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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (94)

後方支援部隊と一緒に門をくぐって歩き続ける、左側に見える森は焼け落ちて火も燻ぶってはいないのだろう、視力を強化すればセーフティエリアがあるであろう場所が見せそうな気がする、でも、見えないのは認識阻害の術式がしっかりと機能している証拠。

私が知る死の大地とは風景が大きく変化している。

死の大地に一歩踏み込むと感じる見られている様な感覚もしない、周囲を見渡しても何処にも獣姿が無い、殺気を感じない、嗚呼、なんて快適な大地だこと!!

両腕を伸ばして深呼吸をすると”そうだね、思い出の土地を取り返してね”一瞬だけ世界が白く染まった気がした、でも、ほんの一瞬すぎて夢なのかどうかわからない

それに、見知らぬ人の声が聞こえた気がした…見知らぬ人なのに…何だろう、凄く…


「これは、姫様?何用で?」

太く重い音に我に返る。後ろを振り返ると、何もない。

…何だろう、凄く…いや、やめよう、不可思議な感覚に引っ張られると碌なことが無かった。

今は、過去の事よりも今の事を優先しないとね!!


「野暮用でね、なんつってね、私が直接赴くなんて決まってるでしょ?宰相は何方にいらっしゃいますか?可能であればご案内を願いたいのですが」

ゆっくりと頷き背中をみせ、歩いていく、付いてこいってことね、ほんっと王都騎士団はお堅いっていうか、愛想がないなー…一部の人達はそうじゃないんだけどね~。

んーむ、作戦を開始するときはもっと生き生きとした、やる気に満ちていたと感じていたんだけどなぁ?流石に…かな?


「この先だ、いけばわかるだろ」

指を刺された方に歩いていく、うん、戦場だっていうのに旗が見える王族の。

中央部隊の中枢が指揮をしている場所に向かって歩を進めていく…


歩きながら周囲の様子を観察していく、はっきり言って報連相が出来ていなかったのかと不安になる。


受け取った情報以上に戦場が混沌へと向かっていたってことかな?

王都騎士団と言えど、常に死の大地で戦うというのは…


見える範囲にいる騎士達の表情が…芳しくないなぁ。

目に映る多くの騎士達が常に顎を引き視線が地面に向けられ兜の隙間から見えた目が死んでいる。


私が通り過ぎても一瞥するだけで何も声を掛けてきたり、手を振って挨拶をしてくれたりしない。疲弊しきっている?余裕がない程に中央部隊は激戦だったのかな?


…ラアキさんを左側に移動させたのは失敗だったかもしれない。

宰相がこの部隊を鼓舞し続ける事なんて出来るわけがなかったか…


ちょっと宰相に文句なり、喝をいれるなり、性根を入れ替えて貰わないといけない状況かもしれないね?何処にいるのか何て直ぐにわかるよ、堂々と死の大地だっていうのに王家の旗を輝かせている根元でしょ?

旗の近くにはぎっしりと兵士達が、おっと、騎士達が気持ち背筋を伸ばし槍を持って隙間なく待機している。

「はいはい、ちょっと通るよー」

コンコンっと周囲にいる騎士の腰部分を叩くと慌てて道を開けてくれる。

普通であれば、絶対にこんな簡単に誰であろうと通してはいけないってのに、気が抜けているのか、憔悴しているのか…まったく!貴方を王へ導かなくてよかったって思っちゃうよ!

人を導く才能が皆無なんだよなぁこの人は!それでよく、ルの運命を背負った人物を守る運命を背負いし騎士だよ!実際は村の中で派手に動けないルの役目を背負った少女を助ける為の小間使いだっての!

どこで、歴史が歪んだのやら?…教会の小賢しい誰かだろうなぁ。


教会も、何でこの人を祭り上げようとしたんだろ?どう考えても無理だよね?っていうと、不敬にもほどがあるから言わないけれどさ、実際問題そうなんだよなぁ…

これを私の口から言うと完全に心が折れるから絶対に言わないけどね!!

旗の根元が見えると、一応鎧を着ているが兜を外し、堂々と椅子の背もたれにもたれ乍ら何か紙を眺めている?大きさ的に作戦書類じゃないな?何だろう?まぁいいや。

「ちゃんと、兵士に休憩取らせてるの?」

「誰、、、、、はい、勿論ですよ?」

声を掛けた一瞬、殺気を向けたな?ぉぉん?お前やんのか?ラアキさん部隊に所属させて突撃させんぞ?おおん?っていうか、瞬時にお付きの人に紙を渡したけれど何を見ていたんだ?ああん?お前の秘密を暴くぞ?

向けられた殺気を倍返しにしたくなる衝動を抑えながら

「本当に?休憩等の出陣シフトはそっちに任せたけれどさー、絶対にこれは守れって言ったよね?無理をさせない、英気を常に養って士気を落とすなって、筆頭騎士様にも言われてたよね?こんな状況をみられたら、尊敬する筆頭騎士様からお小言言われるよ?」

「…ぼ、僕としてはちゃんと、休憩を与えている、いますよ?」「ほぉ~ん?」

一瞬、素が見えかけたぞああん?おま、本当に兵士に気を使ってるの?ねぇ?ここで軽く説教したほうがいいの?周りの目なんて、私は気にしないよ?徹底的にへこますよ?

最終手段、お母さんを召喚してやろうか?ああん?

「ひ、姫様、いえ、最高司令官殿!」

膨れ上がる殺気に反応したのか宰相のすぐ傍に居る人物が慌てて声を掛けてくる

「我々は、4時間シフトで様子を見ながら各々休憩に出てもらっております、ですが」

ですが?ちゃんと休んでるのに、これってことはさ、気がたるんでるってことだよね?

ここが死の大地で、今行ってる作戦が人類の未来を左右する失敗が許されない闘いだっていうのがわかってないのかな?だとしたら、獣共よりも先に吹き飛ばすぞ?

「街周囲の森を焼き終わってから、前へ進むたびに襲撃してくる二足歩行めらが」

「それがどうしたの?他の部隊も同じだって言いたいけれど…あ~そっかそっか、私達と貴方達では普段、相手をする対象が違うから仕方がないってことか~、ふぅ~~ん」

グダグダと聞きたくも無い言い訳を、貴族特有の逃げ腰で並べてきやがったので即座に割って入って相手を敢えて挑発する言い方をすると周囲の騎士達から熱を感じる

「そうだよね、ごめんね。貴方達程の手練れであればねー…対象がただただ、硬くて速くて仕留めにくい有象無象だとはいえさ、普段想定していない闘い辛い相手だもんねー、私達とは訓練の仕方が違うから~…しょうがないってことか~、ごめんね?無理させちゃったかな?」

周囲の熱が膨れ上がる、っへ、王都の騎士達は言葉に敏感だねぇ?学園で教え込まれたのかな?相手を下に見て馬鹿にする言い回しを、ね!

これで、反応が何一つなければもういっちょ、かましてあげようと思ったら

「小娘が・・・」

聞き耳を立てていた一人の騎士が声を震わせている、ちょっとやりすぎたかなー?

声を出した相手の近くに行き、挑発する様に相手を下から覗き込み、っへっと笑って回れ右をして宰相の方へ振り返る。

お馬鹿さんなくせにお高く留まっていて頭が高い人に見降ろされても、私は何も感じないよ?

お前たちが雑魚ってのは知ってるからね…

「我々を!!」

「やめろ!それ以上口を開けば不敬罪で階級を落とすぞ!」

飛ばされそうになった殺気を一喝で消し飛ばす、ふーん、なんだ、ちゃんとやってんじゃん。

騎士達になめられているってわけでは、無さそうってことかな?

「申し訳ありません、彼らは今だ、この戦況を状況を理解していない愚か者だとは思っておりませんでした、どうか良しなに」

宰相が深々と頭を下げてくる

「別に、私は気にしないよ?でも、これで少しは弛んだ紐が引っ張られて結びなおせたんじゃない?」

にししっと、怒り、または、苛立ちを飛ばそうとしてきた相手に微笑みかけると、はっとして、兜を深く下げて申し訳ありませんでしたっと無礼を詫びてくる。


曲がりなりにも、目の前にいるのは王都が柱、宰相だもんね。

守るべき人を侮辱されるってのは騎士としての誉れを侮辱されるのと同義

自分たちの不甲斐ない姿を見て宰相が馬鹿にされているのだと気がついた人は宰相の事を想い頑張ろうとする、宰相が今まで頑張って築いてきた信頼関係が活きてくるよ?


っていうかそもそも、何でこんなにも緊張の糸が切れてんだ?

ちゃ~んと無理せず、休憩を取っているのにも関わらず、戦場っというか、自分たちの職場っていうか?持ち場?で、あんな風に不貞腐れているのは良くないよ?

宰相が咎めても言う事を聞いてないってわけでもない?それとも、咎めていなかった?咎める人が居ないからって気を抜くのは良くない!ここは戦場!油断大敵で怪我されたり命を落とすことだってあるんだからね!!

休むときはしっかりと休んで、気を引き締めるべき場所では引き締めて貰わないとね!!


その意図が伝わってくれたのか、少し距離を置いて此方の様子を伺っていた騎士がゆっくりと後ずさり去っていき、少し離れた場所から、気を付け!、っと、声が聞こえてくる。

きっと、気がたるんでいた騎士達に声を掛けに行ってくれたのだろう。

うんうん、ここは軍隊なんだから、気を引き締めてよね?


気を引き締めなおそうとしている人達の姿を見て、まだまだ、緒を引き締めて貰わないとね、最終決戦が近いんだから!こういう中盤に油断や気の弛みで作戦が失敗する事だってあるんだから!

「して、姫様、どうして此方に?」

宰相の口から出てきた内容に勘が悪いのだろうかと不安になってしまう。私が来る理由なんて多くも無いでしょうに?

「どうしても何も、届いてるでしょ?魔道具、それの使用許可を出しに来たんだよ」

「魔道具?とどいて、いまし…」

首を傾げる宰相その仕草を見た、お付きの人が、宰相にわかる様に手をパンパンと叩いてある方向へ指を刺し、その方角を見た宰相が思い出したのか

「ああ!…あの杖をですか?」

宰相が指さす方向に魔道具が贈り物かのように大層大事に家宝なのかと見間違うかの如く、綺麗に飾られている…縁起物か何かだと思ったのかな?

台座の上に起立させるようにセットしているから、何というか、うん、格式高い祭儀に用いる神具かな?ってくらい神々しいね…あれだけをみれば杖を飾っているようにしか見えない。

「せつめい…受けてないの?」

「…何方のでしょうか?」

本当に知らないといった表情!?腹芸が出来るけれど私に対してはしないと信じているから、ってことは!?まさかと思ったけれど!!説明されてない!?どういうこと!?

後ろを振り返ると皆、困惑している顔…ってことは、伝えには誰か向かったって事か、どういうことだろう?

…まぁいいや、実戦で見せるとしましょう!



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