おまけ 大地染めるは…⑦
グラスを傾けワインを回す様にしてぼんやりと眺めながら
「そうかもしれないわね…」
昔の事を思い出しているのだろう、何処か切なそうな瞳をしている。
「話は変わるけど、貴女は何処が勝つと予想して?」
つんつんっと、太ももを突いて挑発めいた顔…ふぅん?良いよ?何賭ける?
「賭ける?なら、のるよ?私は当然!友情として親愛なる隣人、団長一択だよ?」
団長の名前が出た瞬間に少し口角上がったよ?
「良いわね、賭けるのはお金なんてね?貰ったところで欲しいものが有るわけでも無し…なら、勝った方がお互いにどんなことでも拒否できない、命令できる権利で…どう?いい案でしょ?」
っふ、私がお爺ちゃんを指名しなかったから勝ちを確信して来たな?いいじゃん、乗ってあげる。
「ぴゅぅ、その意気込み、買ってやろうじゃん。明確な勝ち負けとしてお互いがBETした対象が一位じゃなくて、長く生き残るか…勝ち負けのライン判定はそういうのでいい?」
口角が一瞬だけ少し上がる、笑ったな?勝ちを確信したな?笑っていいのはね、勝ってからだよ?
「言ったわね?後でとぼけるのは無しよ?」
こっちこそ、逃がさないからね?
愛想よく笑みを浮かべ
「いいよ?お母さんの言う事なんて何でも叶えてあげるつもりだし?私にデメリット何てないもん」
「…ほぉん?誤魔化したり、逃げたことなんて一度足りとてない、何て言わないわよね?」
すっと目線を逸らし「ぉ、おぅよ…」めちゃくちゃ後ろめたい気持ちで返事を返してしまう。
誤魔化したり逃げたりは私の十八番なので、一度たりとも無いなんて月に誓えって言われたら無理
「ふふん、言質を取ったわよぉ?覚悟してなさい。早速だけど、貴女は団長で良いのね?変更できるのなら今よ?」
狡い心理トリック使いやがって、先手っという有利な部分を譲歩したのだから、先の条約は無視できないって言いたいってわけね、っへ、長い付き合いだからこそ、私が危険と感じたら逃げるってよくわかってるじゃん。
「うん、私は一向に構わない!団長を指名させてもらいます」
「なら、私は義父様、もとい、筆頭騎士様を指名させてもらおうかしら?…良いのね?二言は無いわね?女に」
「「二言は無し!!」」
ちーんっと、お互いのワイングラスを軽く当てぐいっと飲み干す。
これにて約定は結ばれたってね!
にっしっしっし!お母さんは失敗した!
なぜなら、このゲーム、長く生き残るだけなら圧倒的に団長が有利!
私の見解としては、オッズを発表したことにより、代表者全員がお爺ちゃんを意識する!
絶対的に独りでは挑めない相手だと理解しているのが団長・姪っ子・メイドちゃん・ティーチャーの四名
強者に挑むこそ戦士としての矜持って、戦闘民族宜しく、考えてそうなのが女将・ベテラン
姪っ子ちゃんの装備から考えられる作戦は己が非力だとしっかりと自覚している証拠。
虚をつくスタイル、何処かの陣営が衝突した隙を突くスタイル。
徹底的なハイド、姪っ子ちゃんが、最も警戒しなければいけない相手がいる。
気が付いていれば真っ先に落としたいのが…そう、魔道具の効果を見破り対抗策を持っている術式研究所チーム、つまり、メイドちゃんチーム
その次が、絶対に何処かの陣営と衝突するであろうお爺ちゃん。このカードは全ての陣営が脅威と感じてるだろうね。
姪っ子ちゃんなら勝つためなら超えないといけない陣営をしっかりと意識しているはず!そうなると、完全に団長の事は意識の外!変に巡り合わせが悪くない限り団長と衝突しないでしょ?団長を狙ったりしないでしょ?
姪っ子ちゃんの勝ち筋があるとすれば…永遠にハイドする泥仕合じゃない?
一応ね、不利な陣営が勝てるように一発逆転魔道具も用意してあるんだよね。
その魔道具ってのが、水風船をセットして水風船の中身を飛ばす水鉄砲っという遠距離魔道具も用意してある!
っま!絶対に!気が付かない場所に設置してあるから易々と見つけれないっしょ?運よく見つけることが出来たらラッキーって感じかな?ぇ?どこかって?…広場の朝礼台の下、認識阻害の術式を施してあって、イベント開始してから一時間くらいで効果が切れて姿を現すようにセッティングしてる。
広場でスタートして、更には、ず~~っと広場にはお爺ちゃんが待ち構えているでしょ?
誰も木箱をそこに運んでいる姿を見ていないので気が尽きようがないよね?
当然、木箱をセッティングする人は認識阻害の魔道具を使って移動してるからね?
なので、絶対に見つけれない。見つけることが出来たら泥仕合になっている時かな?
相手を殴る蹴るなどは当然禁止しているし、アクシデントで当たったとかであればセーフだけど、狙って攻撃したら即失格!手に入れた魔道具を強引に奪うことはできない!
もちろん、水風船の中身を確認するために封を切った時点で失格!水鉄砲と言えど完璧じゃない。
それは直接的な攻撃になる?ノンノン、水鉄砲で殴ってないでしょ?問題なし!
メイドちゃんも姪っ子ちゃんと同じでハイドするのがベストかな?
私が鍛えた術式部隊である彼らなら少しの間くらい認識阻害の術は扱える。
それだけじゃない、認識阻害の術式を理解しているってことは弱点も知っている。認識阻害に対して有効的な探知術式も多少は扱えれる。
っとなると、ハイドしているであろう姪っ子ちゃんを真っ先に見つける可能性が高いのがメイドちゃん
そして、二人の地力を比べてみるとね…圧倒的にメイドちゃんの方がスペックが高い。
そんなメイドちゃんが姪っ子ちゃんよりも先に退場するとは思えれない。彼女はね、根っからの善性じゃない、狡猾な判断が出来るし躊躇わずに実行できる、非情な部分がある。それに加えて色々と特殊な技能を持っている、対人戦に特化した気配隠しなどが体に染みついている。
それにね、彼女の思考を考えれば考える程…真っ先に団長を狙うとは思えれない。
何故なら、団長を探すよりも有利なポジションで待ち構えているであろう危険な陣営を先に潰す。
勝ちに行くのなら、真っ先に狙う陣営は、姪っ子ちゃん陣営だろうね。
圧倒的不利に見えて実は、凄い有利であるメイドちゃんが勝てる…勝ち筋として考えられるのが各陣営が消えていくのを息を潜め徹底的にハイドして待ち続ける、それか、仕留めれる虚をつけそうなら即座に刺す。彼女はね…容赦ないよ?本気出したらね。狡猾な策、彼女の運命力が高まって月が祝福してくれたら、勝てる、かな?
後は、術式部隊の魔力配分をどうするのか、作戦次第かな?彼女が術式への理解度が私や、術式研究所のメンバーと比べて低いってのが…不安要素かな?術式の可能性を引き出しきれなかったら無理だろうね。それを補う様に術式部隊が提案していれば、色々と策を思いつくんじゃないかな?
女将は確実にお爺ちゃん狙い一択。団長何て一つも意識していない。ここが衝突することは無い。
代表者を紹介してるときにお爺ちゃんが壇上に上がってきたのを見て、瞬時に闘争心を表にでちゃったのを私は見逃してないよ?あれは、確実に意識している。
それに気が付いた人達は二人が衝突するのを待つでしょ?
それに、女将は優勝するために戦士としての矜持を捨てるとは思えれない、強者が出てくると戦士としての気概が溢れ出てきちゃって女将から粉砕姫へと心が戻るだろうからね
…壇上での様子だと従業員の多くが遊びに来ているって感じじゃないかな?事前に娘や旦那、従業員一同が本気で賞品が欲しいって頼み込まれてたら目の奥に勝利へとたどり着くための貪欲な色が見え隠れするだろうからね。それが無かった。
女将が勝つ道筋は…運頼みかな、他の陣営が結託して数の暴力でお爺ちゃんを退場させれば、余力を失ってあっさりと女将に退場させられ女将が勝つだろうね。
ベテランさんに関しては女将かお爺ちゃん狙いだろう。だから、団長とかち合わない限り戦わない。
って、思うんだけれど、彼はねー読めない瞬間が多々ある。心が弱いから絶望的な状況じゃない限り彼は…期待しない方がいいんじゃない?
お母さんが言うにはね貴族の仲間入りするんだと決めてから変に堂々とし過ぎてて往来を風を切って歩いくようになって変わったわねって言ってたんだよね~。
それをこの状況下でもしてるのを団長が見たら、隙だらけなベテランを攻撃して、チーム全体の総合力的に普通に正面衝突しちゃうと、勝てるとは思えれないから、順当に考えたら返り討ちにあうだろうね、ここも団長が退場する可能性として高い部分かな?何も準備せずに衝突が始まったら団長は勝てない、ここが私の賭けポイントかなー…
彼の本質である小動物的な動きをしないで自分を大型の獣、捕食者として振舞おうとすると…
何処かで誰かと衝突して隙が出来た瞬間に負けるかもね?って塩梅かな?
勝ち筋として考えられるとすれば、あの頃の…本気で生き残ることだけを考えていた時期にまで精神力を研ぎ澄ませれたら…一位もあるんだけどなぁ。っま、今の彼ならどう頑張っても勝てない。でも、突如、過去の感覚を思い出し振り返り、意識を改め当時の生きる事、愛する妻、愛する子供のことだけを願って動けば…勝ち筋はある。
ティーチャーくんは未知数、彼が本気で隠れようとしても他の人達が邪魔するから出来ない。
彼の真骨頂は作戦でも何でもない、本能に刻み込まれた気配隠し。彼の本質を考えると自ら望んで団長と衝突しようとは思わない、見つけたら、隠れつつ様子を伺って進行方向とは逆に動いて慎重に全体を把握するんじゃないかな?
って思ってたんだけど…
ちょっと意気込んでいる様子が見え隠れしていたから…気配を隠し切れなくなって見つかって誰かと衝突して退場するか、最後まで残ってお爺ちゃんと一騎打ちになって負けるっていう未来が濃いかな?
勝ち筋としては、気配を隠して団長・メイド・姪っ子の虚を突き落し、強者三陣営が三つ巴衝突して、強者三陣営で何処か一つだけ生き残って手持ちの武器も無し、仕切り直ししないといけないっていう満身創痍な状況を強襲すれば勝てる。




