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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (56)

大国への対策を思い返してみて、大きな問題が無いのか脳内で確かめてから、現場の状況を確認しようとすると呼ばれたような気がして振り返ると

「ここに居たのであるか!」

カジカさんがにこやかに声を掛けてくる…うん、何かあったな、戦場とは関係のない部分で、そうでもない限り彼がにこやかに話しかけてくることなんて無いもん

何を語りに来たのか視線を向けていると

「戦場での様子は何時もと変わらずなのである、姫様の言うとおりにな作戦があるのだと匂わせないように、普段通りを装う様にしているのであるが…」

ゆらっと近づいてきたかと思ったら周囲をグルグルと見回しながら見てきた状況を報告をしてくれるけどさ、カジカさんがそんな殊勝なことするわけある?

するわけないよねってことは、何かこう縋るモノを探してか、鼓舞してほしいから来たって感じかな?カジカさんと言えども、この雰囲気にのまれちゃったのかな?

顔が一気に曇り始める、彼の良くない部分が出てきちゃってるね。お母さんが忙しくて相手にされなくてこっちに来たっぽいな。

ぁー、ちょっと読めちゃったよ医療班の準備が遅くなってるのカジカさんのせいでしょ?

指示を出さないといけない団長を捕まえて自らを鼓舞するために縋ろうとして、突き放されるまでの間、10分くらいお母さんの時間を奪ったんでしょ?


内心冷ややかな気持ちで限界ギリギリにならないと弱気な人を見つめ続けているが、冷ややかな視線に慣れているのかまったく意に介していない

「しているつもりでいるのであるが…どうも、心がざわつくのである、うむ、恐らく雰囲気に吞まれてしまったのであろうなぁ…吾輩は、この雰囲気に覚えがあるのである、今になって、蘇ってきてしまっているのである…」

遠くそして、悲しそうな瞳…

そっか、カジカさんからすれば遠征するのは二度目だもんね…命がけの大作戦に関しては何度目だろう?

彼の心情を考えると、心が落ち着かなくなるのは致し方ない、それならさ、カジカさんが最も心が落ち着く人で尚且つ、共に戦場を掛け背中を預けることが出来る騎士の言葉に許しを出さなかったの?


「良いの?本当に良いの?今ならまだ間に合うよ?奥さんを誘わなくて良いの?聞いてるよ?めちゃくちゃ怒ってるって」

突いてはいけないと分かっていても、突いてしまう。カジカさんが一番悩んでいる事、此方としては彼女が参戦してくれると凄く助かったのになぁ…数少ない偉大なる戦士長の愛弟子なんだから。

どうして知ってるかって?お母さんから情報は筒抜け、カジカさんの奥さんこと、閃光姫という渾名を持つ騎士。

彼女は、あの戦いに参加できなかったことを心の底から悔やんでいて、次の機会があれば絶対に参加するからと何度も何度もお母さんに手紙を送っていたからね。

彼女の憂いを、騎士として、ううん、敬愛する師匠の仇を討つ機会を欲しているのをお母さんは知っているわけで、その流れだと当然ね?教えないわけがない。

大規模な作戦があることを手紙で伝えている。


そうなれば、彼女も動き出すわけで、作戦の要でもある旦那に詰め寄るのは必然ってね。

だけど、彼女の願いは聞き届けられていないって状況、カジカさんがこの作戦に参加したいと懇願している奥さんを参加させないように方々に連絡を取って本人にも駄目だと声を掛け続けた結果…奥様は怒り心頭、下手すると絶縁されかねないって…状況になっているってお母さんからも聞いてる。


「その話は吾輩の心が冷えるのである…」

顔を皺だらけにして苦悶している。

私としては奥さんも参戦してくれる方が嬉しいのかと言われると、嬉しいけれど、現時点で冷静に考えると…悩むところだよね。

大国が本当に海を渡って遠征してきてしまったから、念のために王都防衛を努めてほしい。

欲しいんだけど…だけど~、本音を言うとこっち側に参戦して欲しかったけれど、私から声を掛けるわけにはいかないじゃん?声を掛けると同調圧力にも繋がってしまうから、彼女が本当は参加したくなくても参加せざるをえなくなってしまう。


彼女の未練を知っているけれど、私は…彼女もまた、母であり、女性であろうとするはずだって思っていたから彼女には何もお願いしてないんだよね。

愛を知ってしまった私としては、母として、女としての愛を二つ持っている彼女が戦場に出たいだなんて思わなかったんだもん。


まさか、戦士としての未練が母としての感情を上回ってくるとは思わないじゃん?

愛する旦那が戦場に行くのを待ち続けるのが嫌だなんて思わないじゃん?

自分の身に何かあれば愛する旦那が悲しむだろうって普通思うじゃん?

彼女はそうじゃなかった、守られるだけの弱い人じゃなかったってだけ、叶うのであれば旦那と共に最後の最後まで共に戦いたかった高潔な人だった、見誤ったのは私。


なので、カジカさんの心が不安定になってしまった原因が私にもある。

私が強引にでも彼女を参加させればカジカさんも悩むことなく全責任を私に押し付けることが出来たから、彼の心が悩み葛藤することは無かった。

「少々時間があるか姫よ?」

苦悶のまま指を刺して人があまりいない場所へ来てくれと誘導してくる辺りメンタルケアが必要なまでに追い込まれてるのか…

カジカさんのダメなところが出てるのが良くない、私が彼のメンタルをケア出来るかわからないけれどやるしかないか


指が刺された方向へ向かっていく、その足取りは二人とも重く、沼地の中を進んでいる様だった。


重い足取りで会議室に入ると

「やっぱり、姫もそう思うであるか?愛する妻を危険な場所から遠ざけようとするのは騎士としての誇りに泥を塗る様な行為であるか?吾輩は間違っていたのであるか?」

肩を掴まれ口早に助けを求めてくる姿は…坊やと言われてもおかしくない…

坊やを宥めれるほど経験が豊富じゃない…なので、私は私の考えで彼を鼓舞するしかないってわけ。


「そりゃそうでしょ?話は聞いてるよ?だって、奥さんってさ、あの時さ、尊敬する師匠と共に騎士としての誉れを持って愛する旦那、尊敬する人達と共に前線へ行きたかったって聞いてるよ?それが叶わなかったけれど、何時かはこういう日が来ると信じて、未来の戦いに備えて育児も頑張りながら、この日の為に!師匠の無念を晴らす為に研鑽を続けているってのも伝え聞いて知ってるよ?奥さんが毎日努力し続けて待ちわびた日を…カジカさんはその最後の機会を奪ったんだよ?」

まずは奥様の立場として意見を述べる、彼女の心に触れてから先を考えて欲しいからね。


「っであるかー、やはり、姫もそう思うのであるかぁ…吾輩としては子供達と共に王都で吾輩の帰りを待っていて欲しいのであるが…」

肩を掴みながらも溜息と共に頭を垂れる、醜態を晒す。

それ程までに後悔しているのが伝わってくる、自分の判断が間違っているのだと…


でもね、カジカさんのその気持ちは私も、奥様も、お母さんも皆、わかってる、理解しているよ?

愛する人を守りたいっていう気持ちは私だって痛いほどわかるよ?

出来るのなら愛する人…勇気くんを死が常にとなり合わせとなる死の大地の奥になんて出て欲しくないもん。


「その気持ちはわかるよ?私だって、好きな人が危険な場所に向かうのは嫌だもん」

「っであるよな!吾輩は間違っていないのである!」

肯定した瞬間に顔を上げて全力で私の顔に向けて鼻息を荒げないでよ、情緒不安定だなぁ…

お母さんは良くこの不安定なカジカさんを乗りこなして調子を取り戻してあげれたよね?

生臭い香りに包まれながらも彼と向き合う、向き合わざるを得ない…

ぅぅ、こういうのって勇気くんかお母さんの仕事でしょー?


「でもね、それは闘う能力が無くて守られる側の弱い人だったらでしょ?私も勇気くんも力がある、闘う力がね、だとしたら…傍に居たいよ。愛する人と共に戦いたいよ」

その意見に、そうであるよなぁっと膝をついて頭が床にくっついてしまうくらい垂れてしまい動かなくなってしまう。止めを刺してしまったかもしれない。

「今から、来いって言うことは出来るけれども、男なら最後まで自分の意思を貫くのも正しいんじゃないのかな?全てを終わらせて、死なないで五体満足でさ、仇を討ちとって悠々と凱旋するかのように帰還すれば…きっと許してくれるよ、奥さんとしても愛する旦那が帰ってきたら一言や二言文句を言うかもしれないけれどさ、関係は修復できるし」

その先の言葉を言おうとして止まる、カジカさんに大国がもしかしたら王都に攻めてくるかもしれないなんて言えない、言ったら王都に飛んでいきそうだから。

「んん、修復できるし平和になった後は、ほら、えっと、奥さんと、子供達と、一緒にこの街で騎士として過ごせばいいじゃん」

この一言でカジカさんの体がピクリと反応したので、この流れが正解かな?後は…後は。

欲だ…彼の心の奥底に根付いている欲を刺激する。


「平和になった後で良ければだけどね、この大地を何とか王族管理の土地から私達の土地へと働きかけるからさ、この土地を管理する貴族にどうかって推薦するから、土地管理の上流貴族だけじゃなく、人類を救った救世主の貴族って肩書を持って帰れば奥さんも、奥さんのお父様も手を上げて喜んでくれるって、私は土地なんて欲しくないし貴族に成りたくないから…私は術式の研究がしたいだけだから」

上流貴族に成りあがる出世街道を示してあげるとガバっと立ち上がり

「そうであった!吾輩は貴族として大成を成すのであった!大手柄によって出世すれば誰も文句は言えまい!なのである!!」

拳を突きあがて立ち上がったので直ぐに耳を塞いで鼓膜を守る、吾輩はやるぞー!手柄があれば妻と言えど文句は言えまい!っと大声を上げてから

「世話になったのである!先の件!言質を取ったのであるぞ!!」

上げた腕を私の三角筋目掛けてバンバンっと豪快に叩いてから意気揚々と会議室を出ていく…

単純で良かったと考えるべきか、この言質が欲しくて一芝居を打ったのか、どっちだろう?

たぶん、前者だろうなぁ、単純に心が不安定なだけなんだろうなぁ…


前の時はどうやって精神を安定させていたのかその手腕を是非とも偉大なる戦士長からご教授頂きたいよ…絶対的信頼を得ているカリスマだからこそ響く言葉だったら無理だけどね!


会議室に残されて誰も居ないので遠慮なく盛大に溜息を溢す、目の前に風車があれば激しく回転してまうくらいに。


はぁ疲れたっと、止まらない溜息を吐きながら会議室から出て先ほどまで指示を出していた広場に戻っていると、途中でメイドちゃんに声を掛けられる。表情から特に異常は無く頼んでいた報告をしに来た感じかな?


先ほどの報告と隠蔽部隊と医療班の新着状況を聞いて来てくれたみたい。

慌てることなくメイドちゃんからの報告を聞かせてもらう

現段階で焦る事も無いからね~。



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