Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (75)
「頬を膨らませないの、はい、そういうと思って用意してあるわよ小娘がね」
小さな袋が置かれるので直ぐに中身をチェックすると四角い飴が何個も入ってる!!
直ぐに一つ掴んで口の中に放り込む、ぁぁ、純粋に砂糖だけを固めたやつだぁ…あまーい、おいしーい!!
脳に響き渡る砂糖の暴力によって頭が冴えわたり、小さな疑問に気が付く。
口の中で飴を転がしながらメイドちゃんが?っと呟くと
「そうよ、こういう状況を見越して葡萄ジュースもうがい薬も飴も貴女の為を想って運んできてくれたのよ、定時連絡なんて次いでよ次いで…」
ってことは、メイドちゃんも皆が死の大地に禁止している物を持ち込んでいるのを知ってたわけだ!…本気で私以外、みんな知ってる流れじゃないのこれ?
「ぁ、忘れてたわ、定時連絡を伝えます」
突如、真剣な声と表情に切り替えてくる、そうだった、和やかな雰囲気で忘れてしまいそうだった。
ついつい、家にいる時のような雰囲気で忘れてしまいそうになるここが戦場だという事をね!
それを思い出したのか、言葉の最後の方では気を引き締めて真剣な表情になる。
その姿はまさに、医療班を預かる団長って感じ。
「では、団長として指揮官である姫様に定時連絡です」
その一言で私も司令官としての心構えに切り替える。戦況を知らないことには策を考えれないってね!情報こそ全て!
「戦士マリンは、街に帰還して直ぐに大量の肉を摂取、後に50分ほどの仮眠予定」
目に浮かぶよ、旦那さんが愛する奥様の為に大量の肉を焼いているシーンがね。
「仮眠を取った後に出発予定…今頃は出発している頃と思われます。中央部隊である戦士長は森の一部を強行突破し姫様と合流しに向かわれました」
うん、こっちも連戦状態で大変だったから時間の感覚が狂ってて気が付かなかったけれど、今にして思えば想定よりも早くに勇気くんが合流してくれた。
「ここに姫様が戻ってくる過程で偵察班が姫様と戦士長が合流するのを目視で確認。戦士長は戦士マリンが帰還したことを知り戦況が動くと判断し予定を変更し合流を選ばれました。現在、森を焼くという作戦は中央部隊前線基地建築担当で在らせられる宰相が引き継ぎ行っています。右側部隊である戦士カジカ率いる部隊は罠の設置なども完了しセーフティエリアを警護しつつ戦士マリンが到着するのを待っております。この間も右部隊は常に敵が襲来し戦闘は徐々に激化していっているそうです」
うん、次の作戦を開始しようにも敵が多すぎて危険だと判断し守りに徹してくれている。危機回避能力の高さが彼の一番の持ち味だよね。欲を出して単独で沼地攻略に出ないって信じてたよ。
「中央の奥にある沼地を埋める為に必要な建築素材などの資材は運び終えてあります。戦士マリンが到着次第、右部隊が順次行動を開始すると思われます。後、地下に在る魔力保管大型魔石に関しては全て順調に光り輝いており魔力量の備蓄に関しては余裕があります…以上よ」
思ってた以上にちゃんとした定時連絡だった。
受け取った情報の中身に感心しちゃう。
本当に、メイドちゃんに伝令係を任せて良かった、ちゃんと私が把握しておきたい情報をきっちりと集めてきてくれている。
たぶん、他にもどうでもいい報告とかも渡されてそうだけどしっかりと取捨選択されてる!
「ぁ、後はね、愚痴としてだけど伝えておくわね、お義父様が暇だと言うので、ここに配属希望を出しているみたいね…彼の作戦ポジションを考えると、当初の予定通りにするのであれば、どうする?突っぱねる?」
最後の情報はお母さんが取捨選択するかどうか委ねられたっぽい感じかな?困った顔なんだけど綺麗な顔つってね。
さて、この報告受け取ったからには先を見据えて選択をしないといけない。
人か、獣か…何方がこの先に脅威となるのか…
ここがもしかしたらのターニングポイントだったりするのが人生ってわからないよね。私はその選択を何時も間違え続けてきたからこそ負け続け幾度となく辛酸をなめさせられ内臓が溶けるような程の苦痛を、惨たらしい仕打ちを受けてきた。
ラアキさんのポジションは今も悩んでる、実のところ悩み続けてきてるんだよね…
何度もラアキさんは私に打診してきてるってことは、想定以上に中央に余裕があるのかな?
お爺ちゃんが暇になるのも仕方がない。
この時に備えて密かに、いや、堂々と獣対策を施し続けてきた鍛えぬいた王都騎士団っというこの大陸最強の対人戦闘特化の歴史ある精鋭が集まっているからね。
物資に関しても街から近いから適度に休憩も取りやすいし敵が攻めてくるっていっても、現段階では出てきても中型種がメインだもんね。ってことは、宰相サイドは余裕が有り余ってるのかも?敵もそこまで攻め込めれていないと思うし、シャインスパークが想定以上の働きをしてくれている可能性もある、か…
ラアキさんと言う最強に近い駒を腐らせるよりも此方に来てもらった方が私達に余裕が生まれるのは確か、確かなんだけど…
王都には私達が苦戦しているなんて情報は流れていかないだろうし、王都からの危険を知らせる為に用意してある狼煙なども出ていないし…
うん、こんな状況で人が何かをしてくるとは思えれないか、それよりも、獣の方が何かしてくる可能性が高いよね?
なら…の前に、確認取らないとね、男と女のいざこざなんてここで見たくないよ!!
「お母さんはその、ラアキさんが傍に居ても嫌じゃない?ストレスにならない?」
「…私は大丈夫よ、別に確執があるわけでもないし、関係は良好よ?ただ、セクハラ視線が目障りなだけよ…流石にもう慣れたし諦めたわよ…」
二人だけの合図なのか、唐突に指をこめかみに当てて、とんとんっと左側のこめかみを指で叩き始める。
「対応は私がすれば我慢するって、貴女の叔母も納得したわよ」
どうやら許可が下りたみたい、理由は知らないけれど叔母様ってラアキさんの事嫌いなのか、苦手なのか、避けてるんだよね。
許可も出たので最後の最後、私の判断にゆだねられる状況。
頭の中に大きな盤上を引っ張り出して再確認する。
長考する事、10秒…瞳達の意見を頂戴し決める。
ん~…そうだよね、想定以上に左側で激しい衝突が発生しちゃったから地味に消耗しちゃってるし…戦力が欲しい所ではあるんだよね~…
っとなるとさ、私や勇気くんが休憩する隙を埋めれる人が欲しい。
ってなるとさ、ラアキさんしか、いないよね…
「わかった、ラアキさんに伝えて、信頼できる人達数名と共に此方に合流する様に」
「は!直ちに指令を遂行します」
司令官として次の一手を選択すると、医療班団長は直ぐに行動を開始する。
んだけど、その勢いのままテントから出るのかと思ったら、出入り口を開けると顔だけを出して誰かに指示を出してる。
外に出たらいいのに?持ち場に戻らなくても良いのかな?私の予定としては、少しばかり横になるだけだよ?いつも通り豪快に外に出て指示を出しに行くのに?
どうしてだろうと、ふと、視線を自分に向けてみて納得。
…あ、私が薄着だからかな?体のラインがぴっちりと出ちゃう格好だから、誰からに見られると良くないよね。ほら?私って誰かの奥様だしね?
旦那様以外に見られるのは良くないもんねっと、何時もの服を着てっと、戦闘服はボディラインでちゃうからね!気をつけないと、私の体を見ていいのは一人だけ!だよね。
「はい、指令を出してきたわよ、慕われてるわね貴女」
用意されている簡易ベッドの上で横になると当たり前のことを言われる
何を言ってるんだろうっという表情で当たり前のことを言う人を見つめていると
ベッドのすぐ横に椅子を持ってきて座って頭を撫でてくる
「お金があるから、知恵があるから、行動力があるから…それだけじゃないわよ、貴女は何時だって誰かの希望であろうとした、貴女は自分の価値が何かに利用できるから、利用できる価値がある、それだけって考えてそうだけど、その思考は忘れなさい」
諭すように子供を寝かしつける様に語り掛けてくる。
…昔を思い出すね、私が悩んでいる時にさりげなく教えを説いてくれる。
「最後になるとは思っていないわ、でもね、何があるのかわからないのがこの大地、忌まわしき獣達の楽園、この大地からすれば邪魔ものなのは人、邪魔者を死へと導く大地…後悔の無いようにね、話せるうちに話しておきたいのよ」
撫でられてくる手から色んな感情が伝わってくる。
昔から、お母さんは私が横になると色んな事を話してくれたよね。
私も…お母さんみたいに子供を寝かしつける日がくるといいなぁ…
「皆ね、幻想を抱いているのよ、白き聖女に…伝説の聖女伝説をね」
歴史を伝え聞いた側としては、誇張されているだけな気がするんだけどなぁ…
勇気くんの時代、人と人が争う戦争を止めた始まりの聖女様以外、何もしてないんだもん。
尾ひれがついただけだよ…っま?私は皆の生活を豊かにしたけどね?
「私はまがい物でも貴女は正当な後継者だものね、違うのよ、凡人とは違う、貴女が私達の前に来た瞬間から私達は貴女に釘付けだったのよ…貴女にはね、不思議と人を引き寄せる魅力があるのよ、能力とか、関係なしでね」
幼い頃の私だったら素直に信じれる、私は特別だって思っていたから。
でも、多くを知った、世界を知った、色んな人に出会った、今だからこそ、幼い頃に感じていた私が特別だって言うのはまがい物だってわかった。
私は、人に好かれる様な人じゃない
誰かを導くことなんて出来やしない
人の感情に寄り添う事なんて…出来やしない
私は知り過ぎた、人の醜さを、人の愚かさを…
私達が…命短し乙女達が苦悩して生きてきた、辛い生き様を知り過ぎちゃったんだもん…
だから、私は、誰かに利用されるだけ利用されてお終い
それでいい、その代わり…私が求める世界を押し付けさせてもらうよ?
利用されてあげるから、だから、私がしてきたことに対して賞賛だけを認めてあげる。絶対に後ろ指を指してこないでほしいかな~
…倫理や道徳を問われるとしてはいけない事ばっかりだもん
っま、その全てを知ってる人なんていないんだけどね…
一つの瞳が空を見上げる…
ごめん、知ってる存在なら一つだけあったね…
いいよ。アナタになら断罪されても受け止めてあげる。
私が断罪されることでこの世界が救われるのなら幾らでも断罪に来ていいからね?
その代わり!人として…人生を全うしてからにして欲しいかな?命短いんだもん、それくらいサービスしてくれてもいいよね?…なんつってね。
「お母さん、私はね、別に利用されても良いんだよ、私も一杯、い~~っぱい、利用して来たから、だからね、全てが平和になったらもっともっと自由気ままに制限なくやりたいことがしたい、色んな世界を見てみたい、愛する人と共に…」
頭を撫でられ続けていると少しずつ眠くなってくる、意識を泥の中に放り込むのではなく安心という暖かい陽だまりの中にいるみたいな感覚によって、安らかな夢の中へと誘われていく
「そう、良い願いじゃない、私も…平和になったら何をしようかしら?…未練があるとしたら、私達の未練、そうよね…子供が欲しいわね…愛する人の…」
…うん、その願いは…私が…叶えてあげる…
待っててね…
多くの瞳たちと共に陽だまりの中で眠る…




