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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (33)


ぁ!そういえば、耳の長い人から色んな話をしてもらったんだよね?その人の事気になる!


「あー、ぁぁ、幼き頃の思い出だな、かなり、こう言っては何だが、うろ覚えで申し訳ない、それでも良ければ…そうだな、とある森にすむ種族の話でもしようか?」

とある森にすむ種族の話ってことは~…耳の長い人のことかな?他の大陸で生きている人って、あの大国以外の人と関わることってほぼ皆無だから気になる!

「では、童話のようなものだが語らせてもらおうかな」

ほう?童話とな?そういうの大好物!!

抱き着いていた腕を離し彼の首元に両腕を肩を組むようにひっかけて体制をくるっと変えてお姫様抱っこの姿勢になると私が落ちないように直ぐに肩を抱いて抱き寄せてくれる

「まったく、子供か君は…」「この方が話が聞きやすいからいいじゃんね?」

甘える子供のように彼の胸板に頬をぴったりとくっつけていると、彼の腕からしっかりと力が伝わってくるので、力を抜いても支えてくれるので肩から腕を戻して綺麗に自分の胸の前に畳んでから両掌をそっと彼の硬い胸板にくっつけ、足はピーンっと延ばしていたのを彼の腰に巻き付く様に、脇腹に太ももを当てるようにして体勢を固定する。

こういう姿勢をとっても彼は怒ったり嫌がったりしない、これくらいくっついたりするのは、もう慣れっこ、私がひっつくのが好きなのを理解して受け止めてくれる。

そりゃぁ…最初の一歩目はすっごい勇気…いるよ?断れたらどうしよう、うっとおしいって思われたらどうしよう、嫌われたらどうしようってね。

でも、受け止めてくれたから嬉しい、凄く嬉しい!!って、勇気を出して一歩進む為に、こういう二人っきりの時間の時に、頭を彼の肩に乗せても何も言わずに受け止めてくれてから…くれてからぁ~…


エスカレートして今はこんな感じ。にへへ。


ただなぁ…少しずつエスカレートしてわかったことは…私の事、本気で子供としか認識してないんだよなぁってのがちょっと引っかかるけれど、こればっかりは…

いつか、彼の心を虜にするようなナイスバディに育ったら…好きって言ってくれると信じてる。ううん、愛してるって言わせてやるんだから!!

「さて、今思い出してみると…色んな童話を聞かせてもらったが、はて、どれを語ろうか?」

お?意外と色んな話を知ってる感じ?色々聞きたいな~…その方が長く引っ付いていられるし

「そうだな、子供達が悪戯ばっかりしないで家の手伝いをしなさいって意味がある童話をひとつ」


誰の言う事も聞かないルーニアはいっつも遊んでばっかり

妖精と一緒にあそんでばっかり


蒔き割りしない

洗濯物はとりこまない


困った困った

妖精たちも大喜び一緒に悪戯し放題


困った困った

大人たちも言う事を聞かないルーニアに頭を悩まされてばっかり


今日もルーニアは言う事を聞かないで遊んでる

大人たちはそうおもっていた


いきなりだった

ルーニアが悪戯をやめて手伝ってくれるようになった


楽しい楽しいと

笑顔で洗濯物を畳んでくれる


楽しい楽しいと

蒔き割りをしてくれる


楽しい楽しいと

子守りまでしてくれる


大人たちもこれには一安心

いっぱいいっぱい手伝ってくれたから

もうすぐ日が暮れる

大人たちは相談しました褒めてあげようっと

ルーニアを家に入れてよく頑張りましたと皆で褒めてあげました


でも外には

いつまでも悪戯をしてる妖精たちと一緒にいる

ルーニアにそっくりな子供がいいました


それは妖精だ、僕はここにいる


大人たちは笑いました

ルーニアは私達の隣

ここにいる

君は悪戯好きな妖精さんだろう?


そういって良い子になったルーニアと一緒に

みんな寝てしまいました


それから

ルーニアはどんどんいい子になりました

いい子に育ったルーニアの言葉がすべて正しい

あの時に叫んだ子供はもう二度と現れない

ルーニアが言いました


あれは妖精だよ


皆、良い子で可愛いルーニアの虜

ルーニアが言うことが正しい

こんなにも良い子のルーニアが間違うわけがない

ほら

悪戯妖精のルーニアに化けていた子はもういない

もういない


ここには

良い子で素晴らしくて可愛いルーニアがいる


めでたしめでたし


「っという、話だ、どうだい?」話の内容が背筋が凍りそうなオチにぞっとする。

ぇ、こっわ…それ、本当にルーニアなの?絶対、妖精だよね?

「ふふふ、怖いだろう?賢い君の考えている通りだよ、大人と一緒に居るルーニアは妖精だ」

「っげ、それじゃ本当のルーニアはどうなったの?」

「えっとな、確かこの話には続きがあって、この話を聞いてピンときていない悪戯坊主には妖精に間違われて見捨てられちゃうぞって脅して、悪戯しないで良い子にするって言う子がいたら、後日ルーニアは妖精の里で暮らしてしっかりと反省してから妖精王と一緒に村に戻ってくるって話だ」

へー、成程ね、子供達の反応を見てから結末を変えてあげるって感じなんだ!よく出来てる!!

「だから、もし、君に子供が出来て悪戯っ子だったらこの話をしてあげて欲しい」

「それは、私に子供が、授かる日がやってくるって…そういいたいの?」

人差し指を胸に突き刺してぐりぐりと捻るとしまったなぁっという困った顔をしている

「悪かった…サクラの事情を知っているのに迂闊なことを」

「別にいいよ?子供は…血が繋がっていなくても愛すると決めたら私の子供だよ」

私とお母さんがまさにそうだもん、血は繋がっていなくても魂が繋がっている、彼女から受けた愛は本物で私が彼女に抱いている、溢れるような感謝の心も愛

愛と愛が繋がれば…それはもう家族だよ。

「…サクラが言うと真実だと心の底から感じれるよ」

そっと頬に手を添えられ耳にかかった髪の毛を指先ではらわれる

「・・・・」

月明りに照らされた彼の顔は…本当に妖艶で妖絶で…美しい…その黒き瞳…何処までも吸い込まれてしまいそう…

目を閉じて唇を突き出したら…触れてくれるかな?愛してくれるかな?

高まっていく心臓が、今なら受け止めてくれるとGOサインを出し続ける


流れに身を任せよう、嗚呼、私は今ひとつ、大人の階段を登ります…


ゆっくりと瞳を閉じ

チカチカっと光が飛び勇気くんの顔が照らされる…閉じる寸前に!!もう!!

「おっと、もうそんな時間か」

ぱっと、光で顔が照らされた方向を見つめる…っち、もうそんな時間なの!?あーもー!!良い所だったのにぃ!!


その光が何を意味するのか、当然、開発者である私は、答えを知っている。

公園に誰かが近寄らないようにセッティングしている

なんとな~く、この付近に近寄りたくないなぁっと思わせる程度の思考ジャミング型魔道具、それの燃料が切れそうってことね!!

「ほら、サクラ…時間だ降りてもらってもいいかな?」

時間が来てもいつまでも引っ付いていたい我儘な子供を叱るように私のおでこをこつんっと人差し指ではじかれるので頬を膨らませてゆっくりと足を下ろして足の裏で地面と、こんにちはをする。

立ち上がると、彼もすぐに立ち上がってスタスタと公園の真ん中に歩いていき、誰も調べない様な場所に設置してある魔道具を取り出す為に片膝をついて講演のオブジェとして飾ってあるモニュメントの中から手際よく魔道具を取り出し、慣れた手つきで魔道具から魔石を取り出して、祈りを捧げるように魔力を注いでいく…



その姿の美しさに見惚れてしまう…

月明りが彼に手を差し伸べているかのように照らし、まるで始祖様が月に向かって祈りを捧げている様…

ここに芸術がある、ここに美がある、ここに世界を虜にする美しさがある。嗚呼、ここに宮廷画家を呼んで、今すぐに…

この美しい光景を絵に描き起こして美術館の一番いい所に飾ってほしい…



世界が止まってしまいそうになるほどに、美しい光景に心奪われて思考が停止していると

気が付けば「確か、これはここだったかな?」私が羽織っているマントの中に手を入れられてる!?っ、きゃっ!?と飛びのいて恥じらうのが乙女なのだろうけれど

「あったあった、すまない外すのが面倒なのでそのままでいてくれ」気がついたら抱きしめられるような姿勢になる、はぁ、私が彼との距離を詰めまくった影響で彼もまた遠慮なく私の懐に飛び込んでくる…はぁ、もう、心臓の音が凄い…今日はドキドキの連続だぁ…


高鳴る心臓の音で頭がいっぱいになっていると

「よし、終わった、これで帰りも、次も…ここに来るまで魔力は持つだろう」

「…うん、ありがとう」

つい条件反射でぽやっとした声で返事を出してしまう、頭の中が心臓の音で満たされて上手く働かない。

「…さらについでだ」

抱きしめられている様な姿勢からぐっと抱き寄せられ

「サクラの魔力も補充しておこう」

彼の体から魔力が流れ込んでくる…嗚呼、もう、頭が真っ白になる…しあわせ…




「よし、まだまだ流れていきそうだが、この辺りで勘弁してくれ明日は遠征なんだ」

すっと、暖かい光が離れていく

「俺はもう帰って寝るよ、サクラも夜遊びは程々にするんだぞ?」

光が優しく頭を撫でてくれる

月の光よりも眩しい光が離れていく…



マントの中に閉じこもる様に座り込む…今動いてしまうと彼の温もりが抜けていきそうで

彼が私から離れて行ってしまいそうで胸が張り裂けそうになってしまう


月明りに照らされながらマントをテントのようにして閉じこもってしまう。

高鳴る心臓が落ち着くまで、じっとじっと、彼の温もりを忘れないように、じっとじっと…

嗚呼、恋っていいなぁ、嗚呼、愛っていいなぁ…きっと、お母さんもこんな気持ちだったんだろうなぁ…





「ぃっぷしぃ」

ずずっと鼻をすすり冷えてきたのでマントを抱き寄せながら部屋に帰る。

帰る時も当然、マントの魔道具を起動させてから。深夜にマントを羽織って何してんだって噂が流れると面倒だもん。



帰ってからはちゃんとお風呂に入って体をあっためる。

お風呂上りは化粧台で髪の毛を乾かしながら櫛で綺麗にといていく。

何時でも彼に触れてもらえるように綺麗にする、お肌もちゃんとお手入れする。

お手入れの仕方はお母さんが教えてくれたからバッチリ。

鏡に映る私は今晩も可愛いかった。うん、うん、これで胸がもっとあればなぁ…


はぁ…無いモノは仕方がない、寝よう。


立ち上がろうとしたら化粧台に置いてある何かに指先が触れる。ちらっと視線を化粧台に向けるとそこにはルージュがある…つい誘われる様に口紅を手に取り声をかける。

「うん、今度こそ唇に触れてもらえるように頑張る!」…たぶん。

はぁ…今日みたいな良い雰囲気なんて滅多にないのに惜しかったなぁ…

ごめんね、アナタの色で彼を染めることはまだ難しい、かな?

口紅を化粧台に戻し、ベッドに飛び込むとすぐに闇の中へと吸い込まれていく。

今日も皆と一緒に彼との出来事を話し合おう、私達の女子会のはじまり…はじ、まり…



彼と過ごした夜だけは…いつ燃え上がって焼き焦げてしまいそうな程の復讐、怨念、魑魅魍魎から溢れ出るような業火から逃れることができる。

彼だけが…私を…私で居させてくれる…彼がいないと…私はもう…心を正常に保つことは難しいのだろう…




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