Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (48)
忙しなく日々が過ぎていく、その方が余計なことを考えなくてもいい、余計な刺激が無い方が私にとっては都合が良かった…
作戦開始まで残り一ヶ月を切った
都合が良かったと、刺激が無いから目覚めることは無いと安心しきって油断していた。
疲れきった体を休めるために意識を落としたのが、ううん、違うかも…刺激が無さ過ぎたのが良くなかったのかもしれない…
残された時間が…肉体か、心か、何方かはわからないが限界が近いのだと警鐘っというか、警告っというか、ある事件が起きちゃった。
ある日、唐突、予兆無く、突然だった…夜中に私の体が勝手に動き出した。
当然、その間に起きた出来事を…私は知らない、覚えてすらいない…精神も擦り減る程に多忙だったから。
目が覚めたら…お母さんが私にしがみ付く様に抱きしめて寝ていた…
久しぶりの感触に嬉しいという感情が湧きがったが直ぐに
どうして、私がお母さんの部屋で寝ているのか理解が出来ず、心が乱れ不安で押しつぶされそうになった。
抱きしめらているのも私が何処かに行かないようになのだと伝わってきて、消えて居なくならないように繋ぎ止めてくれたことへの感謝の気持ちを込めて抱きしめ返すと優しく抱き返してくれた。
あの温もりを私は生涯忘れない、忘れる事なんて出来るわけがない。
お母さんが起きてから、事の顛末を教えてもらった。
無事、発見できたのはもしもに備えて部屋のドアにある仕掛けが施されていたから。
仕掛けの仕組み、そのものは私が考案した術式で私が寝る為にベッドに移動すると荷重によって魔石が術式にセットされて自動で起動する。
そして起動した状態でドアが開閉されたらお母さんに連絡が行くようになっている、それだけじゃない、部屋の外に出てから何方に向かったのかという情報も送られる様になっている。
その情報を元に私が夜中に何処かに行ったのだと判断して探し出してくれた。
見つけた場所は広場から少しだけ離れた場所に造った公園…森を疑似的に再現している場所、ハンモックとか用意して休息できるようにと戦士達の癒しの場所になればいいなって思って作ってみたはいいけれど、主に使用されているのが疑似的に森の中での戦闘訓練に使われている…そこにポツンと立っていた。
何をするわけでもなく、何かを探しているわけでもなく、誰かを待っているわけでもなく。
幻…霞の様に何時消えてもおかしくない雰囲気でただただ、空を見上げる様にポツンと佇んでいた
それを見つけたお母さんが声を掛けると、尋常じゃない殺気を飛ばしてきた…
その殺気に呼応するように叔母様が出てきて瞬時に私を封じ込めたらしい、考えられる事は、きっと下法…封印術式、本来の使い方だろう。
何時かは制御できないっていうのも過去の私達に失礼だよね、残滓達っていうのも失礼か…過去の想いが臨界域を超えて動き出す。
そんな日が来るかもしれないと、私からお母さんに念のためにお願いしておいたんだよね。
特殊な細工をするから、もしもが起きてしまったら助けて欲しいって、私が何処かに行っても見つけてくれるように…
それによって私が何処かに行く前に捕まえることが出来た、一度でも起きてしまったら何処で発生するかわからない。
それからは、子供の時と同じようにお母さんと同じ部屋で過ごしてもらっている。お母さん的にストレスじゃないかって申し訳ない気持ちになるけれど、今私という自我が崩壊すると殺戮の為だけに動く傀儡となってしまう。
共に生活するからこそ、異変を直ぐに叔母様が察知してくれる。お母さんが異変が起きても私が帰ってこれる様に支えてくれる。
お母さんと叔母様の協力によって私が勝手に動き出そうとしてもしっかりと繋ぎ止めてくれている。
そんな日々を過ごしている、街そのものは何も問題なく全てにおいて順調だって言うのにね、肝心要の私がこんな事じゃ…考えるのはやめようだって、今日は…
今日は…身体を整え心に余裕を持たせなさいとお母さんから注意されたので何もしない日にすると決めたから。
なので、昼からはソファーに座って何も考えないように何もしないように休めていると
今日はお母さんも私に甘えたいのか、ずっとソファーに座って寄り添うようにくっ付いてきて離れない。
まぁ、私としては独りでいる方が辛いし、心を許せる人が隣に居てくれている方が心が休まって嬉しいから良いんだけどね。
ソファーで寄り添って何かを話すわけでもなく、何か遊ぶわけでもなく、ただただ、まったりと、ダラダラと、忙しい日々を過ごし決戦迄、残り僅かだからこそ、こういう時間が必要なのかなって感じるようになってきた。
寝るわけでもなく何かを考えるわけでもなく、お互いの温もりを堪能する時間…かと思いきや?
「本当に私の部屋で良いの?」
唐突に?&今更?っていうか、何その含みある言い方?
…考える迄も無いよね何を意味しているのか分かってるよ。
「無理だよ、彼は夜中も出撃することがあるんだから」
決戦が近いというのに彼にアプローチしなくてもいいのかって忠告をやんわりと促すようにってことだよねー…
「それは、私もそうでしょ?外での夜勤何て」
「お母さんは別でしょ?状況を説明すればお母さんの代わりに外の勤務を請け負ってくれる人はいる、でも、彼の代わりはいない」
はぁ、そうよねぇっと、小声で呟いてから深いため息を吐き
我が事を思い出したのか、温もりを求めて抱きしめてくれてる
更に、もう一度、それもそうなのよねぇ、っと感慨深く頷いて溜息をついている
過去に起きた後悔を私もさせないようにする気遣いだってわかってる、その先を言われると気まずいからこそ、お母さんの思考がわかってるからこそ論点をすり替える。
「それとも、お母さんは私と一緒に生活するのって、嫌なの?」
「そんなことは無いわよ、お母さんとしては甘い蜜月を過ごしてほしいって思っただけよ」
っぐ、暗に女になって来いよって遠回しに攻めてくるかと思ったら、ジャブなんて捨ててストレートに!
論点をすり替えようとしたら逃がさないと言わんばかりに!っていうか、娘と思ってる人にそんな助言と言うか、アドバイスっと言うか、大人になれ何て言うの?
…お母さんだからこそ、心配しちゃうか。そうだよね。そうだけど、だけどぉ…私は、自信が持てない、お母さんみたいに男性であれば多くの方が魅力を感じ劣情を催すほどに素晴らしく魅惑的な体じゃないから。
話題を変えようにも変えれない、だとしたら、どうしてそう思ったのか掘り下げて有耶無耶にしちゃえ!
「それは…私に残された時間が少ないから?」
「そうよ、貴女の背中に大きな傷が…あと三日で出来るのよ?綺麗な体で抱いてもらいたいって思わないの?」
っぐ!更にドストレートにくるなぁ!決戦が近いから濁す気もないってことかなぁ!?
明確な女としての理由で殴りつけてくると思わなかった!
お母さんが過去に失敗したっという歩んできた道があるからこそ、娘には後悔させたくないっていう感情の押し付けじゃなかった!
何れ二人は結ばれるのはわかっている決まっている確定している、なら、初めてこそ美しい思い出とするために!傷一つない綺麗な体で彼と結ばれて来いっていう方向だった!
過去に向けての意思じゃない!未来に向けての意思だから有耶無耶にできない!!
…だったら、本音を言おう、自信が無いって…
「…彼は私の事、女だって思ってないよ?」
「それは違うわ、彼は貴女の事を意識している、でも、素直になれないのよ男ってやつはっ、ていうよりもあの家系はね~…」
…お母さんと偉大なる戦士長との恋物語、結ばれる直前で…お母さんもいろんな事情があって進めれなかった、でも、私にはそれが無いって言いたいのかな?それとも、あの家系は押さないと逃げるってことかな?追い詰めないと手を出してこないってこと?…でも、カジカさんから聞いた話だと偉大なる戦士長シヨウさんと奥さんが結婚した経緯から考えると、それは違うんじゃない?だって彼から求婚を迫ったって聞いたよ?熱烈なアプローチで結ばれたって。
今はそんな事を考えてる場合じゃないか…そりゃぁ私だって、想いを遂げたいよ?子供を授かることができないけれど、彼に私の全てを捧げたい、心は繋がっていても、体は繋がっていないっていう不可思議な状況にも納得はしていない。心も体も結ばれたいよ…でも、自信がない、無いの…
お母さんの気遣い、私に魅力が無いということに返事を返すことが出来ずにいると
「はぁ…貴女も私に似てしまったのかしらね、ううん、違うわよね、恋する乙女は何時だって前へ進む勇気がないだけ、夢見てるのよ。愛する人…男性の方からアプローチしてくれるのを、受け止めたいのよ愛する人の想いを、繋がってほしいのよ自分の願いを」
恋の伝道師の言葉は重たい、数多くの人達を見守ってきたからかな?
「・・・」
ターア・ジラとしての歩んでた道のりが重すぎてどう答えたらいいのかわからないので何も言えずに俯いていると
「貴女…はぁ、仕方がないわね~、ここ迄、世話を焼かされるとはね、母親として…違うわ、側室として生きてきた私達一族として一肌脱ぐわよ!!」
抱きしめられていたのが解放されたと思ったら、勢いよく立ち上がって私を両手で強引にソファーから立ち上がらせて手慣れた動きで私を抱き上げる?
ぇ、ちょ、ちょっとまって!?何処かに連れていく感じ?ぇ?勇気くんの部屋に連れていくとか無いよね?
ドアの方向に向かって言ったら全力で抵抗してやろうかと思ったら部屋の奥へと進んでいく方向的にお風呂?
「はい、お風呂入るわよ」
お母さんの部屋に設置してるお風呂場に連れていかれ有無を言わさず全身を徹底的に洗われる…
徹底的に洗われるんだけど、洗い方も凄く丁寧で、優しい、使われている洗剤もお母さんが普段使ってるやつは違って花の香りがする。何て綺麗で麗しい香りなんだろう…
たぶん…バラ、かな?…貴重な香料で作られた石けん、良く手に入れれたね?…きっとこういう日が来るとだろうと思って予め用意してくれていたんだろうなぁ…
敬愛する人物から伝わってくる想いを受け止める様に体を洗われていると徐々に私の中で前へ進む覚悟が育っていく。
うん、これは…もう私も覚悟を決めよう。
そうだよね、もう、三日後には私の体は…




