゴの塊が波となって流れ込んでくる…


せき止めないと!このエゴを、邪念を、垂れ流しにするわけにはいかないっての!

邪念をこれ以上先に流すわけにはいかない!

この先に貴方達のような欲望の塊をイノセンス達に触れさせ魂の根幹に触れさせ汚染させるわけにはいかないっての!!


叔母様が言っていた!人の願いは力となる!祈りを纏める者こそ聖女であれと!

その祈りを、この祈りを御してこそ聖女だもんね!!


祈りを願いへと転じ夢に問いかける…

叶えたい願いは何?

美味しいご飯が食べたい?

もっともっと美味しいモノを用意してあげる!

お酒が飲みたい?

お酒の種類も増やしてあげる!この世界にないモノをどんどん用意してあげる!

お金が欲しい?

実入りの良い仕事をたくさん用意してあげる!

皆が笑顔で明日を迎えれる様に?

…頑張ってる!!平和な世界が、月と太陽に微笑んでもらい、安心して過ごす未来を勝ち取って見せる!

女にもてたい!?ぁ、えっと…

漢を磨く場所を用意する!!


流れ込んでくる祈りの中に混ざった邪念、欲望の塊というなの祈りと言う名の願いが私に語り掛けてくる。その全てに応える様に約束を交わしていく。


皆の願い、祈り、その全てを私が受け止め!叶えて見せる!私にはそれが出来るだけの財も知恵も立場もある!!


だから、その時が来るまで…


私に力を貸して、夢を押し付けないで…

皆の心は私が受け止める、だから、無垢な…イノセントにその祈りを宿らせないで…


祈るように語り続けてもなお、止まることが無い押し寄せる波が吸い込まれる様な大渦へと形を変え、私の精神へと流れ込んでいき…心が削られていく


必死に願いと向き合い続ける、私が、私が受け止めれば、この先へと流れ込まない、こませないために…一つ一つに耳を傾けてもかたむけても、ひとつひとつがおおい…


私という器に邪念を流し込み続けていると、だんだん、その祈りの内容に、苛立ちを感じ、隙あらば溢れ出ようとする…

「ああもう!うるっさいなぁ!全部叶えてあげるから黙ってて!!」

自由過ぎる祈りに我慢の限界を迎えてしまい、つい感情が溢れ怒気を込めて喝を飛ばすと静まり返る…本当は良くないけれど、力業で黙らせてしまった…

叔母様、私に聖女としての佇まい、振舞い、矜持はありませんでした。


だけども、この瞬間を逃すほど私達は甘くない、瞳達が幾重にも広がっていく…

これにより、瞳達が溢れんばかりの願いを濾過していく…


瞳達の処理が追い付いてきたのだろうか?

幾ばくかの静寂が訪れ、流れ込んでくる肉体からの純粋な痛みも鈍く感じる。


これで集中できると胸をなでおろした瞬間、意識が飛びそうになる…

意識が飛んだ瞬間、守るべき人達との繋がりが途切れ気合を込めて繋がりを戻そうと踏ん張るが…意識が刹那的に飛ぶ…されど、途切れた感覚が繋がった!?

一瞬だけブラックアウトした視界に見えた慈愛に満ちた微笑みに感謝を捧げ、即座に繋がった先へと魔力を流し込む!!


垣間見えた、微笑みに助けられ、った!!


感覚が勇気くんに繋がると、一瞬だけ彼らの現在の地点を感じ取れた…

驚くべきことに、彼らが居た場所は、僅かな時間だというのに既に、脳へと到達していた。


っであれば!もっともっと魔力が必要なはず!!

彼らを保護するためにもっともっと魔力が必要となるはず!

幾ら、魔力量が桁違いにある勇気くんでも、彼だけの魔力では自身の体を保ち続ける事は出来ない!持たない!!保ちきれない!!


私の体内に流れる魔力の帯を色濃く何重にも幾重にも重ね束ね、より太く彼へと届ける!!


届け続ける!!


精神を極限にまで高め、痛みに耐え続ける…

たえ、つづけていると、思考が逸れていく…

待ち続けるのは、とくい、じゃないほうかも?


思考が、心が、現状を維持し続ける事に苦痛を…悲鳴を上げ始めていく…

思考を簡略化!するべきことだけに意識を向け、向けるの!!



鈍磨していく感覚に思考も引っ張られていき、長い時間が心を狂わせていく



いつ、私の肉体が痛みに耐えきれなくなるかもしれない

いつ、自己防衛によって脳を停止させてしまうかもれしれない

いつ、集中力が途切れてもおかしくない

いつ、魔力の帯を制御しきれなくなって彼との繋がりが保てなくなるかもしれない



感覚が途切れそうになる、頬を叩く様に踏ん張る



いつ、いつ…徐々に押しつぶされそうになっていく、焦燥感ってやつなのだろうか?

いつ、私は…耐え続ければ良いのだろうか?



突如降り注ぐ痛みに全ての演算を止めてしまいそうになる



いつ、終わるの?…いつ、まで、耐えないと、いけないの?

いつ?いつ?いつ?何時?いつ?いつ?い、つ?…い…


何度目かわからない飛びそうになる意識を頬を叩く様にし、心を強く保つために気合を込める!!


待つのは苦手?違うでしょ!!待つのは得意!!だって私はお母さんの娘だもん!!

何度も何度も愛する人が戦地から…死の大地から帰ってくるのを待ち続けたお母さんのスピリットを受け継いでいるんだから!!!


その私が、この程度でへこたれんなっての!!意識が飛ぶ?飛ばすものか!!!

愛はね!その全てを凌駕するの!!これ以上の力はこの世界に無いんだから!!!


友を想う愛!

愛する人が傍に居てくれることを願う愛!

子供の明日を見守る愛!


家族を…私達の明日を!願う!!


砕け散りそうな、張り裂けそうな、ぶつ切りにされそうな集中力を失わない!!

極限にまで高め魔力を操作し続ける…何分?何時間?時間の感覚が狂いそうな程に意識を保ち続ける!!


歯を食いしばり何時間でも耐えて見せると繋ぎ止めている感覚を研ぎ澄ましていく、今彼らの状況がどうなっているのか、知る術は繋がっている感覚、これだけが頼り、ぁれ?


守る為に必死に歯を食いしばって繋げていた、繋がっていた何かが、感覚が、はなれて?ちがう、抜けて、いく?…私の手の中から、きえ…

ずっと感じていた魂の繋がりが失われていく?


それが何を意味するのか、分からないほど、私は愚かじゃない


しっぱい、し「すまん!戻してくれ!」繋がった先から声が届き急ぎ術式を発動させる!!魂を肉体へと強引に連れ戻すセーフティー術式を!!


術式が発動した刹那

視界が試験管の中から、肉体の視界へと戻るのと同時におぼつかない足を叩き地面を蹴り、勇気くんに飛びつく様に駆け寄り照準の合わない腕を振り回す様に動かし何とか、彼の肩を掴み

「まだ!魔力はある!いそ」「成功したぞ!!すまない待たせてしまった!!」

彼が此方に向かって振り返ると同時に力いっぱい抱きしめられ、る?

「ぇ?」なんで謝ったの!?

「辛かったろ?すまなかった!想定以上に難しかった!!時間が掛かり過ぎた気がする!!」

だが成功したぞっと叫びながら抱きかかえた私を高く持ち上げて乱暴なワルツが始まる


乱暴に振り回してくる愛する人に勘違いさせるような一言を言わないでっと、文句を伝える為に何度も肩を叩くが意に介することなくワルツが途切れることが無かった。


乱暴なワルツが終わりを告げたのは、ケーブルによって動きが封じ込められたときだった。

乱暴にぐるぐる回り続けるから、私の背中に付いているケーブルを巻きとる様に絡んできた、乱暴なワルツの勢いそのままに倒れそうになるのを、勇気くんは私を守る為に背中から倒れようとしたので巻き込まれない様に彼の肩に置いた手が潰されない様に彼の肩から手を離すと


バチンっと静かな地下室に大きな音を出し、倒れた。

されど、彼は今もなお笑い続けている。

その笑顔によって、先の勘違いを産みそうな発言に対して文句を言うつもりだったけれど、何も言えなくなってしまう。


「やった…やったぞ!!やってのけた!!おれは、俺は…成し遂げたんだ」

今度は…失敗しなかったっと小さく消え入りそうな声が私の耳を通り抜け心臓へと染み込んでいく。


彼の…柳としての魂、悔いともいえる杭が刺さり続けていたのかな?


大切な人を守り切れなかった、自分では何も成し遂げれないと失敗した体験ゆえの悔い。

それが無くなったのなら、彼は明日を、自分の未来を祝福できる、よね?


力強く抱きしめられる、その腕に身を委ね彼を、彼らを祝福する…





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