Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (50)
「済まない…それは、出来ないんだ」
なれませんでした!!
その言葉を聞いて抱きしめられている腕を全力で振りほどいて今すぐにでもこの場から逃げ出したいけれど、出来ない!!!
長い付き合いだから、こうなったら有無を言わさずに私が逃げると分かっているから抱きしめたな!!っぐぅぅ振りほどけない!!
全力で振りほどこうとしても彼からのハグから抜け出ることができない、んだけれど、不思議と体に痛みが無い。
暴れる私の背中から暖かく癇癪を起した子供をあやすように背中を叩く様な腫物を触る様な感じで触れてくる感触に気が付く
あやそうとしてる?癇癪を起した子供じゃないぞ!!
全力で暴れてやろうかと思った矢先
「よく聞いて欲しい、君に魅力が無いからとかじゃないんだ、理由があるんだ、頼む聞いてくれ、聞いて欲しい」
困惑した声でさらには泣きそうな、情けない声に逃げ出そうとする感情が停止する
…む?訳あり?なら…待つのもやぶさかじゃない、よ?
抵抗を辞めて大人しくすると、抱きしめられた力が少し強くなり彼とより深く密着しただけで、少し満たされてしまっているのが悲しい性だと呆れてしまいそうになる。
「はっきり言おう、俺が君の想いに応えれないのには理由がある、その理由が…俺の中にユキがいる、視界は見られている、今さっき俺が驚いた…感情が激しく動いてしまった衝撃で起きてしまったんだ。そして、俺の瞳から君が来ているのを見ている、今のこの状況がどういう状況なのかわかっていないのか、不思議そうに見ている」
…あ!!そ、そういうことか…
「君に魅力がないわけじゃない、だけど、俺の中にユキがいる限り、そういった行為は…できない!!」
そうだった、そうだよね、そうじゃん…自分の考えばっかり考えてた…そういうことを失念していた。
ユキさんに見られているのにそういった大人の行為は、ユキさんに刺激が強すぎる!!その後にアレは何をしていたの?って質問攻めにあってしまう勇気くんの事を考えていなかった浅慮で配慮に欠ける行動じゃん!!ぁぁもう、そうだよ、そうだよー、私の中で最後の一線へと進めれない理由、関係を強引に進めれないなって踏みとどまっていた主な理由じゃん!はぁ、ダメだなぁ私って…
お母さんの雰囲気と説得力に流されて…失念してたぁ…ごめん、妹の事を忘れてしまった姉を許して…
大人の行為をしてしまったら何が起こるかお互いわかったもんじゃないって状況じゃん…
自ら爆弾を爆発させてしまいかねないってことじゃん・・・
でもさ!勇気くんも悪いよね?なら言ってよ!!事前に言ってよ!!!はっきり言ってよ!!!色んな意味で!!!魅力を感じているって一言でも言ってくれてもよかったんじゃないの!?ねぇ!!
感情が爆発して頬を膨らませ涙目で睨んでいると
「悪いと思っている、こんな状況になるまで君に想いを伝えなかった俺にも非がある感情をぶつけないでくれ、君が怒りを感じるのはごもっともだが、理由は一つではないんだ、他にもあるんだ」
表情を見ていないのに感情が伝わっている?っむ、見たな私の心!!
感情のままに背中をペチペチと叩くが反応が返ってこない!
「俺はそういう物を全てカットしている、当然、そういった感情全てだ!俺だって、漢だ、男なんだよ…わかってほしいサクラ…そういった事を知らない娘の前でそういった行為はしてはいけないだろう?大人として最低限のマナー、家族として気をつけないといけないだろう?」
懇願に近い初めて聞く声に頷くしか出来ない、私が浅慮過ぎた…ユキさんの存在を忘れていたっていうお姉ちゃんとしては最悪の行動をとってしまった。
状況を完全に理解し真っ白だった頭に大人としての最低限のマナー、家族として気をつけないといけない超えてはいけないラインがある!っという大人の事情を理解したので何度も小さく頷いて知らせると
「良かったよ、君に勘違いされると誤解を解くのに時間がかかってしまうからな、ほら、お湯も沸いた、紅茶くらいは飲んで行きなさい」
熱烈な熱いハグからゆっくりと解放され、手を繋がれてソファーに向かって歩いていく。
レディに慣れなかったからといって今すぐお母さんの部屋に戻ったら何を言われるか…後々お互いわかったもんじゃないもんね。お茶の一杯くらいは付き合うべきだよね?
「砂糖は好みで入れてくれ」
ソファーの前にあるテーブルにカップが二つ置かれ、砂糖が入った小瓶も置かれる
何時もの様に遠慮することなく砂糖を小さじ三杯入れてから口につける、うん、落ち着く。
この流れで完全に普段通りっと言う感じへと着地したのが嫌でも感じる。服着たいなぁ~…
「さて、何も言わなくてもいい、事の顛末は大体の予想がつく、あの人の入れ知恵だろう?」
うんうんっと頷くと頭を抱える様にため息を吐いている
「思い出した、思い出したよ…あの人は、あの人の血筋は恋と愛で出来ているのだな…俺が生きていた時代もこんなことがあったのを思いだ…いや、何でもない」
他の女との思い出を語りだそうとして直ぐ辞めたのは私が殺気を全力で飛ばしたから☆彡
気まずくなったのか無言で紅茶を飲み始める。
無言の時間が続き、お互いのカップが空っぽになる、このまま、傍に居たい気持ちもあるし、お母さんに泣きつきたい気持ちもある。
一杯だけでは時間が短すぎるもんなぁ…どうしようかな?どうすればいいのかな?どう…接すればいいのかわかんない…
悩んでいるとソファーの上に置いてある私の手にそっと手が重ねられる?んっぅ、今触れないでよ。離れたくなくなるじゃん、抱き着きたくなるじゃん…
「もう一つだけ、聞いて欲しい事がある」
指の隙間に彼の指が入ってきてきゅっと優しく握られる
神妙な声でどうしたのだろうか?…ぁ、他にも理由があるって、いま、言うの?私は、さっきの理由で納得してるから、別に言わなくても良いんだよ?
「…情けないことにな…ユキ暫く耳を塞いでいなさい…情けないことにな」
どうやら、会話と今の状況をユキさんが覗き見しているみたい、ユキさんは恋愛脳だからなぁ、興味津々だろうね。
して、何が情けないのだろう?勇気くんが情けないなんて思った事なんて、一度もないけどな?実は自信家に見えて虚勢を張ってたっとか?
「…この体が男性へと成長したはずなのに、アレが一度足りとて反応したことが無いんだよ」
彼の一言で見当違いの事を考えていると瞬時に察する…でも、その一言ってさ?
ん?そうだよね?それらをさ、全てカットしているからじゃないの?そういう反応しないように徹底的に煩悩を滅殺しているからじゃないの?
男のアレってそういう気分にならない限り、反応しないもの、じゃないの?
「生理現象で起きることもあるんだ、だが、それすらない…それすら、無いんだよ…」
…ん?生理現象で?ん?…ん?どういうこと?
「…男はな寝起きでも…」
小声でポツリとそういう状態になるのが普通だと言い、それが無い、そういった状態になったことが一度も無いという唐突なカミングアウトをどう受け止めたらいいのかわからないそんな高度な話をしたことないから、どう、どう…どうしたらいいの?
「ユキの魂や子供達の魂の影響だと俺は…思っている、人のせいにするつもりは無い、無いんだ!これは、これはきっとそう決めた俺の矜持だ…一人の親として子供達に指を刺される様なことはしたくない、彼らの魂が救われない限り俺はそういった感情を抱かないようにしている、してきた!その結果だと俺は信じている!俺は不能じゃない、不能じゃないはずなんだ」
私にはわからない彼なりの葛藤があるのだと初めて知ったんだけど?勇気くんでも耐え難い程の事ってことだよね?男性にとってそういうのって凄く大事な部分だったりするのかな?
「それにだ、ユキがメインとして活動していた時代ではこの体が男性にならないようにコントロールもしてきていた、それの逆をすれば問題はない…きっと問題はない筈なんだ。だから、サクラよ」
こういった話をしたことが無いからどういう対応をすればいいのかわからず困惑し続けていると優しく肩を抱かれ引き寄せられると
「全てが終わり、俺達の魂全てを解き放ち救いきったら、お互い、運命を忘れ、共に旅に出よう、君なら新しい自分の体を用意することは出来るだろう?運命を背負わされていない体を」
その言葉はとても力強く感情が込められていた。
こんなの…こんなの!!プロポーズとしか思えれない!!
それ程に真っすぐな言葉に頷くと
「ありがとう、世界を救った後は共に、世界を巡ろう」
満面の笑みで喜んでくれる
…やっぱりこれ、そういう意味だよね!?だよねだよねだよねぇ!?
「君なら頷いてくれると信じていたよ」
ぎゅっと強く抱きしめられる!?そっか…勇気くんも勇気くんで事情があって前に踏み込めれなかったんだね。
てっきり、私に魅力が無いからだとずっと思ってた
「ああ、嬉しい、嬉しいなぁ」
無邪気に喜んでる、のかな?凄く安らいだ声、初めて聴く声
「全てが終わったら俺一人でも行きたい場所があるんだが、君と一緒なら、どんな長旅でも楽しく向かう事が出来そうだよ」
長旅?っていうか、目的の場所があるの?
「…その、君から妖精の話を聞かされて、俺も思い出したんだよ、エルフと呼ばれる耳の長い人達が住まうと言われている森の事を」
うん、本に書かれていた森の事だよね?たぶん、その場所も行商人なら知ってると思うから、全てが終わったら宰相に頼み込めば交易っていう理由で外の大陸に出ることは出来ると思うけれど…二人っきりの旅にはならないだろうなぁ。監視役が絶対に付いてくるから、たぶん、お爺ちゃんとメイドちゃんの二人は絶対に付いてくるだろうね
「なぁにそれくらいなら、構いやしないさ、多少人数が増えても問題ないくらいにお互い稼いでいるじゃないか。それにだ…君の言うとおりだ、それもそうだよ、フェアリーダストが手に入るのであれば入手経路をたどっていけば森に辿り着ける、そうか、君が築いてきたコネクションを使えば、案外、楽に辿り着けるかもしれないな」
そうだよ…そうじゃん、そうじゃん!良いかも!私もこの大陸の外の景色を見てみたい、私の知らない世界をもっと見て回りたい!
「だろ?俺が生きていた時代は交易がそこまで盛んではなかったからこの大陸以外の事なんてしらな…おっと、ユキがもう耳を塞がなくてもいいかって駄々をこね始めた、どうだろうか?構わないか?」
…ん~、そうだね、大人の話はもうお終い、かな?だったら問題ないんじゃない?
「ありがとう、ユキ、耳を塞がなくても良いぞ、文句をいうな、二人だけの秘密、そんな話をしても良いじゃないか、許せよ」
どうせなら、ユキさんも連れて行こうよ!
「それも良いな、どうだ?ユキは新しい体を手に入れたら一緒に…旅行っというやつか?俺達と共に外を見て回らないか?」
親子三人、違うか?えっと、夫婦二人と妹が一人、それを見守りつつ監視として同行してくれるお爺ちゃんに、皆を世話するために強引に連れてこられたメイド一名
…嗚呼、何てステキで明るい未来なんだろう、嗚呼、胸が昂る、好きな人と一緒に旅ができるなんて夢のよう。
彼が望む世界を私も見たい、私が望む未来を彼と共に歩みたい。
うん…あのプロジェクトはユキさん、名も無き弟の為だけじゃない、未来を歩む為に私の為でもある。
永遠を生きるつもりは無いけれど、世界を救ったのなら、救うことが出来たのなら…
普通の女性として生きる未来があっても、許してもらえるよね?
粛清…されない、よね?
意識を魔力を込めて寵愛の加護、その奥に向けてみる、彼ならきっと祝福してくれる、始祖様の代理人である彼なら…
応えてはくれない…
期待を込めたけれど、彼ではその裁量は無いの、かな?そうだと、良いな。そうであれば、彼らが私を粛清するに来るとしても時間が必要だよね?
粛清されるのなら、それでもいい、始祖様達が築いたルールを犯していたとしても粛清しにくるまで私は自由に生きればいい
罪を償えと言うのであれば甘んじて受ける。それがどんな内容でもね
嗚呼、未来を想像するのってこんなにも…こんなにも嬉しい事なんだ、こんなにも輝いて見えるんだ、こんなにも幸せだと感じることができるんだ。
思い出した、思い出せたよ、お母様。
感じれたよ、感じることが出来たよ、あの感覚をまた、お母さん。
子供のころに夢見ていた輝く未来を




