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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (96)

後方支援部隊の近くに行くと、先ほどの流れを見ていた感想が零れ落ち、それには頷く以外の行動が出来ない。


「貴族ってやつは、何てめんどくさいんだろうね…」

はぁっと溜息を盛大に零しながら点検するための道具を受け取る。


御大層に飾られている杖型魔道具を後方支援部隊に運ばせて、中腰の姿勢で最終点検&確認を行っていく。

魔力を送信するためのケーブルが繋がっているのか、魔石から魔力が流れているのか、などなど…最終確認をしていると

「それで、この魔道具はどういった魔道具なのですか?」

後ろから声が聞こえてくる。声の雰囲気からして、興味が湧いたのかな?珍しい。

説明してあげたいけどー…

「んー…説明しづらいから、見てからのお楽しみでいいかな?」

「ぇ?…ぁ、はい。珍しいですね」

説明好きな私が説明をしないっていうのに驚いた様子が伝わってくる。

説明してあげたいんだけどねー、ピーカは判らなくなってくると明後日の方角を見て時が過ぎるのを待つから、説明しがいが無い!ってのと、純粋に全てを把握しているわけじゃないから、説明できない。憶測で語るのは、あんまり、好きじゃないかなー。

取り合えず、現状把握していることは、必要な魔力を流して杖の先端から光の粒が出てきて、それが対象に接触すると爆発するってくらいかな?

「あーでも、総員対ショック体制にはしておいて欲しいかな?」

「ばくはつ…するってことですか?」

その発言にすっと腕を伸ばしサムズアップで応えると

「…なるほど、口で説明するわけには行かない、危険な代物ってことですか。その意図を受け取りましたよ!」

「おっし!点検終わったよー!前に運んでー!動ける人は爆風を防ぐための暴風壁を運んでー!」

立ち上がって、周囲に知らせる為に声を出しながら腰をトントンっと叩く、背中に繋がっているケーブルの影響か、腰が痛いんだよなぁ!腰の痛みで思い出したけれど、アレの日が最近こないなぁ…だからかな?思い出しちゃった腰が痛いのって辛いよね…


おーー!!っと勇ましい声と共に後方支援部隊が目の前を走っていき準備を開始する。

この後発生する爆風を防ぐための壁としての役割を成す、板を地面に突き刺していく。

真っすぐに突き立てないで斜めにしてね!

板もね、ちゃんと燃えにくくする塗料を塗ってあるし、地面に突き刺す方に鉄板も仕込んで刺さりやすく三角形にして尖らせているし!持ちての部分に衝撃を支える為の鉄の棒を突き刺して固定するための場所もある!更に、風を受け流す為に平坦にせずにちょっと凹凸をつけて飛んでくる風の流れを分散する様に考慮してある!!


前々から用意していた切り札の一つ!!


…本当は、この杖を持って現れた人型と闘う時に後方支援部隊を守る為に用意しておいた暴風壁なんだけど、あんな突発的に出てくると思わなかったし、予想としては左奥の森周囲で襲撃されるんじゃないかなって予想していたから、出番が無かったんだよね。


あの敵が一瞬で倒せたのも、始祖様が…始祖様が残してくれた加護が協力してくれたおかげ。

加護の導きによって発動することが出来た天をも焦がすほどの火の渦を生み出した術によって冷静さを奪えたからじゃないかなって今になって思うよ。


「暴風壁設置完了しました!警護する騎士達も配置につきました!いつでもどうぞ!!」

感慨深く思慮にふけっていると知らせが来たので

「杖型魔道具を起動する!各員!衝撃波に備えて!!」

「応!」「はい!!」


魔力を送り出す魔道具のスイッチを入れると、魔石が光り輝き…一瞬で光が消え、杖の先端が薄っすらと光ろうとする。

中型魔石一つじゃ発動しないのは計算済み、慌てることなく魔石が交換され台座にセットされた魔石が直ぐに輝きだす…光が消えない。

視線を先端に向けると光の粒が精製されている、後は飛ばすだけ…


…飛ばすだけなんだけど、どうやって飛ばすのこれ?触ったら爆発するでしょ?

てっきり魔力を満たしてしまえば自動で射出されると思っていたんだけど…しないなぁ。


血の気が一気に引いていく、これ、やらかしたなぁっと…

精製された光の粒は先端にある球状の物質の中で光り輝いている。

杖に手を触れ私自ら杖に魔力を注ぎ、魔力を強引に送り出してみると光がより強く輝き始める

その力強い輝きに周囲からぉぉっとか、ひかってるっとか、言葉が溢れ出ているのが聞こえてくる、うーん、困った、周囲の視線は熱視線、興味津々なご様子


でもなぁ、私が思い描いていた状況じゃないんだよなぁ~…射出しないんだよなぁ…

他に魔力を込める場所が無いのか、調べようとしたとき一つの瞳が助言をしてくれる


”敵は放つとき、祈る様な仕草をしていた”


まさか、事前に射出するタイミングを決めるタイプ?

…そのタイミングを決める言語は?私…獣の言語なんて理解してないよ?


このまま、光が強く輝き続けていたら限界以上に魔力が籠ってしまって暴発しない?っという、不安を感じていると泥の中から歌声がせり上がってくる?

何の術式を使うの?…念動力とかだと、変な力場によって暴発しかねな…るほど、そっちか、試してみる価値はある!!


歌う…魔道具に触れて歌う…


勇気くんから教わった歌を…


魂の同調!杖に混在されし残滓を読み取ってやらぁ!!


視界が真っ白に染まり、杖の中から黒い…くろ…こころが…つたわってくる…


悲しい旋律…


そう、アナタも人が嫌いなんだね…騙されたの?…殺されたの?…全てが嫌になったんだ、だから、全部、目に映る全てを壊したかったんだね…


でもね、ここはアナタがいた世界じゃないの、異なる世界だよ?

私はアナタを穢したりしていない、私達はアナタに刃を向けられる道理は無いんだよ?

この世界で与えられた肉体は確かに、私達が壊した、でも、あなたは…あんな醜い姿で良かったの?


…うん、嫌だったんだね。騙されたんだね。こっちでも…

その願いは私が叶える、その痛みは私が受け止める、その悲しみは私が背負ってあげる

うん、辛かったよね?うん、寂しかったよね。でも、私の中なら大丈夫


だって…何人もの人の魂が私の中にあるから


おいで…いっしょにいこう…


こころが、ひとつ、ともに…祈りを捧げる…わたしもおなじだから


目を開ける、射出機構は理解した、本能的にだけど、たぶん、この辺りの術式に介入…

杖の中にある、術式に向けて祈りを捧げる様に魔力を通すと、球体の部分が無くなった?いや違う開いたんだ、そして直ぐに球体が閉じ押し出される様に光の粒が前方へと飛んでいく。

スピードが凄く遅いが確実に前へ飛んでいる。なるほど、開いた球体を閉じる勢いで飛ばす構造って事か、速さも閉じる速さでコントロールする仕組みってところかな?

何かの衝撃などによって光の粒を飛ばすわけじゃないのか。


杖の先端にある球体はあの光源が触れても爆発しない特殊な材質ってことか!

そうじゃん!あの球体の中に爆発する光の粒があるのなら、集まっていく過程で爆発するじゃん!爆発する光の粒を押しとどめ固める為の特殊素材ってことね!!


以外と、原始的構造!!


お?ぉぉ?っと周囲から遅くないか?っていう声が聞こえてくるので

「急いで笛矢を放って!総員対ショック体制!!」

その声と共に周囲に作戦が開始された合図を伝える激しい音が鳴る矢を上空に向けて放ってもらうと、ピュィィィイイィィイイイっと耳を塞ぎたくなるような高い音を出して周囲に知らせてくれる。

その音につい、全員が音に釣られる様に視線で追いかけているので、油断しないのっと、声を出すと慌てて盾を構え始めたので、視線を光の粒に向けると徐々に加速していたのか、沼地がある森林の奥へと吸い込まれ


ひかり が はじけた


体が吹き飛ばされそうになるほどの突風を杖型魔道具が設置されている台車に慌てて捕まって術式を発動して、風の鎧をまとって耐えたのは良いんだけど!?爆風が強すぎて完全に防げないかも!?髪の毛が風によってくしゃくしゃになっちゃう!?


爆風が通り抜けていき、目を開けることが出来る。

視界に映る世界は一瞬にして大きく変化している…正面を見て、自然と視線は空へと移動する。

魔道具から放たれた爆発、その衝撃はすさまじく、上空へと吹き飛ばされた木々の破片が何処まで飛んでいくのか…犬のように動くものを無意識に本能のままに目で追いかけると、私達の頭上を飛び越えて遥か後方へと飛ばされていくのを見送ってしまう。


吹き飛ばされていくものを見送った視線を大きく変化した大地をもう一度、見つめる為に恐る恐る前へと向け、失敗したなぁっと誰にも聞こえない様にミスを滑らせる。

「沼地に毒を入れるんじゃなかった…」

正面の一部がお椀上に凹んでるし、右側に至っては毒の沼地の表面を掠めて行ったのか、毒の飛沫がびっちゃりと飛び散り右側周囲の一部を汚染している…


多めに距離を取って発動して良かった、下手するとこっちにまで毒が飛び散って来たかも…

っていうか、魔力を込め過ぎたかも…


背筋に流れる冷や汗を忘れる為に、気持ちを切り替えて状況を確認!!


後方支援部隊に望遠鏡を持ってきてと合図を送り、持ってきてもらい、丁寧に足台も持ってきてくれたので足台に登り少し高い位置から望遠鏡を覗き込む。


右部隊はっと…たぶん、あのあたりに…

カジカさんがいる辺りに望遠鏡を向けると~…お?後ろ姿が見えた、あの様子だと、慌てて逃げているって感じかな?

あの様子からして、爆発を見てから慌てて逃げたって感じじゃないかな?


恐らく、笛の音を聞いて慌てて離れてくれたみたい!良かった!


左側へと望遠鏡を向けると森が邪魔で全部隊の様子が…把握しきれないけれど、お爺ちゃんらしき人が此方を指さしているように見える、あの様子だと被害は無さそうかな?


はぁ、よかった、味方が巻き込まれなくて…だとしても、順番が宜しくなかったかな?

んー、毒の投入は速かったかな?いやでも、でもなぁ?だよねぇ?毒を沼地に投入したからこそ杖を持った人型が出てきたかもしれないし…

うん!悩んだところで相手の動きが読めない以上致し方なし!

毒によって何処かの部隊に被害が出てないのなら良し!問題なし!



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