Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (108)
もっと、道が整備されてたら移動も楽なんだけどなぁ…
もしくは、いっその事、道なき道を走る為に、戦車ってやつを作れば良かったんだろうけれど~…残念なことにね実践に導入できるほどの基準に到達できなかった!
時間が、時間が無かったの!時間さえあれば作れる自信あるんだけどなぁ…
だから、既存の枠組みにあるトラックを改造するって選択肢を選んだんだけど~…
んー、思い返してみれば、頑張れば出来そうな気がしてきたんだけど?
いや、やっぱり無理、かな?寝ずに作れってのはそれはそれで、決戦兵器として不安な状態で仕上がりそうな気がするから、残念ながら時間が足りませんってことで…
試作品は何個か作ってみたんだけどね~…
時間がある時に造ってもらったんだけど、仕上がりを見て導入を諦めたんだよね。
馬力が足りなかったのか、想定以上に動きが遅かった。
機動力が欲しいのに、あの遅さはちょっとね?
初手から動かし続けて、常に、前線へと配置することが出来たら問題ないんだろうけどね~…
あの程度の装甲じゃ人型に接近されたらお終いだもんね、ただの鉄の棺桶になっちゃうから断念したんだよね~…
過去の実験を思い出してこの選択肢を選んだことをやや後悔してしまう程に、揺れが激しい。
地面から伝わってくる衝撃でお尻が割れるっての!
…はぁ、揺れるなぁ、つっても、揺れとは別でさ、速度を落とさないとね。
これ以上速度を出しても良いんだけど…ここから先は出来る限り音は控えめにしておきたいかな?危険地帯だから…
現にさ、目の前に何匹も出てくるんだよなぁ獣共が
まぁ、小さき獣を踏みつぶすても問題ないくらいの強度はあるからさ、問題なし
中型種えっと、猪と鹿は厳しいかな?つっても、前方にはスパイクを装備しているから、ある程度は倒せれるけれど~…大型種が出てきたら下りて対応しないとね~
目の前に敵が湧いて出ようと無視して突っ込んでいく。
「はいはい、どいてねーどかないとミンチだよー」
ごちゃどちゃと鈍い音が聞こえてくる。
っていうかさ、この質量が小型種よりも速く動いてくるんだから、敵からすれば怖いと思うんだけどなぁ?逃げろっての…普通の獣なら逃げるよね?
って、最初は思ったりもしたけれどさ、あれかな?敵からすれば未知すぎて、どうすればいいのかわからないから、微動だにせずに止まってる?
人が運転してるってわかってないのかも?
だとしたら…条件を満たせば、認識阻害の術式じゃなくても敵の目を欺くことは可能だったりするのかも?
っは、馬鹿らしい…ネズミや兎にそんな小細工なんていらねぇか!
小細工無用で質量のみで蹂躙し続けながら進んでいく。
鼻歌を歌いながら運転を続けていると、ふと感じる。
人の慣れっていうのものに。
驚かされちゃうよね~、そこそこ揺れ続けるのにさ、この揺れにも慣れてきちゃって、鼻歌を奏でてしまうんだもんね。
慣れたつっても、快適かって言うと快適じゃない、そこは変わらない。
運転するなら平地の方が揺れも少なくて快適だしね~…
その刹那、稲妻が走るッ!!
ん?まてよ、この広大な大地を運転の為だけに用いるってのはどうよ?
この大地が完全に手に入ったらさ、農地くらいしか使い道がないねって思ってたけど!?
車のレース専用にしても?いいかも!?
つってね、時折、湧いてくるアイディアを実現するためにも急がないとねっと!
激しい揺れを全身で感じながらクィーンのアクセルを踏み続ける
鼻歌を10曲ほど歌い終わるころ、遠目で敵と戦う一団が見えてくるので一度アクセルを離し減速してから、荷台に向けて声を掛ける
「奇襲を仕掛けるよ、ケーブルなどの準備しといてね」
「はい!」
うん、気持ちのいい返事!
「それじゃ行くよ」
「はい!」
離したアクセルを再度力を込めて踏み加速する。
右部隊に近づいていくと一部の戦士達が一瞬だけ此方を見て驚いたようなアクションをしている、ってことはさ、気が付いたみたいだね!
大声を叫べば聞こえそうな程に近づいてからトラックを止め、運転席のドアを開き流れる水の如く速さで下りて、腕を伸ばして荷台に飛び乗る
「ケーブル接続急いで!後、私にもね!」
「はい!」
背中を向けると直ぐに接続してくれる!!体に魔力が廻ってくる!…ん?
魔力が廻ってくるけど違和感がある?
不思議と何かと繋がっている様な誰かの意思を感じない?この魔石に魔力を込めたのがかなり前だからかな?それとも魔力を込めたのが医療班の人や研究塔の人達、術式班だから、かな?まぁいいか。
「魔道具は?」
「既にケーブルと接続済みです!」
OKOK!それじゃ奇襲の一発目といきますか!
何度も放ったから軌道予測は問題なし!
思考加速!
敵との距離計算!
着弾地点予測!
敵の動き、部隊の動きを把握し予測演算!
その間に杖型魔道具へ魔力を送るスイッチを入れて光の粒を精製してっと…
予測演算完了!!台座にある角度調整の歯車を回して、、、杖の角度調整…ヨシ!!
「合図送れる?」
「はい!」
一人が荷台から降りて荷台の側面に取り付けある弓を手に取り、空に向かって矢を放つとピュィィッィッィっと周囲に知らせる音が鳴り響く
「放つよ!!」
光の粒を放つと、ゆっくりと放物線を描きながら光の粒が飛んでいくのを確認!着弾を見てから移動何て遅い!次の地点に移動を開始しないと!
「移動するよ!…って、ケーブル外すのめんどいな…誰か運転できる?」
「俺が!」「私が!!」「「運転してみたい!!」」
全員から返事が返ってくるじゃん。
おっと?意外と皆、運転してみたかったんだね。
「誰でも良いよ!急いで!」
「年功序列!俺が運転する!」
一人が荷台から飛び降り運転席に移動するので運転したからこそ知ることが出来たこの車の特徴を伝えてあげないとね!
「普通の車と違って癖が強いからアクセルは踏み過ぎないでね!移動地点は右部隊の右奥!部隊の後ろ側を通って移動して!」
「かしこまり!おら!早く荷台に乗れ!移動するぜぃ!」
バンバンっとドアを叩いて弓で合図を送った人に語り掛けてるけど、運転席に座ると性格が荒くなる人?
「ズルいぞ!次は俺に運転させろよ!」
「次があればな!だっはっは!」
ちぇーずりーなーっと、弓を持ったまま、荷台に飛び乗ってくる。
研究塔の人達は皆、車の運転に慣れてるから問題は無いって思っていたけれど、違う意味で問題があるのかもしれない。
「動きますぜ!」
大きな声と共にクィーンが動き出し次の地点へと駆け出していく
荷台で風を感じながら、ふと、もう一つ感じた疑問を知りたくなってしまう。
「もしかしてさ、この杖も使ってみたかったりする?」
その一言で全員が一斉に
「もちろんです!!」
声を揃えてくる…撃って見たかったんだ、こんな、凶悪な魔道具。
あれ?これ、もしかしなくても使い方を説明して騎士を荷台に載せて護衛してもらいながら彼らに任せればよかった説、出てきてない?
術式班であれば力に溺れるような事なんて、無いだろうし、扱いも慣れてくれそうな気がするし?…失敗したかも?私が此方に出向かなくても良かったんじゃね?
「んじゃ全員に使い方を教えるから次、発射地点に到着したら教えるね、まずはそうだね…」
熱いまなざしがずっと刺さり続けていることだし、彼でいいや。
「君から行こうか!」
「僕からですか!?やった!!!」
ガッツポーズを取って嬉しそうにしてるのを他の人達が次は俺ですよね?っと声を荒げているし「ずりーぞ!俺も杖型魔道具触って見たかった!」運転席にも聞こえていたのか残念そうな声で会話に混ざってくる。
此処が戦場であり、死の大地であると忘れているかのように緊張感が欠落しているって感じるかもしれないけれどさ、術式班は何時だってこんな雰囲気だから咎める気はない。
目的の場所に近づく前に、視界の端が一瞬だけ輝き、私達を光が追い抜いていく、その直後に風が吹き荒れるって程でもないかな?頬を撫でる程度の風が通り抜けていく。
心地いい風、でも目が痛いから薄目になっちゃう。
風が通り抜けたので、光が弾けた方へと視線を向ける前に多くの歓声が沸き上がる
荷台の上だけじゃなく、周囲全てから
大きな歓声の先には四方に飛び散る肉片に土埃、その光景を見て背筋がゾクゾクとし喉が震え自然とぉぉっと声が漏れ何故か涙が溢れそうになる。
指先も震えている、湧き上がる衝動は歓喜?うん、歓喜!
初弾の時は木々が吹き飛んでいるだけで、衝撃が凄いとしか感想が出てこなかった
何発目かで敵が吹き飛んだのだろうなっていうのは空が落ちてくる物質でわかっていたけれど、実感が薄かった…
でも、これは違う!数多くの敵が吹き飛んでいる、その瞬間は、これこそは…
なんだろう?
この、何ていうのかな?感じたことのない湧き上がる感覚!歓喜としか表現できない!
これが、トリガーハッピーってやつなのかな!?
今まで感じたことのない衝撃が私の中で渦巻いて弾けて溢れ出そうになる!
ううん、涙として溢れてる!!
うおおおおっという雄たけびに近い叫び声を全身で感じていると「この辺りですか!?」運転席から大きな声が聞こえてくる。
「この辺りで良いよ!一旦止めて!」
直ぐに荷台を固定しているロープを握りしめると止まる衝撃で全身が大きく揺れる
「ちょっとまってね…」
視力を強化!
思考加速!
対象の距離、凡その計算完了、着弾予測時間
…完了!
敵の動き予測!
周囲の味方の状況・・把握!予測・完了!
「角度合わせるよ!」
杖が置かれている台座に付いている手回しの歯車のようなギアを回し角度を調整し
「角度合わせ良し!魔力装填」
「はい!」ガチャリと台座の中で音が聞こえヒィィンっと小さな唸る音が聞こえる。トラックに搭載している魔石から魔力が杖へと流れているのだろう
「ひ、姫様?此方、どうやって撃ちだすのでしょうか?」
おっと、撃ち方の説明がまだだった、杖型魔道具に触れて目を閉じて意識を集中して内部に魔力を通す、通す先に向けて欲しいっという、感覚を伝えると
「えっと…えっとおぉ…えっとぉ!?」
「魔力装填かっと!これ以上は爆発が大きくなるから、目安として光の粒はこの程度か、もう少し小さいサイズで精製する様に」
ガチャリと音がして魔力が流れるのを止め、杖の先端を見ると光の粒が球体の中を漂っている、大きさも光の輝きもちょうどいい感じ!
さて、そろそろ、感覚が術式に繋がったかな?
視線を向けなおすと、杖に触れて発射機構に繋がる術式に触れることが出来ていないのか、焦っている。
「ったくもー、まだまだだねー!ちみはー!」
肘で小突きながらにししっと笑い、杖に触れている手を重ね
「目を閉じて、感覚を覚えてね」
返事を待つ前に魔力を流し込むと杖の先端にある球体が開き
「っで、繋がった先を操作する、イメージを強く持って球体を奥から閉じて光の粒を強く押し出すイメージ」
「…」
返事がない、きっと集中力を高めているんだろうね
「こう、だ!!」
感覚が掴めたのか球体が勢いよく閉じ光の粒が杖の先端から放たれる
「そうそう!さっすが!」
よくできましたっと拍手して褒めてあげると、照れて嬉しそうにしている。
拍手しながら光の粒が飛んでいく方向を見ると
「音で知らせ…無くてもよさそうかも?」
此方が知らせる迄も無く、近くにいる戦士が大声で次が来るぞっと叫んでくれていて、その声を聴いた人が次へ伝える為に同じ内容を叫び、その音と共に光の粒が前方へと空を我が物顔で進んでいくのが見えた…




