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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (36)

準備を進め続けていく、あいつ等と闘うための魔道具を…あと少し、各国から送られてきた弱き民達が一定の水準にまで、成長すれば作戦を開始する。

それまでの間に切り札を造り上げていく、強力な魔道具は幾つあっても良いからね。

かといって…順調に開発が進んでいるわけでもなし。

「…ん~…これも難ありだよなぁ~…んー…どう威力を落とすのか、ってのが課題だよなぁ~」

机の上に置いてある試作魔道具をどうやって改良するのか考えていると、声が太いけれど可愛らしい雰囲気のある声が聞こえてくる。

「姫様は…これをどうしたいの?」

地下研究所の掃除をしてくれているユキさんが声をかけてくれる、きっと腕を組んで悩みに悩んでいる私を心配してくれたのか、純粋に好奇心でも湧いたのかな?ユキさんって魔道具に興味があるのかよく声をかけてくれる、私としても彼女と会話することで新しい閃きを得られることがあるし、気晴らしにも繋がるので助かっている。後掃除もしてくれている。


目の前にある魔道具には致命的な欠陥がある。それをどういう風に調整するのかってのが難しい

「これの耐久力を向上させるか、発動させる術式の威力を下げるかで悩んでる」

コンコンっと試作品を手の甲で叩き悩みを打ち明けると隣に来て長い筒のような魔道具を眺めていると筒型の魔道具を鷲掴みにして、さらっと、軽々と、大きな筒を持ち上げている。

彼女の肉体は勇気くんの肉体だから、限界っと言う底が見えない程に日々、鍛え上げられているからこの程度の重さ、物ともしない。

それだけじゃない、彼女の心には余裕がある。自身の体が男性になってしまっても気にも留めない。

私達が知る彼女はある悩みで常にストレスを感じていて何時暴走するかわからないこの街を…いいえ、この大陸に住む人類に終焉をもたらす爆弾だった。

でも、今は違う、爆弾何て言わせない、今の彼女は、自分の体が男性になることに何もストレスを感じたりしていない。昔と違って心に余裕がある。


その理由は単純明快、彼女の夢が叶うから…

後は、待つだけだから。


なぜなら

私達が今いる、この場所…視線の向きを少し変えるだけで…見えてくる、大きな試験型魔道具。

その中には、彼女の魂を宿す為の新しい肉体が培養されている、ユキさんの夢は叶う段階までもう少しっという段階、故に彼女の心は平穏を保つことが出来ている。

試験管の中で眠っている胎児の姿勢で漂う肉体の大きさはまだ2歳くらいのサイズ。

勇気くんと私が何度も話し合って決まったのが、魂をこの体に移すにしてもまだ小さすぎるっと言う結論に至った。

出来る事なら実験を幾度となく行ってから安全性を高めてから行いたいが…動物では実験することが出来そうもないので、ぶっつけ本番となる。

なので、今の魂と肉体とのズレが大きければ大きい程、馴染むのに時間を要するだろうし、小さすぎるとユキさんも不便だろうってことで、肉体がもう少しだけ大きくなってから勇気くんと私が持てる全ての技術を使って…どんなことをしても魂を定着させてみせる。

その後は、私と勇気くんの娘として何処かの村から保護したことにして、みんなに紹介する予定。


…なんだけど、勘のいいお母さんならすぐに気が付くだろうなぁ…黒髪ってこの大陸じゃ珍しいし。

まだ肉体は2歳だというのに既に美しさが飛びぬけているもん、こんな綺麗な顔立ちしてる子供なんて、ね?雰囲気がどう見ても、ね?勇気くんにそこはかとなく似ているって時点で、ね?気が付いてしまうだろうなぁ。

運よく、私が子供を産めない体だから、人工授精で授かったと勘違いしてくれたらラッキーかな?


そうじゃないと、どんなお叱りを受けるかわかったもんじゃない!

だって…お母さんが秘蔵にしてあるアレを少し拝借して、美容目的とか、健康診断とか上手い事、騙し…説得してユキさんのお母さんにも協力してもらっている。

そこから何年も何度も失敗を重ね、研究を重ね、漸く成功した肉体。

なので、遺伝子的に言えば勇気くんの妹として何も問題が無い。魂もなじみやすいと思う。

…ただ、問題があるとすれば、ユキさんが理想とするプロポーションに育つかどうかってのは話は別だよ?お母さんみたいなどんな貴族でも悩殺出来てしまう魅惑のボデェを欲してきたら…まぁ、胸とか尻を盛るのは簡単だから、大丈夫か。


この研究は本当に難しかった、でも、凄く優位意義だった。

勇気くんと協力して魂に関係する術式をありとあらゆる文献を読んで開発し続けてきた。

私ではその術式を扱いきれないけれど、勇気くんが言うには、この肉体に魂と呼ばれるものは…恐らくだけれど、宿っては、いる、けれど自我が芽生えないようになっている。


封印術式の真なる効果を施している。

邪法も邪法、下法も下法、私は…神がいるのなら断罪されてもおかしくない下法を用いたからね。


この肉体に宿った魂には申し訳ないけれど、保険の為にそうするしかなかった。

記憶無き真っ新な魂であればユキさんの魂と呼ばれるもの、魂に記憶されていると思われる情報を新しい肉体に上書きしても直ぐに馴染むと思う。


だから、私としては早めに魂の同調で上書きをしたかったんだけどなぁ。

先も行ったように安全を期して万全な状態で挑みたいってことで、もう少し育ってからってことになっている。


じゃぁ、後何年も待つのかって言うと、そういうわけじゃない。培養液の中で加速的に、されど肉体が崩れないように育てている。

目的の年齢にまで育つのを待つとなるとね…たぶん、あと一年もすれば5歳くらいの大きさに成長…育つ、かな?

ただ、骨と筋肉は、培養液の中で育っているから脆いままだから、その辺りはしっかりとリハビリしてもらってってなるかな?


なので、幼い彼女はそういう理由で保護したことにして~、医療班…お母さんに託せばしっかりとリハビリしてくれる、それだけじゃないきっと、私のように立派に育ててくれると思う…

けれど、彼女を連れてきたその日の夜にお母さんから呼び出されるだろうなぁ。一目見て見破られそうな気がする。


事前に、勇気くんと相談済み。

その時が来てしまったら、理解ある彼女であれば全てを打ち明けても、受け止めてくれると信じて。

全てを、全ての事情を話そうってことになっている。なっているんだけれど、怒られるし不安材料もあるんだよね。


お母さんなら受け止めてくれるってのは、100%信頼している、しているんだけれど…秘蔵のこれくしょん?に、許可なく勝手に手を出したことはめちゃくちゃ怒るだろうなぁ…

下手すると叔母様も起きてきてブチ切れてしまう可能性もある!そん時は勇気くんの出番!勇気くんなら叔母様を御せれる!!私じゃ無理!怖すぎる!!


「お兄ちゃんならどう思う?」「そうだな、敵を人型として焦点を当てるのなら耐久力を上げるというよりも交換できるように筒を量産する方がいいだろう」

っむ、いつの間にか二人で相談してる、どんな意見が出てたのか確認しないとね。



勇気くんの提案としては威力を下げてしまっては人型を倒せれない可能性も上がってしまうのであれば、後方支援部隊に交換パーツを運んでもらえばいいね。

成程、確かに、その方が効率的って言いたいけれど、この筒を構成する素材が結構貴重な金属を使ってるから量産できたとしても10個が限界じゃないかなぁ?

時間的にもね?あと何十年もあれば、もっと量産できるんだけどね。


「だって、姫様」お兄ちゃんが提案した内容を話し終えたユキさんが、にぱっと太陽のような明るい笑顔で嬉しそうにしている。

何度か頷き、彼の言葉が正しいのだと肯定する。

「量産方向で考えていくとしようかな、ん~…今日はとりあえずこれで良いかな~」

長い時間研究していたので疲れてきた~と、表現する様に背筋を伸ばして肩をぐるぐると回して、疲れきってはいないけれどわかりやすく表現するためにね、その方がユキさんがわかりやすいから。

「ユキさん、悪いんだけど、飲み物用意してー、私とユキさんの分」

「は~い」返事と同時に直ぐに動いてくれる。

いつも、あれしてーこれしてーって言うと直ぐに動いてくれる、にひひ、これが長女としての特権って感じがして悪い気がしない。

「はい、何時もの」コンっとテーブルに果実ジュースが入った瓶が置かれるので、すぐ前の椅子に座るとユキさんも座ってお決まりの二人だけの女子会が始まる


この女子会も、もう何回開催しているのかわからなくなってくる。それくらい何度も何度も…時間の流れって本当に早い。

思い返してみると女子会の内容で、幼い時のユキさんの話題は殆ど無い、恋バナを除くとね、なので、基本的に私が見てきた感じてきた色んな世界の話をすることが多かった。

じゃぁ、ユキさんは何も話題を出さないのかっと言うとね、恋バナばっかり。恋多き乙女に育ったのか、色んな男性と女性がどういう状況なのか話をしてくれる。

…まぁ、普通に考えてずっと、勇気くんの中に居れば話題何て何もないのが普通、勇気くんの中で見て聞いた内容で勇気くんが興味が無さそうで私との間で話題にならないのが恋バナって考えると、しょうがないよね。


ユキさんの中で最近お熱なのが、何処か影があって気品ある人のことばっかり話すことが多い、敢えて名前を出さないってことはユキさんが気になってる人なんだろうね。

話の内容からしてたぶん、オリンくんだろうなぁ。

後は、お兄ちゃんにやたらと絡もうとしてくれる若い男のことかな?

よく見てるとなぁって感じたから、ユキさんってどの程度意識があるのか確認するために、勇気くんに聞いてみたらユキさんは意外と起きていることがあって、静かに見守っていることが多いんだって、子供達と一緒に…


…子供達は誰かって?私も勇気くんも完全なる事情は知らない、少ない情報からの推測としてはユキさんの体には複数の子供の魂が内包されていてる。

推測だから何とも言えないんだけどね、もしかしたら、ユキさん以外の子供が主人格になっていたってこともあるんだろうね。


これも、推察の域を出ないんだけど、もしかしたら、名も無き弟は…恐らく、ユキさんの体に本来宿る予定だった魂だったのかもしれない。

地下に居ると、どうしても名も無き弟を思い出すことがある。


今もきっとシヨウさんと一緒にいるのかな?あの時のようにこの地下であれば姿が見えるのかと期待してはいたんだけど…

アレ以降、姿を見ない。


何か特殊な条件があるのかもしれない…

もう一度、私の我儘だとわかっている、わかっているけれど、どうしてか私はもう一度、名も無き弟に会いたい。

だから、彼に会う為に、ユキさんの体を培養している試験管の隣に同じタイプの試験官が用意されている、その培養液にはもう一つ肉体を作るために日夜実験している。


名も無き弟に名を与える為に



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