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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (101)

あの少年の事、知ってるの?

───ええ、彼はね、本が好きなの


そうなんだ本が好きなんだ

───そうなの、難しい話を楽しそうに話してくれた


そっか、賢いんだね

───そうなの、文字を直ぐに覚えて、でもね、運動は苦手みたいなの


誰しも得意不得意があるよね

───そうなの、彼はね、考えるのが得意なの


そっか、それじゃ、もしかしたら、今はもういない司教様の跡継ぎだったり?

───ええ、彼なら司教様にも大司教様にも成れたと思うの


成れなかったんだね、それじゃ、書物に残された人じゃないね、誰なんだろう?

───彼はね、名前が無いの


孤児だから、かな?

───彼はね、幼い時に両親を亡くしているの、教会では名前を与えても良いのかまだ、決まっていないの


そっか、才があれば名前を与え、才が無ければ適当に名前を名乗らせる

───そうなの、だから、私もね、この時は彼の事をキミとか、アナタとか、名前を呼んだことが無いの


この先では、認められたの?

───うん、認められて、何処かに行っちゃった、ずっと隣でいて欲しいのに行っちゃった、何処にもいかないで、そう、鎖で繋ぎ止めれたら繋ぎ止めたかった、好きだった


そっか、認められたってことは、きっとより多くを学ぶために学院にでも放り込まれたのかもね

───そうなの、会いたくても、私達は


教会から出ることが出来ない、そして、彼は学院から出ることが出来ない、教会がねじ込んだのだから、自由なんて無い

───そうなの、でもね、最後に会いに来てくれたの


そっか、最後は会えたんだね

───うん、あえた、でも、鎖で縛ることはしなかったの、だってもう、私は動けなかったから


そっか

───でね、最後に彼が名前を教えてくれたの、名前を名付けてくれたのも学院の教授で凄く頭が良い人なの


そっか、もし、良かったら彼の名前、教えてもらってもいいかな?


─── ルィンティア わたしの わたしだけの ルィンティア 悲しそうな笑顔


真っ白な世界が突然真っ黒になる…ゆっくりと目を開ける…

ルィンティア…先生の名前だ、っということは、先生の過去を知る人の祈りが私に届いたって事か…うん、ごめんね、先生の最後を看取ってあげれなくて…


それにしても、どうして、このタイミングなのだろうか?

何か、この状況を打破する手段に繋がるのだろうか?

貴女は私に何を伝えたかったの?…目を閉じても反応が返ってくることは無い。


…きっと、これもまた、何かの道しるべとなるかもしれない。何か意味があるのだと…


教会関係…の記憶だから、フラさんではなく、お母さん、よりも叔母様が適任じゃないかってこと、かな?

フラさんに教会へと出向いてもらおうかと思ったけれど…この案件に関しては叔母様にお願いするのが良いんじゃないかな?って言いたかったのかな?そういうお告げ的な感じ?かな?


そう考えると凄くしっくりくる

教会関係者で術式に精通しているのは叔母様だし、扱っている術式も対象物から魔力を吸い取る術式だもの、下法…フラさんには陣に描かれている術式の出自に関しては一切説明していないし、完全に理解しているわけじゃない。

ってことは、フラさんではなく叔母様に出向いてもらう方が良いんじゃないかって言うお導きなのかもしれない


だとしても…叔母様に教会に出向いて欲しいっていうのかぁ…やだなぁ…協力してくれるかな?


う~んっと両腕を組んで首を傾げ乍らどうやって叔母様の首を縦に振らせるのか考えながら大型魔石が保管されている部屋から出ていき、これから先の展開を読み切ろうと、うーんっと唸りながら歩いていくと肩を叩かれる?なぁに?ぇ?お母さんだけだと魔道具の知識に難があるんじゃないかって?…確かに!


叔母様は術式に精通してるけれど、魔道具に関してはフラさんほど精通してないもんね。

…一人で向かって欲しいって言うよりも二人の方が、頷いてくれる、よね?


二人で向かって貰えばいいか?その方が確実じゃない?

「ありがとう名も無き弟」

見えない彼に手を振り、階段を登っていこうとすると呼び止められたような気がしたので振り返る。

「なに?お姉ちゃん忙しいんだけど?」

伝わってくる感情…どうやら、お冠のご様子だ。

何が不満なんだろう?…ぁ、ぇ、そう言われても…名前で呼んで欲しいって?

ここにきて唐突な苦手とするイベントが発生するなんて!!


…なぁんてね、名も無き弟にはお母さんさえ許可が出たらつけて欲しい名前があるんだよね。

「ここでなら、この名前を口に出しても良いよね?」


祈りを捧げ許しを請う、偉大なりし始祖様の名前を音として表現することに

「スゥピィアカラン…」

偉大なる始祖様が我々、寵愛の巫女にだけ語ってくれた大いなる名…

その名前からインスパイアし彼に授けたいと願ってしまった…ただ、幾ばくかの抵抗がある。


名も無き弟、彼の体はその始祖様に匹敵する様にと願い、我らの救世主へと至る存在へと成って欲しいという願いを押し付けてしまいそうで本当に彼にこの名前を授けても良いのだろうかと悩んだ、でも、これ以外に、救世主へと成長するであろう彼に相応しい名前が思い浮かばない

「偉大なる始祖様、彼の意思を紡ぎし子…貴方の名前は、スピカ…世界を救世し人類の槍となる運命の子」

名前を告げると嬉しそうな反応が伝わってくる

「貴女の名前はスピカ、お母さんがダメって言ったら、その時は受け入れてね?」

そんなことない?そうかな?…そうかも、貴方がそういうのならきっとそうだよね。

「スピカ…愛する弟、私の…お母さんの…叔母様の大切な子、そして…」


私の…ううん…正真正銘…人類最後の切り札…

貴方さえ生きて、正しく真っすぐに育ってくれたら人類の救世主と成る存在

人類の真なる希望、始祖様の如く圧倒的な力によってこの大地を、この星を悪しき獣から守る存在…


そして…粛清されし禍々しき魔女の技術をふんだんに使った私の罪…

断罪されてもおかしくない程の罪…

未来永劫苦しむような罰を与えられたとしても後悔はない

だって…私が望んだから…私が…私達が…人類が欲したから…


救ってくれるという希望を…


「でもね、そんな重い…想いを背負わせたくないから、スピカには自由に生きて欲しいから、お姉ちゃん頑張る!あんな奴ら全部倒しちゃんだから任せて!」


にししっと笑って言うと、悲しそうな感情?申し訳なさそうな感情?が、伝わってくる。

スピカは優しいね、大丈夫。一緒に闘えなくて申し訳ないなんて思う必要なんてないんだよ?


うん、泣かないで、その想いだけでお姉ちゃん頑張れるし、報われるから

「ごめんね、泣き止むまで傍に居てあげたいけれど、お姉ちゃんやることが山積みなんだ」

頷いてくれる…子供に我慢させるなんて良くないことだって、わかってる。傍に居てあげるのが一番だってわかってる。でも…戦況が戦況だから…


「いってくる、またね、スピカ」

平和な世界に成ったら一緒に遊ぼうね!


我慢する様に頷いてくれる…

心が締め付けられる感覚に引っ張られながらも階段を登っていき外に繋がるドアを開ける


「外は真っ暗」

予定としていたお風呂何てキャンセル!

こういう些細なことで作戦が崩れて全てが台無しになるってことを私は嫌でも知ってるからね!!

パタパタとスカートをなびかせて走っていく。夜遅くだからすれ違う人は殆どいない、お陰で誰にも邪魔っとと、声を掛けられる事も無く転送陣に辿り着くと眠そうに待機してる転送の陣を起動するための魔力係の人が慌てて立ち上がってくれるので

「起動して!」

「は、はい!」

声を掛けると直ぐに起動してくれる、転送陣で開かれたゲートを通り、お母さんが頑張って支えてくれている左サイドのセーフティエリアに到着し真っすぐに医療班のテントに入ると目が合いお母さんの手が止まり、私だと分かった瞬間

「何かあったの!?」

驚いた声と同時に駆け寄ろうとするのを手で制止し、首を横に振る。

薬の調合をしていたのか擂鉢で何かをすり潰していたみたいで邪魔しちゃったかも?起きてると思ってなかったんだよね。

「あったかと言えばあったかな。でも、緊急事態じゃないよ?危険な状況じゃないんだけど…そのー、うん、お願いしたいことがあってー…」

周囲を見渡すと回復の陣が起動しているし、陣を起動するための魔力係がウトウトと眠そうに此方を見ている。

この場で説明しても良いんだけど、どうだろう?

「…急ぎじゃないのね、ちょっとだけ、時間をいただいても?」

「薬の調合だよね?私も手伝うよ」

あら珍しいっという態度で出迎えてくれる、材料から見て何の薬を調合しているのかすぐに理解する、擂鉢で砕いている過程を見て即座に次の工程を進めていく


薬の調合も、私が寝てからお母さんが夜中にやっているのを見てきた。

起こさない様に気をつけながら…それをベッドで横になりながら薄眼でいつも見てたよ。


二人で黙々と調合を進めていき、薬を作り終える

「さてっと、申し訳ないけれど私は街に戻るわね、何かあればセレグ先生に指示を仰いで…」

此方をちらっと見てくる?…ぁ、通達来てないのかな?

「ぁ、大丈夫だよ。セレグさんは中央部隊から配属を病棟に変更しているから、たぶん、病棟に居てるか、自室で寝て…ないか、仮眠室で寝てると思うよ」

敵から奪った杖型の爆裂魔道具を使用する時点であそこは危険地帯になるから移動してもらってんだよね。

「っと言う事よ、何かあれば容赦なく叩き起こしちゃってね」

悪そうな顔で手を振ると、苦笑いで見送ってくれるので、私も後ろを付いて行って外に出る

テントの外に出ると

「それで、何があったの?小娘を寄こさないで貴女が来るってことは急ぎでしょ?でも」

薬の調合を手伝う時間があるってことよね?どういう状況?っと不思議そうにしているので

「えっとね、今すぐってわけじゃないんだけど、いや、やっぱり今すぐ…の方がいいかな?」

「貴女でも悩むってことは…頼みづらい内容ってことでしょ?当ててあげようかしら?目上の人に非常識な時間に非常識なことをお願いするからでしょ?」

っぐ、長い付き合いだから私の言動、一つ一つで理解されていく。

「っとなると…そうよね、考えられる行きつく先っとなると、奥様よねぇ…この時間に?奥様を起こし…っふ」

答えに辿り着き逃避するかのように月を見上げ乾いたら笑いが零れ落ちていく。

「それじゃ、街へ戻りましょうか」

ポンポンっと頭を撫でる様に触れてすぐに

「中央は激しかったのね、髪の毛から潤いが消えているわね…」

爆風に晒され続けてきたからねーしょうがない。

転送の陣を通り街へ帰還して会議室へと向かって歩いていくとお母さんも付いてきてくれる

フラさんが寝てるであろう自室へ向かわないで会議室に向かう時点で嫌な予感はしてるだろうなぁ…



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