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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (113)

だからこそ、信頼できる、変な見栄を張らず彼らは出来ないことを出来ると豪語しない。

自分の能力を冷静に見極める事ができる、だからこそ!冷静に判断できるからこそ安定性がある証し。

まぁ、それを嫌う人もいることはいるんだよね、己の中で限界を決めつけるなってつってきてね!

根性論でどうにかなる職業じゃねぇっての、私達は戦士じゃないんだから、体を鍛えてないんだから無理なモノはむりだっつーの!技術職に根性で今すぐ目の前にいる敵を素手で倒せとか馬鹿の言う事。


肉体の限界を超えるのなら日々の努力と、土壇場での度胸!それを振り絞る為の根性や勇気は認めてるよ?それらを行っていない人に肉体の限界を超えろとか言うのは違うよねー?

まったく、これだから貴族の脳筋共はダメだよねー。

馬鹿な話は置いといて!ちゃんとフォローしないとね。

「情けなくない、情けないのは皆でも扱えれて尚且つ、人型何て雑魚の様に倒せるような凄い魔道具を生み出せなかった私だよ」

実際問題、そこが重要なんだよなぁ…人型を蹂躙できる魔道具は何個かあるんだよ?あるんだけど…運用方法が厳しいんだよなぁ、魔力が足りん。

はぁっと、事前準備を幾らしても足りない状況でそれを打破できなかった己の不甲斐なさに、ため息が溢れ出てしまい、ついつい、ため息交じりで助手席に乗り込むと

「「そんなことありません!」」

椅子に座った瞬間、荷台に乗り込んでいる皆から声を掛けられ驚いてしまう

「姫様は」「俺達では考えられない思慮の深さを持って作戦に向けて取り組まれているのを」「私達は知っています!」

各々が熱く語り掛けてくれる…その声に胸が痛くなる。



あるんだよ…本当は、皆でも扱えれて尚且つ、人型を倒せれる魔道具

前提条件と扱うための課題が多すぎて、色々と問題があるんだけど、あるんだよ…



つっても!量産できなかったけどね!大量生産して数の暴力で殲滅!ってしたかったけれどね、どう足掻いても間に合いそうも無かったんだよなぁ…


一応ね、切り札の一つとしてクィーンに搭載してある。

私であれば問題なく全ての前提条件を満たしているので扱えれるから。


うー、何度思い返してみても…そうだよなぁ~時間が無かったんだよなぁ

…その術式に耐えらえる素材が全然手に入らないんだもん!


魔道具無しで人型を倒す術をもっともっと、考案するべきだったんだけど、火薬の量も制限されているし、動力無しで敵を倒す力を生み出せってなるとさ、鍛えろってなるよね?それだったら戦士達がいるしって、ことで考える事から逃げちゃったってのもあるしなぁ…


己の不甲斐なさにね~胸が痛いや。


そんな事を感じさせない様に

「ありがとう!そう言ってくれると救われる。大好きだよみんな!」

にへへっと照れ笑いをしていると、隣で見ていた運転席の人が大粒の涙を流し

「「私達も姫様に付いてきてよかったです!」」

大きな声で叫んでいる。まったくもう、涙もろいなぁ皆は。

その気持ちもわかるけどね、この日に向けてどれだけ頑張ってきたのか。私の無茶ぶりにずっと耐えてきてくれたんだもんね、わかるよ、今この瞬間、活躍することができたからこそ報われるよね。



荷台は軽くなったけれど、様々な想いを一杯乗せてクィーンは走り出す。

何度も何度も、死の大地を往復する。誰しもが不可能だと思っていた豪快な音を出し続けるトラックが獣共のテリトリーを蹂躙するかの如く駆け出していく。


死の大地を大きな車で走る何て誰も想像していなかっただろうなぁ…

窓から入ってくる風を感じ、感慨深く広大な大地を眺めてしまう。







「お疲れ様ー」

最後の積み込みが終わったので、助手席から戦士達にねぎらいの声を掛けると

「吾輩達は引き続きこの周囲を警戒しつつ左側にある森を伐採していけばよいのであるな?」

部隊をまとめているカジカさんが最後の確認をしてくれる

「うん、なるべく早くお願いしたいかな?沼地を固めて拠点をつくってさ…行くよ、あの先へ」

あの先へっというワードで一部の人達が神経を昂らせるのが伝わってくる。

昂らせている感情が一際大きな女性が眉に力を込め

「行くんだね」

「うん、超えるデッドラインを」

決意の確認、知らない人があの先を本当に目指すのかという心配も混ざっているのを感じる。


あの事件以来、誰もが目指すことは一生無いだろうと思っていた超えてはいけないライン


それをまた、自分たちが生きている間に超えようとする者が現れるなんて、誰も思ってもいなかっただろうね、現れたとしても自分は参加しない、もしくは、止めるつもりでいたんじゃないかな?


だってさ、会議でも全員がその先に行くことを躊躇っていたんだもん。

でも、こうやって順調に作戦が進み、大きな被害も無く眼前まで迫ってきているからこそ、作戦に参加している人達全員が、デッドラインを超える日がくるのだと実感してきているんじゃないのかな?


あの先へ、攻め込む時が来たのだとね!


「あの先へ行くとき、吾輩も傍に」「あたいも連れて行ってくれるよな?」

戦士二人が同時に想いを伝えてくれる…会議の時なんて、口に出す事すら躊躇っていたのに…

力強い言葉、あの時の無念を晴らすのだと目が語っている。

その覚悟を受け取る、受け止める。


私としても二人が付いてきてくれないと困るんだけどね。

それでも、その場の雰囲気で流される様に答えているってこともあるから、確認して二人の心を知るべき。


「覚悟は出来てるの?」

二人が同時に頷いてくれる…でもね、二人とも指先が震えている、気が付かない私じゃないよ?

二人にとって乗り越えることが出来ない残酷な記憶が眠る場所だもんね。

敬愛する偉大なる戦士長が死んだ場所だもんね、そう易々とトラウマを乗り越える事なんて出来ない。でも、二人の覚悟は伝わってきたよ。

その頷きに私も頷いてから応える。

「二人が一緒に来てくれるのなら心強いよ!皆で行こう、始祖様が…見守ってくれてる」

おっといけない、危うく、始祖様が倒しそこなった敵の事を漏らしちゃうとこだったぜ!

たぶんだけど、始祖様が倒しそこなった敵って、私を食い殺したドラゴンでしょ?私はアレが敵のボスだと思っている。

その道中にいるであろう人型は全部ドラゴンの駒!

あのドラゴンがきっと、何かしらの方法で先生を悪用しているはず!


…きっと、二人が絶望を抱くきっかけとなった特別な人型ってやつよりも…ドラゴンは遥か高みの存在だろうけどね、誰よりも強く、私達で倒せるかどうか未知数、そして失敗が許されない戦いになるだろうね。


ドラゴンと闘ってデータを持ち帰る何て出来るとは思えれないからね…


死んだら全ての記憶を持って過去に飛べたらどれだけ、楽だったんだろうなぁって思っちゃうけど、そもそも、過去に情報を送れる時点でね、反則じゃない?

その反則を何度も何度も何度も!繰り返してやっとここまでたどり着いたんだもん!


今代で全てを終わらせる!

…そして、強欲な私は自分の願いを叶える!


愛する人と一緒に生きる!!

悲しき運命から解き放たれてね!


助手席の窓から少しだけ身を乗り出して拳を前に突き出すと力強い拳が二つ私の拳に触れてくれる。その後ろで私達の会話を聞いていた戦士達も頷き決意を抱く様に胸に拳を当てている。


戦士達の覚悟を背負い、最後の運搬作業を終える為に、クィーンが動き出す。

セーフティーエリアに向かわないで、私達の街へと発進する。



道中、揺れはしたけれど、行きに比べたら遥かにマシだった。

やっぱり、焼いた直後の森、その上を走るのは間違ってるよね!!まったく宰相ってのは、困ったもんだよね。

街に帰還する前に遠目に見えた焼けた森の跡地には多くの人が集まって何か作業をしているのが見えた。恐ろしい事に護衛の騎士が作業している人達に対して少ないのが気掛かりだけど、急いで走れば街の門を潜れないことも、ない、かな?

死の大地だっていうのに、慣れてきちゃったんだろうね、かといって慣れによって油断しないでよ?



作業している人達を助手席で見守りながら門をくぐり、街に帰還すると、後方支援部隊の人達の前に止め、声を掛ける。

荷台に積んである大量の仕留めた得物を荷台から降ろしている間に助手席から降りて、クィーンの側面に移動し、腰をかがめてお行儀が悪いけれども地面にお尻をつけて足を伸ばし、タイヤなどの状態をチェックしていると「大金星だな」その声に耳を幸せを感じ、心が跳ねる。

直ぐにでも立ち上がって、振り返って抱き着いて!頭を撫でて!って甘えたくなる!

なんでもう!いっつも抱き着けない場所で声を掛けるの!もー!

「でしょ?敵を減らしてある程度、道を舗装しないと使えないっていう条件付きの切り札だもん!条件さえ整えば最強だからね!」

杖が手に入らなかったら私自身が砲台になるか、クィーンに搭載している敵に見せたくない魔道具を使わざるをえなかっただろうけどね!

「条件を一つずつクリアにしていく、作戦が順調である証拠だ、人類の明日は近い」

「うん、朝日は人類の為だけにってね」

会話をしながらもチェックは怠らない。

タイヤ周りの痛んだパーツのリストを書き続けたボードを床に置いて…んージャッキアップしなくても、私くらいの細身だったらギリギリ滑り込めるかな?

地面に手を突き、寝ころんで奥の状況見ようとすると肩を叩かれ

「手伝うよ」

ジャッキアップを何時の間にか車の下にセットしており、手早くクィーンを自身の体を滑り込ませれるまで持ち上げ、私の代わりに車の下に潜り込んでくれる。

足先だけしか見えなくなるとクィーンの下から

「リストを読み上げてくれ、細部をチェックする」

彼の声が聞こえてくる、彼もクィーン開発に携わっていたからある程度の構造を把握してくれている。

「は~い」

愛する旦那の声についつい気が緩んだ返事をしてしまい、いけないいけない、お仕事お仕事っと気を引き締めなおし

頭の中にあるクィーンメンテナンス手順を読み上げていく


「ここは、問題ないな、次」

「んじゃ、次は~…」


彼の言葉を受け取り、次にチェックして欲しい箇所を伝えていく。

すると暫くの沈黙のあと、次っと短文が返ってくる。


集中している彼の声が心地よく感じる。何とも言えない知らない感情が湧き上がってくる。

その心地よい声を受け止め、次の箇所を伝えていく、暫くの沈黙の後に、待ち望んだ彼の麗しくも凛々しく心震える、私の耳が欲しがっている音が聞こえてくる。


その声を受け止めるだけで、得も言えぬ甘美な感情が沸き上がる。

彼の声を待つだけの合間、ほん僅かな隙間に反芻するように彼の声を噛み締めてしまう、小さな幸せ…


息の合った作業…いいなぁ、こういうの。ずっと続けばいいのに…



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