Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (110)
「試しに止めて欲しい所で声を掛けるから止めてみてもらってもいい?」
「ああ、良いさぁね」
「出来れば腕だけの力じゃなくて、体を捻って真横水平に綺麗に降って欲しい」
「あ~言ってたね、わりぃわりぃ、こんな感じかね?」
足を広げ、野球選手がバッターボックスに立つような感じで棒を構えてくれる
「それじゃ、振って」
応さっと、小声で返事をしてから体を捻ると、ブォっと音がし、マリンさんと杖が水平になるタイミングで
「止めて」
声を出して合図を出すと、ビタっと止まる…反射神経も鋭すぎやしないかい?天性の肉体に惚れちまいそうだぜ!
「これでいいのかい?」
「これでいいんだよ!!さっすが!!」
ついつい、先の事を考えてしまい邪悪な笑みを浮かべてしまう
「そうと決まれば!」
荷台から降りて、杖に手を触れ魔力を注いで、そそい、で…いき…っは、っぐ!?
ちらっと、視線を先端に向けると、想定通りの一番小さな光の粒を精製する。っは、こ、っわ…取り合えず心配かけない様に冷静に平静を装わないと
「おぉ!?なんか、先端から光が!…小さな光が宿ってるじゃねぇか」
「うんうん!私から直接魔力を込めても問題は無さそうだけど」
流してからわかった…これ、疲れる、私自身の消耗が激しい、そりゃ、パーツの交換が必要になる…私の体に今は替えが無いんだから!次は、台座にセットして魔力を流そう…
「ちょっと待ってね、前方にいる人達に声を掛けるから」
喉に手を触れ声門を強化、口の前に指で輪っかを作り音声拡張術式を構築して、大きく息を吸う!
「今から光の粒を飛ばします!この声が聞こえた人たちは合図と共に左右に散ってください!!」
ソニック音波によって光の粒が飛んでいくであろう軌道予測経路にいる人達に声を掛けていくと、盾を叩いて合図をしてくれる、前方から大きく何かを話している声が聞こえるので注意喚起もしてくれている。戦闘中であっても、合図を送り返す余裕はありそう!
よし!これで誰かに当たることは無いでしょ!
マリンさんに視線を向けると集中力が高まっているのか雰囲気が違う。
「構えて」
「おし!」
体を捻り真横水平に振る準備をしてくれる
構えられた杖に手を触れ、発射機構にアクセスし球体を開きつつ、先ほど見たマリンさんのスイングするスピードと球体が閉じる速度を計算…完了!うん、これくらいでいい、かな?
「いいよ!振って!」
「応さ!」
ブオっと音がし、全てのタイミングが完璧な状態で
「止めて!!」
「応!!」
ビタっと全身が止まると杖の先端から勢いよく光の粒が飛んでいく!!やった!けいさんどぉ
やっべ!!
「急いで離れて!!」
声を出すと戦士達が大慌てで左右に散らばり、空いた空間に光の粒が飛んでいき、突如、目の前にいる人が逃げていくのを何事かと左右を右往左往するように首をふっている人型に物凄い速さで吸い込まれる様に光の粒が飛んでいき
直撃すると…光の粒が弾け…周囲が輝き色んな音が響き渡る。
今まで一番小さいサイズでよかった…戦士達がそこそこ近い位置で爆発しちゃったよ。
結果的に誰も怪我して無さそうだし、直撃した人型は跡形もなく消し飛んでいるし、周囲に居た中型も巻き込まれ吹き飛んでいるから、結果良ければ全て良し!!
「「ぉ…おおおおおおおおおおおおお!?」」
胸をなでおろしていると、後ろから近くにいた術式班から凄い声が聞こえてくる。
そうだよね、驚くよね!私だって!私だって驚きだよ!
今まで弾速が遅かった光の粒がこんなに速く飛んでいくなんて想像してなかったもん!
上手くいけば速くなるかな?ってくらいを想像していたのに!!
…驚きと焦りが同時に湧き上がってきてるけどね、もう少し知らせるのが、遅かったら仲間の背中に直撃するところだったもんね、まさか、こんな、光の粒が速く飛んでいくなんて想像してなかったんだもん。
「すごいねぇ!!こんな、これは…気持ちがいい!としかいえねぇ!!最高じゃねぇか!」
はっはー!っと豪快な笑顔で嬉しそうにしているマリンさんが此方に振り向いて
「まだ弾はあるのかい!?」
次も打ちたくて仕方がないのか鼻を広げて興奮している!私も同じ気分!!
「ふひひ!まだまだあるぜぇ?」
最小の光の粒を連打しまくれば一瞬で敵を蹴散らせそうだぜ!!
湧き上がるワクワク感を何とか抑えつつ、冷静に間違えない様にね!こういうソワソワしてるときがね!怖いんだよね!実験の時もそう!視たい光景ばっかり意識がむいちゃってさ!っね?あるよね!油断大敵つってね!
「それじゃ、さっきの台座にセットして」
「ん?応、わかったさ」
姫様が触れなくてもいいのかい?って言いたげだけど、私を通すとしんどいの!
想定以上に辛かった!っていうか、若干さ、過ったんだよ!借金した状態を!
ちょ~っと怖かったかな、ちょ、っと?ううん、ぶっちゃけると心臓がひやっとするくらい怖かった、あの抜けていくような感覚…死を覚悟しそうになるのはちょっと。
台座にセットして魔力を流すスイッチをガチャっと入れてもらい、光の粒が精製されたのでスイッチを回してもらい魔力の流れを止めてもらう。
「台座から外してさっきと同じように体を捻って~」
「応さ!!」
返事が明るい、声だけでわかるよウキウキと待ち遠しいって感じてるのが伝わってくる。
腕を伸ばして台座から杖を握り軽々と持ち上げ、嬉しそうに待ち遠しかった玩具を眺める様に見つめながら移動していく。
心なしか足取りも軽やかに先ほど杖を振った場所、まるでバッターボックスに向かう選手の様に立つと直ぐに、体を捻ってバットを、おっと、杖を振る為に姿勢をセットしてくれるのでバットに触れ球体のセッティングをし終えると直ぐに声を出す!ピッチャー投げましたってね!
「振って」「応!」音を切る様な音に負けない様に「止めて!」「応!!」ブォっと風が巻き上がる様な音が瞬時に止めると、センター返し?ノンノン、強烈なピッチャー返し!!誰も捕球できない豪打の様に!小さな光の粒が剛速球となって飛んでいき…
弾ける!!
そして!ボウリングのピンの様に敵共が粉々に吹き飛ぶぅ!!
敵が粉々に吹き飛ぶシーンは何度見ても全身が震える!!
きぃぃもちぃぃ!!!さいっこーじゃぁん!!!
戦士達に合図は?要らないっての皆、二発目の準備をしているのを見て、マリンさんが構えたころには、背を向けて此方に向かって全速力で逃げてるっての!にしし!
「っしゃ!あんの獣共が吹き飛ぶ姿を見るのは。気持ちがいいねぇ!!スカっとするよ!!まるでビールを一気に飲み干したようさ!!」
「っだね!!言葉にできないよ!さぁ!どんどん行くよ!!」
「かぁー!楽しくなって来たねぇ!!吹き飛ばしてあげると、するさぁねぇ!!」
だぁっはっはっはっと二人で笑いながら全身を駆け抜けていく快感に二人は酔いしれていく。下手なお酒よりも依存しそうだよ…たまらないぃ!!
そこからはもう、無我夢中で光の粒を飛ばしまくった…
台座にセットして、球を準備して、バッターボックスに立ち、撃ってもらう。
単純作業に飽きが来ることなんて無く、この一連の流れを何度も何度も繰り返す!!
時には気持ち左に向いてもらったり、右に向いてもらったりして左右の角度だけ調節して光の豪打…まさに、捕球すれば死ぬしかない地獄の千本ノックの幕開けってね!!
何度も繰り返していると、敵の数がどんどんと減っていくので、今となっては戦士達の多くが近くで敵が吹き飛ぶ姿を地面に座りながら眺めている。時折、しねこらーっとか野次を飛ばしながらね、楽しそうにしてる。
そんな戦士達も、此方の近くに到着するまでの道中は、直ぐ近くを光の粒が通っていくのを見て、驚いたような悲鳴を上げながら逃げる様に此方に駆け寄ってきたけどね!
私達が当てるわけないじゃん!
後は、時折、魔道具持ちっぽい奴が居たとしても関係なし!敵が持ってる魔道具が壊れるかもなんて考えない!魔道具の有無なんてお構いなしに撃ち続けた!!
視力を強化しているから見えてたけど、魔道具らしきものも、一緒に弾け飛んでた。
たぶん、何か持ってたから魔道具だよね?この杖があれば他なんていらないから砕けちゃってもヨシ!
豪打によってかっとんでいく光の粒によって
大型種の虎が咆哮を上げている間に直撃し吹き飛び
熊タイプが我を忘れて突進してくるけれど、慣れてきた私達が狙えないわけがなくジャストミーーーートォ!!熊と言えど消し飛ぶ!!
狙うのは主に人型や大型種で、中型種には打ち込んで無いけれど、別に問題なし!
だって、容赦なく叩きこまれる爆発によって損傷し損耗してるから爆発の渦から抜け出たとしても、歴戦の戦士や騎士達からすればそんな状態じゃなくても敵じゃないのに余裕で対処できる。
ってか、片足だろうと体を引きずってまで、殺意を向けて突進しようとするのは寧ろ哀れだよ…満身創痍の猪共を憐みの心で介錯してくれる。
何度目か忘れてしまう程に熱中している豪打の一振りを終えると
「…吾輩、街に戻って休んでもよろしいか?」
他の戦士と同じく堂々と地面に座って頬杖を突きながら前方を眺めているカジカさんがため息交じりに悪態をつくのでちゃんと待機する理由を教えてあげよう!
「えっとね、戻るのならもう少し待って欲しいかな?敵の殲滅が終わったらこのトラックに戦利品を詰め込んで街まで戻るから、戻って休憩するのなら、そん時に一緒に仕留めた獲物を持って帰還して欲しいかな?」
簡単に簡潔に言えば後片付け手伝ってね!ってこと!
「むぅ、肉体労働が待っているのであるかぁ…姫様は効率的であるなぁ~」
不満そう。重労働じゃないでしょー?普段と変わらないじゃん、何を不貞腐れて…ん?もしかして、ただ、眺めているだけなのがつまらないのかも?
先の術式班だってそうだったし、もしかしたら、カジカさんもやってみたいって思ってるのかも?っていうか、カジカさんも出来る、のかな?どうだろう?試しに聞いてみよう。
「暇なら、マリンさんと同じように合図と共に杖を止めれるなら変わってもらっても良いよ?多少ズレても敵に飛んでいけばいいし、敵との距離もかなりあるから多少失敗しても良いよ?」
「何!?吾輩もそれを扱ってもいいのであるか!?」




