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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (59)

次の動きを待ち続けていると左部隊のマリンさんから連絡が届く。

えっと、何々?森を抜けて、私達が普段使っているセーフティーエリアに到着、ってことは、転送の陣が起動する!

椅子から立ち上がって指示を出さないと!

「メイドちゃん!」「はい!」

「広場にいる左部隊支援部隊に出撃準備!もうすぐ転送陣が起動するって伝えてきて!」「はい!」

返事が聞こえてきた辺りに視線を向けるとメイドちゃんが認識阻害のマントを解除して駆け出していくのが見える。

大急ぎで駆け出す姿、パタパタと大忙しに走り回っている姿だけど、その姿が、メイド姿ってのが心を少し和ませてくれる。

今後、殺伐とした雰囲気へと徐々に変化していく最中でも、風にたなびく花のような姿を見て心を落ち着かせてくれると信じてる。戦場には華が必要だよね、それも華の頂がね。


華の頂が戻って来るまで、地図を開いて、全部隊の凡その位置を修正して、今後の動きをどうするか考えないとね。

現状では、マリンさんの動きが予定よりも速いって感じかな?少しマリンさんの事を侮っていたかも体格的に鈍足なイメージがあるんだもん、殲滅速度が速いから必然的に動くスピードも速くなるか…

「伝えてきました!タイミングよく転送陣が開かれたので順次物資を運んでいます!何か言伝はありますか?」

「念のためにマリンさんに接触してきて!必要なものが有れば直ぐに用意するから、もう、その地点まで到着したら光での通信は出来ないからね!」

「はい!!」

一人で走り出そうとしたので「ちゃんと護衛の騎士一人連れて行くのを忘れちゃだめだよ!」「はい!」楽しそうな笑顔を残して走っていった。

自分が持てる全力を出せるのが楽しいのだろうね。

「わしが着いて行かんでも良かったのかの?」

暇そうに槍を持って待機しているお爺ちゃんが仕事を寄こせと言ってくる。宰相の所に居なくてもいいの?

「ラアキさんの仕事はまだ先、もう少し待ってよ」

「暇なんじゃよ!昂る心をどう落ち着かせればよいのじゃ?」

我儘なぼーやが嫌がる言葉で納得してもらおうかな?

「出撃してもいいけど、今出てくる敵って鼠とかで普段戦ってて物足りなくてつまらないって吐き捨ててる雑魚だよ?それでもいいの?」

「…ふむ、馬鹿弟子の様子でも見てくるわい」

納得したのか宰相が指揮を担当している後方支援部隊がある方へ歩いていく


持ち場に戻ってくれて何より、我儘だけどちゃんと仕事はする人だからね。

たぶん、後方支援部隊が凪過ぎてやることが無かったからふらっと戻ってきたんだろうね。

まぁ、今は自由にしていてもらってもいいけれど、最終局面では出来る限り、マリンさん、カジカさん、ラアキさんの三つの柱をフル動員したいからね?絶対に怪我しないでよ?


我儘なぼーやの後姿を見送ってから、駒が置かれている地図へと視線を向けなおす。

左部隊も森を焼き始めたから、左第二部隊も出撃の合図を出そう

広場で待機している左方第二部隊に出撃要請を出すと待ってましたと言わんばかりに駆けだしていく。

転送陣を使わずに門から出てもらって左第一部隊であるマリンさん部隊が通った道と同じ道を辿ってもらい、焼かれる森から溢れ出る敵を挟撃する様に待ち構えてもらって殲滅してもらう


さて、この段階で私が出来ることは…特にない、状況に大きな変化はまだ無さそうだしね

「でるわよ、何かあればすぐに知らせるわね」

ぽんっと頭を撫でてからお母さんが転送の陣に向かって歩いていく。

医療班は転送の陣があるセーフティエリアで待機してもらう、今後に備えて。

転送の陣へ向かっていくその後ろ姿を祈る様に見つめる。絶対に怪我しないでと…


医療班も後方支援部隊として出撃してもらう、特に激しい戦闘が予想される左側には団長であるお母さんが出撃することになっている。

医療の父であるセレグさんも覚悟を決めて宰相と共に出撃しているし、カジカさんがいる右部隊が設営している仮拠点にも医療班が待機している。衛生兵は何時だって必要だもの。

まぁ、セレグさんの場所に敵が流れ込んでくることはほぼありえないけど、彼も絶対に怪我してほしくない、悲惨で悲痛な人生を歩んできた人だから。


「伝令受けたまわってきました!」

お母さんとすれ違う様に転送の陣から戻ってきたメイドちゃんから報告を受ける


受け取ってきた言葉をそのまま録音して来たかのようにありのままに伝えてくれる。

記憶力の良いメイドちゃんだからこそお願いできるし信頼も出来る。


『こちらは問題ないさぁね!新しい魔道具が最高に気持ちがいいさぁね!多くの敵が怪我して襲ってくるから楽に倒せるさぁね!!わかっていたけれどさぁ、森を焼くのは抵抗があるけれどさ、あたい達にとっても死の大地の森は危険な場所だからね、何時かはこうなる運命だったってやつさぁね、生きてるモノ達には後で謝るさ』

女将さんの…マリンさんが目の前にいると錯覚してしまう程に完璧な語り、芸達者だよねメイドちゃんは

「以上です!支援部隊も認識阻害を起動して念のためのバリケードも設置済みです、現場には医療班のテント、隠蔽部隊のテント、休息用のテントも準備抜かりなく!終えています」

はつらつとした元気の出る報告に自然と笑みが零れてしまう、けど、直ぐに次に起こしてほしい行動を頼んでも良いのかと眉間に皺が寄ってしまう。安全だとは言い切れないんだよなぁ…

報告に関しては、何も問題なし、出来るのなら右部隊の様子も見てきて欲しいけれど…


不安を感じてしまっているのが伝わってしまったのか

「任せてください姫様、メイドさんは俺が命に代えても守り通します」

甲冑の胸の部分をカンっと叩いて敬礼してくれるのはメイドちゃんを守るために誰にお願いしようかと悩んでいたら、お母さんがこの人であれば問題ないわよって推薦してくれた人物、経歴はお母さんの実家で門番として働いていた人

決意を固めてこの街にきてから、全ての訓練を終えて何年にも渡る研鑽によって技量に関しては戦士に匹敵するほどにまで成長した元悩める門番…今では輝く未来を勝ち取る為に立ち上がった優秀な騎士


うん、彼なら、贔屓目なしに彼なら任せれるし…認識阻害のマントもあるし…うん…心を決めないと、危険なのは皆変わらない、メイドちゃんが怪我するリスクをこんな序盤で使うのは、ううん、序盤だからこそ、メイドちゃんに死の大地に慣れてもらうべきだと考えよう。

彼らにお願いしよう


「頼める?メイドちゃんも…大丈夫?」

「…はい!怖いですけれど、皆が命を懸けているんです!私だけ…甘えるわけにはいかないです!」

弱い目をしていない、なら、お願いしよう。技量だけで判断したら、彼らなら滅多なことが無いって自信を持って言えるんだけど、何が起こるかわからないのが戦場だもんね。

「右部隊の状況を把握したいから、二人で全速力で向かって、敵との交戦に関しては欲を出さないように!」

「っは!命に代えても姫様の右腕を守り通します!」「はい!」

返事と共に二人は戦場へと駆け出していく、往復を考えると4時間は戻ってこない、無事を祈るだけしか出来ないけれど、あの二人なら問題は無いと信じよう。


後は、彼女たちが無事に戻ってくるのを待つだけ…

もどかしい気持ちはある。無限の魔力はあれど、その無限の魔力に関しては切り札の一つ

こんな序盤で切っていいカードじゃない…蹂躙し尽くしても良いのなら直ぐにでも飛び出ていきたいけれど…

今は信じる事だけ!


二つの背中が旅立ってから、中央部隊からの報告なども無く、全ての作戦が順調である証し。

沼の中にある目からも警告は無く、万事順調だと感じる。


紅茶を飲みながらも自然と足先が地面をノックしてしまいながらも、信じて待ち続けているとメイドちゃんが帰還する。笑顔で出迎えてあげたいけれど、まずは報告を受け取らないとね。


右部隊も順調に仮拠点を建設し罠とバリケードの設置も問題なく終わっている

言伝は一言だけ『任せるのである』っとだけ、カジカさんらしい、私の口癖を良く知ってる。

欲しい物資などのリストは既に支援部隊に渡してある、手際が良くて頼りになる

守ってくれた騎士からも道中で敵と遭遇したが弱っていたので認識阻害のマントによって見つかることなく不意を突いて仕留めれたから無理はしてない、という報告を受ける。

うん、律儀な性格、真面目だよね彼って、真面目過ぎたが故に腐敗した騎士団に馴染めなかったのかもね。


幕間 ────────

1日目も何事も無く作戦は順調

暇すぎて暇すぎて、ついつい、作戦レポートを書いてしまう程

っていうか、やることが無さ過ぎて落ち着かないから書いてしまう。

っていうか!書く事も無い!誰がどう動いて、どういう結果になりましたとしか、書けない


2日目

メイドちゃんが帰ってきてから仮眠を取った。

起きたころには夜になっていた。寝たのが朝だから、寝すぎてしまった。

起きてからは全ての報告を受け取って、現状を把握…

森が焼けているっとしかレポートに書くことが無い

って、思っていたら、人型が出現、場所は右部隊、カジカさんがいるエリア、想定よりも早い

私が寝ている間に対処済み、魔道具持ちじゃなければ、誰かが怪我をする事も無い

森が焼けるスピードは計算通り、敵の数もある程度予測の範囲内

何処も異変や異常が無い、想定通り過ぎて怖い…

先生がこんなにも簡単に道を譲るとは思えれない、何か?何があるの?…読めない、読めきれない。


三日目

報告で知る、人型が他の部隊とも接触

特に問題なく、対処済み

森を焼く進行速度は計算通り

誰かが負傷することなく、誰かが不幸を背負う事も無く

万事順調…順調なのに真綿で〆られている様な感覚が消えない

不安が消え去ることは無いけれども、私の出番が近づいてきているのでしっかりと休息をとることを怠らない


─────────────────



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