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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (32)

その後は、母の提案で夜ご飯を一緒にして共に寝て…急な一日が終わりを迎える。

などと俺は思ってもいなかったよ、予想通り、夜になり辺りから音が消えるタイミングを見計らって君が起き上がったので、俺も起き上り外に出た


二人揃ってゆっくりと外に出ると外は真っ暗だ、真っ暗だけど、サクラはこの付近で何年も生活していたかのように何処に何があるのか覚えているのか家のドアの近くに置いてある樽の上に座ろうとしたので、慌ててポケットからハンカチを取り出して敷くと君の瞳が潤んだのを今も覚えている。

俺も同じように隣の樽に座ったのは良いのだが、何から話せばよいのか、つい、俺を導いてくれた空を眺めるように視線を上げると


月は出ていなかった…

新月の夜だけは、あれらの気配を感じなくて済む…


視線を遠き遠き、空に輝く小さな光、アレを白き黄金の太陽は星と呼んでいた。

何時だって変わらない空、何時の時代だって光輝く星を見ているとそっと君がもたれ掛かってきたんだったな。

悪い気はしなかった、何も話すことなくお互いが傍に居る、世界に取り残されたのは俺だけじゃない。

安心して共に歩もうと伝わって来たよ。それを見ていたユキも初めて心の中で俺に話しかけてきたよ、私を助けてお兄ちゃんってね…夢の中でもないのに。


俺達二人は世界を救う為に…いや違うな。

聖女として、白き黄金の太陽として、たった一人の人物を救う為に…

敵の悪意によって仕組まれた魂を救う為に出会ったんだとね。


ユキの心と俺の心、何方が肉体を扱うのか主導権が完全に入れ替わったのは、それからだ…

ユキ自らが何も言わずに俺を前に押し出すようにしてな。


ユキから受け取った願いを受け止め、俺は全ての覚悟を決めたよ。俺の果たすべき使命、俺がどうして…古き時代の人間の意思があるのか、己が運命を見定め覚悟を決めた。

友が白き月を支えようとしたように、俺も白き月と共に歩み彼女の…彼女たちの願いを叶えるために。


魂の同調によって俺は未来をしった今なら何が必要なのか理解し、そしてそれを実行に移してもユキの心は砕けることは無い、彼女がその先を教えてくれたから。

なら、遠慮なんてする必要が無い全力を出し続けるだけだ…それを成し遂げる為に俺に何が必要なのか、答えは何時だって先にある。


祖父を尋ね、懇願した。

俺を鍛えてくれと


その言葉に彼は何一つ驚くことなく頷いてくれた。

いつかこういう日が来るのだと彼は思っていたのだろう、父のように決意を固めて言葉を紡ぎに来る日が来るのだと。


その後は爺さんとこに住む様になり、半年をかけて徹底的にこの時代の武を学んだ…


騎士達の卵が集まる場所にも案内されたが俺を相手どれる人はおらず

若き新兵達にも挑ませてもらった、だが、俺に勝てる人はおらず

全ての騎士達を倒し、近衛騎士とも陰で挑ませてもらった…その騎士達も俺には敵わなかった

我が古き一族の果てにも挑ませてもらった不甲斐ない末だと思うことは無かったアレはアレなりに頑張っていた

爺さんの血筋にも挑ませてもらった…全戦全勝とはいかなかったが最終的に勝たせてもらったよ

その姿を見て多くの人が新しい王の盾が生まれようとしているのだという噂が流れてしまったが、すまない、今の王に俺は興味がない。

偉大なりし王とは思えぬほどに何かに怯え、臆病者の様に視線を彷徨わせている情けない雰囲気が漂う王らしき人物が俺に声をかけてくれたが、どうでもよかった。何を話したのか覚えてもいない。


対人戦はもういいだろう、肉体を作るのならここよりも、あちらの方が理に適っている。

この実績を持ってすれば、誰しもが納得し反対なぞしないだろう。最後の仕上げとして父が歩んで手順通りに…

あの大地に行く為に伝手を持っている祖父に頼んだ


救いたい女性がいると


ここ迄の実績を持って来たのだ許しを得られると思っていた…すんなりと許しを得るどころが既に準備をしていると聞かされた時は、君の顔が脳裏に過ったよ。

予想外だったのが『俺も…わしも同じことを思うておる、先に行け、後に会おうぞ』どうやら祖父もこの大地に行く決心を固めていたようだった。

後で知ったんだが、俺が切磋琢磨している間に、君が既に誘っていたんだったな、祖父に声をかけるとは思ってもいなかったよ。


この大地に行くことを母に伝えると何も言わずに見送ってくれた。

いつかこういう日が来ると分かっていたのだろう、母もしっかりと立ち直って明日を生きる力を宿している様に見えたから

俺も、ユキも憂いなく前へ進めることが出来た。


この大地に来てからも、俺達は皆から望まれているのだと感じたな、多くの人が俺達を歓迎してくれた。

医療班も、戦士の人達も、騎士の人達も…


まるでここが俺の生きる場所だと言わんばかりに歓迎してくれた。


そこからは爺さんの家にいた時とは比べ物にならないくらいに地獄のような日々だったな…

午前から夕暮れ迄は毎日が訓練だった…それは今も大して変わらないと言えば変わらないか。

カジカさんと獣を想定した訓練

騎士部隊の人達と連携力を高める為の訓練

現場で緊急措置を間違わない命を救うために必要な医学の勉強

戦場で扱う魔道具の知識と使い方、応用力を学ぶための座学

時折やってくる、マリンさんとの取っ組み合いに近い素手での稽古


体が裂けるかと思ったくらいに苛烈な日々だった

それで終わればまだいい、夜は君と共に術式の研究ときたもんだ…

夜の間…君が隠している研究室にいる間だけユキは表に出れる、君とユキの時間を邪魔するのも気がひけたが、三人で色んな研究をした。


この街にきてから休む暇なぞ一時も無かった気がする。

我ながらよく耐えきったと思うよ…

恨み言ではないが、辛い出来事として、未だに覚えているからな?あの味…魔力回復促進剤に、一つ食べれば一日は問題ない栄養素だけを固めたじゃりじゃりの食感の丸薬…

あれを、毎日、おやつのように飲まされ食べさせられ続けてきたのだからな。


日々の訓練、幹部達からも期待される声、この街にきて、僅か半年で俺は死の大地で戦うことが許された。

といっても、最初は何故かサクラと共に戦場を駆け抜けたのだったな。

サクラと共に駆け抜けた日々は今も色あせることなく覚えている。

中型種の群れを殲滅し、大型種を俺と君二人で仕留め、人型も共に倒した。


戦場での活躍はこの街を出て王都にも広まっていると、行商を営んでいる商人から聞かされた時は、少し誇らしかったよ。

俺達の姿を見て多くの人が地面ばかりを見ていないで共に前を見て共に世界を救うのだと希望を抱いて欲しかったからな…君が考える先を俺は知っているからな。

気が付けば、この街だけではなく王都でも、世界を救うのはこの二人だと騒がれていた。


その期待に応えるように、戦果を挙げ続け気が付けば俺の後ろには共に戦う戦士達が居た。

それを見て、君は君で街を活性化させるために必要な軍資金を色んなところで手に入れ、気が付けば他の大陸の国とも取引をしていた。

日々、豊かになっていく街、日々、色んな人材が増えていき、日々、食べるものが美味しくなっていく…

俺が前で戦っている傍らで後ろを固めて後顧の憂いを無くしてくれるのがここまで頼もしいのだと心の底から感じれたよ


忙しい日々を送っていたら気が付けば、祖父もこの街に居て、気が付けば、俺は戦士長の座に座り、気が付けば、もう…


「俺達が…初めて出会った刻に近づいてきたのだな」

「…うん、あっという間だったね」

彼の一人語りを聞き続けている間ね、私もね、同じように…いろんな思い出が走馬灯のように走り抜けていった。

辛く悲しく救いようのない世界。不幸で満ちた思い出、こんな思い出を紡いではいけない。


…終わらせよう、私たち二人で、ううん、この星に住む人々の力、全てを集めて挑もう…この星で生きるために。


「そういえば、サクラはあまり…自分が過ごしてきた昔話を語ることが少ないが、やはり、その、なんだ?」

ぽんぽんっと誤魔化すように腕を叩くなら聞かなければいいのに…なんて思わないだって良い事だもん。

好奇心が止められなかったんだね。あるある。私もそうだもん、勇気くんも色んな事に興味が湧き上がるようになったのはとってもいい事だよ?

「うん、この街に来るまで…ある日を境に輝く様な誰かと共有したくなってしまう良い思い出がないだけだよ?

かがやく…ぁ、そういえば…実家にいるあの子も亡くなっちゃったんだよなぁ、尚更かな?実家に未練なんて一つも…無いかな?」

私と一緒に育った犬、術式の研究につき合わせた犬、輝く様な金髪色に術式で染めた毛色…名前は…なんだっけ?って忘れてしまうくらいに遠い過去の様…

実際問題、私がね、この街にきてから直ぐに亡くなったってお兄様からの手紙で知ったんだよね。

その手紙で色々と知ったんだよね、私が居なくなってから実家で飼っていた色んな動物が犬を追いかけるように亡くなっていったって…たまたま、かな?それとも…はは、まさか、ねぇ?そんなことないよね。


私がいたからあの子達は生きていた、なんて、自惚れもいい所だよね?きっと、逸り病とか、そういうのだろうね。


「犬…っか、珍しいな、王都では家畜以外の動物をほとんど見なかったからな」

「そうだよね、不思議と私の実家の方は動物がいたよ?っていっても、数は少ないけれど…」

そういう場所があっても良いだろうなっと納得しながら暖かく抱きしめてくれる

…動物に興味があるのなら動物園を作るのも、将来的にありかもしれない、平和になれば人々も人間以外に興味を持つようになる、かな?

「勇気くんが…聞いてもいいのかな?」

これは、踏み込んでも良いのかな?魂の同調で見えた、彼が生きた世界を…

「構わないさ、サクラの多くを知ってしまっているのだから…ただ、同調で見えたのではないのか?」

ん~見えたけれど、見えなかったような?全てが見えたわけじゃないもんなぁ。

「かといってなぁ…俺が生きた時代っというのは…楽しい事が…常に争いごとばかりだった…だから何も…面白いことは無いぞ?」

確かになー、ぶっちゃけると、どこの国(村)が衝突したとか、そんな歴史の話されても興味ないんだよなぁ…勇気くんの昔話で気になることって、何かあったような…

思い出す、私が書物でも存在を知ることが出来なかった人物のこと


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