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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (26)

会場の中央に立ち、的に向かって指を刺すと、観客の視線が一点に集まっていく。

「初弾は木の板、次も…木の板なんてちゃちなことは言わない、これが何処まで通るのか見たいよね?…私も見てみたい」

口角が自然と上がってしまう、この魔石に保有されている魔力量で何処まで突き抜けることが出来るのか、楽しみでわくわくする、高鳴る鼓動が私に告げる、術式の実験、研究は何時だって最高だと、これこそが私の生きる道だって。


木製の的を撃ち抜いたのなら次も木製、何てわけなよね。

次に用意した的は、鉄板、あ、さっきの木製の的は研究所で何度か的になってもらってから縦にきって貫通した穴を調べつくす予定だよ?さっきも言ったけど、一度だけなんてもったいないもんね。


木とは段違いの耐久力と強固な防御力を持つ鉄、これが貫通するほどの威力で在れば、獣共に問題なく使用できると胸を張って言える。

研究員から渡された魔道具を台座にセットし誤爆を防ぐための封を解除してっと、誤爆を封じる封つっても術譜にハンカチ程度の布を巻いただけなんだけどね。

勇気くんに視線を送ると、頷いて近づてくる。


瞳の奥から感じる感情に畏怖はなく、絶望もしていない、彼の瞳の奥には何時だって希望を宿しているようにみえるのは、私がそうだと信じているからだけじゃない、彼の瞳は常に明日を見ている。

私達の…希望の象徴に「さぁ…どうぞ」手のひらを返し、優雅に戦士長を魔道具へと誘う

この魔道具は小型故に、保有できる魔力量は少ない、ゆえに、残念ながら連射はできないので、一発だけの光の弾丸。

「…ああ」太く低い声と共に台座の前まで歩き

人差し指を伸ばし台座にセットされている魔道具を発動させると先ほどと同じように一瞬だけ光ると

周囲から息を殺すような、か細い音が聞こえてくる、まるで悲鳴を出さない様に押し殺しているように聞こえる。

「…これは…外に。絶対に出せないな」魔道具を発動した人からは小さく細い溜息が漏れていく。それに反してピョゥっと軽く口笛を吹きたくなってしまう。

この結果を見れば、勇気くんがそうなるのは当然の流れ…

的となった鉄板には3センチほどの穴が出来ており、開けられた穴の周囲がどろりと溶けている。

的となった鉄板の厚みは一般的な兵士が装着する鎧と同じにしている。つまり、この魔道具の前では鎧など無意味

戦場の常識が完全に変わる。これが人同士の争いが過激な戦時に存在しなくてよかったと勇気くんは心の底から感じているだろう。

それに比べて私が感じたことは一つ…あいつらを無尽蔵に殺しつくせるってことだけだった…


隣にいる私にだけ聞こえる様に小さく彼が感じた、感じてしまった感情が零れ落ちていく

「再度、気になる部分を注視して、使用してみたが…これにより確信を得た、予備動作無し、早さは弓以上、発動時の音も無く、魔道具のサイズは手のひらに隠せれる。これ程までに暗器として相応しい道具は無いだろう…こんなものが世に出回れば…子供でも簡単に人を傷つけることが出来る、いや…」

その先を言わないのは良い事、言葉にするとその事象を引き寄せちゃうからね。悲しみを背負い、人々の悪意に愁いを抱き、今にも涙を流してしまいそうな程、悲壮感を漂わせてしまった人の手を握りしめてあげたい、小指と小指が触れる程、近くにいるのに…周囲の目があるからできない!!っくそぅ、これってチャンスなんじゃないのー?

感じたチャンスを逃すのが惜しいが…恋人を目指しての行動はできない、だけど!零れ落ちていく悲しみを救わなくて何が運命共同体ってね。

「そうだよ、道具は扱い方によってはそうなる可能性がある、不幸な未来もある、その点に関しては認めているよ。それを言い始めたら鉄が刃になった時点でもそうでしょ?それよりも、明るい未来の可能性を信じて欲しいかな、それにね、これの真骨頂は…そこじゃない」

悲壮感を振り払おうとする彼に希望を伝えよう。

ちょいちょいっと手招きをして顔を近寄らせ、勇気くんにだけ聞こえる様に小声で、この魔道具がどの場面で使うのか、本当の使い道を伝えると

「その様な方法を?…考えるだけで…」

この魔道具の真なる使い道をしり、それが人に向けられる映像を想像してしまったのか小さく首をふって、気持ちを切り替えようとしている。大丈夫、私がいる限り人に向けさせるようなことはしない、させない。

「これ程の魔道具を作り出せる君とは…誰も対立したくなくなるよ」

気持ちの切り替えが出来たのか小さな笑みを浮かべ褒めてくれる。周りの目が無かったら抱き着いて頭を撫でろ!って甘えたくなる、甘えてあまえて…そんな考えを抱かせる隙を無くしてあげたい。


悲しみを背負わないで人類の悪意に眉をひそめないで、私達が戦うのは人じゃない、私が作る兵装その全ては対人用じゃない。

包丁だって、フォークだって、椅子だって使い方を間違えれば人を殺める、ただ、私が作るのは攻撃力が高いだけ、高いのならセーフティをつければいい。いつか完成させる。


彼との距離をもっともっと近づけたいけれど、今はそういう時じゃない、気持ちを切り替えて行こう。

この魔道具は名前の通り小型の獣共に対して用いる殲滅兵器

戦場のどういう状況を想定しているのかというと、想定しているタイミングの一つとしては、偵察部隊が小型の獣共が一定の箇所でとどまっている群を発見した場合に投下する予定。

投下方法は、着弾地点との距離と時間を計算してから発動するための要石として他の魔道具を起動させる魔道具に何分後に発動させるという術式を書き込んでから、投石機等で大量に上空に向けて放物線を描くように投下させる。


投下された周囲を大量の広域閃光小型種殲滅魔道具が一斉に起動して瞬きよりも早い光によって数多くの対象を無造作に大雑把に傷つける事を目的としている。


つまるところ何処かに狙いすまして使うのは想定外

スリングショットなどの中距離で打ち込むことは想定していない、かといって近距離で扱うにも照準が大雑把にしか合わせれないので敵の眼球に狙いすまして用いることはできない、なので、大雑把な運用方法が一番適していると判断し、主なターゲットは、鼠やウサギを想定している。

あいつ等は基本的に群れでいるっという習性を利用して先手で数を減らす。

兎に関しては集団と言っても2,3体が一定の距離で潜伏しているって感じだけどね、鼠が群って言っても過言じゃない程に集まっていることがあるかな?

基本的に滅多に遭遇しないんだけど、今後の作戦を考えると、それらが私達に襲い掛かってくる可能性は高い。


群れからはぐれた鼠とか、兎は見つけ次第、殺すんだけどね…運悪く数が多いときに遭遇するとね~。

隊列を組んで対処しても、絶対に何匹か後衛へと流れていくんだよね。


鼠って言ってもね、死の大陸にいる鼠のサイズは兎よりもやや小さい程度で猫と同じくらいの、サイズかな?もう少し大きいかも?

地球で言うところのドブネズミくらいのサイズかな?ハムスターとかの更に小さなサイズは確認できていないかな?つっても、兎もある程度大きいからね?だいたい…地球で言うところのコーギー?って犬種だっけ?くらいのサイズ感かな?それに角が生えてたり、生えてなかったりって感じ。たぶん、色んな種類がいるのかもしれないけれど、ひとまとめに兎っていってる。

脅威としては…実は、そこまで怖くない、新米の騎士が初めて戦う相手として相応しいかなってくらいで鹿とか猪よりも前に経験しておいてほしい相手で、私達であれば恐れる程でもない術式も良く通るし脅威性はゼロ、戦士や騎士達だったら道中で踏みつぶしていく程度の敵。

何匹か後続の部隊に流れたところでサクッと仕留めることが出来るくらいに弱い…んだけど、それは私達基準だから。


今後、全ての準備が整い次第、決行する死の大地殲滅戦を行う際に危惧していることがね、この小型種にはあるんだよ、作戦を崩壊させる危険性をはらんでいる。

何故なら、全ての敵を余すことなく殲滅はできない私達の包囲網から抜け出てこの大陸以外の人達で構成された補給部隊を襲う可能性があるから、そして、その可能性が一番高いのが小型種である兎や鼠だと想定している。

力無き人達が何処も損傷していない兎や鼠が突撃してきたら確実に怪我人が出る、下手すると死者も出る。最悪、補給部隊が崩壊して前線が維持できなくなる。

そういった不幸を未然に防ぐにはどうすれば良いのかっという策を考えていくうちに、辿り着いた答え…

殺傷能力高い兵器を作る…作らないといけない、切り札を切っていく決心を固めたってわけ。


投石機などは、実は昔からあるし、他の大陸にもある。でも、投石機で兎や鼠は殺せない。ってか、投げた石が小さなあいつらに当たるわけがない。

そこそこ有り触れた戦争の道具だったりするので、私達が改良している投石機は、従来のやつよりも投擲する飛距離を向上させたり、運びやすくする為に足をキャタピラ式にしたり、歯車を使って自転車みたいにこいで運転できるようにしたのは、まぁ何れ誰かしらが辿り着く改良点だから、気にすることはないかな?車っていう、とんでもないモノを世に出しているから、その技術を流用して改良されていくだろうからね、その後の影響何て考慮していない。


考慮したかったのは打ち出す弾の方ってこと。


なので、投石機と共に行動している部隊を後方で待機させて群を見つけたら、広域閃光小型種殲滅魔道具を用いて対処してもらう予定。

殺しつくすことはできなくても大なり小なりダメージを負わせることが出来る、弱った敵ならインパクト小槌で対処できるでしょ?って考えていたんだけど、小槌は要検討かな。

つっても、運搬すると、どうしても大きな音が出て狙われやすくなる投石機を死の大地のどのラインまで動かせれるかっていうと、始祖様が作ってくれた最終防衛ラインである、壁の近くだけになるだろうからね~。戦場が狭かったら何処までも奥地へと突き進んで戦車のように働いて欲しいけれど、そうもいかないんだよなぁ…

一応、戦車も開発してるけどね。投石機に鉄板張り付けただけだけどな!重くて動かすのに大量の魔石が必要で、大量の魔石となると魔石その物も重くて、魔石を運ぶための車が必要で、車を動かすのに魔石が必要でっという抜け出る事の出来ない問題が山積みだけどな!


奥地での運用方法も考案してるよ?袋とかに包んでスリングショットなどで射出して敵の機動力を奪う運用方法になるかな?

それに、あの威力なら小型種だけじゃなく、鹿とか猪とかの群れで行動している中型種にも有効だと感じれたから、作戦の幅が広がったかな?


他の運用方法は考えていないわけじゃない、投擲以外も考えてはいる。考えてはいるけれども、効果的なのかどうか…悩みは残るかな?

もしもに備えて、念のために最終決戦時には壁の近くに穴を掘ってそこに広域閃光小型種殲滅魔道具を埋め込み地雷としてセットする予定。

罠の構造としては設置した箇所を何かが通過するか、一定の重みか、一定の振動で発動するか、もしくは誤作動を防止するために条件を複合させるか検討中で例えば、感圧スイッチ型にすると、スイッチを踏むと地中から上空に向かって光が走るようにする、それも無数の光であれば、敵がいくら獣と言えど、人類では到達できない速度で大地を駆け抜けることが出来たとしても光の速さを越えることなんて出来るわけないでしょ?発動したら確実に柔らかく無防備なお腹を無数の光が射貫いてくれるよ

最終防衛ラインの罠として申し分ないんじゃないかな?人型と言えど多少は…当たり所さえ…いや、人型には通じないかな。


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