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最前線  作者: TF
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戦士の部代表 ベテラン視点


会場を出ると、師を同じとする屈強な面構えが出迎えてくれる。頼もしい、我ら偉大なる戦士長に育ててもらった同士、何も言うことなど無い。

全員で向かうは死の大地に近しい場所、木々や草木が生い茂…っては、いないのである、姫様はそういう管理はしっかりとするほうで、適度に手入れされているのである。

どうして、そこに向かうのか、理由は単純、吾輩達は常日頃…若かりし頃の苦い思い出を乗り越えたいと機会をうかがっているのである

…絶対な壁であり、今も超えることが出来ない大きな物質があるのであるからなぁ。


その大きな壁である、彼女が戦場を選ぶのならここを選ぶ。彼女もまた心は戦士であるから。

勝つためには己が得意とする場所を選ぶのである。


何度思い出しても、苦い思い出…

吾輩達が若かりし頃に、先輩弟子であり、挑んでも勝てない人物に、幾度となく顎でこき使われ続け…

彼女が戦士長と手合わせして負けた日は、練習台と言われ幾度となく吹き飛ばされ、何度も彼の剛腕にねじ伏せられたか…


いつかリベンジしてやると、吾輩達は涙で拳を濡らしながらも切磋琢磨してきたのである!!

だが、その願いは叶う事が無くなってしまったのである。あの日を境に粉砕姫という戦士は、牙が折れてしまったかのように戦場から離れ。

一人の女性として新たな人生を歩み始めたのである。


幸せそうに家庭を築いていく姿を見て吾輩達は…彼女に挑む機会を失ってしまったのである。


っと、しみじみと昔を思い出している間に、公園に着いたのである!

さぁ!調べるのである!粉砕姫を超えるという機会を得られたのであれば、吾輩達は喜んで参加するのである!!


公園の木々が揃う場所を各々が入念に歩き、下調べをする。

吾輩達の体には染み込んでいるのである、彼の者が体躯を、彼の者がどう動き、どうするのか…常に想像し、彼女の動きに対して入念に考えていく。


腕の長さ、足を運ぶ距離、目を閉じると全ての動きが想像できる。

それ程までに吾輩達は彼女に、幾度となく地面の硬さを覚えさせられているのである


各々が大地の感触を、木々のゆらめきを、抜けていく風を感じながら煮え湯を飲まされ続けてきた想いを爆発させているのが、吾輩にはわかるのである。

公園の状態、状況を完全に把握するころに、吾輩達を呼ぶ声が聞こえ、吾輩達をお互いの顔を見て頷き、戦場へと赴く…


広場で案内されるがままに移動し、この様な、彼の者に挑む機会を与えてくれた我らが姫様、その姫様が色々と何か話しているが正直に言えば耳に入ってこないのである。

これが、姫様が言うノイズっというものなのであろう。賢くない吾輩もこうやって一歩ずつ賢くなっていくのである。

っであれば、彼の者と積み重ねてきた修練、挑み続けてきた数、今となっては吾輩達の方がはるかに上!負けることなど有り得ぬのである!!


戦い続け来た吾輩達が、若き頃の吾輩が超えることが出来なかった壁!!越えねばならぬ壁を超える時!!

むふーっと鼻から熱い息が漏れるのも致し方なしである!!


昂る感情!滾る血潮!これには吾輩のアレも猛き狂うのである!!

あの街で豪遊する時と同じくらいに昂り全身が熱を帯びていく…うむうむ!吾輩何時だって絶好調である!!


目を大きく開き、内から溢れる熱い息を解き放っていると、背中を叩かれ後ろを振り返ると、顎をくいっと動かす同胞の姿

周囲を見ると、どうやら、移動開始みたいなのであるな。うむ、吾輩達も向かうとするのである。

三人そろって向かうは…公園の手前、目的がそこを戦場にするのかどうか、吾輩達は見届けねばいけないのである。

公園の手前で止まり戦士たるもの堂々と怖気ることなく仁王立ちし誰が通るのか…うむ、後手後手で動いたから粉砕姫が公園に向かっていく姿しか、見えなかったのである。

その大きな姿を堂々と…吾輩達など気にすることなく歩く姿に、なめられたものだと、各々が興奮している。


少し頭に血が上りすぎているのであるな、この状態でアレに挑むのは良くないのである。


トントンっと興奮する同志の肩を叩く。視線を合わせてから目線だけで伝える。あちらを見るのである、っと、何時もの様に声を出すことなく吾輩達は通じ合えるのである。

視線の先は吾輩達が苦汁をなめさせられ続けてきた場所であり、吾輩達が多くを学んだ思い出深き場所

修練所で一度頭を冷やそうという提案が通じ、同志達が共に歩を揃え歩いていく。


歩いていく最中に、どうしても気になることがあるのである。


木箱が見当たらないのである?

安心するのである、姫様の話は聞いていないようで聞いているのである。必要な情報だけを選んでいるだけである。

聞き洩らしたところで問題ないのである。吾輩の…違うであるな、吾輩達の目的は勝利よりも…誉れである。

共に歩く同志に、木箱が見当たらないのであるが、っと伝えると、俺もそれを気にしていた、と、小声で返事が返ってくるのである。

吾輩と同じことに気が付いていたのであるか。流石である。


吾輩達も、武器が無ければ挑むこともできないのは重々承知しているのである。

粉砕姫の動きを確認しつつ、道中の状況も観察していたのである。


なのに、普段と何も変わっていないのである?水風船の大きさを考えると、それなりに大きな木箱であると思っていたのであるが…

不自然な場所に木箱が置かれているのを見なかったであるなぁ?


…考えられるとして、小さな箱に一つ一つ置かれている?否、姫様であればその様なことをするわけがないのである。


丁寧で豪快、大胆で冷静、人の虚を突くのが彼女の真骨頂である。

虚…虚ろ…見えざる…っむ?そうか、そうであるか!

小声でわかった、付いてくるのであるっと伝えると、小さく頷いてくれるのである。


吾輩の推理、いや、姫様と長い付き合いである吾輩の勘が告げているのである。

既に木箱は設置済みである!!


だが、吾輩達がどうして道中に気が付かないのか、答えは簡単である!

姫様だけが構築できる複雑怪奇な術式、そこに何かがある、見えているのに、記憶に残らない。


道に落ちている石ころの様に感じさせる術式。認識阻害の術式が施されていると。


っであればである、吾輩達は目を凝らして探している、視界に入っている、だが、それが木箱だと認識できていなかっただけである。

対処方法は、そこにそれがあると強く意識を保ち、視界だけでなく、嗅覚触覚などを最大限に活用すれば見破れると教えてもらったことがあるのである。


何も無い場所で何かにぶつかることが出来たら見えるのである!!


だが、何もない空間に手を伸ばして探すという時間を無駄にし尚且つ隙を晒すようなことはしないのである。

姫様であれば、そこを戦場とするっと決めておいた場所に木箱を予め設置するのである。


つまり…公園の中、修練場の中、広場周辺、寮周辺、病棟周辺である。

通路のど真ん中には置かないのである。


観客達が見やすく、そして、かち合う場所、戦いが起きやすい場所に設置している、姫様ならそうするのである。


確かな予感を感じながら歩を進めていると合図が聞こえてきたのである、っであれば、木箱が何処かに見えてくるはずである。

修練場に辿り着き、木箱が見えるのを待っていると…気配を感じ、視線を向ける。考えることは同じであるか…


吾輩の後輩、騎士の部を取りまとめてくれているティーチャーが此方を見つめているのである。


お互い直ぐに臨戦態勢に入る、成程、吾輩達が苦汁をなめ続けさせられた相手に挑みたいと願う様に、お前たちも強者を求めていたのであるか。

運命の如く、この瞬間にかち合うとは…戦士長は吾輩達に伝えたい物でもあるのであるか?


強き者に挑み勝つことを下剋上っと言うのであったか?

…吾輩達も、それを経験するときがきたのであるか?


…否!!吾輩達はまだまだお前たちに負けぬのである!!


戦士長が見守る椅子の前で吾輩達が後輩たちに負けるという姿を見せるわけにはいかないのであるぅ!!!!!


何時までも不甲斐ない吾輩であるが、まだまだ、後輩に土をつけられるほど、耄碌していないのである!!

引くという意志を、背中を見せるという気配を一切感じさせず、敵を絶対に撃破するという殺意を全身からみなぎらせながら、何処かに現れるであろう武器の気配を探し続ける。

予感としては修練場のど真ん中である。姫様であれば、ここのど真ん中に設置する予感しかしないのである!!


修練場の真ん中か…ちょうどお互いの陣営が、見つめ合う中央…いや、吾輩の方が少し近い…

そこに何かると確信し、神経を集中させると、その場所に何か揺らめきが見えるのと同時に直感で駆け出す。


見てからでは遅いのである!相手に武器は無い!攻める手段がない相手に対し、圧倒的有利とする武器を手に入れる!!

吾輩が一歩踏み出した瞬間に木箱が現れたのである!戦士としての直感が告げるのである!吾輩の方が速くに辿り着く!!

木箱から一瞬だけ、視線を上げると直感は確信へと至る!!遠いである!反応が鈍いぞ後輩!!


木箱の蓋を素早く外し、腕を中に入れ水風船を掴むと、同時に此方に駆け寄ろうとしているであろうティーチャーが通る道筋へと水風船を投げる!!

腕の力、手首を返す様に腕を木箱から抜け出すと同時に投擲する!!


…っが!

水しぶきが炸裂することは無かった。


吾輩の横を全力で通り抜けていくのである。投げた水風船が地面に当たり音をだして修練場を緑色に染めるころには、ティーチャーの姿は遠く、彼と共に行動をしていた騎士達も直ぐに引き返しこの場から離れている。

うむ、追いかけたところで相手が武器を手に入れ待ち伏せしている可能性もあるのである、それに、折角見つけた武器を無駄に減らすわけにもいかないのである。

木箱の中には人数分、それ以上の水風船が入っているのであるが…思っていたよりも小さいのである。

ちらりと、先ほど投げた水風船が割れた箇所を見る、先ほどの水風船はどれ程の大きさだったのか、しっかりと覚えておくべきであった。

手元にある水風船は、先よりも、大きいのか?小さいのか?判断材料にするべきであったが、とっさだったのである、仕方がないのである。


少々心許無い大きさの水風船を同志と分け合い、立ち上がる、他の者たちも動き始めている…消耗する前に挑むべきだっという声が吾輩の心に届くのである。


持てるだけのっと言いたいのであるが、木箱に入ってい物は六つ…一つは使った、残りは五つ。

木箱に入っている水風船を手に取り、同志に一人二つ渡し、自分は一つだけもち、公園で敵がやってくるのを待ち続ける強者へと挑むのである。


理想としては、吾輩達が先に水風船を手に取り、先輩が得物を得ていない時に仕掛けたかったであるが、それは叶わなかったのである。

きっと、姫様も開始の合図の前に戦闘が開始されない様に木箱が見つからない様に考え用意したのである。姫様の細かい気配りである。

だが、その様なこと、今となっては些末なことである。これから先に待ち受けている吾輩達、最大にして最太に挑戦するのであるから。


ザムザムっと豪快に足音を出しながら力強く大地を踏みしめながら進んでいく。公園へ…


敵が数多くいる中、こんなにも音を出して歩くのは愚の骨頂であるが、この街で共に過ごす者達であれば、吾輩達の矜持を理解し、手を出すような無粋なことはしないのである。

するとなれば、吾輩達と粉砕姫がぶつかる時であろう。それであれば、吾輩達としては文句は一切言わぬのである。相手も勝つために必死なのであるからな。


闘志をみなぎらせ、心を燃やしながら進んでいく…だが、いざ公園が視界に入ると

全員の動きが止まり、心が冷静になる。全員が息を潜め、足跡を消し、大型の獣を相手どる様に全力で神経を研ぎ澄まし、牛歩の如き行軍で進んでいく。

公園の奥、木々が生え、草木が茂る場所で周囲を警戒している大きな姿を見つけることが出来た。

幸いにして、粉砕姫と共に行動する人達はこういった荒事とは完全に無縁である人達、ゆえに、直ぐに見つけることが出来たのである。

先輩であれば、囮作戦と言う誰かを犠牲にする作戦なんてするわけがないのである。


チーム戦と言うのが吾輩達に勝利をもたらすのである、先輩のみであれば、あの大きな姿だというのに不可思議に木々や草木に身を隠し、一定の距離になるまで見つけることが出来なかったのである。

足手まといと言うと失礼であるが他の者がいる、そのおかげで此方としては有利となるのである。

どんな状況でも勝てば官軍と姫様は教えてくれたのである卑怯者と罵られようが、構わぬのである。彼女を超えてこそ

…吾輩達は戦士長にお会いした時に褒めてもらえるのである!!!


一歩、前へと踏み込むと、目と目が合う!?流石は先輩!僕たちを見つけるのはお手の物ってことですか!!…気圧されるな!吾輩の心よ!強く在れ!!!

「かかってきな!!!」

此方を威嚇するような咆哮が吾輩達を貫き、足と手が震えそうになる、だが!怖気づくわけにはいかぬのである!!どんどんっと心臓を叩き、どんどんっと足を叩く。

同志の両手には、敵を仕留める武器がある!!吾輩にも一つだが、武器がある!!

粉砕姫の腕には二つしか武器が無い!!他の二名など数に入らぬのである!!


いける!!


吾輩が正面切って駆け出すと、同志達は二つに別れる!ありがたい!策を伝えずとも心が繋がっているのである!!

三方向から同時に攻める為に少しだけ、走る速度を落とし同志達のタイミングを揃えつつ真っすぐに向かっていく。

粉砕姫は微動だにしない!なれば!まずは足手まといを落とす!!吾輩が正面切って走ることによって視線を釘付けにする!!


粉砕姫と一緒に居る、その他二名が慌てる様に粉砕姫の後ろから姿を出して動き出している。

動きとしては我が害たちの同志に向かっていくように前に出ていくのであるか?同志達に目掛けて、手に持った水風船を投げつけている、その程度の動き、同志達であれば脅威となることはあるまい!吾輩はこのまま、粉砕姫の視線を制す!!


粉砕姫を睨みつけ、少しでも後ろの二人をカバーすれば背中に水風船を叩きつけるという意志を示し続けていることにより、あの大きな体が此方以外を向くことが無くなる。

吾輩達が睨みあっている間に決着がついたのを教えてくれるようにピッピっと笛の音が聞こえてくると、目の前にいる壁が眉をひそめ鼻に皺を寄せているのである。吾輩達の連携に見事に動きが封じられたことへの苛立ちであるか?


っふっふっふ、吾輩でも貴女の心理が手に取る様にわかる、この状況がどれだけ不利なのかわかるであるぞ?

鍛え抜かれた戦士三人、練度は極まっている、この連携!伝説と謳われし貴女でも捌くことは不可能と見たり!!


全員が勝利を確信し笑みを浮かべながら同時に地面をけり吾輩達のトラウマに向かって駆けだしたのだが…


近づくにつれ、相手の大きさを再確認させられてしまい、一抹の不安を感じてしまう、だが、その直感を抱いたところで、吾輩達は止まることが出来ぬ

すでに、体は地面をけったときに決めた動きに向かって動いていく。

世界がゆっくりと動く中、手にある相手を唯一倒すことが出来る武器を投げる、狙った箇所は正面なので胴


左方から攻める同志は肩、右方から攻める同志は、腰、この三方向、避けようがない、避けようがないのであるが…


吾輩達が投げた武器では敵を倒せれる程の質量があるのであろうか?

吾輩達が投げた水風船は吾輩達の手の中に納まる程度なのに、粉砕姫が両手に持つ水風船は、あの大きな手よりもやや大きい…


ゆっくりと視界が進んでいく、水風船が三方向から飛んでいく、タイミングは完璧、当たるとすれば同時

だが、上半身を捻り、肩に向かって行った水風船は外れ、腰に向かって行った水風船は粉砕姫が持つ水風船で優しく叩かれ、その場で割れることなく軌道がそれ、二つを対処したが故に吾輩が投げた水風船しか当たらなかった…


彼女を染めたのは、ほんの一部…これは、染まったということになるのであろうか?


右方から投げた同志の水風船は、股を通り過ぎて地面に当たり割れる…あの位置ではどこも染まらぬな…やはり!聞こえぬ!笛の音が聞こえぬのである!!


同志達は仕留めたと判断するために必要な審判が吹く笛の音が聞こえてこなかった為に、行動が一瞬だけ遅れた。


その隙を見逃すほどあの人は甘くなく、人間業とは思えぬ判断力!!

右腕左腕を左右に開く様に上げる動作と同時に手首に力だけで水風船を投げる、それくらいなら誰でも出来る、簡単な動きだというのに、同志達に大きな水風船が当たってしまう!!

彼女は同志達がどういう動きをするのか先読みしていたとしか思えれない。絶対に上半身が通る場所に水風船が投げられた!!

何という!瞬時に左右の動きを見切り、同時に仕留めてきた!!


だが!今の姿勢で在れば!攻撃を当てるの容易いのであるが!!このチャンスだというのに!!吾輩は武器を持っていない!!

一度立ち止まり、周囲に武器が無いか探す!俊敏性で在れば現役の吾輩の方がはや…


頭を下げ、地面に向かって腕を伸ばす!?


その仕草が何を意味するのか考える迄も無く、両足を前に出しながら地面に設置する両方の踵に力を込め、前へ向かう力を完全に殺し、膝を曲げ一気に伸ばし後方へと飛ぶと同時に、上半身を捻り、全力で彼女のフィールドから逃げると同時に、木という遮蔽物に隠れる様に横にズレるとバンっと後ろで質量を持った何かが木に当たる音が聞こえてくる。

そして…同志が倒されたという判定を告げる音が、ピッピっと彼女のフィールドに広がっていく…


走り逃げ去る吾輩の頭は軽くパニック状態に陥っていく…


草木で見えにくかったのである!足元に武器を用意していたのである!先輩が此方に釘付けになっていたのでなかったのである!!

武器を用意してある場所から動きたくなかっただけである!!下手に走り回ると両手以外に武器を持つことが困難となるのである!!

それ即ち、数的に不利と考え、どう見ても両手以外に武器を持っていないと言わんばかりに駆けだした吾輩達が持っているであろう武器の数を削り、共に戦う友人を犠牲にするという決断を下し、自らの命を犠牲にし吾輩達の武器の数を削り、手持ちが無くなるという判断を冷静にしていたのであるぅ!!!

手持ちの武器が無くなった吾輩が立ち止まれば刺し、逃げれば背中にぶつけるつもりだったのであろう!

だが!吾輩は見ていたのである!同志達が投げつけられたのは合計で四つ!粉砕姫が投げたのは合計で三つ!流石にあれ以上の数は持っていないはずなのである!!それに、あの公園周辺にはもう木箱は無いはずである!修練所には木箱が一つだけだったのである!一つのエリアに一つか二つっと見ていい筈である!

それに、木箱のサイズを考えれば…粉砕姫が持っていたのは大玉!入っても三つが限界である!!もう手持ちは空っぽのはずであるぅぅ!!!


これは好機である!!直ぐにでも補充し!木箱を求め彷徨う様に公園から出てきたところを狙わせてもらうのであるぅ!!!

粉砕姫の弱点は機動性とスタミナである!削らせてもらうであるぞ!!!


公園を出ると直ぐに木箱がこれ見よがしとあるではないか!!何という幸運!!月は吾輩に微笑んでいる!!

戦士長が勝てと力強く声をかけてくれているのであるぅ!!


飛びつく様に木箱の蓋を開け、片手を入れた瞬間、地面を踏みしめる音が聞こえ、音がした方向に瞬時に視線を向けると同時に木箱に手を入れていない方の腕を前にだし、木箱の淵を掴み下半身を持ち上げる!!!逆立ちするかのように!!これで当たるま…い…


目の前で水風船が衝突し割れると吾輩の顔に水しぶきが飛んでくる、そこまでは…軌道を読めていなかったのであるぅ…


ここまで濡れてしまっては判定負けで在ろう、三つもの水風船である、相当な量で在ろう。


はぁっと、目を瞑ったまま、ゆっくりと持ち上げた下半身を下ろし、逆立ちの状態からしゃがんだ姿勢になる。

さぁ、敗北の笛の音を鳴らすがよいのである…ぬ?思っている以上に笛の音が遅いのである、嗚呼そうか、木箱が邪魔で吾輩がどの程度染まっているのかわからぬのであろうな、吾輩は紳士である。素直に負けを認めるのである


目を開けて、立ち上がって染まった箇所を見せるのが紳士である、紳士こそ、貴族である。貴族となる吾輩としては正しい行動であ…る?

目を開けた瞬間に脳天から水が降り注ぎ、周囲が真っ黄色になる…っふ、どの陣営かわからぬであるが、容赦ないのであるなぁ。

だが、それでよいのである、判定が出るまで待つのではなく止めを刺す、良い判断である…


っふ、今回もあの人に勝てなかったことに自然を笑みを浮かべてしまっていると、ピィィィーーっと笛の音が聞こえてくる。


吾輩達の完敗である。

次こそは勝つのである、知略を競うイベントではなく、こういった直接的にぶつかるイベントを期待しているであるぞ?

敬愛する姫様よ…


立ち上がり、どの陣営が吾輩を倒したのか視線を向けると…彼であったか、うむ、彼であれば吾輩は負けたことに悔いは無いのである。

黄色い液体が目に入り、つい、目を細めて睨みつけるように見てしまったが、これくらい許せ。


目に入った液体を拭い落し、視線を向けると、吾輩に向かって指を刺している?何を伝えたいのであるか?

指を刺すのは吾輩の胸当たり?視線を下げると

「なんと!初手は…くぅ…運が良かったのであるかぁ…負けを認めず最後まで…いや、どの道であるか、吾輩の完敗である」

胸の辺りは一切、染まっていなかったのである、そういえば、姫様は言っていたのであるな、透明な水も混ざっていると…

まさか、三つとも透明とは思うわけも無し…


吾輩を倒したチームは直ぐにその場から離れていく、心は常に戦場に在れ…偉大なる戦士長の言葉である。

一つの敵を倒しても油断するなと、何度も叱られたであるなぁ…彼…いや、今は彼女であるな。

彼女であるのに…彼の者からは偉大なる戦士長と同じ…去り行く背中は…大きな背中に見えるのである。


大きくなったであるなぁ…この街に来た時は、あんなにも小さく小さく縮こまって、毎日、涙を浮かべながら吾輩の特訓に耐え…

彼が彼女であると知ったときは、心から懺悔したのである。あのまま…No2が…姉さんが僕を…俺を止めてくれなかったら、彼女の心を壊してしまったかもしれない、大切な戦士長の一人娘を…もし、そうなってしまったら、吾輩の心は耐え切れないという自信があるのである。


感謝せねばなぁ…全ての廻り合わせに…

天を見上げていると同志が吾輩の肩を叩き、頷き、声をかけてくれる

「不完全燃焼だ、風呂入りに行こうぜ、隣町のな!!」鼻の下を伸ばして親指を指と指の間、入れてはいけない箇所から出す様に見せてくる、まったく、男しかおらんからよいものを…

「応!!いくであるいくであるぞ!!むほほぅ!!」

まったく、誘われてしまっては行かねばなるまい!!同志との付き合いも大事であるからなぁ!!むぅっほほぅ!!!


審判たちに遠い風呂に入りに行くと伝えると、ぁぁっと、一瞬で全てを理解し楽しんできてくださいね!っと、笑顔で送り出してくれる。

吾輩は良き同志に巡り合えたのである!!同志こそ最高であるぅぅ!!!



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