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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (37)

ただ、困ったことにユキさんの体を作るのに精いっぱいで…これ以上はお母さんのこれくしょん?に手を出せないし

ユキさんのお母さんに再度、協力してもらうのは気がひける…


なので、弟の肉体はどうしようかって悩んでいる。

いっその事…そう…いっそのこと…保険として救世主でも作ってみようかな


そう…もしも、何かの弾みで私が機能しなくなってしまったときに備えて研究している極秘プロジェクト。

この神をも恐れぬ罪を背負うプロジェクトがひっそりとスタートしている。私達の手で、始祖様に近しい存在を…


本人とはいかなくても血脈を辿り、始祖様から受けついだ能力でお互いが欠けている部分を調べ、補う様にして、私達よりも、もっともっと血を濃くして

始祖様に近い存在を生み出す、先祖返りをこの手で実現させる。

私達が勝利したら、そんなプロジェクトは不必要になるかもしれない、それはそれでいいじゃん。

だから、これは私の我儘。彼をこの世に連れ戻してあげたいって言う私の我儘。


我儘な私は貪欲だからね、研究者としての欲を満たすかのように、どうせならさ、名も無き弟に最高の肉体をプレゼントしたいじゃん?ってわーけ

そんなわけで、この街にいる全員の血筋とかを秘密裏に調べている。

血液を健康診断っという名目で搔き集めたりしてね…っていうかもう、殆どのデータは揃ってたりする。

推測だけれど、この人はこの部分が始祖様の血が濃いんじゃないかなぁ?ってデータも取れているから、そのデータを元にその人にその部分が他者よりも優れているのか勇気くんに頼んで身体検査とかで確認してもらって…ほぼ、確信に至ってる。


血液中に含まれている始祖様の因子っと私は名付けているけれど、それがどの部位に影響を与え力を授けてくれているのか、大体の法則は理解した。

後は、それらの因子を全て結合させて、産まれてくる肉体に植え付ければ…疑似的な始祖様の肉体を用意できるかもしれない。


崇拝する人物を人の手によって再現する。

教会の人間に見つかれば、王族に見つかれば、敬虔なる信者に見つかれば…私は即座に断罪される。

…始祖様の後ろにいるかもしれない始祖様の一族に見つかってもね。


…断罪される覚悟何てね、とっっっくの昔にできてるっての。


出来るのならクローン技術を確立したかったっての。つっても?培養に関してはクローンみたいなもんだけどね。

全身でのクローンは出来ない事も無いが…不安が多いからね、培養に途轍もない時間と費用が必要だもの

それだったら、精子と卵子をね、ちょちょいっとやってさ、試験管を子宮にすればいい。そして、他者から集めた因子を惜しみなく胎児に投入する。

馴染めば良し、馴染まなければ…どうなるのか予想は出来ない。それに、見えない魂を見えるようにするのも難しいし、狙った魂を宿せるのかっていう課題もある。


あるんだけど、不思議と…それらの不安を感じたりしない、運命力という物があるのだとすれば、名も無き弟はここに降臨する。

そんな自信が不思議と根付いている。


視線を上げて、培養液の中を浮かんでいる小さな子供の体に視線を向ける…ユキさんの新たな肉体、完成形が目の前にある。

この実験データがあるからこそ、このプロジェクトを踏み出す決意が出来た。

新しい肉体を培養液と言う名の子宮で育て、宿るであろう魂を束縛して空っぽの器…そこに名も無き弟の魂を入れる。

ほんの僅かな間だけとはいえ、私は彼の心に触れている、彼からは清き善性しか感じることが無かった、だからこそ、彼を救世主として顕現させるのが…下手な魂よりも世界を救う可能性は高いってね、打算的な部分もあるし、死の50年、始祖様達の子供が起こした天変地異を再現させるわけにもいかないからね、誰も敵う事がない強き肉体には清き魂が必要。


世界を救うって言う大義名分を掲げているけれど、突き詰めちゃうと、私の我儘だって言われても否定はしない。

実験がしたいだけっていう部分も否定はしない。

どうせなら最高の肉体を生み出したいって言う好奇心は否定する事なんて出来ない。

ってなわけで、好きな因子を組み合わせて私が理想とする肉体、始祖様に最も近い器を用意して、名も無き弟に新しい人生を歩んでもらうってわけ。


それに、このプロジェクトが成功したら、してしまったら…命短し運命から解放されるっということでもある。

つまり、私の新しいボディを生み出せるっと言う事。私のボディとして相応しいって考えるとさ…まぁ間違いなく始祖様の体だよね。

始祖様と同じってのは比べようがないし、現存していないから不可能だけどね。


他の選択肢としては

お母さんの…本当の娘になるっていう選択肢もある。


あるんだよ、お母さんの卵子を使って、お母さんのこれくしょんを使えば、私は本当のお母さんの子になることが出来る。

できる、可能性はある、あるけれど…


私は…お母様から授かったこの体で最期を迎えたい。


新しい肉体を作り続ければ…永遠を生きることが出来る。

でも、私は、永遠を生きようとは思わない、命が短いからこそ、私は輝けた、限りがあるから、頑張れる、明日を求めるからこそ、今を大事に出来る。

…それにね、お母さんや、ユキさん、勇気くんが居ない世界なんて私…興味が持てそうもない、彼らがいない世界なんていらない。

だから、永遠を生きようとは思わない。限りある生を最後まで足掻き続けて血まみれになろうが、最後まで足掻く。


それが…お母様の分まで生きるっということじゃないかなって、思うようになった。

生きるためには、いきる、ためには、みらいを、いきのこるためには…


そう…だから…だから、だから…




だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから




いきるためには あれら ふよう ころしつくす




「ひめさま…姫様!…お姉ちゃん!!」

パチパチと頬を叩かれ懸命に呼び止められる声で正気に戻り、視界に移る表情を見て胸が裂けそうになる。

「…おねぇちゃん…やだよ、怖い顔しないで」

涙目で訴えかけられてしまう。貴女の綺麗な顔を崩さないで、貴女のそんな顔を私は見たくないよ。いけない、この子の前では狂ってはいけない…

優しく優しく私を呼び掛けるように頬を叩いて、歪み、壊れ、狂っていく私を繋ぎ止めてくれる優しい指先に、狂いかけて震えが収まらない指先を重ね

「ありがとう、ありがとうユキさん、ありがとう、呼び止めてくれてありがとう」

感情を抑えることが出来ず涙が溢れ出てしまう…

「ううん、いいの、お姉ちゃんが辛いのは知ってる、私達、みんな知ってる、お願い、居なくならないでお姉ちゃんが居ないのは…私は嫌だよ」

…何度も何度も…幾重にも幾度も…死を経験してきた弊害が…私の心を狂わせている…あいつらを殺しつくさないと収まりそうもない憎悪が、私を焼き尽くし壊そうとしている。

その炎は日に日に大きくなってきている…残滓と言うと失礼だが、死にゆく運命の果て、残された想いが強く何度もリフレインしお互いを増幅させるように膨れ上がっている。


…私の自我が今もなお保てていられるのは、ユキさんと勇気くんとお母さんのおかげ、この人達がいなかったら私は狂人となって人類を滅ぼすような魔女へと堕ちていた。


こういう、自我を失いかけるきっかけはアイツらの事を考えた時、私達が求める想い…憎悪が顔を出すと私達が一斉に起きて声を荒げる。

そうならないように気を付けていたのに、いけない、少し気が緩んでいた。


勇気くんの時とは違う意味で心臓が暴れ狂っている、それを落ち着かせるようにユキさんが抱きしめてくれる。

同じ肉体なのに、どうしてかな?…ユキさんが表に出ている時は柔らかく感じる。嗚呼、どうしてユキさんと私は一緒に育たなかったのだろうか?

二人揃って幼少期を過ごしたかった、一緒に生きたかった、友達として、ううん、家族として傍に居て欲しかった。


愛する妹の未来の為に、私は…まだ、狂うわけにはいかない。






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