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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (64)

注意を向けると、死んだ死骸の上をぐちゃぐちゃと音を出しながら此方に向かって突進してくる熊タイプと目が合うと、私の視線が気に喰わないのか瞬時に空気を震わせるほどの雄たけびをあげる。


咆哮しながら突進してくるなんて勇ましいじゃん


っま、策も何もなしに、こんな開けた場所で真っすぐに突進してくるのは蛮勇じゃなくてただの愚かなりし獣だけどね、大型種、圧倒的身体能力に差があるからってね、真っすぐ突っ込んでくるなんて知恵無き獣だって嘲笑うのも仕方がない、そんな奴らを見てきたから、古い騎士達は作戦を考えようとしない。それじゃダメだっての!


そして、敵の立場を考えると、敵からすれば自分たちの同胞を蹂躙して来た相手は何時だって強固で屈強なりし戦士達、死の大地には己の全てをぶつけないと勝てない様な相手しかいないってのが向こうの流儀なのかもね。

その大地に、小さくか弱き女性が鎧も装備せずに立っているのが気に喰わないってのも、あの咆哮には含まれているのかもね?


っま、お前たちの流儀や考えなんて知ったこっちゃないけどな!!


鋭い咆哮と共に接近してくる熊タイプを迎え討つために私の前に騎士や戦士達が立って守ろうとしてくれる。その守ろうとしてくれる意志を尊重する、大丈夫だよっと一声かけると離れてくれる。


敵の手が届くほどに接近されたのなら考えるけれど、こんなにも距離があるんだから、何も問題ない。術士相手に自分の位置を知らせながら接近してくる馬鹿相手に後れを取るわけがない。


冷静に分析すると熊タイプは確かに厄介だよ?

力も強いしタフで毛皮も分厚く骨も硬い、執着心が半端じゃない、ある意味人型って言っても過言ではない。


でもね、所詮は獣、接近されない限り私の敵じゃない


一本の針をサイドポーチから取り出して念動力で持ち上げて空中に固定する。

更に、針の周囲に念動力で作った力場を精製し形状を筒状に変化させる。

筒状に生み出した力場の内部構造を螺旋状へと変形させて力場を固定、針の根元に空気を圧縮!照準を合わせる!


視力を強化し、敵との距離を測り、弾速&弾道を予測演算する

ある程度、弾速が無いと敵に避けられるし敵の皮膚を貫けないからね!


狙う場所は一点のみ!熊にとって柔らかい場所!

注射針と言えど、骨に刺さる程、強固な素材じゃないからね!


計算終わり!狙い撃つぜ!!

圧縮した空気を解き放つ!


パァンっと激しい音と風が周囲に発生すると針が目にも止まらない速さで飛んでいく。


無限の魔力を得てからこっそりと練習してきてあるから何も問題なく撃ち出せている。

新しく開発した術式の一つ!

地球にある銃っという道具を参考にして生み出した術式!新しいカードの一つ!!圧縮された空気を解放することで爆発的勢いによって撃ちだす術式!!


それだけじゃない!ちゃんと銃の構造を参考にしてあるよ!

銃身構造を意識して筒のように生み出した力場の中は螺旋を描く様になっている。貫通力を高めるためにね!!


撃ちだしたときに弾丸となる針が貫通力を高める為に回転する様に螺旋を描き敵に向かって飛んでいく!

強化した視力は針の軌道をしっかりと映してくれるから着弾状況もしっかりと見えた!着弾を確認!!

熊タイプなどの大型種は表皮が硬いけれど、唯一刺さりやすい皮膚の部分!綺麗に鼻先へと針が刺さるのが見えた。


これであいつはもう何も出来なくなる。


針のサイズそのもので言えば小さいよ?その程度の針で敵を殺せるわけがない?うん、殺す為の道具じゃないからね。

針の長さも小指程度、針の先端は普通の注射針よりか、少し太い程度、撃ちだす構造上の為、根元はやや太く頑丈に作ってある。


鏃の様な大きく在る必要性は無い、その程度で十分。

だって、針の中に仕込んである毒が研究の末に生み出した激毒だもん。

敵の体内にこの毒が入ってしまえばね…お前たちを無力化する事なんて容易いっての。


刺さると同時に敵の体内に毒を噴出するような勢いで体内に流し込まれる様に作ってある


今頃、鼻先から注入された激毒が敵の体内を駆け巡っているだろうね。

此方に来る前に敵の動きは…


強化された視力に映し出される毒が回ってきた敵の動きが


予想通り、雄たけびを上げながら突進してきた獣が急に立ち止まった。

先ほどまで、荒々しく猛ていたはずなのに、そんな感情を何処かに捨ててしまったのか、立ち止まって周囲を見渡してぼんやりと不思議そうに立ち尽くしている。


はい、思考が溶けた。毒によってね。

激毒って言うけれどね、たぶんだけど、人型には…通じないかも?

それでも、あいつ等には十二分に通用するからね!


思考が溶け、警戒心を完全になくし、筋肉も弛緩し脱力し呆けて死を待つ獣に止めを刺してあげないとね

手を伸ばすと騎士が槍を渡してくれる、その槍を空中に浮かし先ほどと同じ術式で撃ちだすと、槍が易々と強固な肉体へと撃ち込まれ心臓を貫き胴体を貫通していくと、熊が大地に吸い込まれるように倒れる。

弛緩剤によってありとあらゆる攻撃に備えていた筋肉が弛緩すれば敵の防御を貫くなんて容易いってね。


「はい、お終い」

おおーっと歓声が沸き上がるが、傷ついた中型種が此方に接近してきているのは変わらない。

「ほら!次来るよ!!」

気を緩めるなと声を出すが反応が鈍い…

大物を私が仕留めてしまったのが良くなかったかも?

マリンさんと同じで雑魚ばかりを相手にし過ぎていて刺激が欲しかったりしたのかも?

熊タイプ、譲ってあげればよかったかも?

「応」

気迫が籠っていない返事が返ってくる、んー、やる気が削げちゃったかな?

次、大型種が出てきたら譲ってあげますか、まだまだ、序盤だもの…

お楽しみはこれからたっぷりと出てくるから、この程度で飽きてくれないでよ?


中型種を迎え討つために前に出て武器を構えている一団の後姿から伝わってくる士気の低下をどうしようかと考えていると


「左奥から敵の増援です!」

士気を上げる吉報か、はたまた、凶報か…後方から大きな声で知らせてくれる。

後方に視線を向けると望遠鏡を持った術式部隊の人が指を刺して新たなに現れた敵の出現位置を教えてくれる


視力強化して確認するよりも、見つけた人に直接聞いた方が早いので

「敵の種類はわかる?」

術式によるソニック音波で術式部隊に音を飛ばすと

「すみません!小さくてまだわかりません!」

大きな声で教えてくれる、つっても?ソニック音波は術式部隊もある程度使えるから、私以外は聞こえてないけどね。


望遠鏡を使っても判別が出来ない、その情報だけで充分!

この地点よりも奥に生息しているタイプで尚且つ、望遠鏡を使っていても、この距離で小さくてわからない、そして数が多いのであれば九割九分、中型種でしょ?

多少形状が違ってようが気に留めるような相手でも無し!


「中型種、更に接近!各員迎え討って!」

「応!!」

出番が来たことに嬉しいのか激しい返事が周囲から湧き上がる。

うん、私一人で遊びすぎちゃ~良くない、玩具だって数に限りがあるんだから…分け与えないと不満が出ちゃうよね。


つっても、シャインスパークを打ち込むのはやめないけどね、つまらないかもしれないけれど、皆が怪我される様な状況にさせるわけにはいかない、乱戦混戦状態を狙っての雪崩れ込みっていう敵が良く用いてくる豊富な質量を使っての策を防ぐ。


弓兵達に指示を出して、シャインスパークをばら撒いてもらって敵がその地点にまで接近するまで待っていると、先ほどの熊と共に流れ込んできた敵達が到着したのか戦闘が始まる。


ある程度、損傷しているから襲い掛かってくる敵の勢いは弱い。

今もなお衝突してきている迫りくる敵の勢い的にね、私がいる場所まで雪崩れ込んでくることなんてあり得ない…今のうちに少し、長考しよう。


すぅっと鼻から息を深く吸い、戦況の変化に対して意識を向ける。

小さな変化や違和感、見落としが無いか思い返していく。


大騒ぎって程ではないけれども、大きな音は出している、敵が音に反応して向かってくるのはおかしくはない現象ではある、よくあることではあるけれど…

私が出てくるのを待っていたかのように敵が増えてきた気がする?


そんなことは無いと思いたいけれど…挑発している?

私を、私だけを奥へ、奥地に向かって来いって誘ってる?

敵からすれば私が警戒すべき人物であると思うべき、此方に向かっている主力部隊と合流する前に誘い出して各個撃破したいという思惑…ありえる…その可能性は捨てきれない。


もしくは、まだ準備が出来ていないから奥へ進まれると困るっという可能性は?

その可能性もある、私だったら準備が整っていないのであれば、捨て駒をぶつけて時間を稼ぐっていう策を講じる可能性は捨てきれない。


後者であると考えるのであれば…敵の準備が終わる前に先手を打つべき?

まだ、合流予定である中央部隊、勇気くん部隊と合流していないけれど、駒を進めるべきかな?


うん、前者であれば、危険だと判断すれば撤退すればいい、逃げれる距離からジャブを打って敵の出方を伺ってみてもいいかもね。


前者であれば、人型が飛び出てくるだろうけれど、並の人型なら問題ない、魔道具持ちが待ち構えている可能性が高いけれど、ある程度、距離を取っていれば対処は可能だもんね。


それに…この戦況を有利に進める為に欲しい魔道具を奪う為に過去の情報から敵の出現ポイントはある程度、絞れている。その魔道具を持った敵は、まだ奥地で待機している、はず。


この段階で導入されるとは思えれないけれど…

準備が終えていない段階で出てきてくれたのなら不意を突いて楽に仕留めれるってことだよね。あれ程の威力を伴った魔道具を扱い人型だもの、準備する必要性があるはず。

もしかしたら、そいつの準備が終わるまで時間稼ぎをしている可能性はある。

早期に狙いの魔道具が手に入れることが出来たら、駒を進めるスピードが爆発的に上がる、文字通りね。


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