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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (51)

魔力を体に流す、満たされていくのを感じる

術式を頭の中で構築する

問題ない…何かが遮るような感覚は無い夢には誘われない思考をジャミングする存在を感知できない

術式を音声で出力する

詠唱を開始

出力と同時に全身から魔力を放出する

問題なし、過度に魔力が流れることは無く適切な量を放出で来ている魔力制御に問題はない、術式を発動するのに必要最低限で一切のロス無しで魔力が魔術へとコーティングした術式によって変換され


世界の理が動き出す


「風よ…声に応えよ、共にあれ」

目を開けてみるが視界には変化はない、だが、聴覚には変化がある周囲の稼働している魔道具から出ている小さな音が消えている、ううん、私に届いていないだけ

目の前でもしもに備えて盾を構えている人に指を曲げて此方に投げてっと、合図を送るとボールが私に向かって下手投げでふんわりと投げられる。

此方に向かって飛んでくる前に明後日の方向へと飛ばされていく、なるほど、予想通りだけど範囲が想定よりも広いのかな?それとも強いのかな?

予測だと、術式で風を纏っていなければ投げられたボールは放物線を描いて、その直線状にいる私に届く、予測通り周囲に展開している風の影響でボールが弾き飛ばされた、風は目に見えないからどの程度の範囲なのか確かめてみて正解だった、想定以上に範囲が広い。

「風よ…感謝を、またいつの日か」

脳内で構築した術式を解除してから、放出している魔力を閉じると渡した分の魔力が尽きたのか風が止む

腕を伸ばしてみると風が頬を撫でて飛び立っていったように感じた…地下だというのに風が何処かに旅立っていくのが不思議な感覚

「綺麗な術式だ、風が君を愛しているかのようだったな」

詩的な雰囲気で近寄ってくるのは盾を構えてボールを投げてくれた私の愛する旦那様

「うん、信じられないくらい、何も抵抗なく何も失うことなく全てにおいて私を祝福してくれているような気がする」

体に魔力が満ちていき術式を発動した時に感じていた自らの大事な何かが抜け落ちていく、まるで、命が削られる様な感覚が何一つない、これが・・これこそが・・・


魔力に満たされた体

私が…求め続けてきた力…これさえあれば


目が薄っすらと開く


「逸るな、君たちの想いを解き放つ時ではない」

そっと私の頬を撫で優しくキスをしてくれると暴れたくて仕方がない数多くの瞳が直ぐに閉じる

憎悪という感情が愛情には勝てないのが証明され続けている。

「…ありがとう」

彼に愛されていると感じるだけでこんなにも…心が凪へと至ることが出来るなんて思ってもなかった…私の知らない世界はまだまだ数多くある。

「フィルターという概念、だったか?俺と君で作り上げた新しい術式は機能しているか?魔力を得るために捧げられた祈りの中に込められた邪念が君に祝福をもたらすが、過去の君が夢と呼んでいた心の隙間を通って祈りと言う名の邪念が君を汚染していく、その感覚は無さそうか?」

「うん、あんな大規模な術式を構築して解き放ってみたけれど、体が悲鳴を上げる事なんて無かった臓器を魔力に変換する事も無くこれ程の術式を発動できた…これが、これこそが、魔力に満たされた人の感覚なんだね…」

小さな術式じゃない、さっき発動したのは始祖様の術式

だけど、本家本元の出力で発動はしていない、昔の私では本家本元を何となく発動させることしか出来なかったけれど、長年の研究で縮小版へと改良する子が出来ている。

ただ、問題があるとすれば縮小版ではあるけれども、始祖様の術式は全てにおいて並外れた魔力が必要…従来の私が持ちえる魔力量では日常生活に支障が出るほどに消耗する。

それが、問題なく解き放つことが出来た。


何も犠牲を作らずに、心も体力も何一つ損耗していない。

これが、人々の想いを重ねて生み出された力…無限の魔力


教会だけじゃなくこの大陸の色んな村に設置した魔力集積装置に祈りと言う行為によって搔き集められた魔力

幾万の時間、幾重の人達の祈りが層となって蓄積し続けてきた魔力の層


今回の実験でどの程度の魔力が蓄積されているのか、どの程度私に魔力を注いでも良いのかを確かめる実験として、その層から溢れ出る上澄みをほんの少し頂いた。

ほんの一欠けらで始祖様の術式を発動させることが出来た。

過去の私が膨大な魔力を使って膨大な情報を過去に飛ばしてくれた際に全ての魔力を解き放ったと聞いたけれど…

彼女は本当に私なのかと疑ってしまう程に卓越した技量、超越した演算能力…私では届かない領域に届いていた、極限の状態で魔力を行使し続けてきたからこそ会得した領域


確実に彼女は始祖様と同じ領域にまで到達したのではないかと思ってしまう。


その経験が私にフィードバックされている、全てとは行かないのが惜しい…彼女が到達した極限の頂に到達は出来ていない。

仮に何一つ研鑽を積んでいない私だったら、こんなにもあっさりと始祖様の術式を発動させることは出来なかった…


全ては…己の人生を犠牲にしてまで研鑽を積んでくれた私のおかげ…

彼女が自身の体で実験を繰り返し溢れる魔力を扱いきるという経験を研鑽を積んでくれたおかげで、問題なく体に魔力を流すことが出来ている。


彼女の人生に感謝を捧げましょう

彼女の自己犠牲に涙を流しましょう

彼女の魂に賛美を送りましょう


心の目が一斉に開き歌うかのように感情が渦巻き一つの目へと何かが注がれていく

”にしし”っという照れた様な笑い声が聞こえてきたような気がした


「…綺麗な顔をしている、全てを統べる者、全てを導く者、やはり君は聖女だよ、彼女と血が繋がっていなくても魂が繋がっている、そんな気がするよ」

真剣で、それでいて何処か儚く、憂いを帯びている瞳、その黒くされど、奥に青を秘めた瞳を涙で滲ませないで、貴女の瞳の奥にある青は光り輝いていて欲しい

それを真っすぐに伝えれたら良いんだけれど、私は正直に答えないと気が済まない性分がダメなのかなって思う時がある。

「…そう言ってくれるのは嬉しいけれど、始まりの聖女様は私達とは繋がりが無いの、彼女の意思は…魂という絆はね…受け継がれていないんだよ」

今だからこそ、魔力に満たされているからこそできた事がある。

浸透水式によって魔石と繋がるために必要な魔道具を体内に埋め込み魔石とケーブルで繋がり魔力を体内に取り込んだ際に溢れる魔力が制御できるのか初めて行ったのが…


始祖様が私達、短命種に祝福を授けてくれた『寵愛の加護』へのアクセス


そこには数多くの情報が残されている、始祖様が私達の短い人生に多くを見せる為なのか様々な世界の知識が内包されている。

…実はそれだけじゃなかった、寵愛の加護の中には…短い人生を精一杯、全力で生きようとした私達、寵愛の加護を受け継いできた者達が残した想いも内包されていた

ほんの一欠けらだけれど、残されていた…


政治に利用されていることから解放されたい願い

子供を育てたかったけれど育てることが出来なかった悲しき願い

愛する人を守りたい誰にも穢されたくない切実な願い


…多くの…死にゆく運命に抗おうとした乙女たちの願いが力となって内包されていた…

その中に、始まりの聖女様の心は残されていない。欠片もね。何か残されていたら勇気くんに伝えてあげたいなって思って探してみたけれど無かった。塵一つも無かった。


数多くの残された想いに触れたからこそ、私の中で新たな仮説が生まれた

もしかしたら、これが”ルの原点”なのかもしれない。

命短し乙女たちが魂を自らの祈りによって加工し同じ運命を背負わされた人達に力を授け、運命を乗り越えてもらいたかったのかもしれない。

だから…私達は術式に精通しやすい同じ運命を与えられた者だからこそ、その願いを感じることが出来る共感できる、魂の底から…

その影響なのだろうか、術式と言う不可思議な理に対して理解力が高いのは漂う祈りを感じ、同じ苦しみを歩んだ先人たちの悲しみに共鳴していき私達だからこそ共感し、漂う魂を理解しようとしたのかもしれない。


寵愛の加護を感じて育っていた術式に対して貪欲な私がどうして頻繁にアクセスしてこなかった理由は…単純に閲覧するためには膨大な魔力が必要だったから

だから、魔力が常に足りてない私が容易にアクセスすることができない、誰かに魔力を満たしてもらわないといけなかった、っていっても、お母さんほどの魔力を持ちえていたらアクセスできるんだけどね、魔力が乏しい、ううん、違う、抜け落ちていくこの体では必要な魔力を留めきれなかっただけ。

…私が自然と自らの臓器を魔力へと変換する術をあっさりと発動することが出来たのも、もしかしたら、悲しき運命の乙女達が死に間際に寵愛の加護へとアクセスするときに必要な魔力を生み出す為に臓器を魔力へと昇華していたのかもしれない、その手法が自然と私達の遺伝子に刻まれて伝わっていったのかもしれない。

私達、命短し乙女たちは魔力枯渇症っという体質によって体から魔力が常に放出されてしまい死に至る。

故に魔力を操る術が誰よりも卓越した才能を秘めているのに魔力が無くて行使できていない、例外なく私もそうだった。

でも、今は違う、改良に次ぐ改良によってその体質はある程度克服しているし、今となっては私の体には無限だと言われても信じてしまいたくなる程に魔力が満ち溢れている、


それによって多くを知ることが出来た、多くの学びを得た、多くの願いを受け取った


真なる聖女…

叔母様が言っていたのは、こういう意味なのかもしれない。

私の願い、私の魂が欲したモノ、人生をそれに捧げても良いと本気で願っていた


お母様にもう一度会いたい


その願いを叶えるためには、時を渡る必要があった

それこそが私の”願い、私に宿ったルの原点”今なら、全てを失う覚悟で…叶うかもしれないが、する気は起きない。

私がその願いを叶える時は世界を救ったときに、全人類にお願いする

魔力を分けて欲しいって…一人一人が宿している魔力は微々たる量だけれど、それらを全て一か所に集め制御することが出来たら



私は時を超越できる

そして、お母様に会って世界を救ったと自慢する、愛する人に会えた思いが通じ合って幸せだと伝えたい、貴女の娘は偉大で幸せな人生を歩んだと

直接、伝えたい…伝えて…褒めてもらいたい、立派に育ったことを抱きしめて欲しい。

それが、私が幼い時に描いた夢の一節と育った私が抱いた夢の一節


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