表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最前線  作者: TF
551/697

Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (115)


遠目で観たら仲の良い親子や兄妹に見えてしまうかもしれない、買い物帰りのような和やかな雰囲気で仲良く目的の場所に向かっていると

「ふむ、ここは俺がリードするべきっか、ユキの言うとおりだな」

唐突な独り言?ユキさん?

何事だろうかと彼の表情を見る為に顔を上げると

指先を握っているとはいえ、二人の間には僅かな隙間があり、唐突にその隙間を詰められ彼の上腕に体が当たったと感じたらすぐに指が離され、少し寂しいと感じたのも束の間、寂しいと感じた心が一瞬で違う感情に押しつぶされるぅ!?

私の指と指の間に指が入り込んでくる!?っていうか、私の腕に巻き付く様に彼の腕が!?

こういった手のつなぎ方を知ってる!!貴族会で奥方をエスコートするときじゃなくて、初々しい夫婦がして、してる手のつなぎ方!!ふへ、ふひひ。

「はは、君も照れることがあるんだな、頬が真っ赤だよ」

優しく微笑みかけてくれるけど!そ、そららぁ、わた、私だって…照れるよ…

こういった経験がないだもん…

高鳴る鼓動と、頬に熱が灯るのを感じ、大勢の瞳達が歓喜の声をあげ喜んでいる。

その中に、安堵する感情も混ざっていた…


彼との密着した時間を味わい尽くしたい為なのか、言葉が出てこない…

無言で歩き続け、地下へと通じるドアの前に立つと勇気くんが力強く開けてくれる。

腕を絡ませながら地下へと下りていき、地下室に辿り着くと

「はぁ、久しぶりにきたー!」

手が離され奥へと勇気くんが早足で駆けていく、その後ろ縋を見て申し訳ない感情が渦巻き言葉にしてしまう。己の不甲斐なさを

「ごめんね、窮屈な想いばっかりさせちゃって」

「ううん!お兄ちゃんも、お姉ちゃんも大忙しだからしょうがないよ!」

くるっと少女みたいに回っている。

そして、その奥には、急成長した彼女の器が漂っている…


もしかしたら、今なのかな?

休憩時間もある、戦況は佳境に入る、あと少し、ほんの少し先に進めば…

たぶん、全てが終わるまで私達は帰還する余裕がない…


このタイミングを逃すと彼女に自由をプレゼントすることができないのでは?

…だとしたら、彼女に体を移すタイミングは今では?でも、今は…いや、今だからこそ、かな?


懸念していた不安材料はある、でも、それをさせないための術式は展開済み

魔力もある、寧ろ、全てが終わった後、この魔力に頼りきったあと…私はどうなっている?


…私の精神が汚染されてしまっている可能性が高い。

浸透水式を行うのであれば、魔力は必須、それも大量の魔力が。

汚染されている私から魔力が送られてくると、彼女に…

私の友達であり、妹である、彼女の心が汚染されてしまう…

イノセンスの様に、純白な穢れを知らないピュアな彼女の心に不純物が混ざる恐れがある。


そんなの、許せなくなってしまう…


今も自由を謳歌するかのように、楽しそうに笑顔で踊っている彼女に真なる自由を与えてあげたい。


くるくると回転している体を止める為に、きゅっと靴が擦れる音が周囲に響くと、真剣な眼差しで此方を見つめてくる?

「むしろ…私が何もできないのが…辛いし、歯がゆい。今が凄く大変な状況だって私だってわかってる。でも、私の体はお兄ちゃんが使ってる…私も…戦いたい、皆と一緒に世界を守りたい、大好きなお母さん、大好きだったお父さん、大好きなお兄ちゃんにお姉ちゃんを…守りたい」


その真剣な眼差し、強い思いを感じる。伝わってくる。

穢れも無く純粋な心、大切な人を守りたい共に有りたいと願う心が…


もう一度、考える、慎重に考える。今が最良なのか、今こそなのか。

彼女の魂を解放しても良いのだろうか?

彼女が居なくなれば体の中に眠っているであろう子供達はどうなる?

制御は誰がするのだろうか?


ふと、肩を叩かれる?視線を向けると頷いている気がする。


「だい、じょうぶなの?」

語りかけると笑顔で応えてくれているような気がする、だとすれば…

「…何か、策があるってことかな?」

名も無き弟なら、不可思議な存在である君だからこそ出来る、何かがあるのだと信じるべきだよね。


スピカの想いを受け止め、心を、決意を固める。


今がきっと、その時なのだと、嗚呼、だから、あの時、彼女の姿を見たのはスピカが誘ってくれたから、なのかな?

「勇気くん」

声を掛けると少女のようなあどけない顔から直ぐに戦士の顔に、ううん、父親の顔に切り替わる。

「ああ。ユキの望みだ、やろう。不安材料は数多く揃っている、だが、俺と君であれば」

「出来る!…よね!」

頷く拳を前に突き出してくれる、私も拳を前に出し拳を合わせる。

「それじゃ準備に取り掛かるよ!!」

「ああ!!ユキを…子供達を解放しよう!!」


背中にケーブルを接続し、魔力を得る。

勇気くんはユキさんの体がある試験管の前に立つ、そこには特殊な陣を用意してあるから。


何度も何度も、私達は話し合った研究してきた…手順は頭の中に叩き込んでいる。

何時でも、その時が来れば実践できるように…


彼の足元に書かれている陣は、浸透水式っという特殊な術式。

それをベースに改良っていうのか、ある術を組み込み取り外してある。


プラスしたのは、魂の同調をより深く行えるように…

リスクだらけの術式をプラスしている。


浸透水式は肉体という器、その境界線を曖昧にさせる力がある。

何もしないで用いれば、術者と水の中にいる人の心が混ざり合う可能性が高い。

混ざり合いお互いの魂が溶け込んだ状態、それを同調現象と呼んでいる。

魂がまじりあうと、自我の境界線を失い発狂する恐れがある…


その危険から守るために施してあるセーフティーを解除…自我を守る為の防衛機構を取り外した特殊な陣を今回は用いる。


浸透水式、これを医療として扱うと決めた私は正気じゃないって今になっても思ってしまう。魂を特殊な液体に溶かし、水の中で自由に動き、特殊な液体が浸透している中であれば自由に動き回ることが出来る術式。


つまり、水の中で動いているのは意識体、もしくは、マテリアルボディ、もしくは、魂って表現するべきかな?その状態で動き続けるなんてリスクしかない、肉体という防御壁を外しているのだから…


だからこそ、命綱であるパートナーを用意した、パートナーが水の中に溶け込んだ人の防御壁と成る為に!


今回の浸透水式も例外じゃなく勇気くんが試験管の中へと意識を潜りこませ、深部へと進んでいく。

試験管の中で漂っている器…肉体に魂の同調と呼んでいる特殊な術式によってユキさんの魂を流し込み終わったら、浸透水式から彼の魂を肉体へと戻し、強引にでも器と繋がっている意識の接続を解除する。


頭の中で手順を再確認し、危険な部分を再確認しながら集中力を高め、全ての瞳達に語り掛けていく、手を貸してほしいと。


集中力を高めていると、何度も深呼吸をし同じように集中力を高めている術者が

「補助を頼む、合図と共に」

声を出し、最後に大きく深く呼吸をしてから、頷く。

それに応える様に私も頷くと

「魂の同調をここに!!潜るぞ!!」

言葉の瞬間、彼と私の意識が試験管の中へとダイブする…



試験管の中にダイブした瞬間に我が目を疑いそうになる

「初めまして、かな?」

「う~ん、それも違うと思うよ?姫様」

目の前にいる少女が返事を返してくれる。

少女の漂う雰囲気は、勇気くんと何処となく似ている、けれども、姿カタチが大きく違う、だって、何処からどう見ても


…幼い、幼過ぎるよ。


勇気くんの肉体だと17?18?なのに、彼女の姿は何処からどう見ても…9歳?8歳くらい、ユキさんはそんなにも幼かったんだね…


そして、その周りには数多くの子供達がいる、皆、楽しそうにユキさんに引っ付いている。


そのどれもが…さらに幼い。


たぶん、4歳?5歳、辺りかな?私が実家を出る前に最後に見た弟や妹たちとあまり変わらない背格好…


「さぁ、お前たち、遊んでいる時間は無いんだ、お父さんと一緒に行こうか」

声と共に全員が振り返る、視線の先に居るのは…いるのは?だれだろう?

驚いているのが伝わったのか

「魂の姿は生前に似るのかもしれないな、自分の姿を確認することが出来ないからな」

「ぇっと、勇気くんが…ううん、柳さんが若い時って、こと、かな?」

過去の何処かで垣間見ることが出来た姿とは違う、それに、過去に彼と共に浸透水式を行ったときに垣間見た姿とも違う?今の肉体年齢に精神が引き寄せられているのかな?ダンディな佇じゃない。若い?

「かもしれないな、俺自身も生前の記憶全てが残っているわけではない、もしかしたら、心が若返っているのかもしれないな」

外で会う時よりも、なんだろう?物腰が柔らかく感じる?掴みどころがないっていうか、雰囲気が、違う?…何だろう、言葉にできない何か、んー些細な違和感だし、気にしないで集中しないと。

「さぁ、時間も限られている、長い時間は子供達が耐えられない、行こう、器へ」

「ぁ、うん。そうだね」

私も一緒に付いて行こうとすると勇気くんが腕を上げて

「いや、君はここで待機だ、何かあれば俺達の魂を引き上げる役目だろう?」

制止させられ、自分の役目を思い出させられる

「そうだった…それじゃ、見守ってるから、何かあれば心を飛ばして、全力で肉体に引っ張り上げるから!」

ぐっと拳を握り締め気合を込めると

「ああ、ここばかりは、君の言葉を借りよう。任せてほしい」

力強い言葉と共に彼らの魂が奥へと進んでいく、後ろ姿が遠くなっていくのを祈りながら見送った…


視界から見えなくなろうとも、彼らと繋がっているのは感じ続けている。

セーフティー機能をある程度変更しているとはいえ、私が命綱というパートナーを用いたセーフティーは機能している!


繋がっているという感覚に意識を向けて集中していくと、彼らの道行きを感じることができる。

私がするべきこと、役割を全うする!

彼らの意識を自我を守る為に術式を展開し補助する。誰にも穢されない様に…


私の体には無限に近い魔力が流れ込んでくる、だからこそ、魔力を贅沢に潤沢に使って術式を使い続ける事が出来る。っが!これに関してはリスクが伴う。

怖いのが、他の祈りがここに混ざってしまわないのかって事だけど、それらを全力で瞳達が防いでくれているのを感じる。


でも、不思議なことに、この中にダイブしたからなのか、普段とは違う感覚が研ぎ澄まされているのか感じる。

瞳達、だけじゃない、私達だけじゃないのを感じてしまう。


他にも力強い…何かが傍で見守ってくれているような気がする。

…一つだけじゃない、二つも?ううん、それ以上も感じる…


その全てから邪気を感じない、純粋に見守ってくれているような気がする。

私達の行いが彼らによって祝福されているのだと感じることが出来る、成功を祈ってくれているっと感じることが出来る、皆が、彼女に新たな人生を歩んでほしいのだと、彼女がこの世界を自由に動き回ることを待ち望んでいるのだと、伝わってくる。


貴女がこの世界に降り立つのを…みんな、待ち望んでいるんだね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ