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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (84)

コンコンっとノックされる音に意識が呼び起こされる…私の腕を掴んで動かされる?もう少し寝てたい…

…ベッドが軋む音がし、大きな物質がベッドから離れた為、その反動によってベッドが揺れる。揺れによって目が開くと自然と動く人影へと視線が吸い込まれていく…愛する人をぼんやりと眺めていると愛する人が、彼がドアに向かっているのを見て飛び起きる!しまった此処は勇気くんの部屋!

私はネグリジェ!勇気くんは薄着!!どうみても事後!!!

はわわっと情けない声を出しながら慌てて体を起こしてベッドから離れようとしたが

「はい?」寝ぼけた勇気くんがドアを開けると「ふぁ、その、へぁ…ひ、姫様、こ、こちらにぃ…ぁ…」しどろもどろになっているメイドちゃんの声が聞こえた時点で隠れるべきだった!

普段見せない寝ぼけた戦士長の姿に、ドアの隙間から見えたベッドの上で慌てている私…

一瞬だけ目が合ったから確実に見つかってる!これは、これは…完全に誤解された、よね。

いや、誤解じゃないんだけど、確実に、いや、でも、メイドちゃんならお母さんから聞いてそうだし、ぁぁ、もう、ぇ?ど…

混乱しつつも、他の私が計算高く提案してくれる。その提案に飛び乗ることにする!!

うん!開き直ろう!!私は大人の女性になりました!密かに二人で大人の夜を過ごしていますってことで通そう!そう振舞おう!!開き直ってしまえば根掘り葉掘り聞いてこまい!!

「部屋にいるよー!ごめんだけどさー!服持ってきてー!汚しちゃってさ!」

「ひゃ!?よごし、た?…は、はい!ぅぅ承りましたたぁ!!」

ドアの隙間から見えたメイドちゃんの顔が真っ赤に染まって慌てて私の部屋に向かって駆けだしていく音が部屋に響き渡る

そっとドアが閉められ

「…すまない、迂闊だった」

バツが悪そうな表情で謝られてしまう

「別にいいよ。メイドちゃんなら遅かれ早かれ?っていうかもう、知ってそうだし?」

「そうだな…ユキの事を知られない様にだけ気を付けて行けばよいか」

過ぎてしまったことは仕方がないって感じで受け止めている

「さて、今のうちに軽く打ち合わせしておこっか」

「それもそうだな、すまないが着替えさせてもらうぞ」

一言断ってから戦闘用の服装に着替えていく

私も着替えたいけれど、外着が泥だらけだからね、ネグリジェのままシーツにくるまって…メイドちゃんが服を持ってくるまで、横になっとこっと


片方は着替えながら片方はラグジュアリーな雰囲気でシーツに包まれながら会話する、されど、その状況で話す内容とは思えれない内容だった。


冷静に淡々と進めていく感情の無い作戦会議の途中でドアがノックされ、許可を出すとメイドちゃんが恐る恐る、中に入っても良いのかと心配そうに覗き込むが真剣に作戦会議をしているのだと理解すると、真面目な会話に水を差すわけには行かないと、きりっと表情を引き締め私の近くにきて、服を着替えさせてくれる。


着替えが終わり、脱いだ服を持って行こうとするメイドちゃんに洗濯籠に入れてある汚れた私の服も持って行ってっと声を掛けると脱衣所の入り口に置かれている服を見て驚いた表情をしたあと、こっちを一瞥し、もう一度、洗濯物を見て…困惑している。

その動きから伝わってくる邪念…

どんな?ぇ、まさかの外で?どうして?っという心の声が聞こえてきたような気がするけれど、放置!!


洗濯籠の中身を両手に抱えて部屋を出ていくときの表情は何も考えない、何も詮索しないっという無の表情だった。察しが良すぎるのも問題だよね?たぶん、間違えてるだろうけ・ど・ね!!


普通に考えたら、こんな状況下で二人が泥だらけになる程、外で遊ぶとは思わないでしょ?

っふ、今後からは、私を見る視線に変化が訪れていることでしょうね!!

別にいいけど。


「よし、方針は固まった、事前に出した策から発生するであろう可能性に…我々ならきっと対処は出来る」

此方の一手に対して敵が行ってくるであろう後の先…一手に対してどのように対処するのか、出来る限りの読める可能性に対抗する策は講じてある。各々の部隊にも後で通達を出しておかないとね


「いこっか」

立ち上がってドアに向かっていく最中、心配そうな表情で

「ああ…今後も、君の負担が…多い、大丈夫か?」

声を掛けてくれる、その問いかけに対して私も同じことを想っているよ

「勇気くんこそ…負担が多いけれど、いけるの?」

ちょっと挑発めいた発言に、此方の意図が伝わったのか、ふっと鼻で笑って

「問題などあるものか、だが…守りたい人を心配するという気持ちだけは受け取ってくれ」

頭を撫でられて…愁いを帯びた顔をしている。勇気くんは誰かを失いたくないのだろう。

安心して、貴方が守りたかった女性は過去の人、私は彼女と違うから。私は、大丈夫だよ。

彼の瞳に問いかけていると、自然と膝を曲げてくれるのでお互いの安全を求める様に、唇を重ね

「いこう」「うん」

愛し合う二人は、人類を憎み、滅ぼす事だけを考えている存在が待つ戦場へ…


の前に、私は私で寄っておきたい場所があるから、そこに顔を出してから行こうかな。

全部隊の仕度はとうに終えているだろうけれども…たぶん、これが最後になりそうな気がする。

寄るところがあると勇気くんに伝え、一人、地下の研究室へと下りていく。

懐かしい地下研究室、私と勇気くんとユキさんの研究室。

ずっと長い事ここに籠っていた、大きな試験管、中には、私よりも気持ち小さな…ん?…ん?あれ?大きくなってる、設定間違えたかな?…いや、設定変えてない、急成長してる?

…まぁ、私と違って普通の人は成長が早いのだろう。私基準で計算してた、かな?


試験管の中には、女性の体が膝を抱える様に丸まって漂っている。

…肉体は完成している、後は、魂、記憶、その二つを宿せばユキさんはこの世界に独立して動くことになる。

聖戦が始まる前にある程度の肉体は出来ていた。

でも、魂や記憶を宿らせることに…不安があった。


勇気くんと私が居ればたぶん、出来ないことは無かったと思う、多少の欠損が生まれる可能性があったけれども、出来る自信はあった。

…何故しなかったのか、理由は複数ある。

一つが、欠損するのが何処まで欠損するのかわからない

二つが、時期に戦いが激しくなる、そんなときに子供一人この街に突如現れても皆が困惑するだけ。

三つが…魂に関係する術式を構築すると…敵に邪魔されかねないっていう不安がある。

勇気くんが言うには、魂に干渉する何かしらの術を敵が持っている段階で、敵と接触した可能性があるユキの魂を外に出すというのは危険な気がする。

あの勇気くんが不安を抱えるということは現実味が強すぎると感じてしまった。


ごめんね。ユキさん、貴女の体、器は容易できているの。

でも、危険性がある以上、出来ないの。

敵がもつ魂に干渉する術を手に入れるか、術者を葬れば戦時中だろうが、直ぐにでも貴女に体を…女性としての人生を歩んでほしい。


この姿を見る度に思う

戦うための理由が何か…

大切な人を守る為には何が必要か…

無念を晴らす、多くの願い…

囚われし人達を救う…


復讐だけ、恨みを晴らすだけが戦う理由じゃないと。

多くの瞳が私の想いに呼応して、歌を歌い始める。

なんて、切ない旋律なのだろうか…


研究室の全てに捧げる…讃美歌でもない、鎮魂歌でもない、私達の歌を捧げ終え

決意を新たにし、皆が待つ戦場へと…肩を叩かれる?

「いるの?」

後ろを振り返るが…姿が見えない…感じる事も出来ない。

「アナタの体もね、出来上がりつつあるよ…最強の肉体がね…だから、安心してね。アナタは…始祖様になれるから」

そして…もしも、私が失敗したらこの世界を救ってほしい…

失敗する可能性を声にすることが出来ない。

「平和な世界では無用かもしれないけれど、アナタには…自由に生きて欲しいから、その代わり、善として生きてね?この星の…守りて、守り人…ううん、救世主になってね」

頷いてくれたような気がする

「いってくるね!でも、アナタよりも先にお姉ちゃんが救世主になるんだから!!」

にししっと笑ってから階段を駆け上がる!!

行こう!愛する旦那様が待ってる戦場へ!!


転送陣には、明日を願い、明日の為に戦うと誓った戦士達が祝詞を歌い精神を高めていた。

「お待たせ」

コンコンっと鎧をノックすると

「待っていないさ、時間通りだ…寄り道はもういいのか?」

「うん…何のために闘うのか、何の為に、生きるのか…確認して来た」

「そうか…俺も今、再確認しているところだ」

私の方へと一切視線を向けずに見つめ続ける、勇気くんが戦うための理由


その一つ…長年共に切磋琢磨した仲間を失わない

その一つ…人類に悪意しか抱かない魑魅魍魎を滅ぼし、敬愛する聖女様が目指した真なる平和を勝ち取る

その一つ…愛する人と共に未来を歩み為


伝わってくるよ、勇気くんの覚悟が、希望が…

うん…私も同じ、恨みを晴らしたいだけじゃない、明日を歩くために。

希望を抱くために前へ進む、大地を踏みしめる!


周囲を見渡すと、多くの物資が転送陣の前に置かれている。

切り札の一つを切る。あの箱の中は、本当に取り扱いが危険な物質が入っている…

それを持って死の大地を焦がしつくしてあげる!!


つっても、揺れたところで爆発するような品物じゃない。

その爆発力、ただの火薬と思うなかれってね…

ニトログリセリンを運びやすくする為に土の中に染み込ませたように

ちゃ~んっと、持ち運べるように細工してあるんだから!!


祝詞が歌い終わったのか、一斉に此方を見て敬礼してくるのかと思いきや膝をついて頭を垂れる…軍隊を通り越して王族じゃん…

「出るぞ!!」

「「応!!」」

そして、直ぐに王様らしく猛々しい掛け声をかける、長い言葉なんて必要ないんだね。


掛け声が街中に響き渡ると転送陣が起動しゲートが開く

その中に物資を運ぶ後方支援部隊が次々と入っていき、その後に戦士や騎士達が入っていく。

最後に、私と勇気くんが入っていく。


入る直前に後ろへ振り返ると

多くの人が手を振っていたり、敬礼していたり、祈りを捧げてくれていたりする。

皆に笑顔を残して私も陣の中に入っていく…


陣の先にはお母さんが待機してくれていて、私に魔力を捧げてくれる魔道具も準備万端…魔石の数も増やされている、手配通り!魔力が尽きない様に魔力を転送するための送信魔道具にセットするための魔石を大量に用意してもらっている!

ここから先は魔力の消費も桁違いに上がってくる、最終決戦まで、魔力がある程度残ってくれるように計算してはいるけれど、ここから先は…全力で森を焼く!!




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