Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (90)
「そうだよ、あのマリンさんだからこそ扱えれる超重量武器。鍛え上げた戦士でも両手で振り上げて振り下ろすので精一杯、あの剛腕だからこそ可能とする武器、あんな重量級を片手で振り回すことができるの彼女だけ、その特性に未来を見出した戦士長からの特別な贈り物」
「斧で敵の皮膚を裂き、槌で敵を砕く、剛腕と武器の重みによって生み出される凶悪な攻撃特化の武器って、ことじゃろ?」
「そうそう、勇気くんの持つ超重量大剣もコンセプトは一緒、切る、叩く、防ぐを一体化したって感じ。始まりは、勇気くんが求めていたんだよね、頑丈な敵の首を幾度も狙うのは効率が悪い、一瞬で生まれた隙、その一度で決め切る為に強烈な一撃で切り飛ばす武器が欲しいからって、理由で始まって造り上げたんだけどね…あれが欲しい、かぁ…」
あれと同等のものを用意するには、時間が無いかなー…もっと前に言ってくれればなぁ…
んー、でも、勇気くんのメインウェポンを槍に切り替えれば、バスターソードをお爺ちゃんに渡せるけど、あれは、最後の最後、最終決戦に備えて隠しておきたい切り札なんだよなぁ…
「言い淀むということは、用意できないっということじゃのぅ…残念じゃ」
考えを読まれたか、っていうか苦悶して言葉に詰まっている時点で察しちゃうよね。
「うん…ごめんね。それともう一つ、理由があるんだけど」
これは正直にいって良いのかとちらっとお母さんに視線を向けると親指を立てて笑顔でこっちを見ている、プライドを圧し折ってやれって事?叔母様じゃないよね?その意見…
「あれ、めちゃくちゃ重たいけれど、ラアキさん、いけるの?」
全盛期を抜けた人があれを扱いきれるとは思えれないんだよねぇ…
「孫がいけるのならわしが出来ない道理はないじゃろて?」
眉間に皺を寄せて睨まれちゃう、プライドが傷ついたかなぁ…
うん、その気持ちもわかるよ?だって、勇気くんって戦士達から見れば細身だけどさ、勇気くんだからこそ易々と扱えれているんだよ?
アレに向けて鍛錬も繰り返している…ううん、それだけじゃない彼だからこそ易々と扱えれるのは。こういってしまうと元も子も無いんだけど、才能なんだよね…
マリンさんが天性の肉体を持つように、勇気の肉体にはマリンさんと同じく他を凌駕している天性の才能が内包されている、その一つが、並外れた魔力量を保有しているってこと。
扱い方さえ知ることが出来たら無限の可能性を持つエネルギーを内包している勇気くんだからこそ、問題なく扱えれるんだよね…
そう、勇気くんの肉体は普通じゃない…彼は特別に近い。ある意味私の真逆。
流石は、偉大なる戦士長の血筋ってことかな?
ううん、違う、血を濃く保つように努力し続けてきた王族の血、王都が秘宝ってことかな?
父も母も王族の血筋だなんて最強すぎる血筋なんだよね…筆頭騎士の家系も王族と同じで血を守ってきた一族で血筋を守り通してきている、なんだけどね~ラアキさんだけ特殊なんだよねぇ…反動かな?愛した女がどんな血筋だろうと招き入れちゃってるのは、反動、なのかな?
どうして知っているのかって?調べ上げたんだよね…何年も掛けて。
ある研究を完成させるために…その研究していた内容、地球にある遺伝子、そこから着想を得て研究していった、ある因子を求めて…
見つけた法則、因子を…
私は、始祖様の因子って名付けている。
代を重ねても繋がれていく、引き継いだ才能って言う方がわかりやすいかな?
ほら、この大陸に住んでいる人の8割以上は始祖様の血が流れているじゃん?
ごく一部、始祖様の血がまったく流れていない人がいたことに驚いたけれど、8割くらいは始祖様の血が極僅かでも流れているんだよね。
それを調べ上げて、誰がどの才能を開花させるのか突き止めたんだよね、凡そだけどさ。
その結果分かったのが、勇気くんは全てに置いて秀でているって感じ。
だからこそ、肉体強化の術式を常時使っていても魔力が枯渇することが無いし、その反動にも耐えられることが出来る天性の肉体を持っている。
惜しむらくはその魔力を生かす術が主に肉体強化に回しているってことかな?
術式が全く使えないわけじゃないよ?術式を構築するための演算能力が並?よりも少し上、かな?ううん、特殊な訓練をし続けてきた術式部隊ほど優れてはいなかったってところかな?頑張れば術式部隊と並べそうな雰囲気は感じてはいるんだけど…違和感を感じるんだよなぁ…
っま、人には得意不得意があるってのは普通だよね。
それよりも、未来を見据えて何処を鍛えるのかって考えるとさ、長所を伸ばすべきだよね?ってことで、戦士としての能力開花を主にしてもらい続けてきた。
本人もそれを望んでいたから、ちょうどいいよね。
「んー…お孫さんはね、アレの為に訓練を積んできたし、何よりも身体強化の術式を極めているから出来るんだよね、はっきりいってね筋力に関しては、あの剛腕であり誰しもが認める天性の肉体を持つマリンさんをね、超えてるよ彼?」
その一言でまさか?っと驚いた表情をしている、わかるよ?私も最初はマリンさんを超えることは不可能だって思っていたんだけど…恐らく、偉大なる戦士長も瞬間的にマリンさんと同等かそれ以上の力を生み出して扱っていた可能性が高い。っま、皆から伝え聞いた話を元に推察しただけで、確証は無いんだけどね~
魔力による身体能力の向上、身体操作術、ありとあらゆる臓器を魔力と言う力でコーティングし強化することが出来たら…人の粋を外れることが出来る。それを彼は易々とやってのけている。まるで…まるで、魔力と意思疎通が取れるように?ううん、違う。
私達が息をするのと同じ、心臓が自動で動くのと一緒…
当たり前のように扱えている、そう感じさせるくらいに完璧なんだよね。
「彼は、人に対して使っていい力と使っていけない力をちゃんと考えてる、人には技量で挑んで、それ以外には無慈悲な力を用いている」
この言葉を聞いて思い当たることがあるのか、何処か遠い場所を見るかのように一点を見つめている。
「そりゃ、幼少期のころは力の差があるから使っていたかもしれないけれど、肉体が成長してからは人に対して対人型用の技能は使っていないよ?」
その言葉にラアキさんは驚いているが、頷いて納得し始めていく、それに対して、カジカさんは驚いていない。
「…そうか、薄々と感じてはおったが…あ奴め、わし相手にも手加減をしておったか…うむ、あいわかった!あの武器は諦めるとするわい、都合がつかんじゃどうしようもないしの、完全に我が手に馴染ませるのに時間が必要なのであれば致し方ないわい…うむ、わしの要件はしまいじゃ、残念じゃがのー、次はもうないんじゃよなぁ…予備は?あれば渡してくれるっか、はぁ、残念じゃ」
少し食い下がってから、一歩引いて近くにいるカジカさんに視線で合図を送ると
「む?吾輩であるか?…先も申した通り、幹部連中が揃って移動しておるので緊急事態かと思ってついて来ただけでして」
そうだったなっと頷いてから視線をお母さんに向けるのは良いんだけど、どうして毎回お母さんを見る時は顔じゃなくてやや下に視線を向けるの?そういうところが叔母様が嫌う理由じゃないのかな?注意したいが出来ないんだよなぁ…
「セーフティエリアから見えた火の柱を見て何事かと思ったのよ、それ程の術を行使したのだから魔力が足りていないだろうってことで…」
一瞬だけ視線を逸らした…二人には言えないよね。
「私はついて来ただけよ?あれはいったい、何事なのかってのは、まぁ純粋に興味が無いと言えば噓になるわね、あれ程の炎…望遠鏡で見ていて背筋が凍り付きそうな作戦が始まる何て聞いても居なかったもの」
お母さんは単純に医療班の団長として心配になってきてくれただけって事にしときたいよね。
「んー…んぅ…ぅーーん…」
状況を説明してあげたいけれど、頭の中に出てきた言葉が、前もって知っておかないといけない情報が無いと、信憑性が低く捉えられてしまう、素っ頓狂な話になるから、どう、どー、どう説明、いや、違うか?この二人に説明するのもね?どう切り抜けようか?
…うん、切り抜けるも何も、この二人が興味を抱いているとは思えれない
「ラアキさんとカジカさんは長ったらしい説明…聞きたい?」
「遠慮するのである」「いや、難しい話なら聞きたくないが?」
…うん!予想通り!説明は省こう!!指示を出してお開きにしよう!!
「うん、わかった!ラアキさんはこのまま休憩に入って、カジカさんは右部隊に伝令をお願い、沼地周辺は予定よりも早く燃やし尽くせそうだって」
「うむ!伝令受け取ったのである!吾輩は失礼するのである!」
普段しない敬礼をしてから足早に会議室から出ていく、まるで小難しい話から逃れたいと勉強を嫌がる弟みたいに…
あれ?ラアキさんもそれについていくのかと思ったら部屋にいる?どうしたの?っと意志を込めて視線を向けると
「何処で休憩を取るか自由じゃろ?どうせなら可憐な花の近くで休憩を取りたいと閑雅てしまうのが男として正しい事じゃろて?」
その一言でお母さんが一瞬だけ眉毛が動いて嫌そうな顔をしていた。
…この状況下で、この部屋にメイドちゃんが顔を出さないのはラアキさんが居るからだろうなぁ…会議室にいることを知らないわけないし…
徐に動いたと思ったら、会議室の椅子に座って狙いすましたかのように手を叩き音を出す
「ほれ、メイドの?いるんじゃろ?お茶を持ってきてくれ」
ドアの向こうに語り掛けると「失礼します」人数分のお茶をお盆に乗せたメイドちゃんが入ってくる…やっぱり居たんだ、っていうか、眉毛がピクピクと反応しているあたり、言いたいことがあるけれど言えないってことでストレスでも感じているのかな?
テーブルの上にお茶を置いてから「何かあればお申し付けください、ぁ、姫様限定で」頭を下げて棘を刺してから速やかに部屋から出ていく。
その姿を咎める気はしない、だって客人じゃないもんね、それにメイドちゃんの気持ちも理解できるから、この程度で咎めたりしない。苦手な人が二人もいる状況、逃げたくなるのはわかる、私も逃げたい。
お母さんもテーブルに置かれたお茶の前に座るので私も座ってお茶を一口飲んでから
「…説明、いる?」
最後の確認としてお母さんに声を掛けると、少し間を開けてから静かに頷いてくる。
たぶん、あの頷き方からしてお母さんが聞きたいのではなくて叔母様が聞きたいって感じかな?
叔母様も変わった、のかな?術式に興味を示すことが多い。




