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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (68)

愚者の両腕が天に向かって持ち上がる、だが、天には届くことは無い…

愚かな愚者を見下すように睨みつける。愚者は愚者らしく天を目指すなという意志を込めて。


完全に事切れたのか愚者の分際で天を掴もうとする拳が大地へと吸い寄せられるようにダランっと脱力し、拳が地に落ちる。

動かなくなった愚者から視線を外し鳴りやまない音のする方へと視線を向ける…

直ぐ近くで激しく止まることのない不協和音…

辺り一面に響き渡る打撃音が耳障り、調子に乗って鳴りやむことのない不協和音を奏でている複数のワーム共を睨みつける。あいつらは、自身の体を鞭として扱って土壁を叩いている。

この不協和音を生み出す動きが気持ち悪く心底不快な気持ちになり、苛立ちをも加速させる。


研究者として、奴らの動きを観測してしまう、常人であれば嫌悪感しか抱くことが無い見た目、気持ちが悪い物質だというのに見たくも無いのに観察してしまう…

鞭のように撓らせて生み出した衝撃から発生する音の規模からみて、一発一発の威力は凄まじいのだろう…

つい何時もの癖で冷静に状況を分析していると

後方支援部隊達を守る為に彼らを包み込む様に精製した土壁が徐々に崩れてきている!

思考を加速させているせいか、つい観察しちゃってる!そんな暇ないっての!!


地中から奇襲を仕掛けてきた、術者である急所である至近距離まで人型を運んできたワーム共も餌を求めて土壁を叩いている…弱き人を狙いやがって!雑魚共が!


雑魚と言えど、数が多いと厄介!数えるのも嫌気がさすほどのワーム!多方面からの攻撃!土壁で覆うだけでじゃ完全に破壊されていた!

魔力の消費は激しいけれど、土壁だけじゃなく障壁も同時展開しておいてよかった!

数の暴力を魔力障壁によって何とか耐えれているって感じ!


幾度となく繰り出される攻撃によって土壁の一部が壊れ隙間が出来ている。

その隙間から滲んだ輝きが見える…その輝きが放つのは強く生きようとする意志

眼前で空中で自身の体を鞭として爆発的な攻撃力を生み出す為に必要なうねる様な動作で撓らせている。

ワーム特有の全身を使った打撃が繰り出されるのを涙目で睨むように…ある種の覚悟を決めて見つめ続けている。


死を受け入れようとしている…

その覚悟を決めないで!命がけの一撃何てダメ!一人の命で一つのワームなんて釣り合わないからね!!!


土壁はギリギリ耐えてくれているけれど!中の人達の心の損耗が激しい!

いつ崩れるかわからない土壁、眼前に迫りくる凄まじい攻撃!

気持ちの悪い醜悪な見た目の気色悪い虫を見つめ続けている人達の心も土壁と等しく長くはもたない!急がないと!!障壁の弱点は防御壁が生み出されているか気が付きにくいって点なんだよね!彼らからすると土壁の内側に魔力障壁が展開されているなんて気が付いてないだろうからね!!


急いでワーム共を殲滅する!!脅威を除去するよ!!

状況把握何てしてないでさっさと攻撃すればいいのにっという愚痴が聞こえてきたような気がしたけれど、そんなの気にしない!集中するよ!!

敵を一網打尽にするために意識を敵の動きに向ける…

だが、敵の鞭のように撓る動きと醜悪で増悪な見た目の動きから生み出される響き渡る音が集中力を乱して、尚且つ、敵の動きを予測するのが困難を極めていく。

味方を傷つけず、一撃で一網打尽とするためには敵の動きを完全に予測しないといけないってのに!!

バチンバチンと鞭が空中で弾ける様な音の中に、一緒にセッションするかのようにバンバンっと打楽器の音が鳴りやまない…耳を塞ぎたくなるような不協和音だっての!!


不愉快な音のメロディに苛立ちが消えない…つい歯を食いしばってエナメル層を削ってしまう


っていうか、調子に乗るなっての!!

展開している土壁に意識を向けて集中して複数のワームの動きを予測演算!!

演算開始と同時に泥の中にある瞳たちが一斉に参加してくれる!!

これによって即座に演算が完了する!!ありがとう!!

ワームの胴体が土壁に当たる箇所に向けて術式設置!!


鞭のように撓らせて壁を壊し人を殺そうと全力で叩くために全身から生み出しているであろう力を利用する!複数同時箇所に設置した術式を完璧なタイミングで発動させる!!


ワームの体が土壁に当たる場所を予測演算済み!最も力強く叩くであろう瞬間にカウンターを発生させる!!


土壁の箇所を術式によって鋭い針のように尖らせるように隆起させる!!ぶち刺され!!


設置した術式によって土壁の一部を複数同時に鋭い針のように隆起させると土壁を攻撃していたワーム全ての胴体から汚らしい液体と共に針が飛び出す


土壁の一部をピンポイントで鋭く尖らせることによって土壁を壊そうと力を貯めて繰り出した自らの打撃によってワームの胴体が土の針で貫かれる!刺した程度であいつらは死なない!次の一手を直ぐ発動!!これで終わりじゃない!貫いた程度であいつらは止まらない!逃がすか!!


鋭い針で貫かれたワームの体が瞬時に針から逃れようとするのを防ぐ!

土壁から離れさせないために胴体を貫いた土の先端にセットしてある術式を発動させ先端の形状を変化させる!易々と抜けない様に釣り針のフックのように!アーチ状に精製する。


生み出し精製したのは、抜けないようにするため、だけじゃないよ!!


ワームの体よりも大きく広く左右に広がる様に大きなアーチを精製してからアーチの部分を土壁に向かって引き寄せる!!からのー!アーチがワームの体に当たる場所を鋭い刃へと形成させてぇ!念動力で土壁に引き寄せる圧力を更に加える!!!


お前らの胴体をたたっ切る!!


術式を発動させると、バツんっと大きな音が複数同時に広がり土壁の周囲にワームの体が飛び散る、その姿を見て脳裏に過る似た光景、水を撒いているホースを手放したかの様だった。

勢いよく水を流し続けるホースが如く全身をうねらせながら切断された箇所から体液を周囲にばら撒いていき…動かなくなる


ふぅ…取り合えず、視覚情報から得られる脅威は去ったかな?

目に見える脅威が動かくなったので、念のために空中から大地に向かってソナーを打つ…精度は落ちるけれど、地面に着地してから敵が迫ってくるのを知るよりかは、こっちの方が対処しやすいからね…


うん、わかる範囲からは…敵の反応らしきものは無い。

魔道具も壊したし、ワーム共が押し寄せてくることはもう無さそうかな?


もう大丈夫だろうと、後方支援部隊を守る為に形成した土壁と障壁を解除するとゆっくりと土壁が崩れていく。

崩れ行く土壁の中からは、後方支援部隊の人達が見える、その姿は涙を浮かべ歯を震わせながらも武器を構えている、武器と言ってもその手には素材をはぎ取る為や解体するために用いるナイフ…

獣共を相手どるには不安な小さなナイフが握られている…当然、恐怖で切っ先が震えて全身が笑っている。弱々しくあるけれども、恐怖で震えていたとしても!諦めないでいてくれるのだと伝わってくる。

戦うという心を崩さない為に己の行動によって己を鼓舞する様にナイフを握った震える腕をもう片方の手で握りしめて、例え自分が死んだとしても戦う!闘い続ける!無残に無意味に死なない少しでも一矢報いてやると言う決意と覚悟が伝わってくる


見えてくるのは後方支援部隊だけじゃない。

闘う術が小さなナイフと言う心許無い武器を構える人を守る為に、手に小さな杖を握りしめ、ありったけの魔力を杖の先端に込めて何時でも術式を発動させるために杖の先端を光らせている術式部隊の姿も見えるし、傷ついてもなお、立ち向かおうとする勇気ある騎士の姿も見える。

その姿は、盾を身に着けている上腕が人型の一撃によっておかしな方向に曲がってしまっていていても、痛みや恐怖に屈することなく決死の覚悟で歯を食いしばりながら片手剣を構え、騎士として絶対に守るという意志を瞳に宿らせている勇敢な騎士の姿が顕わになる。


各々が絶対に屈しない、死んだとしても一矢報いる死の覚悟と言う勇気を振り絞っている。単純に死を受け入れて諦めたりしていない。

その姿に心が満たされるのを感じる、私の判断が間違っていないのだと伝わってくる…

泥の中で複数の瞳が満足気に閉じていく…


よかった、彼らの心は折れていない


念動力によって生み出した力場を解除し、地上に着地すると光の柱がすぐ横を通り抜けていき私の体に魔力が流れ込んでくる

セーフティエリア近くで待機している人達も固唾をのみながら望遠鏡で見守ってくれていたんだね。欲しい時に魔力を補充してくれる!!


様々な液体によって潤っている大地の上を、雨が降った後にできる水たまりで遊ぶ子供達のように、びちゃびちゃと激しく音を出しながら、震えている人達が固まっている場所に向かって走ると…


一つの影が震えている人達と重なる!?


視線を直ぐに動かす!影を生み出している物質へ向けると片腕が無くなっても人への憎悪は尽きず己が未練、己が欲求を満たさんがために、飛び掛かろうとしている!?

残された腕には少しでも武器になると判断してなのか、未練からなのか、先端が砕かれ今に澪崩れてしまいそうな笛の残骸を握りしめた獣の形をした何かが満身創痍の支援部隊達に飛び掛かってくる…


己を傷つけた相手よりも、持たされた武具を破壊した相手よりも、憎い相手を置き去りにして?…


完全に、お前らのパターンから逸脱した動き…お前は…何だ?…誰だ?…

空中を駆ける片腕無き獣と


目が合う


憎い…憎い…憎い!人が憎い!!多くを殺す!多くを壊す!憎い!憎い憎い憎い!!

狂おしい程に叫び続ける憎悪、途切れることが出来ない怨讐の螺旋、満たされることのない渇きが伝わってくる


お前の奥から伝わる途切れることのない憎しみの螺旋…


泥の中にある瞳が触発される様に開き叫ぶ

…同じ感情を抱くからこそ、その感情には敏感だから…

泥の中から湧き上がる憎しみに私の心も触発される!!

その憎しみに応えよう!!私達だってお前たちが憎い!!!




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