Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (46)
宣言をしてから一か月後
報告書を読み、状況を把握しているが概ね問題なし、寧ろ、三か月を待つ必要はないくらいに順調。
武器の生産は追い付ている消耗品の類も生産ラインを速めて突貫で作られていて敵との闘いで消費するであろう予測ラインを超えて更に生産され続けている。
私が思っていたよりも、王都の職人たちは何時でもこの状況になってもいいように準備を進めてくれていた、皆…この日を待っていたってことになる。
王都にいる兵士達だけじゃなく戦う術を持つ人達が…あと二か月後に始まる最終決戦を人類史に残る聖戦になると叫び、自分たちが未来を切り開くのだと聖戦に向けて貴族の門番や駐屯所などで働いていた人達もそれに呼応して辞職してこの街に集結してくれている。
王都で見かける懐かしい顔ぶれがこの街に集まってきている。今王都が他の国に攻められたら手薄となって危険だけれど…
其方に関しては問題ない、大国などが良からぬことを考えてもいいようにね、ちゃんと対策は練ってあるし備えもしてある。
こっそりと防衛するためにちょっとした兵器を作って用意してある、情けない男には秘密にしてある、宰相は知っている。隠してある場所は教会の地下に置いてある。
大国の馬鹿どもが攻めてきたり、獣共が何かしらの方法で攻めてきたら司祭ならそれを上手く使って一か月くらいはやり過ごしてくれる。
ただ…その状態になれば、どう足掻いても司祭は命を落とすことになるだろうけれどね。
それに関しても司祭にも事前に伝えていて了承してくれている。彼も覚悟を持って聖戦に挑むつもりでいてくれている。
メイドちゃんはというと号令を出してから王都とこの街を行ったり来たりしていて急がしくしているので疲弊していないか心配だったんだけど
「姫様!!此方新しい報告書です!」
逸れも完全に杞憂だった、あの一件以来、大国はだんまりを続けている。
大国が何も動かない理由は何となくわかっている、攻めるのなら聖戦が終わってからか、聖戦のど真ん中って感じだろう。
普通に考えれば、聖戦で私達が勝った時が一番油断しているタイミングだし、勝利の余韻に浸って疲弊しているところを襲うのが一番楽だからね。
それまでは、馬鹿なことはしないと思いたい。
他に考えられるとしたら、私達が敗戦ムードになってきたら攻めてくる気がする、なので、大国に関してはね、今は放置していても問題ないかな?
そういう策を張り巡らせいるのだとしたら大国のやつらがメイドちゃんに何かしてくることは無さそう
だからかな?メイドちゃんは凄く生き生きしている…それは凄く喜ばしい事なんだけどなー…
この一か月で何があったのか…
何か知らないんだけど、勇気くんとの距離が近づいてる気がするんだけど?…なにがあったのかなー?根掘り葉掘り問い詰めたいんだよなー!
どうしてそう感じたのか、これは勘違いじゃない!長い付き合いだからこそ些細な変化でわかっちゃうんだよなぁ!
この間さーメイドちゃんが勇気くんに報告書を届けている所に鉢合わせたんだよね、普段なら気にしないんだけど、ふと気になったから遠くから観察してたらさー、普段ならしないのに、かる~く雑談とかしてたんだけど?あのメイドちゃんが…勇気くんから話を振るわけがないんだよなー。
つまり、メイドちゃんから話題を提供したってことになる…っぐぬぬ、メイドちゃんは可愛いから勇気くんが絆されるのもわかるけれど、ちょ~っとすっきりしないなぁ!
その事を思い出してしまい眉間に皺が出来たのを優秀なメイドは見逃さなかったのか直ぐに反応してくる
「何か、不備でもありましたか?」
困った様な表情で弱々しく声をかけてくる
「ううん、不備は無かったんだけどすこーしばかり私用で気になることがあるんだけどー」
ジト目でつい睨むようにメイドちゃんを見つめると、何かあったのだろうかと不安そうにしているので、ここは変に勘ぐるよりもストレートで行こう!
「え?戦士長と仲良さそう?…」
その質問に対して直ぐに視線が右斜め上に向かった?ってことは体験したことが無い事ってことになるから…ん?私の勘違いかな?
「世間話をしていた?あー!あー、ぁ~~…あのー、怒らないで下さいね?」
言い淀むってことは…私の知らない所で何かあったのは確実かな?これ、でも、私が危惧する方向じゃない感じ?
「そのー…実は発注した品々を運んでいる時に運ぶのを手伝ってもらったことがあって、その事でお礼を言っていただけですぅ…」
なんだ、その程度か、立場的に勇気くんの方が上になるから、そういった処世術は大事だよね。特に勇気くん狙いの人達からすればメイドちゃんは手伝ってもらったくせに後日にお礼も言わないのかって思われて目の敵にってなる可能性もあるもんね。
「常日頃から忙しく走り回っている戦士長に手伝ってもらったのは、その気が引けたんです、断りましたよ?でも、聞き入れてくれなくて…それだけじゃなく何故か、その時はいつものような高圧的な雰囲気も無くってぇ、優しい雰囲気だったのでぇ、機嫌が良いのかとぉ、思いましてぇ…申し出を断り切れなかったんですぅ…」
…高圧的じゃなくて雰囲気が優しい?…もしかして、ユキさん?何時ごろに会ったんだろう?これが夜中ならユキさんだと思うんだけど?
「時刻ですか?夜中ですぅ…夜遅くに行商の方が運んでくれて、急ぎの品々だったので、何時でも良いから運んで欲しいって頼んでいたらまさかの夜中で…何回か研究塔と搬入口を往復していて、ぼんやりと後20往復はしないとなぁ、って、げんなりしていた時に近くを通りかかった戦士長がお声をかけてくれてぇ~…甘えてしまいました、申し訳ございません」
ユキさんっぽいなぁ、たぶん、研究塔から私達の地下研究室に素材を取りに行った時かな?取りに行くっていって遅かった日があったから…その日の事かな?
そういえば、その日は、休憩中に珍しくメイドちゃんの事を話してたような?だとすれば、ぁ~なるほどねってことだね。なら、いいや。ユキさんに対しての感謝だったらいいや
「ただその、気になることがあったんですけど、戦士長ってお仕事の時は高圧的に在られようとされるのですか?普段は実はすごくおっとりした方だったりします?」
メイドちゃんならその違和感に辿り着くだろうね。雰囲気が違い過ぎるんだよなーユキさんと勇気くんって、そりゃぁまぁ、魂の部分で言えば完全なる別人だものね。
フォローしておこうかなっと。
「誰だって気が抜ける時はある?成程、ONOFFは大事にってやつですね!そうですよね、何時如何なる時だって張り詰めているわけじゃないですよね、戦士長と言えどってことですね、では、私は戦士長の貴重なOFFの時にお会いしたってことですね!」
…凄い好感触なんだけど?珍しい…メイドちゃん的にユキさんみたいなおっとりとした雰囲気の人が好みってことかな?…おっとりというか何も考えてない人って感じの方が適切かな?深く物事を考えないからねユキさんは。
「なので、姫様の恋敵になることは無いですよ!それでは次の仕事に行ってまいります!」
最後の最後に不必要なことを捨てセリフとして置いて行って、まったくもう…まぁ周知の事だから別にいいんだけどね。
私が勇気くんの事を好いているなんて、街の人全員が知ってるもん。
ドアを開けて次の仕事へと駆け出していく姿を見送り、去り行く隙間で見えた笑顔は恋する乙女の様に見えたのは、きっと気のせい。
順調に物事が進んでいる。
一か月前のアレ以降、敵の波状攻撃は無い、小競り合いも無い…
考えられる事は此方の色んな動きが活発になったから様子を見ているという状況だろう。
敵からすれば未知の道具に未知の魔道具、少しでも対策を進め完膚なきまでに私達を撃退する策でも講じているのだろう…
向こうがどれ程、私達を偵察できているかはわからないし、知る術も無いから作戦何て考えられない全ての可能性に対して対策を取ることは出来ない。
私達がするべきことは…ただ一つ、偉大なる戦士長一団を退けた特殊な人型、アレが一体だけとは思えれない…
それらを倒し奥地へと進む、そして、その奥にいるドラゴンを殺すこと。
…ドラゴンが最後の敵であるのは間違いないと思いたいけれど…それすらも罠だったらお手上げだけどね。
でも、ドラゴンが最後の殿で最強の駒だと思う、それらを倒してから敵の基地があればそこを襲撃して抑える、そこに何かがあればそれを解析し掌握する。
うん、最終目標はこれで間違いはない、後は過程だね。敵との闘いも瞬時に戦況が変わるだろうから、長期戦で行く、短期決戦での作戦何て無い、ぶっつけ本番上等!!その場その場で対処する!!半年間は誰も農作業や調合、錬金などを行わくても全力全開で動き回っても問題ない耐えられる程の物資は用意してある!…つっても物資補給部隊が前に出ることは無いから作戦中も作業は続けてもらうから1年以上は余裕で戦えれるんだけどね…人が怪我をしないっていう前提と言う無茶な計算だけどね。
思考も切り替えが終わったことだし、さてさて、報告書に書かれていた切り札の一つが完成したみたいだし、これの最終確認に行こうかな
机から立ち上がり、研究所へ向かう。切り札の一つや二つ、用意しないとね…私達じゃ、あれらには勝てないからね。
うん、概ね問題なし、超長距離でも使用できるのかはわからないけれど、何とかなりそうな雰囲気がある。
魔道具の構造的に~…それらに関しては問題ないかな?問題があるとすれば稼働時にどれぐらいのロスが生まれるかって感じだけど、その辺はもう考えないでおこう。
考えたところで実践までに間に合うことは無いからね。稼働できれば問題なし、後はこれを照射するための塔を建設したほうが良いんだけど、これは、間に合いそうも無いから壁から届く範囲での照射になるかなー?
研究塔で最終確認も終えたし、稼働させても問題はないっが…遮蔽物があると機能しないっという弱点は克服できていないからケーブルが届かない場所を補う形で運用なのは変わらないかな?後は、遮蔽物をどかせば良いだけってね、その為に必要なモノは揃えてあるから、焦土と化してもらうか。
別にあの大地が作戦後100年は生き物が育つことができない本当の意味での死の大地になろうがしったことじゃない。
魔力集積魔道具も改良に次ぐ改良で受容器としては申し分ないし、これで私は、無限ではないが無限に近い魔力を操ることが出来る。
地下だけの無敵じゃない、外でも私は無敵になれる。濾過装置も勇気くんと長年研究して出来ているから、戦場で夢を見ることは無い、んじゃないかな?
これもまた、ぶっつけ本番となる。
研究所での確認を終え外に出て次の目的の場所へ向かっていると
カーンカーン…
鐘の音が鳴り響き、大きな声で”上空警報!!上空警報!!”っという鳥が急接近した時に叫ぶ声が聞こえてくる




