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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (88)

なら、なら、策は…思考が加速しない!

少しでも援護できるように動けるようになりたいんだけど…体に力が入らない!!

いま、今できることを!

「周囲を警戒!他にも獣共が押し寄せてくる可能性はあるからね!!」

声を出したとしても当たり前の事しか言えない…次を予測演算出来ない!!

思考が遅い!!思考加速も抜けてる!!

「司令官が動けるようになるまで守り通すぞ!」「応!!」

「火の奥に、爆弾は届きそうか?」「はい!!いけます!!」

ラアキさんが私の言葉を代弁するかのように指示を出してくれる

視線を動かし状況を把握しようとするが、更なる光が弾け

物凄い爆風により体が飛ばされそうになる

「っく、何という…孫は…無事じゃな、あの盾…凄まじぃのう、あれほどの衝撃を二発直撃したとしても崩れる事が無いというのか」

風で揺らされている私を支える様に傍で盾を構えてくれるラアキさんに感謝したいけれど、そこに立たれると勇気くんが見えない!…ぅぅ、完全にお荷物状態!ダメな司令官みたいじゃん!!魔力の無い私なんてみそっかすだよぉ…って!ダメ!魔力欠乏症からくるネガティブな思考!気をつけないと持って行かれる!心を強く持たないと!


爆風が過ぎ去り何とか視線を勇気くんに向けると、燃え上がる炎の奥から人型が飛び出してくる!!

永遠と、炎の後ろから魔道具を使えば圧倒的有利だろうけれど、敵としても此方が見えない不安があったのだろう

敵が視界に映ったのなら!行動を起こさないと、このパターンであれば、弓兵が先手を打つはず!

敵が視界不良の炎の渦から抜け出てくるのを待ち続けていたのか、弓兵部隊が一斉に矢を放ち敵の体にワイヤーを巻き付けていく!訓練しておいた鋼鉄のワイヤーが括りつけられている特殊な弓矢!練度が活きてきてる!!

過去に苦汁を舐めさせられた経験が生きてる!あの手の厄介な敵は自由にさせちゃだめ!

「ほぅ?あの無駄のような訓練がここで活きるというのか…ふむ」

賢いラアキさんがどうして、限定的な装備や作戦を事前に用意していたのか疑問に感じるのは無理ないよね。最悪、色々と種を明かしてもいいかもしれないけれど、全て終わってからにして欲しいかな?

度重なるワイヤーショットによって敵が自由に身動きが取れなくなっていく、特に杖を持っている腕に絡みついたワイヤーを必死に藻掻き引きちぎろうとしている

藻掻きながらも、魔力を魔道具に送り出しているのか杖の先端に光が溜まっていくのが視え、警戒する様にと声を出す前に

激しい衝突音と共に敵の腕が折れる…

「なるほどのぅ、重さっというのも人以外では必要だと言う事か」

敵の腕を折ったのは勇気くんが持つ敵を断罪する為に造り出した金属の塊バスターソード

「あんなもん、使い道がないじゃろって馬鹿にしておったが…ふむ、俺も…わしも欲しくなるのぅロマン武器ってやつじゃと思うとったが、存外、あいつらと闘うのであれば…理にかなっておる」

敵の悲鳴が響き渡る…だが!腕を折られようが杖を離すことなく杖の先端に光が集まり今にも輝き出そうとしている!術式を理解していれば構築を阻害できるけれど!!あれの術式を理解できていない!!

瞳達が全力で演算をしてくれればいいんだけど、多くの瞳が薄めになって起きようとしてくれない!!

ダメ!魔道具に魔力が集まっていく!!光が弾け飛ぶ!…ことは無かった。

敵の腕に大量のワイヤーが巻き付いているのを戦士と騎士達が一斉に折れた箇所を起点として曲がってはいけない方向にワイヤーを引っ張り、敵の砕けた骨を使って敵の神経を切ったのか敵の手から杖が零れ落ちると先端に集まっていく光が消えていく…発動直前で防げた!!


流れるような連携に私が何かを言う必要なんて無いのだと感じてしまう。

「勝ちは見えたの、ほれ!見入っていないで敵が雪崩れ込んでくるぞ!爆弾も投げんかい!」

固唾をのんで見守っていた攻防に見惚れていた周囲の人達が慌てて動き出す。


周囲が動き出し、爆弾が投石機で投げられる頃には

勝鬨の叫び声が響き渡っていた…


「…なんだ、雑魚じゃん」


天高く掲げられる敵から奪った杖型の魔道具に、敵の首…

過去に私達を追い詰めた敵も、対処方法さえ確立してしまえばあっさりと倒せてしまう。

…本来であればこれが、これこそが正しい私の…私の願いによって与えられたルの力、未来を視た者が失敗を乗り越える力の使い方なのだろう…


「よし!杖を手に入れたぞ!悪いが爺さん!サクラをセーフティエリアに連れて行ってくれ!」

「わしらはまだ戦えるぞ?」

「わかってる!次の作戦の為に頭脳がいるんだよ!」

「そうか…略奪し使えるものは使う!蛮族の考えじゃが、戦争とはそういうものだ!良い判断をする!わかった!その意に応えよう!下がれるものは共に下がるぞ!」

「火が落ち着くまでは敵の数は大したことは無い!一度、投石部隊も下がってくれ!爺さんの部隊も全員下がって良いぞ!!次の作戦段階に移行する為に一度街に戻って仕度をしてくれ!!」

「応!!」

自分の無力さに打ちひしがれている間に私を置いて時計の針が進んでいく。

…思考を加速させないと、こんなにも現場って早く動くんだね。

「ほれ、一時撤退っとは違うか、支度をしに戻るぞい」

軽々と私を抱き上げて連れていかれる、本来であれば冷たいはずの鎧が熱を持っている。爆風を私から守ってくれたおかげ、迷惑ばっかりかけちゃってる。

前に出てた人達、かなり熱かったんじゃないかな?始祖様もとんでもない術を使わせてくるもんだよ…


気が付けば戦場が遠い場所のように感じてしまう

今も私が放った火は炎となって燃え広がっていく、勢いが止まることが無い、寧ろ、強くなっている。もしかしなくてもやりすぎた可能性が高い。

あそこまで、強い火を放つのなら一言、相談してくれもよかったんじゃないかってカジカさんに怒られてしまうかもしれないね。ぁぁ、やだなぁ、叱られたくないなぁ…


セーフティエリアに帰還したのも束の間、物凄い轟音に火の柱、何が起きたのかお母さんが凄い剣幕で質問してきた、ここで怒られたくないなぁ…

凄い剣幕のお母さんにここで説明するよりも一旦、街に帰ってからでもいいかと提案すると、頷いてくれたので、一緒に帰還した。


陣から出ると伝令班が居たので指示を出す。杖を術式研究所に運んで欲しいと。

敵から奪った戦利品を直ぐに術式研究所に運ばせて事前に用意してある魔道具と組み合わせて運用できるのか実験しないといけない。

その間に、説明しないと、いけないよね?ぅぅやだなぁ…


会議室に移動すると、お母さんとラアキさん、そして、どうしてここにいるのかわからないけれど、カジカさんも付いてきた?まさか、怒ってる?

「取り合えず、魔力を渡せばいいのかしら?」

お母さんの提案は嬉しいけれど、たぶん、今お母さんから魔力を貰ったらお母さんが干からびちゃう

「いらないの?でも、魔力が…そう、ケーブルを外さないでって言うのはそういう事ね、少し事情が読めたわ」

「ごめんね、申し出は嬉しいんだけど、今は、おかあ…団長でも厳しいと思う、それにもう少しだけ待って欲しいかな?魔力が全然、体に廻ってこないんだよね」

背中から伸びたケーブルは部屋の外にある魔石と繋がっていて、定期的に後方支援部隊が街に保管してある魔石と交換してくれている、何時かは前借した魔力を返し終わるんじゃないかな?それまでは、思考が人並みになっちゃう。あと、心がネガティブに引っ張られちゃう、もう少し、もう少し魔力が廻ってきたらネガティブな思考から脱せれると思う!…思いたい。

ちょっとずつ、心の芯が強く立ちあがろうと感じるので、取り合えず、会議を進めないと、まずは、無難なところ、ところ…カジカさんかな?

「それで、カジカさんは何の要件かな?右部隊で何か必要なモノでも?」

「いや、吾輩からは何も、先ほどまで飯を食って仮眠室に移動するところであって、うむ、はっきり言おう!状況が分からないのである!団長と筆頭騎士殿が司令官と一緒に会議室に向かっていくのを見て緊急事態と判断し付いてきただけである!」

カジカさんの意見を聞いて納得する。

なるほど、それはそうだよね、滅多にない組み合わせだもんね、緊急事態だって思っちゃうよね、右部隊を預かる幹部としてはそういう判断に至るよね、休憩中に申し訳・・・無い事ない!弱気になるな!うん、少しずつ曇っている思考が晴れてきている!

「緊急事態ではないよ、状況説明を求められているから説明する、だけ、なんだけど…団長にだけ説明すればいいかなって…ラアキさんは見てきたんだから説明っているのかな?」

「わしも、聞きたいことがある、答えてくれる範囲で良いからの?」

んげ…背筋が凍り付きそうな質問はやめてね?こんな土壇場で魔女裁判?止めてよ?こんな時に…異端審問なんてして欲しくないんだけど?筆頭騎士様が悪事を未然に防いできた、数々の悪魔信仰討伐物語は聞き及んでいるんだからね?

「安心せぇ、わしもそういった仕事は請け負っておったが、お主をその様な下衆とは思っとらん、どうせ、わしが知らぬ未知なる技術を持って知ったのか、はたまた、想定していたのかなんてな、どうでもいいわい。わしが知りたいのわ、孫が持っていた武器がわしも欲しいっということじゃ!鉄を固めただけじゃろ?なら、直ぐにでも、都合がつきそうな気がするのじゃが、どうなんじゃ?出来るのか?」


ぁ、そっち?欲しくなったの?っていうか、顔に出ちゃってたか、いけないいけない、何時だってポーカーフェイスってね!!

お爺ちゃんは王都を守る為の盾であり剣だもん、積み重ねてきた経歴を考えると、私を監視にしに来てるのでは?って勘ぐってしまう部分があるから仕方がないよね?

…信じているよ?情けない男とも仲が悪いのも、でも、先王に託されたとか何とか、そういう絆ってあるじゃん?あるかもしれないじゃん?可能性が1パーセントでもあれば、疑っちゃうよね?

「これ、顔に出とるぞ?以前も説明したが、わしは正真正銘、姫ちゃん派閥じゃ!あんな…王族の面汚しなんぞ守りとう無いわ!王は、王に相応しいのは」「ダメ!それ以上はダメ!火種を口に出すのは良くない!」

瞬時に言ってはいけない言葉が出てきそうになったので慌てて口を閉じさせる!

強めに言うと、ぐっと口を閉じ、そうじゃったと自身の迂闊な発言を戒める様に眉間に皺を寄せている。


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