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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (45)

これのおかげで彼の言葉全て真実なのだと、疑う余地なんて無いのだと伝わってくる。だって、勇気くんが見た景色が全部伝わってくるんだもん。

こんな風にさり気無く伝えたい事があれば使用してくるくらい、彼は、魂の同調という特殊な技能が熟達され極めていると自負するのも頷けちゃう。

お陰様で私の心は満たされ疑心暗鬼になることなんてない。この街で私を恐怖の対象だと思う人が居ない、それだけでも救われる。


「それにだ…君も知っているだろ?この街では獣達に殺された先達者の仇を討ちたくて志願している人達もいることを、君はその代弁者として怒っていることに彼らは感謝し涙を流している、君は人の心も…この街で死んだ人々…月の裏側か?そちらに旅立った人たちの魂も背負っているのだと…認められているんだよ君は」

人の言葉を真っすぐに信じないのが君の悪い癖だと両頬をムニムニと摘ままれながら軽くお説教されてしまう。

私だって、全てが善性だって信じきれたら、信じるよ…はぁ、人の悪意ばっかり向き合ってきたからひねくれちゃったのかもね。


その後は私が動いても良い時間までずっと雑談に付き合ってくれたんだけど…

最近の話題で多いのが私のネーミングセンスの悪さについて…だって、私が決めていいってなると悪ふざけが主になるんだもん…

「俺は好きだけどな?シャイニングスパーク」

「いや!ダメだから!その名前!!ってか違うからシャインスパークだから!」

そう、少し前?ん?もう一月近く前かな?時間が経つのが速い…

お披露目会で披露した『広域閃光小型種殲滅魔道具』の名前が長いってことで決めてくださいって研究所から詰められちゃって

閃光=シャイン

弾ける=スパークってことで

シャインスパークなんてどう?って悪ふざけで言ってしまったのが良くなかった…採用されるなんて思わなくてさ、それで行きましょうって決まっちゃって、訂正する間もなく満場一致で可決されちゃってさー、私だけだよ?その名前で決まったことに冷や汗を感じたの…

…だって、その名前丸パクリだもん、その、地球でみた技の名前からインスパイアっていうかモロに取ったんだけど…

「何がダメなのか俺にはわからない、カッコいいと思うけれどな?」

「っぐ、ぅ…確かに議会でも今までとは比べ物にならないくらい良いじゃないですかって高評価だったよ!!」

そんなわけで、長ったらしい名前の魔道具達が少しずつ呼びやすい名前が付けられているんだけど、私のセンスだとなぁ~…地球の知識からになるんだよなー。


そんな話題で盛り上がっていると部屋がノックされる音が聞こえドアが開かれる。

「入るわよー…あら、失礼。戦士長もいらっしゃったんですね」

「はい、報告などがありましたので」

お母さんがドアを開けると勇気くんが直ぐに立ち上がりベッドから離れる。

何時からか、最初からか、わからないけれど、勇気くんとお母さんって何処か他人行儀なんだよね。

まぁ、理由は知ってるんだけどね、生前の勇気くんってお母さんそっくりな人に頭が上がらなかったからだってね~…

どうしても、あの姿を見ると昔を思い出してしまいそうになるからなるべく、距離を近づけたくないんだって…


ほんとうに それだけ の りゆう なのかなぁ?


一瞬だけ嫉妬の炎が燃え上がりそうになってしまう。


「では姫様、席を外させてもらいますね」

一瞬だけ、此方を見てから逃げる様に去っていった…きっと、私の中で膨らむ嫉妬の気配を感じ取ったのだろう、ね!!

部屋を出る前に一礼して逃げる様に部屋から出ていく、その後ろ姿を見たお母さんが

「…逃げ足の速さもお父さん似なのね…」

何処か寂しそうな顔で見送っていた。

「貴女も大変な人を好きになったものね、血筋かしらぁ~」

にんまぁっと下卑た笑みを浮かべて近づいてくる…っく、恋の伝道師っという肩書を持つだけある、こういうのにホンっと敏感!!

「まぁ、私の娘ですもんねー、好きになるのも頷けるわよねー、はーお母さんは寂しいなー愛娘が取られちゃうのって~」

ヨヨヨっと泣く真似をしながらもテキパキと診察を済ませていく、この状態で下手に何か言えばヒートアップするので黙るのが正解!!


「骨は最低限くっ付いたって感じね、どうする?後一晩ここで寝ていれば完全にくっつくわよ?急ぎの用事があるなら、移動先まで回復の陣を運ばせるわよ~?」

うりうりとほっぺたをプニプニと突きながら真面目な話をしないでよ、どういう風に返事すればいいかわかんないじゃん!


急ぎの用事はあるけれど…今日は独りになりたくないなぁ~…

「ん~…ここで寝ててもいいかな?」

「良いわよ、なら、私も今日はここで寝ようかしら」

私が弱気になっていることに直ぐに気が付いてくれたのか傍に居てくれると言ってくれる。

向けられる瞳も表情も…子供を見守る母親、私は一生この人に頭が上がらないんだろうなぁ。

「…良いの?お母さん、んん、団長はやることがあるんじゃないの?」

「別に構わないわよ、っていうか、団長呼びに訂正しなくてもいいのよ、貴女が私の事をお母さんって呼んでいるの知らない人なんていないわよ?この病棟だとね」

そうだけど、ちょっと恥ずかしいと思う時ってあるじゃん?お母さんにとってメインの職場でさ、肩書じゃなくて名前でもなく、お母さんって呼ぶのちょっと恥ずかしいなぁって思う時ってあるじゃん?

お母さんが恥ずかしくないのなら良いんだけどさ


「それと決まれば、着替えてくるついでに食事も持ってくるけど~、他に何か欲しいものってあるかしら?」

気を使って何時も以上に優しい、その言葉に甘えたいけれど、特に思い浮かぶものも無いので静かに見送った。

ドアが閉まり、病室には私以外誰も居なくなり静かになると…思考がぶれる。

その思考に誘導されないように他の事を考えるが、隙間を攻めてくるように違う思考がノイズのように走る…

思考が呑み込まれないように明日のスケジュールを考える

”壊したい”


実験の新着状況を思い出す

”壊したい壊したい”


新兵達の練度はどの程度まで進んでいるのか

”壊したい壊したい壊したい”


大国が最近静かになったけれど、何かしでかしてこないか、考えられるケースを探ろう

”壊したい壊したい壊したい壊したい”


宰相は、取引から戻ってきているはずだよね?本を持ってきてくれたのだから、なら、次の段階に進めて

”壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい”


進めて、王都にいる兵達に獣対策として戦い方を

”壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい”


戦い方を…変えて貰わないと

”壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい”


ノイズが走るたびに小さな頭痛がする、前頭葉の辺りが痛い…

おでこに走る痛みから逃れるために手を当てて暫く何も考えないようにするが


ノイズと共に痛みが永遠とリピートされていく。

痛みとノイズからくるダメージに心臓がドクドクとリズムが速くなったり遅くなったりする…




…もう、限界が近いのかもしれない、じゃない、もう限界が来ている




…スケジュールを早めよう、ある程度の準備は終えている、不安要素はある、あるが、私のコンディションが狂ってしまった方が作戦が失敗する。

お願い、残滓たち、お願い、過去の私達、お願い、後3か月だけ待って…三か月後には作戦を開始する…


覚悟を決め終えるとノイズが止まる。

幾重と過ごしてきた過去の私達、ひとつ前の私はどうやって付き合ってきたのか質問してみたいくらい…


ノイズから解放されると視界が真っ白に染まる。

真っ白な世界に多くの人達が見える、嗚呼、私達のような白き聖女が住まう楽園のような


「そこに妹はいるのかしら?」

白き清浄なる世界から暗き憎しみ渦巻く世界に戻される

「おば…さま?」

ぼやける視界に映る人物に声を掛けると

「薬の影響かしら?それとも寝ぼけているの?ほら、横になりなさい」

抵抗する力も無くベッドで横になる

「軽食を持って来たけれど、少しゆっくりしてから食べるとしましょう」

持ってきた食事などをテーブルの上に置いてからベッドの横に大きなリクライニングチェアを運んできてその上に座り、そっと手を握りしめてくれる

「何があっても私が傍に居るから安心して寝なさい」

眠くないんだけど…脳が酷く痛むからお言葉に甘えよう…

目を閉じて…手から伝わる暖かい感情によって覚悟を決める


…起きてから、お母さんに話そう…最後の作戦を開始すると…


決意と覚悟を宿し思考の渦にダイブすると…燻ぶっている光が見えない、作戦を開始する凡その日取りが決まったからなのか。

お母さんが傍に居るからなのか…たぶん、両方かな。ズキズキとした痛みも余韻を残すだけ…


今の状況なら安心して思考を停止させることが出来る…

泥の中へと身を投じ、思考を遮断させる。





「起きなさい、朝よ」

体が揺れる振動で目が覚める、懐かしい起こされ方、泥の中から強制的に起こされるのではなく自然と目が覚める意識の覚醒の仕方

毎日こうであればいいのに

「骨が折れた日は体が回復しようとするからかしら?起きなかったわね」

寝起きで直ぐに動けない間に、体温を測られたり脈を測られたり、病衣を脱がされて触診される

「うん、問題ないわね、綺麗にくっついてる、さて、仕事の時間まで時間はあるわよ、朝食を食べに行きましょう」

立ち上がり移動しようとしたので直ぐに服を掴む

「…もう少し微睡んでいたいのかしら?」

此方に向き直してくれるので首を横に振る

「…甘えたいってわけでも無さそうね」

私の表情から何かを察したのか椅子に座って真剣な表情で此方を見つめてくる

真剣な表情と声で告げる

「最終作戦のフェーズに移行する、お母さん、私にアレを施して」

一瞬で顔が真っ青になる…わかってる、アレを施すということは私が…

「もう、それしかないの?そうならないように貴女は」

わかってる、アレを使わないように色々と頑張ってきた、でも、もう、私の時間がない。

静かに頷いて真っ青になった人物を見つめ続ける

「…そう、覚悟はしていたわ…でも、アレを貴女と接続しても貴女は」

「うん、死なないよアレと接続しても長く稼働し続けた実績が私の中にある」

死なないが狂う可能性が高いのと、この街の動力源が無くなるってだけ、生産力などが落ちるから、結果的に街が停滞する。

っま、あいつ等を倒さない限り未来は無いから2,3年停滞しても問題ない。どこかの国が攻めてくることなんてない。

「…いつ、最終段階に移行するの?」

「三か月後を予定して動く」

お互いがこの街を管理する幹部としての…静かで清らかな病室の中に不釣り合いな張り詰めた様な空気が漂い始める。

唐突な展開だというのに神妙な顔つきで言葉を受け止めてくれている…これ以上言葉は必要ないだろう。


二人だけの会議は確認程度で終わる、何故なら、既にある程度作戦を決めていたから。

今から慌てて行動を起こすわけじゃない、来る日に向けて覚悟を持って行動をし続けていたから

だから、お母さんは私の無茶ぶりに手を貸し続けてくれた。だって…お母さんの中にも復讐する動機がある、叔母様の中にも復讐する意味がある。


私達は復讐者…この街にいる殆どの人があいつらに恨みを持っている

この街は、死の街、多くの死者があいつ等に恨みを抱き遺恨を抱え生きている。

死者から生者へと私達は返り咲く、死の無念を晴らす、明日を勝ち取る!!!人類の脅威を取り除く!!


お互いこれ以上の会話は無く、やるべきことを、すべきことをするために、病室を出ていく…




朝食を食べてから直ぐに緊急会議を開き最終決戦に向けて動くことを全部署の幹部に伝え解散する。


各々の部署が決意を固め動き出す…

その後ろを姿を見て、誰も不安に感じていない事、長年コツコツと進めてきたことが開始されるのだと覚悟はとっくの昔にできていたと伝わってくる。

頼もしい後ろ姿を見てふと思う…人類総力戦って言いたいけれど、私が知らないだけでまだまだ、この大陸以外にも強き民は…きっといる。

妖精がいるのなら、ドラゴンだっている、エルフがいるのならドワーフだっている。

私が知らないだけでこの世界には強者がいる、私達がダメだったとしても、何時かは獣共を駆逐してくれる。

そう思うだけで、失敗したとしても、これがきっかけで世界中の人類が動いてくれるきっかけになってくれると信じることができる。

その為にも示さないといけない、残さないといけない私達、人類が絶対的に対話が通じない自身の意思をを曲げない引かない相手に対して倒し続け殺し続け相手が滅びるまで!

徹底的に交戦するっという姿勢を各国に示す!人類の明日を勝ち取るのだと!!

今までのような…人類を脅威から守る最前線の防衛基地としてではなく、生存戦力の要としてこの街を死の街から明日を目指す希望溢れる街に変える!!


そう!私達の戦いはこれからだ!!!


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