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最前線  作者: TF
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騎士の部代表 ティーチャー視点

各々が移動していく最中に愛する妻が、がんばってっとウィンクしてくれたのを受け止め、愛する妻を地上の楽園と謳われるほどに大好評なホテルへと、招待するためにも勝とうと、珍しく湧き上がる闘志に自分自身も驚いてしまう。


争いごとが…嫌いな僕が、こういう誰かを蹴落とし勝利を収めようとしている、変わってしまった自分を冷静に見つめなおす…

そんな自分が滑稽にうつり自然と笑みが零れそうになる。

全ての争いごとに関わりたくないと思っていたのに…


愛という物は素晴らしい、自分の世界を変えてくれる。


きゅっと力強く拳を握り、騎士の部隊に用意されている武器などを保管している部屋に選ばれし二人と入っていく。

部屋の中に置かれているベンチに座ると、視線が交錯する。二人の目にも闘志が宿っているのが伝わってくる。

騎士の部隊から選出されたこの二名、幼き頃に僕を守ってくれていた騎士達と比べて劣るのでは?などと言う考えはない。

この二人は、貴族の武家からの出自、僕と同じで多くを語らない、語らないが心は通じ合っている。


視線を合わせていると、一人が拳を前に突き出してくるので、僕も同じように拳を前に出すともう一人も拳を前に出し、三人の拳が触れる

「勝利を我が手に!!」

「「応!!」」

野太い声が部屋の中に響き渡る。


僕たちはこれでいい、作戦何て必要ない、それ程までに僕らの方が有利だからだ。

臨機応変に状況を見極め、その都度、最適解を探せばいい。

深く考えればドツボに嵌る。僕の悪い部分を出さないために相手を深読みし過ぎないために、その場その場で判断する!!



信頼を寄せあう騎士達が、時間が来るまで己の身体能力を最大限に生かせるように瞑想をしているとドアがノックされる。

ベンチから立ち上がり、各々、無言で目だけで語り掛ける。

僕たちの心は一つ!何時だって繋がっている。

苦楽を共にし、困難を乗り越え、死線を潜り抜けてきた僕らに迷いはない!!

いざ行かん!勝利をこの手に!!


広場に足を運び、審判役を務める見慣れた仲間に、此方でお待ちくださいと案内され広場の一角に移動する。

集中力を高めるために特殊な呼吸法を繰り返していると、声が聞こえる。

ぼんやりとしながら、内容を聞いていると、どうやらどの陣営が人気なのか伝えいるみたいだ…


どうやら、僕たちは期待されていない

せめて三番手くらいの評価はあると信じていたが、この程度、慌てる事も無い。

一つ上の人達は組織票、純粋に彼…彼女の方が多くの方から愛されているだけだ。

真に評価されているわけじゃない。この程度で僕の心は揺れ動かない、何時だって水面は静かだ…


呼吸を整え、集中力を高め切ると、世界の音が籠ったように感じる、だが、人の動きがゆっくりと見える。

嗚呼、月の祝福があらんことを、今宵の僕は太陽の下なれど、極地へと至れる。

人型と正面から向き合う程にまで高まっている。


メンバーの肩を叩き、移動を開始する。

目指す先は、僕らが一番慣れ親しんだ場所、広場からさほど遠くない場所にある修練所へ

周囲の動きを観察していると、各々が違う方向へ向かっていく。

なら、僕も目的の場所から少し遠回りするのが策として正しいだろう


僕らは一言も話さず歩いていく。

公園を経由し修練所へと向かう途中、視界の端に大きな姿が見えた。

粉砕姫先輩か…彼女と序盤で衝突するのは避けたい

気が付かれない様に、全員が慎重に足音を殺して歩いていく…


もう少しで修練所に辿り着くというポジションにいると開始の合図が聞こえてくる。

心を静かに、周囲を観察し、見逃すことなく歩を進めていく。

死の大地で活動するのであれば必須技能…だが、それは相手も同じ。

永く死の大地で活動し、一人でも問題無いと判断された戦士っという部隊、彼らの方が技量は上

完全なる格上、相手にするのは得策ではないが、だが、その考えは守りに入った者の考えだ。

出来れば初手で仕留めたい。彼らが水風船を手にする前に仕掛けたい。


姫様の事だから、修練所には複数の木箱を用意すると僕は読んでいる。

修練所の裏口から中へ入ると…しまった、向こうも同じ考えだったか!!


戦士の部隊である先輩とかち合ってしまう!!落ち着け、水面を乱すな。

相手の手には武器が無い!お互い水風船は持っていない!

お互い、その場から離れることなくにらみ合いが続く

両者ともに武器を持ちえていないのでここで、膠着する必要はないのだが、どうしても警戒して動けなくなってしまう。

死の大地で戦いぬいてきた者たちが長年培ってきた習性のせいだろう。


背を向けたら負ける…その習性が僕らを膠着させている。

6名の男たちがその場で立ち止まっていると、お互いの中間地点に何かが突如現れる…?

突如現れたものが何か直ぐに判断出来なかった…木箱だ…呆気に取られていないで、直ぐに木箱へ向かわないと!!

足に力を込め大地を蹴るが…

正面にいる先輩であり師匠であるベテランさんの方が反応が少し早かった!つまり、ここに何かがあると読んでいた!

彼の方が姫様との関りが長いからこそ、何かあると踏んでいた、だからこそ初動が早かった!!


駄目だ、このまま、木箱に駆け寄ってはいけない!彼の手の方が早い!!

先に到着し素早く木箱を開け、手を入れている!彼の腕が木箱から抜け出てくるので、腕の動きから軌道を読む!!

飛んでくるであろう軌道から体を逸らすと、彼が投げた水風船は当たることなく空中へと置き去りにするように一気に駆け抜ける!

武器が無いのであれば離れるのが基本!!


全力疾走で修練所から離れる…一定の距離まで離れるが後ろから追いかけてくる音が聞こえてこない。

チームメンバーと離れ離れにされてしまった、もしかしたら、ベテランさんは僕ではなく其方を仕留めに追いかけたのかもしれない…

ゆっくりと足の速さを弛め、ぷはっと、口を開き、一気に酸素を取り込みながら歩き続ける。

歩を止めたらこの瞬間を待っていたと言わんばかりに追撃される恐れがあるからだ。


無呼吸で走り抜けた影響か、心臓がバクバクと鳴り頭の奥にまで、響いてくる。

落ち着くまで、先ほどの状況を整理し、次の行動を考えないと…

急に木箱が現れたのはきっと、姫様が所有する魔道具の効果だろう。

そこに木箱があるという認識をずらす魔道具、つまり、今まで歩いてきた場所にも、もしかしたら木箱があったのかもしれない。

迂闊だった、どうやって木箱を運んでくるのかと考えなかった僕の落ち度だ。

粉砕姫先輩に気を取られないで、もう少し冷静に周囲を観察し考えるべきだった。


ふぅふぅっと、小さくも細く、呼吸を整える様に歩いていく。

この先に、身を隠す為に条件が良い場所がある、一旦そこで身を隠し、体制を整えるべきだろう

きっと、チームメンバーも同じように隠れているはずだ


建物の曲がり角を曲がった瞬間、僕のお腹は真っ赤に染まった…

視線を前に向けるころには、胸も真っ赤に染まる。


嗚呼、そうか、僕の悪い癖だ…状況を整理し先を読む為に考え込んでしまった。

だから、僕は争いごとが得意じゃない。複数の陣営が全員敵だという状況が苦手なんですよ。


集中力が完全に途切れ、平和な日常を過ごす自分に切り替わるとピィィィーっと笛の音が耳を通り抜けていく。


ごめんね、君に豪華な世界を見せることが…出来なかったよ。

天に輝くのは太陽、僕らを強く導く神聖なる月はまだ顔を出す刻ではない…

祝福は与えられず…


太陽を睨んだところで結果は変わらない

己の未熟さに呆れ佇んでしまう…


視線を下げると、赤色が現実を教えてくれる。

真っ赤に染まったままでこの場居るのは良くない、審判と一緒に観客が集まっている場所へと歩いていく。

向かっている時に、教えてもらった、僕が一番最初の脱落陣営だと…ぅぅ、どんな顔して仲間達に会えばいいのだろうか?

嗚呼、嫌だ、だから、順位を競い合う戦いはしたくない…


仲間たちが待つ場所に顔を出す、さぁ、罵声を浴びせてくれ…



…………………………………おかしい、待てど、何も言われない?

顔を上げると「運が悪かった、先生のせいじゃない!」っと、多くの後輩たちが僕に駆け寄ってくれる。

暖かく迎えてくれたことに頬を何かが通っていくのを感じる。おかしいな、液体がかけられたのは胸とお腹あたりのはずなのに。


胸が熱くなっていくのを感じてると、愛する妻が僕の体に抱き着いてくる?いけない、今の僕は汚れている、慌てて妻を離そうとした

「おかえりなさい、貴方は悪くない」

だが、その暖かい心が濡れて冷えてしまった僕の心を優しく温める様に包み込んでくれる、汚れるなんて些末なこと、それよりも、僕の心が彼女を求めている、感情のままに優しい彼女を抱きしめ

「今度、こっそりと二人だけで行こう」

彼女にしか聞こえない様に伝えると、こら、っと背中を叩かれる。今言う事じゃないっていう意味だろう。

感情が極まってしまいつい、周りを気にせずに言葉を出してしまった。


そのまま、二人で抱きしめあっていると、ごちそうさまっと、仲間が僕の肩を優しく触れる様に叩き去っていく…

何かを失う事も無く、何かを得ることが無い、それでも、僕を待ってくれている人が居る。

嗚呼、これが幸せなのだろう。彼女に出会えたことが一番の祝福だ…


愛は、僕の全てを壊し、変えていく…いつだって…




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