Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (65)
元より死の大地、危険は承知…リスクは常に付きまとう。
小さな賭けを制してこそ敵の虚を突くことが出来る。
それに、開戦前の読みが外れていたとなると…
その方が危険っか…
浅いとはいえ長考した先に見えた二つの賭け、どちらに進んでも罠が待ち構えているだろうなっという不安が拭い切れない苦い思い出…
この懐かしい感覚に、つい、ふっと、笑みが零れてしまう。
幼き頃に先生が学びとして遊んでもらった戦略ゲームを思い出しちゃう。
蛇が出るかもね…突くか
お互い完璧ともいえる状況じゃないからこそ、先手が取れる!
敵の出現位置から私が来て欲しくない位置を再度、考えると左奥の森が一番怪しい!攻めよう!
作戦って言う程の策が思いついたわけでもないけれど、次の一手を導き出したので後方で待機している術式部隊にソニック音波で作戦を伝える
予定を早めて左奥にある森を焼き始める為に投石機の準備を進めて欲しいと
此方の指示が伝わったみたいで後方支援部隊が急いでセーフティエリアに向かって護衛の騎士と共に駆け出していく。予定では、勇気くんと合流してからだったものね。準備終わってないかもしれないから、少し時間が必要かもね。
その間に、此方に向かってきている敵を殲滅しちゃいましょう!
前方で中型種を殲滅している部隊に、後方支援部隊の支度が終わり次第、行軍を開始すると指示をだすと、敵を仕留めながらに各々が頷いたり盾の内側を柄で叩いて返事を返してくれる
。
先ほどまで感じていた士気が低下したという雰囲気が一瞬にして消え、鋭い緊張感へと高まっていくのを感じる。
皆も知っている、左奥の森には人型や大型種が数多く生息していることをね。
予定としては、現時点に残留して流れてくる敵を撃破しながら勇気くんの合流を待つ予定だったけれど…予定変更!このまま、ここで停滞しているのも時間の無駄だよね!
相手が挑発してくるのなら乗ってやろうじゃん、私達だけでも敵を殲滅できるほどの戦力は持ちえているってのを見せてやろうじゃん!
それにね、勇気くんが此方に到着してからじゃないと、この右奥にある沼地周辺を攻めるわけにはいかない…
戦いが始まる前に予測していたのが沼地に目的の魔道具を持った人型が潜伏していると睨んでいたけれど、読み間違えている可能性が出てきたし、予定よりも早くにそこを突けば右部隊に敵が雪崩れ込む可能性が高いから、まだ攻撃できないからね。
左奥は沼地を攻め切ってから攻めようと思っていたけれど…
開戦前に予測していた内容が外れているのであれば、沼地を攻めている隙を突かれる可能性が出てきてしまったからね。
違和感が正しいのであれば、左奥にちょっかいを出していないのに、左奥から波状攻撃を仕掛けてくるように中型種が飛び出てきたってのが凄く違和感を感じる。
何かしらの意図を感じて仕方がないってね。
誘われている、罠だってわかっていてもね。
前に出ないといけない時がある、一手先、二手先を読まないと先生に勝てない!
投石機の準備が終わるまでは、勇気くんが焼いている森から炙り出された敵と、騒ぎによって集まってくる沼知エリアから突撃してくる中型種や大型種を蹴散らしつつ、投石機が到着するまで待つとしましょう!
…無限の魔力で焼き尽くすっていう案もあるけれど、あれは護衛部隊が少ないと魔力が私に届けれなくなるから、現段階では左奥の森では稼働範囲外なんだよね。一応、投石機と一緒に中型の魔石を運んでと伝えているからある程度は闘えれるけどね、森を焼き尽くすことが出来るほど魔力が無限ってわけじゃない
うん、考えれば考えるほど、左奥がきな臭い!
準備が出来次第、左奥にある森に先手を打つ!!
「人型を確認!!」
視線を左奥の森へ向けた瞬間に、前で戦っている戦士の一人が大きな声で危険を知らせてくれる。
森を焼く前に、騒ぎを嗅ぎ付けて暴れに出てきた人型共を相手にしますか!!
気合を入れてどのタイプの人型が来たのか視力を強化しようとすると
「人型を更に確認!!」
更なる知らせが飛び込んでくる…
…読みが当たっていたかもしれない、左奥にいる?
そちらに進撃させない様に駒を動かしてない?っち、気付くのが遅かったか。
先生は私が気付いたころには動けなくさせてくる!一手遅かったかも!
「人型!更に確認!!」
その号令で確信に至る、私をここで釘付けにしたい何かがある!
この奥で何か準備してるでしょ!!
喉に手を当て、もう片方の手で親指と人差し指で輪っかを作り口の前にセットする
「各員!魔道具持ちがいる可能性が高い!最大限に警戒!見つけ次第、合図を出して!!」
「応!!!」
音声拡張術式で周囲の戦士や騎士達に聞こえる様に音を大きくして全体に危険性が高い事を伝える。
こうなったら、大きな音を出したところで何も変わらない暫くは激戦乱戦千日手になりそうだからね。
っち、相も変わらず、私は一手遅い!
こればっかりは仕方が無いってわかっている!
相手の方が絶対的に有利なポジションだもん!
それを塗り替えるのが戦術であり、規格外の戦略!
覆す為の切り札は山ほど用意してるんだから!!
背の低い私では背の高い騎士や戦士達が前に出ると奥が見えない、少しでも高い位置で敵を目視したいので土台を作る!全体を見通して尚且つ敵に狙われない程度のね!
身体強化で足を強化し、1メートルほど垂直に飛び即座に足元に土を盛り上げて足場を作る、たったの50センチくらいの高台だけど、それだけで、ある程度、奥が見える
高台に立って全体を見渡す為に視力を強化…
此方に休息接近してくる人型は三体
…一番近い奴は、あいつか…よく見るタイプ?ってことは、この状況下で切ってくるカードってなると自爆タイプの可能性が7割ってとこかな?
…二番手は?何処からどう見てもゴリラ、パワータイプの可能性が9割
…三番手は?手長タイプ…ん?手に何か持ってる!!この時点で考えられるケースなんて決まってる!魔道具持ち!!
先ほどと同じように音声拡張術式を展開し
「初手!自爆タイプ!各員最大限の警戒!」
「応!」
「二手!パワータイプ!応戦経験のある戦士を軸にして要警戒!」
「応!!」
「三手!魔道具持ち!!私が出る!!共についてきたい人は来て!!」
「応!!!」
即席の策と共に敵の情報を伝える
盛り上げた土から降りて、直ぐにつま先で地面を叩く…
分析完了、うん、鉄分とか色々と含んでる。
爪先から地質を調査するときに造った術式を放ち、瞬時にある程度の成分分析を終わらせる。
過去に何度か地質調査として死の大地の土を掘ってきてもらって調べているから、ある程度、何の成分が含まれているか調査済みだけど、念のためにってね。
後ろに振り返ってソニック音波を飛ばす
「魔力を送って!」
術式部隊に、これから起こる乱戦に備えて魔力が必要だと伝えてから
術式を脳内で瞬時に構築する!!
始祖様の術式は消耗が激しいから、連戦時には向いてない!
ここは、私達が開発した…伝えられてきた、受け継いできたルの術式を行使する!!
再度、跳躍するために身体強化を施し、更に念動力で自身をより高い位置に飛ばし先ほどと同じように足場として土壁を生みだし2メートルくらいの高台を精製し、そこに着地すると
目が合う
今日はお日柄も良く晴天なり!殺しあうには良い日だね!!
こんにちは!さようなら!!!
視線を通して挨拶をしたのに無作法にも挨拶を返すことなく、高台にいる私に向かって前方で乱戦中の戦士達を無視するかのように戦士達の上空を飛び越える様に大きく跳躍して飛んでこようとする無礼者には罰を与える!!
無礼者に目掛けて、ルの力を解放する!願いを込める!!
歌って!
愛する人から離れたくない願いをここに!!
一つの目が開き歌う
大地から天空を飛ぶ鳥であろうと逃がさない程の速さで鎖が飛びだす、まるで一つの腕が伸びていくように鎖が此方に向かって跳躍した人型に絡みついていき
空中から大地へと吸い寄せられるように地面へと落とされ、鎖によって拘束された無礼者に
歌って!
救いをもたらしてくれた愛する人が飛び立って欲しくない願いをここに!
一つの目が開き歌う
念動力によって敵の内部にある自爆機構を掴み作動させない様に封印術式を施して封じる
「自爆機構を封じた!首を落として!!」
号令を出すと地面に叩き落され鎖によって拘束された人型に止めを刺してと声を出す前にすでに向かって駆けだしていた戦士二名が左右から手に持っている槍の先端を地面に張り付けられている敵の首元と地面の隙間に先端を突き刺し、お互いの槍を鋏のように交差させるようにお互いの方向へと持ち手を投げ、投げられてきた持ち手を握ると刃の部分をクロスさせるように敵の首に当て槍の持ち手を地面に向かって叩きつける様に全身の体重+筋肉によって押し込むと敵の首が飛びはしないが半分以上を切り裂き、ゴギっと骨が砕ける音が戦場に響き渡る
普通に振り下ろすようにだと槍の先端じゃ切れないし、近寄りすぎると自爆タイプだと危険だから斧や槌で攻撃できない、戦士達もしっかりと過去の経験からどの得物で迎え討てばいいのか細かい指示無くても各々が判断して行動してくれるのが助かる!!
それでも、甘い部分があるので指摘する
「油断しない!切り裂いて露になった部分を槍で刺して首と胴体を分離させる!」
「応!」
地面に向かって叩きつける様にした槍先が反動で浮き上がっているので槍の切っ先を制御する様に力を込め両サイドから先ほどの一撃で切り裂いて皮膚が裂けた場所に目掛けて槍を突き刺すと鎖で動きが封じられていてもどうにかして動こうと藻掻いていた人型が完全に動かなくなり、首が胴体から離れ転がっていく
自爆タイプの怖い所は首を撥ね飛ばす直前に自爆機構を作動させて爆発するけれど、その兆候も無し!封印術式がしっかりと作用している!次!
「第二!パワータイプが来るよ!!」
「応!!」
声を出して警戒を促すのとほぼ同時にドロップキックで突っ込んでくる!
自爆タイプを仕留めてすぐだってのに!?
想定よりも早くパワータイプが接近している!?
槍を持った二人の戦士は手に持った槍を前に伸ばして敵のドロップキックを受け止める様に尚且つ、あわよくば先端でも敵に刺さればよいと、槍で受け止めようとするが固い皮膚によって槍の先端が刺さるどころか重量と衝撃が凄まじく槍の持ち手が悲鳴を上げるような音を立てて曲がってしまう。
即座に使えなくなってしまった得物をその場に捨て、戦士達は盾を構えながらバックステップでドロップキックで突っ込んできたパワータイプから距離を取る
パワータイプも着地と同時に跳躍し此方を警戒する様に後方へと飛ぶ
っち、しっかりと警戒してやがるか。思考まで力で埋め尽くして全てを力業で乗り切ろうとしろっての!




