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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (81)

んふぅっと、有り触れた日常の空間に満たされたことへの安堵の息を溢していると「隣失礼しますね、何かあればいつでもお声がけください」メイドちゃんの声が聞こえてきたので目を開き、視線を向けるとチェアの上に座っている。横になれるのに、横にならずに此方を見ながら座っている

「横になっても良いんだよ?動くときは声を掛けるから」

「いえ!本来であれば立って待つのがメイドとしての務めです!」

メイドらしい模範的な答えが返ってくる。

でも、それをしない、決まってる、私が嫌がるから、ってのを理解していてメイドとしての務め信念、そして、私が求めるものを考慮してのチェアに座って見守るってくれる。

だってさ、お風呂場だよ?一緒にお風呂に浸かってたりしてたんだよ?裸で傍で立ってろ何て逆に心休まらないっての。

まぁ、それが本来のメイドとしてのあるべき姿だから、メイドちゃんの意思も尊重してあげないとね。譲歩できるところは譲歩する。


「わかった…それじゃ、私が眠らない様に何か話をしてよ」

「・・・・ぇ?」

軽く無茶ぶりをしてみると、予想外の言葉に笑顔が張り付いたまま制止している。

「報告関係は!今は~い~ら、ない」

「ぅぐ…」

先手を取ってメイドちゃんの口から出てくるであろう内容を予測して言わせないようにする。

報告関係は後々、勇気くんがしてくれるだろうから、別に今はいらなーい。

どうせ、今の段階じゃ勇気くんが病室で話してくれた内容と大差ないでしょ?

「…では!前々から疑問に思っていたことをお聞きしてもよろしいでしょうか?」

何だろう?珍しい、疑問に感じていることを直ぐに聞きたがるメイドちゃんが温めている疑問?よっぽどの事かな?…色恋とかはわかんないよ?

「率直な疑問なのですが、どうして医療班のTOPの呼び名が団長なのですか?」

…ぁー、それ、私も幼い頃にお母さんに聞いた聞いた、懐かしい話題。

「この街の歴史になるけれど、聞きたい?面白くもなんともない話だよ?」

お母さんが私にしてくれた前振りをしても、頷いて聞きたがる。

なら、かる~っく説明してあげましょう。


短くまとめると三行で終わる!

死の50年の後に、多くの人が傷ついて困窮し、このままでは方々の村が壊滅してしまう。

かといって、方々の村には医者がいない。

全体的に見て、医者の数が足らないから王様が傷ついた人達を助ける為に領土など関係なく国の境を超えて活躍するための国境なき医師団を設立して、方々に派遣した

その流れのまま、医師団が死の街を担当した流れで、医師団が管理することから、医師団を取りまとめる団長ってポジションがこの街ではTOPだった。

そんな歴史的背景が残されていて、医療班っと名前を変えてもその流れを汲み、過去の医師たちに敬意を払って医療班のTOPは団長を名乗ることになってる!


…三行こえちった、っていうだけ。班長って名前に変えても良いんだけど、私もね、そういった歴史的背景があるのなら今更変えるのもねってなって、変える気がない。


「そんな経緯があったんですね」

「そうだよ、そして、徐々にこの街から医師たちが離れて行って、より濃く死の気配が漂う街になったんだっけ?後は、この街では怪我人が続出するから医者志望の学生が時折来ては人体じっけ…もとい、経験を積んで王都に帰るってのが多かったんだっけ?」

そんな悲しい歴史もお母さんから教えてもらった、そのお母さんも医療の父であるセレグさんから聞いたんだっけ?そのまた、セレグさんもセレグさんに医療を教えてくれた犯罪者から教えてもらったんだっけ?

だから、口頭での伝記になるから、どっか間違ってるかもしれないけれど、大体、あってるんじゃないかな?


「この街と言えど人が生活をしてきたのですから、歴史がありますよね」

「そうだよ、その中でも、とびっきり酷い状態だったのが医療の父であるセレグさんが生きてきた時代だからね?」

悲しそうな顔で時折語ってくれたけれど、本当に酷い時代だったと思う…

その中で必死に医療を覚え、誰かを救う為に全力で生きてきて、その中で研究塔の長だった、フラさんと結ばれて幸せになったんだから、彼の生きる力は、ずば抜けて高いよね。

「では、私達がこの街で新たな伝説を残せば後世に永遠と語り継がれるわけなんですよね」

…どういう風に語り継がれるのかって感じだよね、っていうか、その流れを続けちゃうとさ

「だとするとさー、術式研究所のTOPで女性だったら姫って呼ばれるようになるよ?たとえ、マリンさんのような姿をしていたとしてもだよ?」

過去の歴史を尊重するのであれば、そういう決まりが発生する。

その指摘にメイドちゃんが固まり、イメージが付いてしまったのか、首を横に振って

「…やめましょう、姫様は、ただ一人です!姫様の継承はなさらないでください!御身で最後としましょう」

小さな声で姫様のお姿が汚されますって囁くけれど、私はそこまでいってないからね?

「だねー、戦士長もさ、平和になったら…たぶん、この街に必要な役職じゃなくなる。名前を受け継ぐっていう風習も無くなるだろうね」

平和な世界に成れば戦うための役職は消えていく…人との争いは今後も起こり得るだろうけれども、この街だけでもいいから、そういうのとは縁を切りたいよね。

「ですね、では、研究塔のTOPが長っというのは、何かあるのですか?」

それは…聞いたことがあるような無いような、特に歴史的な背景ではなく、研究塔に長い事いて誰よりも長く研究しているからって言う理由だけだったような?

口ごもっていると、特に深い理由が無いのだとわかったのか

「こういった話を色んな人たちに語り継いでいきたいですね」

話題を〆てくれる、司会進行とかも上手な気配を感じるんだけど、前に出るの嫌なんだよなぁこの子、まぁ、育ちを考えれば致し方ないんだけどね。影に潜む様に教育されているんだもんね。

「そうだね、こういった事があったんだよって、平和な世界でね…歴史書でも作って後世に語り継いでいきたいよね」

未来を願うと自然とお腹に手を当ててしまう。

その仕草を見るとメイドちゃんの眉間に皺が寄り口元も小さく歪んでしまう。

「…平和な世界に成ればこの街でも子供を育てれますよね?」

「うん、そうなるように頑張ろう」

しみじみと未来を求める様に声を絞り出すと、涙が自然と溢れ流れ落ちていき、涙がチェアに向かって吸い込まれていくと

「「はい!!」」

周囲から力強い返事が聞こえてくる、その声に驚き目を大きく開いてしまう。

「…静かだと思ったら、皆、聞いてたんだね」

「みたいですね…」

大浴場にいる全員が明日を欲しているのだと伝わってきた。

反響する大きな声に、ふふっと笑ってしまう、メイドちゃんも目の端に雫を貯めながらも笑っている。明日を欲しがる私達から笑みが零れてしまう。


一頻り笑った後は

「体から熱も引いたし、もう少しお湯に浸かってから帰ろっか」

「はい、そうしましょう」

メイドちゃんに体を起こしてもらい、一緒にお湯に浸かる。

その間、誰も声を出すことなく静寂を楽しんだ…

お風呂の後は食堂で食事を済ませてから、病室のベッドで寝かせてもらった。

体も綺麗になり、食欲も満たされ、明日を生きる気力を分けてもらい完全虚脱状態で病室のベッドで熟睡していた…



ふと、目を覚ます。

何か物音がしたわけでもない。

誰かに呼ばれたわけでもない。

肩を叩かれたわけでもない。

本当に、ただ単に、いっぱい寝たから目が覚めたって感じ…

珍しい…目を瞑って見ても、二度寝できるような感覚じゃない。



上半身を起こしてみると寝る前に感じていた怠い感覚が完全に抜け落ちて、気分も爽快。

思考もクリア!いつの間にか着替えさせられていた病衣から普段着に着替えて…


どうしよう?

視線を窓に向けてみると、外は真っ暗…

早めに出撃してもいいんだけど、それをするとラアキさんが怒りそうだしなぁ…

非常事態であれば受け止めてくれるだろうけれど、そうじゃないのに何で来たんだってなるよね?


かといって…じっとしている事が出来ない。

何かこう、どう表現すればいいのかわからない。

単純に、落ち着かない…


落ち着かない感覚から逃げる様に?誘導させれる様に?自然と足が外へと向かって動き出し、病室を出る。

足音を出来るだけ出さない様に静かに廊下を歩き、外に出ると、予想通り、お月様が少し傾いてる、夜明けまであと3時間ってくらいかな?完全に深夜…


深夜なんだけれど、外には人が居て、各々が何かしらの作業をしている。

病室の前で月を眺めていると何人かが軽く挨拶をしてくれる。


挨拶がてら、軽く話を振ってみる。

何処の部署で今の状況を確認してみるけれど、何処も問題は無さそう。

熟睡している間に何か大きな動きがあるかと思ったら何もなし…か、それはそれで怖いんだけどね。


戦乙女部隊も宰相と共に森を焼きつつ、敵の殲滅に勤しんでいるし。

装備点検、整備担当の後方支援部隊の人が言うには、素材も問題ないし、王都で何年も鍛冶業を営んでいる王家御用達の職人たちも無理せずに頑張ってくれている。

食材の搬入も問題なし、備蓄してある食材から主に消費しつつ、日持ちする食材は備蓄に回していく、ローリングストックも問題なし。

飲み水も潤沢にある。

水を生み出す魔道具にセットしてある魔石には常に魔力が満たされている、原理としては単純に皆が魔力を注いでくれているから、魔力に余裕がある人達が寝る前に魔力を捧げてくれているおかげで、水に関しても余裕がある。有り余っている。


物資も問題なし、生産職も余裕がある、まだまだ、余裕を持って攻めることが出来る。

作戦概要としてそろそろ中盤に差し掛かる、それでいてこの余裕、人類が一丸となれば勝てない相手じゃない、幾ら先生と言えども同時に動かせれる駒には限りがありそうな気もしてきている。


ってことは、焦っているのは私だけってことかな?

…焦る気持ちはしょうがないよ。相手が能無し力押ししか出来ない相手だったら、焦らずじっくりと長期戦によって相手が苦しみ悲鳴を上げさせるように真綿で締め上げて、呼吸困難になるくらい徹底的に隙を与えず攻め続けて敵のボスを炙り出したりすることが出来るけれど…


相手に先生がいるってなると話は別なんだよなぁ…本当に厄介。

だからこそ!私は敵の下法を学ばないといけなかった!

死者の魂をどうやって自由自在に操ってるのか知ることが出来たら解呪の仕方もできるのに!!


辿り着くことが出来なかった。研究もしたけれど…到達できそうも無かった。



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