おまけ 大地染めるは…⑪
どうやって起こそうかと顔を覗き込んでいるとッゥワ!?っと大勢が同時に驚いたような、歓声らしき大きな音が部屋の中を一瞬だけ暴れるように駆け抜けると、覗き込んでいた相手の目がゆっくりと開く。
突然の音に驚き膠着しているせいで動けないでいると「悪戯しないの!」ムニっと両手で頬を押しつぶしてくる…私が大きな声で起こしたと思ってるな。
負けじと頬をムニっと押しつぶして「起きて!」声に出すと、んもう、しょうがないわねぇっと起き上って、周囲を見渡しモニターに映し出された映像を見ると…寝る前の状況を思い出したのか
「って!女将のやつ義父様とにらみ合っているじゃない!」「…ぁ!ほんとだ!!」
心臓を撃ち抜く様な不意打ちの歓声でそうじゃないかと思ったらそうだった!
女将の手には一つだけの水風船、サイズは女将が持つことを想定しての大玉、あれなら一撃必殺、女将の腕力でぶつけたら確実に半面は染まる
でも、お爺ちゃんの陣営は数多くの木箱を用意している、チームメンバーもいる、三対一…あの布陣だと一対一だけど、武器を手早く渡しす配置についている、この差はデカい。
一発だけの一撃必殺大玉VS大量に用意された武器…普通に考えたらどう考えても女将に勝ち目は無いけれど
このゲームのルールを思い返してほしい!!三分の一以上染まったら退場!すでに染まった場所が他の色に染まったところで表面積は変わっていない!
女将がそれに気が付いてい拳のみで全ての飛んでくる水風船を受け止め切れれば、勝ちの目がある!!
「ねぇねぇ愛しの娘よ」
まだ酔ってるのか人の顎の下を指先で転がす様に触ってこないでよ、くすぐったいな。
はいはいっと応えると「あれってルール違反じゃないの?」モニターに向かって指を刺すので、誰かルール違反してたかな?っと指が示す先を見るが、特に…ルール違反してないけどなぁ?
どれ?って返事を返すと「それよそれー、ぇーっと」寝起き+酔いで言葉が出てこないのかな?指先が示す場所にあるのは…水風船をパスする姿勢?協力プレイにルールも何も?…ぁ!そっか
「木箱を移動させてはいけないって一言も言ってないよ?さらには、木箱を壊してはいけない、隠してはいけないっていうルールもない」
ありなのねっと、驚いた表情をしている、だから、お母さんはこういったゲームに負けることが多いんだよね、ちゃ~んと思考の隙間を見つけないと。
「ルールとして水風船は、空っぽになった木箱に補充される、つまり、指定の場所に木箱が無い場合は補充されないってデメリットもあれば、メリットもある」
「メリット?武器が無くなることにメリットなんて無いじゃない」
何を言ってるのこの子はっと呟きながら鼻をつまむなよ、まだまだ酔いがさめてないな、持ってきた葡萄ジュースを飲まして脳内を駆け巡る酒精を飛ばさないといけないかな?それともべろんべろんに酔わせてみる?…やめとこ、その後の介護は誰がするんだって話だよね、めんどくせー、やめとこ。脱がれると困るし。
「そうだね、自分の手持ちがないのであればデメリットしかないけれど、ああやって、大量に集めていたらメリットになる、何故なら、この周囲にある木箱が無くなるってことは補充されないって事、お爺ちゃんに向かってきた相手が手持ちが無くなると同時に広場から敗走でもされてみてよ?逃げた先に木箱が無いってわかっていたらお爺ちゃんサイドからしたら敗走した相手を追撃しやすいでしょ?相手を追い詰めるには最高の作戦だよ?」
なるほどねぇっと、メリットに気がついたからって耳たぶをぷるんぷるん指先で弾かないでよ…今日は、絡み酒が酷いな…
いや、あの時と比べたら、ましかな?…新しいお酒としてブランデーとか、ウォッカとか?地球のお酒が出来た時に試飲会を二人っきりでしたときにベロンベロンにお母さんが酔っちゃって凄かったもんなぁ…あの時に比べたらマシ、かな?
熱くなると直ぐ脱ぐ癖があるからなぁ…しかも、肌寒くなったらその辺にある服を着ようとして私の服を強引に着ようとして破きやがったからな!!ぇ?床に服なんて置かないよ?ぬがされました!!!
まだ、脱ごうとしない辺り、完全に酔ってはいないかな?なら、今のうちに葡萄ジュースを飲ませて酔いを醒まさせていこう。
ほら、寝起きだしこれでも飲んでっと優しく心配する様にグラスを渡すと、優しいのねぇっと頬を撫でられてからグラスを受け取りぐぃっと飲み干し始める。いいぞ、ジュースを飲んで酔いを醒ませ!!それ以上の深酒は色々と心配になるからダメ!私は閉会式とか色々と動かないといけないから、そうなると、この深酒で大変なことになってる人を、一人でこの部屋に放置することが出来なくなる!!お母さんがこの部屋にいるってことは知ってる人、そこそこいるんだよね!
ふぅっと飲み終えて、葡萄ジュースを注いで、呑みやすくていいわね、っと呟いてるけど、それもう完全にジュースだから。
「あ!動き出したわよ!!」コンっと、グラスをテーブルに勢いよく置き指先をモニターに向けている。視線をモニターに向けると
画面が揺れてしまいそうな程の雄たけびを上げながら猛獣の様に前へ突き進んでいく!
軌道が読める水風船を拳ではたき落したりしているけれど、対人戦ではお爺ちゃんの方が一枚も二枚も上手かぁ。
ありとあらゆる即席の搦め手でジワジワと女将を染めていってる、いくら手で弾いてもしぶきは降りかかる…でも、女将の巨体を染め上げるのはしぶきだけでは不可能
このペースで進んでいけるのなら問題なく至近距離まで近寄ることはできそうだけど、問題は、手に持っている武器が一つだけ、なんだよなぁ~。
あれを確実に当てるにはどうする?私だったらどうする?己の肉体のみ、術式は無し、相手は人の動きが読める達人…
下手に投げても避けられる、避けられるのなら避けれない距離まで進むしかない、相手に触れてはいけない。
可能であれば、此方に向かってくる水風船を受け止めてカウンターとして利用する。
…無理だなぁ、女将の剛腕じゃ飛んできた水風船を掴んだら弾ける。掴むことなんて出来そうもない。
詰み…かなぁ?物量差がありすぎる、女将では…彼を仕留めることはできないんじゃないかなぁ?
好きな人だから勝って欲しいけれど~…冷静に考えると勝ちの一手が厳しすぎる。順当に考えれば女将に勝ち目がないあるとすれば…相手がミスをするのを願うしかない…まさに賭けってことだよね。
「あら、だめね…残念ね…」「ああ~…女将の負けかなぁ?」
モニターに映し出された絶望的な状況にお互いが諦めてしまう。っていうか、お母さん?女将の事、応援してない?賭けてるの忘れてる?…勝利よりも女の友情ってことかな?
お爺ちゃんの手には徐々に染まりつつある女将に止めを刺すには問題ない大玉が渡されている。お爺ちゃんもちゃんと手に入れてたんだね。
盤石の布陣すぎる、これが守ることに関して誰よりも秀でている王国最強の盾ってことかぁ、やっぱり、あの人を仕留めるなら思考の外、あの人が知らない分野で攻めないと勝てないかな~。
大玉っていう切り札?を当てる為に、策も講じている。
一撃必殺を確実に当てる為には何が必要か?相手の虚を突く必要がある、なら、どういう状況になれば相手の虚を突ける?
今まで投げてきた全ての水風船が布石となっている、多くの水風船が彼女の思考を狭めている、投げて飛んできた危険球は避けずに拳で弾く。何度も繰り返し行ってきた動き、突如、変えることなんて出来やしない。それを利用された。
一つの水風船を真っすぐに投げる、これまでの流れだと分かっていても条件反射で弾いてしまう…っとなると、女将が取る行動は決まっている、拳を突き出して真っすぐに向かってくる水風船を弾く。当然、中の液体が弾けて視界が奪われるように目隠しとして作用する。虚を突かれるってこと。
チェックメイト…あの大玉は避けられない。
「え!?うっそ!?」「…?」
お母さんはジュースを手に取ろうとして、よそ見をしていたのか気が付いておらず、私が驚いた声に直ぐに視線をモニターに向けると
「なにそれ!?すっご!?」「…?」
お母さんは状況が分かっていないのか、声を出していない、申し訳ないけれど解説はあと!この瞬間を見逃したくない!!視線を変えたくない!!
一瞬一瞬、瞬きすら許されない程に瞬時に色んなことが…熱い闘い、決着は…拍子抜けだった
「ぁ、そっか…逃すはずがないよね」「忘れていたわねー彼女たちのこと」
凄まじい攻防を見つけ決着がついた瞬間に、お互いにもたれ掛かる様にくっついてしまう。
「…良い闘いだった、取り合えず、賭けは私の勝ち!」
その一言で全てを思い出したのか一瞬だけ、ぁ”、っと震える声が聞こえた来た「…まだ、団長の姿が見えないじゃない?」っへ、その希望は泡となって消えるよ
モニターで嬉しそうに騒いでいる二つの陣営を見ていると
「それよりも、さっきはどういう流れだったのか教えてよ」
もにもにと太ももを揉まれながら解説を求められちゃ、説明しないとね~
「まずね、私達が負けたと思った瞬間、あの大玉を女将がしっかりとキャッチしたんだよね」
「投げられた水風船って掴めるものなの?」
その疑問はごもっとも、私だって無理だと思ってた、どう考えてもキャッチ何て不可能だって
「あの大玉は中身を多く入れれる様に他のやつに比べて太さ?厚みが違うんだけど、計算上、強度はそこまで変わらないって思ってたんだけど、やっぱりちょっとだけ他のに比べて割れにくかったみたい、かな?」
「なるほどね…だからといって、投げられた水風船をキャッチ何て、普通に考えれば無理ってことね」
「そうだよ!それをあの土壇場で!あの繊細さとはかけ離れていそうな剛腕の持ち主がやってのけるなんて」
「誰も想像しないわよね~」
そーなんだよ!!あれで女将が負けるってみんな思うじゃん?
「キャッチした大玉を投げつけてさ、お爺ちゃんも虚を突かれているから油断していると思うじゃん?」
「それは、そうよね?切り札が当たって終了の合図が出ると思うわよね?」
「それが一切油断してなかったんだよね、恐らく、だけど、女将が徹底的に染まり切るまで攻撃の手を緩めるつもりは無かったんじゃないかな?」
「そうね、彼なら…職務を全うする為なら、刺客の息の根を刺すまで油断なんてしてはいけないわよね…」
何か、実感籠ってるけど、何かあったの?…駄目だ、この話題の先に叔母様の香りがする、触れないでおこう。
「女将が相手から投げられた大玉をキャッチして投げ返したけれど、それに合わせて直ぐに水風船を投げてぶつけて軌道を逸らしてた」
「…よくそこまで見えたわね、変わらず目は良いのね」「目だけじゃないよ?」
チクチク脇腹を突くと、ごめんごめん、っと脇腹を突かれる度に小さく跳ねて謝ってくれる。
「逸れた水風船は外れたんだけど、お爺ちゃんが紐付きの水風船っていう当たりを手に入れてて、それを巧みに使って女将の背中に当てたんだけど!残念、中身は透明な水!!背中からくる衝撃を受けても、退場の合図が無いっと直ぐに判断して手に持っている水風船を至近距離で自らの拳で割って、激しく水しぶきを出して引き分けに持ち込もうとしたんだよね」
「あの一瞬で…よく見逃さなかったわね」
ある程度、見えなかったけれど、一連の流れと状況からの凡そはあってると思う。詳しくは後のインタビューで確認しよっと。
「女将の必殺の一撃が破裂したんだけど…まさかまさかの、これも透明な水!」
「え!?運悪くないかしら?」
そうでも無いんだよなぁ…当たりには多めに透明な水を入れておいたんだよね、私も何処に透明な水が入っているかはわかんないけれど、こうも場を荒らしてくれるとは思わんかったな。
「お互いが余りにも運が悪い状況に膠着している間に隠れていた二つの陣営から攻撃を受けて退場」
「そして、こうやって抱きしめ…あ!!!」「うわぁ!?なに!?」スピーカーからの大声援でお尻が浮きそうになる!?
画面を見ると姪っ子ちゃんが地面に伏せてる!?メイドちゃんが突如裏切るとは思えれない、ってことは!!
「弟子のやつ!!生き残ってるじゃない!!!やるわねー!!これはもう」「ああ、、、勝ったな」
不敵に笑みを浮かべて堂々と結末を見守る、私とお母さんの賭けは勝利が確定したし、この状況、団長が勝利するのは未来しか予想できない。
慢心して喜んでいたメイドちゃん達が悪い、最後の最後まで油断しなければ、まだ、勝ちの目は…なかったかもなぁ…
だってこういう構図でしょ?
女将VSお爺ちゃん
↑の虚を突くために待機するメイドちゃん&姪っ子
↑が油断するのを待ち続ける団長
これはどう考えても無理だよね、この構図が完成していた時点で優勝は団長ってこと。誰かの入れ知恵かな?だれだろうね。まさにunknownって感じ。
更に大きな歓声がスピーカーから伝わってくる。っさ、決着も付いたし閉会式するために号令を出してくるかなぁっと、企画立案者である私の仕事だね。
「っじゃ、結果も出たし、仕事いってくるね」「ぁ、それもそうね、いってらっしゃい」
ソファーから立ち上がると、笑顔で見送ってくれる…忘れてそうなので
「賭け…何をお願いしっよっかなー!!めっちゃ、、、くちゃ!!たのしみだなぁ!!!」
ドアを開けて部屋の外に出る際に部屋の中を向けて大きな声を出すと、見送ろうと此方を見ていた人の顔が…絶望的な状況であると思い出したのか笑顔が凍り付いている
「過激なやつは」バンっとドアを閉めて王者は堂々と凱旋するのじゃガッハッハッハ!!勝った時こそ笑えってね!!!っかぁー!!楽しみじゃ!!
階段を下りて会場の近くに行くと既に準備万端だったので、大地を染め上げろと号令を出すと用意していた木箱を集まった人達に参加したい人達は手に持って投げつけ始める。
私は染まりたくないので少し離れた場所で様子を見続ける。
暫く様子を見ていても、収まる気配はない、みんな、楽しみたかったんだろうね。
この様子だと閉会式とかは後日でいいかな?払い出しもその時でいいや、激戦を想定してかなり多めに用意した水風船が大量に余っているし無くなるまでは遊び続けそうかな?
閉会式や払い出しは後日にしますと水風船を取りに来たびしょぬれの運営委員会に声を掛けると、水風船を両手に持って、わかりました伝令してきますっと、同じように水風船を取りに来た運営委員会の人達に水風船をぶつけながら、大きな声で伝令を伝えている、水しぶきが広がるのと同じように伝令が広がっていく。
まるで、空中に舞う、緑色の液体が伝令を届ける様に、空中に舞い、太陽の光で輝く緑・赤・黄色の水しぶきが反射し、大きな大きな
イルミネーションに見えてしまう。私が夢見ていた地球のクリスマスみたい…




