Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (28)
遊び感覚で娯楽として無駄に消費しても良いくらいに所持出来たら楽なんだけどなぁ…はぁ、花火とかさ~やってみたいんだけど、金属も消費するからなぁ…
昔から火薬ってやつは、その危険性から禁制品として定められている、火薬が禁制品じゃなかったらなぁ、ガンガン作ってもっとえげつない兵器も作れるんだけどなぁ。
その禁制品を戦術として扱えれるようにする為に情けない男を説き伏せて何とか条約を結んだのは良いんだけど、その代わり、定期的にやってくる情けない男直轄の調査団がきて徹底的に製造量を調べるから密造もできやしない、納品はしなくても良いんだけどね、王都に火薬を保管する技術が無いからっていうのもある、私達も万が一に備えて昔は誰かが作ったであろう地下に製造施設があったけれど、ちゃんとした工場を作って製造している。
はぁ、何度思い返してみても、まさかここまで足を引っ張るとは思っても無かった、もう少し持ち上げて自尊心を砕かないであげればよかった…っていうか勝手に気がついたら砕かれていたんだけど?私の…せいでもあるんだけど、何があったのやら?っま、気にしたって仕方がない。へこたれすぎて自ら王位を譲るって言うまで待てばいいって思ってたけれど、しがみ付いてんだよなぁ…殺されるからだろうね、はぁ、なっさけねぇ~男、あんな情けない男なんて興味ないね。
てなわけで、無駄にドッカンドッカン爆弾を投げて投げつくして死の大地にあるもの全てを吹き飛ばしたいけれど、それほどの火薬は都合できそうもない。
なので、無駄打ちなんてしないで、人型などの脅威は各個撃破していきたいし、欲を出すと出来る限り不意打ちで仕留めたいってのが死の大地でのセオリーだもんね。
先人が残したセオリーを蔑にしてはいけない。
一応ね、こういった場所でお披露目している物は、力無き外からの民が何とか自分たちの身を屈強な死の大地にいる獣達と闘う為に考案したものが殆ど…お披露目できないやつはこっそりと私達だけで実験してるけどね。爆弾?っへ、もっとえぐいのがあるから問題ないよ。あの場所は地下食糧庫として申請しているし何度も見に来ては隠し部屋には辿り着けていないからね、にしし。
「ふむ、危険性も把握した、使用例も問題ない、俺としては素晴らしいとしか感想は出てこない…か?使いどころを間違えねば問題ない。っで、次は?」
憧れの戦士長がさらっと流し、概ね問題無いという判断、不安要素はないのだと周囲に伝わっていく、あの戦士長が納得するのであればってね。
やっぱり肩書と経歴ってやつは、影響力が高いのかな?それとも、これが、王としての力なのかな?…戦いに関しては私よりも信頼されているだろうね。
私の武勇伝って正直に言えば、あまり伝わっていない、王都でのちょっとしたゴタゴタで広まったのと、数々の画期的な魔道具で生活を豊かにしている発明の姫ってイメージの方が強いんだよね。
うんうん、私がどうこうするよりも、適材適所、彼の一挙手一投足の方が効果は抜群ってね。
ではでは、ご要望の二つ目に移らせてもらおうかな…ぶっちゃけるとね?火薬を無駄に消費したくないのは次の兵装とかに回したいからっていうのもある。
二つ目が…殺傷能力で言えば非常に高く、外に漏らしたくない程に危険なんだよなぁ…
セーフティ機能は付けれないし、構造そのものは簡単、彫像も型さえあれば直ぐにでも作れる。
唯一、他の大陸の人達が容易に真似できない部分とすれば、火薬のレシピと着火させるための着火剤ってところ、かな?
それ以外は簡単に模倣できるから、これに準ずる近しい物であれば直ぐにでも大国以外も作れると思う。
っていうか、何時かは誰かが辿り着く、人同士の戦争が激化すれば、ね。
っま、外に漏れないことを祈ってお披露目しますか。
「はい、次はこれ!」
私達が感想を述べている間に準備は終わっていて机の上に何かが入っている箱が置かれ、その上には布が被せらている。
被せた布を外し箱の中から目的のものを取り出して勇気くんに手渡すと、首を小さく傾げる。これが?っという顔だ。
「弓矢?…ん?鏃の形が独特だな、毒を詰めるタイプか?いや、それにしては、鏃に詰めた毒が…何だろうかこれは?」
手に取った瞬間に何処がどう違うのか調べる様に色々と探っていく。
シャフトが特別製なのか軽くしならせてみるが、他と同質のものだと直ぐに見抜き、シャフトが特別製だとは違うと判断し、羽を触っては、違うと判断し、もう一度、最初に違和感を感じた鏃を集中的に見て、違和感を感じた箇所を観察しているとピンっと表情が一瞬だけ驚いた表情になる、どうやら、仕組みに気が付いたみたいだね。
やっぱり、勘が鋭い。一通り流れる様に見ただけで答えに辿り着くんだもんなぁ。
鏃だって、見た目に関してはね、はっきり言って違いなんて誤差の範囲だよ?ぱっと見じゃ、普通の鏃と大きな違いはない。
今回、渡したのは敢えて普通の鏃と大きな差が無い、貫通力を上げたタイプの鏃だもん
見た目だけじゃ具体的にどう違うのかわからないでしょうし、口頭で説明してもわかりづらいだろうから、体験してもらうのが一番。
「的もあるし、射ってみていいよ」
っと言ったはいいが、まだこれ専用の的の準備が出来ていない。
研究員の人が的の準備をしている間に、弓を持ってきてもらおうと振り返ると声をかける前にメイドちゃんが弓を持ってきて勇気くんに渡している。
受け取った弓が、何か特殊な細工が施された特別製じゃないかと勘繰る様に探り始めるが、うんっと軽く頷き、弓に特殊な細工が施されているわけでもなく、初心者用の弓であると理解し、普通の弓だなっと小声でつぶやく頃にはセッティングも完了していた。
研究員が離れ、周囲の状況が整うと気になってしまった答えを早く知りたいのか、直ぐに矢を番えパァンっと的を射貫く、構えてうつまでの動作が早すぎる、剣しか才が無いなんて言っていたのが嘘みたい。
的に矢が射貫かれた渇いた音が周囲に駆け抜けていき、音が遠くへと駆け抜けてから周囲からささやかな拍手と驚きの声が波となって会場を包み込む。
拍手や驚く声は細やかにしてくれている、静かにっと言ったのを理解して本当は大きな拍手や声を荒げたいのを耐えてくれているのは嬉しい事だよね、聞きわけがよくて素直でよろしい。貴族共も見習えっての。
「これは…?」
状況がよくわかっていないのか、射貫いた的の近くに歩いていき、違和感を感じていたのか矢が刺さった箇所を見ようともせずに真っすぐに的の側面へと回り込み的の後ろを観察し、ある部分を見て、ほぉっと吐息が漏れている。そのまま、首だけを動かして視線を的の側面へと移し、頷いている。
どうやら、鏃の特性を理解して納得したみたい。
的の近くで一人頷き、此方に戻ってくる人の目元は特に曇った様子はないが、口元は何か言いたげでひしゃげている、顎に皺が出来るよ?
「どう?使えそう?」
「使えるどころか禁制したほうが良いんじゃないか?」
どうやら、広域閃光小型種殲滅魔道具に比べたらまだ危険性が低いと判断したみたいだけど、うん、言いたいことはわかる。
たぶん、クロスボウと、この鏃を組み合わせると…対人戦における戦争が起きてしまったら、死者が爆発的に増えるからだろうってことを考えてしまったんだろうね。
相変わらず、対人戦のことばっかり考える、そんなに戦争の事が辛かったのかな?…いや、辛いか、獣はどう見ても人外でお互い相容れぬ関係だからこそ、躊躇ずに戦えるし、命を奪うことに抵抗が無くなる、やらなきゃやられるんだもん、正当防衛だって言い聞かせれる。
でも、人は…話し合える、通じ合える、心を通わせることが出来る。
昨日まで共に笑い、今日まで共に明日を語った相手を…明日は殺さないといけないなんて、考えたくない。
それに…相手が獣と違って、私達人類は…人が持つ…お互いの温もりを知ってしまっている。
ついさっきまで抱きしめあって心通わせていた人を殺せますか?・・・無理だよね。普通は。
一番悲しいのは人と人が対立することだよね。
奪い合い殺し合い相手の全てを簒奪する事しか考えてないあの国のトップを引き釣り卸して、勇気くんをトップに祭り上げたくなるよ
隣にきて、もう一度、同じ矢を手に取り鏃を見ながら
「どういう原理で貫通力が向上しているんだ?俺としては、普通に矢を射ったつもりなんだが…それもだ、限界まで弓を引いていない、そこにある的に矢が刺さればよいっという程度で…射ったつもりなんだがなぁ」
不思議そうに矢を見つめている、どうやら疑問は感じたが答えには行きついていないってことだね、にしし、気になるよね~、勇気くんってほんっと知りたがりだよねぇ~、研究者にとって自分が生み出した完成物を説明する瞬間こそ美学!花道!一番楽しいときだよね!!
自然と笑みが零れる、楽しい時は楽しいから仕方がないよねぇ?にしし。
「ふっふーん?すっごいでしょ?今回の発明品の中で一番凝りに凝ったんだから!」
ふんふんっと鼻息を荒くし、矢ではなく箱の中から鏃だけを取り出し、彼の手に置いてから構造を説明する
「なるほど…2重構造か、凄い事を考える…こんな発想したことが無かった」
普通の鏃、先端が尖っているだけの一番小さなタイプの鏃、その上にもう一つ同じような鏃を蓋の様に被せ、その中間に極小の魔石と火薬を詰め込んでおり、矢が放たれ的に勢いよく着弾すると、その衝撃で魔石が弾けると魔石に刻み込んである小さな術式によって火花が発生する。
火花が火種となり、火薬に着火し、先端の鏃が突き刺さった内部を貫く様に吹き飛ぶ構造になっている。
今回の鏃は貫通力を高めたっと言うか、矢が敵に刺さることによって鏃が敵の内部に入ってから、柔らかい内臓を更に抉ることを想定している。
それだけじゃない、火薬と共に毒のカプセルも仕込むのが今回の鏃の真骨頂、より深く刺さって内部で火薬と共に弾けるうことによって内臓に毒が弾け飛ぶ、それによって各臓器に毒がじわりと染み込む。別に毒だけじゃなくても良いんだけどね、痛みを味合わせる為に酸性の液体でもいいし、弾けた衝撃で勢いよく砂鉄が飛べば内臓の至る所を傷つけることが出来るので砂鉄でもいい、鏃の中に入る物なら全て毒にできる。
敵が内部で弾けた痛みで少しでも動きが鈍っている間に此方から攻撃を仕掛けている間に、毒が敵の体内の奥深くで根を広げていき…いつかは、毒と言う種が内臓の何処かで花咲く様に出来ている。
人に当たると、はっきりいって医療班の誰でもが、手を上げてしまう程に殺傷能力が高い。
矢が当たった衝撃+内部で火薬が弾けた衝撃+火薬による炎症+毒が弾けて内部を汚染する…こんな状態で運ばれてきた命を救えるのか?
答えは否…致命傷だよ。たぶん…即死するんじゃないかな?
毒や火薬の特性を聞いてすぐに出てきた答えが
「…かん口令を引くべきか?」
これだから、王様ってやつは直ぐに口止めする事ばっかり考える。っま、これに関しては同意したくなるけれどね!大丈夫
「口止め何ていらないよ、これを作れる技術者は…私たち以外にいないから問題なーし」
「そう、なのか?」
そうなんです、ちょっと含みがあるけれど、鏃を成型する技術が今のところ私達しか出来ないん、だけれど~…何時かは辿り着くだろうね。
火薬からの衝撃に耐えれるための合金を作るレシピ、ご禁制の火薬を作る製法、内包する毒…は、代用できるものが山ほどあるから、これらは作れちゃうかな?
何よりも肝心なのが~これ!極小魔石に術式を刻み込む技術
極小魔石+魔石が割れた時に発動する術式っという極めて作成が困難な物質
これを作り出せる人を育てるのにすっごく時間がかかったんだから!
私っという術式や魔石の構造を完全に理解している人がいないかぎり、その魔石を精製するのも困難だし、術式を刻み込むのも困難!
真似しようがないってね…
技術者が攫われたら即戦争開始だけどね!!育てた技術者が奪われ技術が流れていくのが一番困る!
よくあるのが現物が盗まれて他国に流れることはあるけれど、極小魔石っていう現物が流れようが、構造が流れようが作る技術が無ければ、奪った数だけしか使用することが出来ない、一発限りの切り札って形になるからね!技術を解明しきるには相当な時間が必要だろうから…遠い未来だったらもしかしたら作られる様になってるかもね。




