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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (31)

ぎゅっと更に力強く彼の服を握りしめると優しく後頭部を撫でてくる、ぅぅ、余計、感情が抑えきれなくなるじゃん

「優しいな君は…名も無き知らぬ子供を憂い泣いてくれるのだな」

「…君って言わないで、サクラって呼んで」

本当は違う事を思い出して苦しくなってきたのを誤魔化す為に、何度も注意しているのに治らない癖を小声で指摘する

「ああ、すまない、前も注意されてしまっていたな、すまないサクラ、昔の癖が抜けないんだ」

知ってる、ちょこちょこ、昔の癖が出るのは知ってる、そこがまた、可愛いから許す!!…っていうか、実はあんまり気にしていないんだけどね。

「…昔っか…ふふ、どうしてだろうかな、月の光に当てられたのかもしれないな…済まない、少し…語ってもいいか?」

頬をくっつけながら擦り付けるように頷くと語ってくれる…


俺と君が出会ったのは、運命などではなく君の確固たる決意ゆえにだが、俺やユキにとっては本当に唐突な出会い方だった

ユキが何時ものように牛の世話を手伝ったり、母の仕事を手伝ったり、普段通りせわしなく動いている、何も変わらない日常をぼんやりと眺めている時だった

普段は動物の鳴き声や子供の声しかしない場所が唐突にざわつく様な音が聞こえてきて、何だろうとユキがざわめきのある方向へと視線を向けると、見慣れない人物が此方に向かって歩いてくる。

一人は、背の丈はユキと対して変わらない幼い少女、だが何処か不思議な雰囲気を漂わせている。身なりがどう見ても貴族の出で立ち、

それだけじゃない隣にいる大柄の男性、どう見ても親子とは思えれないっとなると護衛だろう、屈強な護衛を引き連れてこんな場所に来る理由が俺にはわからなかった。

ただの護衛であれば貴族の少女が物見遊山に遊びに来たのか通りがかっただけだろう、だが、護衛の人物がどう見ても並の護衛ではなくかなりの手練れだとすぐにわかる。

これ程迄の手練れを傍に置けるのであれば…そういうことなのだろう。気を引き締めないといけないかもしれないっと普段であれば、ぼんやりと生末を見守るスタンスだったが、今回ばかりは手を貸さないといけないのかと気を引き締め始めたよ。

周囲の人達からの反応で俺の直感が正しいのだと肯定してくれたよ、全員が君を見て驚いて戸惑っていた。平民が知っている貴族となれば相当な名家である証拠だからな。

当然、より一層深く警戒するさ、悲しい事に俺はたくさん知っているからな貴族が時折下々を戯れで不幸な目にあわすという悲しい歴史をな。


どこぞの上流貴族でも戯れに来たのかと警戒を高め、いざとなったらユキの意識に潜り込んで相手の機嫌を損ねることなく無難に対処しようかと思っていたら

ユキを見つけて近寄ってきた君の第一声が「服の注文をしたいのだけれど、貴女のところだよね?」っと、年相応の可愛らしい笑顔で手を差し伸べてきて汚れたユキの手を気にすることなく掴み優しい声色で…まるで親しい友人と話すように、仕事の話をしてきたんだったな。

その一言で俺の警戒心は一気に霧散したさ。

母が貴族の服をデザインして卸していることを知っているからな、その伝手も爺さんの伝手が主だから信頼のおける相手が殆どだ。

そう考えると爺さんと面識がある上流貴族が母の服を求めてやってきたのだとね


…ユキの中でぼんやりしすぎてしまった俺の魂は察しが悪くてな…この時点で気が付くべきだった、ユキの事を女性として扱っているという違和感に、鈍感だな俺は。


ユキも家の手伝いをしているから、こういった事もあるのだと、納得して警戒することなく家に向かって歩き始めた、無防備にな…

あることをふと思い出して、ユキの意識の奥で眠ろうとしていたのを辞めたよ。


上流貴族だろうが下流貴族だろうが、服の発注程度であれば自ら出向くことなんてしない、普通は使いを出して平民に仕事を与えてやるのだと高圧的に商談を終わらせてくる。


不幸な事態にならないように眠ろうとした精神を再度、警戒を緩めないように…していたんだが…家に向かっている間、ユキに接する姿がとても友好的で悪意何て一欠けらも無いと直ぐにわかったよ。ユキも年齢の近い女性の友達は少ないからすごく楽しそうにしていたな。


家に案内すると、まだ、失った悲しみが取れ切っていない痩せてしまった母が出迎えてくれるのだが…驚いたことに大きな護衛は女性だったのだな。

母を見ると直ぐに床に地面をつけるように頭を下げて貴女の旦那様を守り切れなかったと叫んだ、とてもとても、悲しい咆哮だったよ。


それを見た母が慌てる事も無く、落ち着いた仕草でユキ達に2階に行きなさいと伝えてきてユキとサクラは二階へ上がっていった。

母の気持ちはわかるよ、傍に子供達は居られる方が話せない話があるのだろう。


二階に人を上げるのが初めてなユキはというと…モジモジと、どうしたらいいのかわからず愛想笑いを続けて何もしようとしない、それも仕方がない、こういった経験がユキには非常に乏しい、遊ぶときは外で男の子たちと遊ぶことが多いし、遊ぶ内容も男の子がやるような遊びばかりで女の子が家の中で遊ぶようなことをしてこなかったからな。

愛想笑いを続けてこういう状況に不慣れでどう動いたらいいのかわからないそんなユキに…君は優しく手を差し伸べてきたのを見て、そうか、そういえば子供達がおもちゃも何もない家の中でする遊びと言えば手遊びがあったなっと幼き頃の記憶が蘇ってきて心が絆されてしまったよ。


ここからは、子供同士、楽しんでくれたらそれでよし、良き友達が出来ると良いなっと親心で頷いていた瞬間だ…

心に直接情報を激流の如く速さと勢いで流れこんできた…やってくれたよ…サクラの手がユキの手を握った瞬間に俺しか知らない筈の秘術をやってのけてたのだからな…


俺が警戒を緩めた瞬間を見計らってなのか、いや違うな今になって思い返してみると全て手順通りといったところだろう。

サクラは俺の行動真理をしっかりと読み解いて俺が適度に警戒しつつ、適度に見守り、適度に安堵した瞬間を狙ってきたのだろう。


君の思い描いた流れ通りに…俺とユキが同時に君の旅路を見てしまった…内容が幼いユキに見せれる様な内容じゃない!心の大きな傷を負いかねない!ユキではは耐えられないと判断して清濁併せ呑むを通り越した濁流からユキを救い出す為にユキの精神と俺の精神を瞬時に切り替えてユキを濁流から救い上げることがで出来たからよかっただけに…

俺の技量と判断力が追い付かなかったら、ユキの心が歪み砕け帰らぬ人になるところだったぞ…あれは、今思い返しても本当に胆が冷えた。


どうしてこんな無茶をするのか、他にも方法なかったのかと問い詰めてやりたくなるが…そんなものは些細なモノなのだと幾たびに敵の謀略によって消えていった俺と君の言葉を受け取ってすぐに悟ったよ…手段を選んでいる余裕がない、幾重にも上手の相手に勝つためには、強引な手段も必要なほど切羽詰まっている、なりふり構っていられない、世界を救う為に…俺を呼びにきたのだとな。

濁流が過ぎ去って俺の中に納まりきってからユキの心を平穏に保つためにユキの精神を再度肉体に戻すと、俺とサクラの記憶を垣間見たユキは大粒の涙をぽろぽろと零して。

だけど、下の階でも大人たちが大変な状況で声を出して泣くことは出来ないと心配かけるわけにはいかないと己を律する様に声を出さずに溢れ出る感情に耐えていたら

優しくユキを抱きしめ、「女の子として生きていけるように私が何とかする」っと、唐突にユキが悩み続け求めている答えを耳元で囁いた。

ユキの感情はどういう状況なのか観測できない程にグチャグチャだったよ…泣いていいのか喜んでいいのか笑っていいのか怒っていいのか、全ての感情が大きな声を荒げるように表に出ようとするが、体は一つしかない…暴れ回る感情のエネルギーが混沌としているのに、不思議と崩壊せずに、まるで秩序を得たかのようにユキの魂の中で暴れ回る様に渦巻き続けた。

こんな状況に追いやった君を攻める気にはなれなかった…

何故なら、泣き止むまでずっと抱きしめてユキの感情が落ち着くまで寄り添ってくれた君から伝わってくる感情がただ一つだったからだ。

悪意何て一つも感じなかった。慈愛に溢れまさに、まさに…あの人を思い出してしまう程に清らかなものだと感じてしまったよ。


優しく何年も共育ってきた姉のように、何年も共に歩みいつだって遊びに付き合ってくれた親しき隣人のように…ユキを包み込んでくれたおかげで、ユキの心は崩壊することなく全てを受け入れ君に心を委ねていった。

俺の意識がユキの中で浮上してきてから…こんな日が来るなんて、誰が考えるのだと…

こんな日常で何一つ予兆なく突如として、俺達の複雑な状況を把握し頭の先からつま先に至るまで理解する者が現れたことに…

ここまで劇的な出来事が起きてしまうと、世界を救うための救世主として神がお選びのなったのだと、神からの啓示・天啓を宿した聖女が迎えに来たのだと並の人間なら勘違いするだろう。だが、俺はそういう楽観的な考えには至らなかったさ、君の滅びゆく人生を知ってしまったから…な。


楽観的な考えを否定しておきながら、俺は、俺を否定しきれない部分がある。恐らく、魂の同調が無かったら道化のように勘違いしていただろう。

何故なら俺は、意識が浮上してから常日頃、考えていたからだ…どうして、俺が生きた時代から大きく離れた時代に意識があるのか、何の意味があって俺の魂がここにあるのか?太陽は俺に何を望んでいるのか…悩み続けていた。

そんな時に、何も知らずに君の誘いを受けてしまったら勘違いしていたかもしれないな。


ユキが落ち着いてからは、ユキでも遊べるような簡単なゲームを提案してくれて…いっぱい…いっぱい…遊んでくれてありがとうな。

たった、それだけの事なのに、誰にも言えない違和感を抱え続けて孤独を感じ続けているユキの心が救われていくように感じたよ。


下から聞こえてくる声も殆ど聞こえなくなってきたから、どうやら母達も話が人段落ついたのだろう、サクラとユキが微笑ましく遊んでいる最中に上に上がってきて呼びに来てくれた。

その時に見えた母の顔から生気が宿り、頬に血が通っているのを見て、ユキが凄く喜んでいたな。


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