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最前線  作者: TF
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物資支援部隊代表 女将 視点

こういった集まりは、参加する迄は億劫でしかたねぇって思っちまう。

でも、いざ参加すると楽しかったねぇっといい思い出になるのはわかってるさー


でも、歳かねぇ?参加するっと言う意欲が減っていくさぁねぇ…

三日三晩、死の大地で張り詰めた精神力なんてもうないのかもねぇ…

はぁ、気が付けば、尊敬する戦士長の年齢も超えちまってんだろ?

あたしといえど、ガタがくるさぁねぇ…


ドンドンっと壇上から降りる時にどうしても大きな音がなる。

…だというのに、痩せるどころか重くなってる気がするのは気のせいかねぇ?食べ過ぎかねぇ?昔と食べる量も、運動量も左程…

あーちがうさぁね、良いモノを食べ過ぎているだけさぁね、甘いモノ、味が濃いモノ、若い頃に比べて美味いモノばっかり食べてるさぁねぇ。


そう考えると、こういった運動するためのイベントってのも、あたしの健康ってやつを考えてくれているのかもしれないねぇ?

ドアを開けて外に出る。うん、今日もいい天気さぁねぇ…最高の決闘日和じゃねぇかってのによぉ。

かー惜しいよなぁ、あの人が参加すると聞いて、滾らせたこの感情をどうするかってことさぁねぇ…


まさか、二日酔いとはねぇ…酒飲みのあたしは、わかるさぁね、遅くまで飲んでいたんだろうねぇ…

はぁ、全力を出せない相手を倒したところで、あのときの借りを返したとは言えないさぁねぇ…


「何を憂いておる」

盛大な溜息を吐くと同時に気配無く隣にたつさぁーねー、相変わらず油断ならねぇ…

「きまってんだろー?あたいはアンタに土をつけられてんだ、全力のアンタに勝ちたいだけさぁね」

正面を向いたまま、相手の顔を見ることなく戦いたいと宣言すると

「っはっは!よいよい、この程度、ハンデっというやつじゃ」

パーンと豪快にあたいのケツを叩いて笑いながらさっていきやがった…へぇ?いいじゃねぇか?その挑発うけてたってやらぁなぁ!!!!

しぼんでいく闘志が爆発する様に燃え上がる!!いいじゃねぇかそっちがその気ながらやってやらぁ!!!

負けたとしても言い訳なんてさせねぇからなぁ!!


血管から血が吹き出そうな程、バックンバックンっと血の流れを感じながら、広場に移動し、どかっと地面に座る…



「お母さんにいま近づいたらダメ」「うん、そうとう頭にきてるから」

遠くで愛する娘の声が聞こえる、あたいをサポートしてくれている。

その想いに応えるために闘志を滾らせ、この腹の奥が燃えるのを扱いきってやらぁ!!



人が集まってきたので、どっこせぇっと立ち上がる

「奥様?申し訳ない、参加したくなかった、ですかい?」

古くからあたいの畑を手伝ってくれている人が、困った顔をしている

「いんや!誘ってくれて嬉しいさ!それとこれとは別であたいには因縁ってやつがあるだけさぁねぇ!」

いけないねぇ、仕事仲間が気を使ってきているじゃねぇか…旦那に迷惑をかけるつもりはなかったのにねぇ…

「なら良かった!俺達の事は一切、気にしないでくださいよ!盾としてつかってくだせぇ!!特等席で奥様の戦いが見たくて参加してるんですから!!」「おうおう!そうだそうだ!俺達が報酬なんか貰っちまうのは違うからな!そんなんよりも伝説の人が戦う姿を間近でみたいんだ」

そうだそうだっとケタケタと笑っている。

っふ、本当にあたしは幸せ者さぁね、自然の中で育ち、自然と孤独に対話し、この巨体故に、貰い手もつかず、孤独に森を切り開くだけの人生だと思ってたのにねぇ…


何処へ行っても、あたしの事を女性として扱われないと思っていたのにねぇ…

ここは、楽園だよ、やりたいことが全部叶っちまったさ…


全ての後悔を忘れる為にも、今回の戦い、勝たせてもらわねぇとなぁ!

あたし達と一緒に頑張り続けてきた従業員一同!慰安旅行に連れて行ってやるのも!経営者の奥様としての務めさぁねぇ!!




移動開始の合図で全員が方々へ向かっていく

だというのに、アンタはそこから動かないのかい?いいよ、そこがアンタの特異な場所ってことかい?

何がハンデさ…しっかりと勝つための策を考えて動いてるじゃねぇか!


なら、あたいもそれに倣うだけさぁねぇ!!我慢比べといこうや!!

あたいも得意分野でアンタを待ち構えてやるさぁねぇ!!!


公園へと真っすぐに向かっていく。

木々が生え、草木が地面を覆いつくす、ここ、こそが!あたいの故郷、ふるさと。

森は全てを包み込んでくれる、森は何時だってあたいの仲間、あたいの悩みをうとけてくれるのはここさぁね…


ここでなら、あいつに勝てる自信がある!

身を隠す場所もある、騎士達が慣れない地面がどころどころ隆起している場所で全ての力を出し切るなんてできやしねぇさ


周囲の状況を見て回ろうとするが、従業員に止められる。

「っへ、奥様は集中力をたかめてくだせぇ!」「ですぜ!俺達じゃどう頑張ってもどの陣営に太刀打ちできねぇ!アンタが大将だ」

従業員たちが公園の隅々を見回り戻ってくる

「木箱ってやつが見当たらない」「だなぁ?姫さん忘れてるんじゃねぇか?」

「周りに誰かいたかい?」

念のために真っすぐにあたいに向かってきそうなやつが近くにいるのか知っておきたい

実は広場で待っていると見せかけて後をついてきてだまし討ちなんてのもあいつはしてきそうだしねぇ!

それに…ベテランのやつも、あたいを見ていた。あたいが挑みたいように、ベテランのやつも挑みたいと考えてもおかしくないさぁねぇ!!

「あー、一瞬だけ、戦士の人」「そうそう、奥様と古くからの馴染の人がいましたぜ」

やっぱり、あたいと闘うつもりでいるか、ベテランのやつと衝突しちまうと…

守り切れる自信がないねぇ…

「奥さん!心配しないで!」「俺達は奥様の盾だ!奥様は自由に動いてくれ!」

二人の意気込みを受け止める、男二人が犠牲になるって腹きめてんだ、心配する方がやぼってもんじゃねぇか…

勝つために犠牲を伴うのは仕方がねぇ、仕方がないさ…

これが命がかかっていたらあたいは絶対に納得しねぇ!絶対にだ!!でもこれは遊び

本人たちが望んでいるのなら本人たちの意思を尊重するってぇえのがいい経営者ってやつなんだろ?姫様。


覚悟という物を受け止め、見守ることの大事さ、想いを受け継いでいく、あたいはその重みを良く知ってる。

人生ってやつはっと、噛み締めていると程なくして開始の合図が聞こえてくる。


…聞こえてくるが、直ぐに突っ込んでくるってわけでもねぇのか?静かだねぇ。

静かに風が通り、木と草の香りに包まれていると心の底からリラックスしてしまう。



「奥様!木箱ありやしたぜ!」「こっちもだ!幸いにして誰もいなかった!持って来たぜ!!」

…ぁ、そうか、あたいも何も持っていねぇ、殴っちゃいけない、水風船ってのがいるんだったねぇ。

あたしが心満たされている間に、色々と、本当に昔から気が利く最高の従業員だったからねぇ!大きくなって、あたしは嬉しいよ。

っていうか、箱ごと持ってきてもいいのかい?後々、中に補充される予定とかじゃなかったかい?

「一度に全部運べなかったんすよ、中身出したら戻してきますよ!」

農作業で鍛えられたあたいらにとって木箱を運ぶくらいわけねぇし、戻すのならいいさぁね?

箱をあけると、あたしの手にはちょっと小さいかなってくらいだねぇ?あーでも、従業員たちからすればちょうどいいサイズの水風船が六つも入ってるじゃねぇか

もう一つの箱は…蓋になんか張ってあるじゃねぇか?【よく見つけたね!やるじゃん】…なんかよくわかんねぇ、紙が貼ってるな?

取り合えず開けてみると

「おお!これはすげぇ!!」「でけぇ!当たれば確実ですぜ!」

あたしの手よりも大きなサイズの水風船、手に持ってみると手に馴染むじゃねぇか。

箱の中に入っていたのは三つ。

念のために先の小さいサイズをもってみる…なるほどねぇ、大きさに合わせて素材が違うねぇ。

恐らくこちらの大きい方が少し分厚いんじゃねぇか?割れにくくなってるねぇ…

これなら、全力で投げれそうじゃねぇか…いや、全力は無理だな、握り込んだら割れちまう。

「俺らは箱を元の位置に戻してくるぜ!!」

材質を確認しているとテキパキと木箱をもって走っていく。


戻ってきて、「この量の水風船を持ち歩くのは難しいっすねぇ、奥様どうしやす?」意見を求めてくる。

全部持ってあいつのとこに駆けだしてぇが、あたいの戦士としての勘が告げてんだ

「ベテランのやつが来る、あれを迎え撃つよ」

二人は静かに頷き、相談しあう。


あたしと、アンタたちじゃ色々と出来ることが違うからね、そうやって、各々が出来ることを話しあってくれるのは助かるねぇ。


大事な従業員たちが直ぐに答えを出し提案してくる、反対する理由なんてねぇさ

ベテランのやつを迎え撃つ、この木々の中で戦士でもねぇ二人が走り回ったところで何もできずにやられちまう。

それなら、後ろから攻めてこられても壁として機能しつつ、足元に置いてある水風船を死なば諸共で撃退

良い作戦じゃねぇか、一人一殺、覚悟を決めた男らしい選択だよ。


ってなわけで、あたしもその作戦として、ベテランのやつを正面からこさせるのが一番だろうね。

ベテランのやつが正面からくるのであれば、他の二人が正面からくるわけねぇからな、戦士としての連携を利用させてもらうさぁね。

両手に水風船を持ち、最後の一つは足元に置く。

従業員の二人も両手に持ち、残り二つは地面に置いてあたしの後ろで頑張ろうな!一矢報いてやりてぇな!っと和気藹々としている。

後ろから聞こえてくるやり取りが、微笑ましくてあたしの胸が熱くなってきちまう。


草が潰される音が聞こえ、直ぐに音の下方向へ視線を向ける!

殺気を込めて「かかってきな!!!」っと大声で威嚇する!!

目が合っちまったねぇ!!正面から来てくれて嬉しいぜ?弟弟子よぉ!!


声が通り過ぎていくと、あたいの挑発に乗ってくれたのかい!?好い度胸だよ!!お前のそういう土壇場での想いっきりの良さは昔から評価してんだよあたしゃぁねぇ!!


正面から真っすぐに向かってくるベテラン、そして、木々の間から見えた他二人!!

正面、サイド、三方向からの挟撃か!ちゃんと手慣れてやがるな!正面のベテランのやつ、タイミングを合わせる為に走る速度を落としやがったな、動きは変わっていないのに、器用に速度だけ落として!器用なのがお前の売りだもんなぁ!!

「やや、やるぞ」「ぅぅ、おお!!ぅ、おぅ、、、」

後ろからは慌てるような声が聞こえてくる、従業員のやつらはダメだろうねぇ…仇はちゃんと取ってやるよ、全力で挑みな!!


正面から勢いのまま突っ込んでくるかと思いきや、ちゃんと、サイドのやつが配置につくのをまってやがる、流石に多勢に無勢って思ってるんだろうねぇ。

その余裕…崩してやったこそが、姉貴分ってやつさぁねぇ!!!

お互いを睨みあった、ほんの一瞬で、ピッピっと笛の音が聞こえ「やられやしたー」「すいやせん!」振り返らねぇさ!!

目つきが自然とするどくなり、相手の心を貫く様に殺気をしぼっていく。


ベテランのやつが足に力を入れ地面を蹴った!くるね!!

っは!!いいねぇ!!この勝負、あたいの勝ちさ!!


ベテランのやつが持っている水風船の大きさを見て勝利を確信する!あの程度のサイズじゃあたいを染めきれやしねぇさ!!

瞬時に左右の位置を見、投げてきた動きを見る!!

しっかりと全部が同時に当たるタイミング!全部は避けきれねぇ!

肩と、胸と、腰…

肩に向かってくる奴は上半身を捻りながら、腰に向かってくる奴は手に持ってるやつで衝撃を逃がしつつ、軌道を逸らす!!

正面からのは甘んじて受けてやらぁ!!


バシャっと音を出して当たったのは胴の部分だけ!!

審判ってやつからの合図はねぇ!なら、あたいは退場じゃねぇ!!

そして!お前たちの動きなんざ全てわかってるさ!何度、お前たちと稽古を積んできたと思ってんだい!!

戦士長から叩き込まれた動きを利用させてもらうさぁねぇ!!

両腕を広げる様に上げつつ、手首の力だけで水風船を投げる。


ババッシャっと水風船が弾ける音が聞こえ、退場の合図の音が聞こえる。


目の前のベテランのやつが慌てて止まろうとしてる、そりゃそうだろねぇ!!

お前の手には何もないからねぇ!!


腕を地面に伸ばし、もう一つの水風船を掴み前を向くと、背中を見せて逃げてやがる!!

相変わらず、状況判断能力が高いねぇ!!


この大玉はアイツとの闘いに置いときてぇ…

後ろを見ると、従業員が集めていたあたいにとっては小さい水風船が置かれているのを直ぐに広い

背中を向けて走っているベテランのやつに向かって投げる!!


っち、あたんなかったか…やっぱり小さい水風船を投げるのは難しいねぇ…

はぁっと仕留めれなかったことにため息を吐くと

「奥様すまねぇー」「おしかったっすねー、負けちまったっすねー」

地面に伏せている従業員が笑顔で出迎えてくれる

「あに、言ってんだい、あたいはまだセーフだろ?」

審判に向かって声を掛けると「はい!十分の一も染まっていません!」セーフの証しとして審判が判定を教えてくれる

「おお!!」「奥様!応援してやすぜ!」「っは、今回は負けたが!」「次は勝つからな姉御!!」

全員が腕を空に向けて持ち上げて親指を立て、あたいを応援してくれる。っへ、気持ちのいい奴らだねぇ!!

「ありがとよ!勝ったら祝勝会でも開いてやるから、飯食いにきな!」

一つだけ、残された水風船を握り、漢四人と別れ、公園の中を散策する。


「ねぇな…」


周囲を隈なく探してみたが、木箱の中は空っぽで、あたいにとってちょうどいいサイズの水風船を見つけることが出来なかった…

結構な時間探したってのに…仕方ねぇ、ないのならな、他を探せばいい、問題があるとすれば…ベテランのやつが戻ってこねぇな?


不意をくらうわけにもいかないので、辺りを警戒しながら歩いていると…あんだい、負けちまったのかい

遠くの方で黄色に染まったベテランのやつと、先ほどあたいに挑んできたやつと一緒に楽しそうに観客席の方に移動しているじゃねぇか。


なら、もう邪魔をする奴は…流石に残ってねぇだろ。

一度限りの一発勝負!!っへ、ぞくぞくするじゃねぇか!不利なのは向こう?違うねぇ…

あたいの方が不利じゃねぇか…


敵が待ち構えている場所に向かうってのは…戦士らしくていいじゃねぇか。

不利を覆してこその戦士だろぉ?滾ってくるねぇ!!!


ドンドンっと地面を揺らしながら力いっぱい歩いていく。

地面を踏みしめることで、あたいの体に戦士だった頃の感覚を呼び起こしていく!!

まるで、手には重たい愛用の斧、体には鎧を着ているかのように重みを伴った歩行!!


足から伝わってくる反動があの頃を呼び起こしてくれる!!


堂々と足音を鳴らしながら広場に顔を出すと

「っふ、遅かったのぅ?」

広場のど真ん中であたいを待ってくれている良い男がいるじゃねぇか…信じてたぜ?あんたが易々と負けるわけが無いってなぁ!!!

直ぐにでも飛び掛かりたいが…嫌な配置だねぇ…

アイツの近くに木箱が四つ…そして、木箱の近くに仲間が待機して、直ぐにでも水風船をパスできるように陣取ってやがる。

それに対して、あたいの武器は一つ…道中、相手の武器を奪うってのも一つの手だねぇ…


はてさて、これは、厄介だねぇ…近寄りずれぇ…こんなにも相手の陣地に突っ込むのが難しいとは思ってなかったねぇ…

頭の中で何度も考えては、勝てない未来しかイメージができねぇ…


へ、っへへ、この絶対に勝てねぇイメージ、戦士長を思い出させてくれるねぇ!!!

ここで、待ち続けて、相手が痺れを切らして武器を減らしてくれねぇかと、待ち続けても

一切動く気配がねぇ!!


わかってやがる、あたいがしびれを切らして突っ込んでくるのを…

それしか、活路がねぇってことも!!!


「あんじゃい!その大きな図体は立ち止まることしかできんのかぁ?おー?なっさけねぇのー?」

あからさまな挑発!その程度の挑発で苛立つことなんてないさ、でも、意図は伝わってくる。

「わかっとるじゃろ?立ち止まっていては何も出来んぞ!なら、こちらから行かせてもらう!!」

素早い動きで水風船を投げてくる!?はぇえじゃねぇか!!こういうのも得意だってのかい!?

慌てて手の甲で水風船を弾く様に振り、手の甲だけが赤く染まる。


それを見て、活路を見出す!!!

染まったところが何度も染まろうが問題がねぇ!!

あたいの拳だけ、染める様に敵の攻撃を弾け続ければ!!


「おおおおおおおおおおおおお!!!!!」

雄たけびを上げながら突進していく!!

飛んでくる全ての水風船を弾く!投げるモーションに合わせれば…やるねぇ!!

肩や膝に当たる感触がする!投げたと見せかけてタイミングを変えてきやがるじゃねぇか!

あんだい、投げたと見せかけてぐるっと腕を一周させてから緩やかに投げやがって!!


翻弄される様にバシャバシャと水しぶきが上がる!前へ進むのは止めねぇ!!確実に当てる為には近距離だ!!


あちこち濡れちまったようだが、だがなぁ!!まだ笛の音が聞こえねぇ!!終わりの合図がねぇ!なら、まだいける!!

拳を振って水風船が弾けると、割れた水しぶきを通ってくるように奥から大きい水風船が飛んでくる!?

アンタも持ってたのかい!!一撃必殺の大玉を!だが!!あめぇ!この大玉は割れにくい!!

拳を開き飛んでくる大玉を優しく衝撃を殺しながら丁寧に掴む!!


っしゃ!!思惑通り割れなかった!!力加減はこう見えてもうまいんだよあたしゃぁ!!

子供二人育ててねぇっつーーの!!


至近距離まで近づけている!これで終わらす!!おらよぉ!!!

敵から奪った大玉の水風船を拳を突き出す様に放り投げる様に投げるが、投げた大玉に合わせる様に大玉を投げつけられた!?

あたいがキャッチするのを見越していたってのかい!?

それにより、軌道がそれて地面に弾け、足元しか、染まってねぇ!!


視線を前に向けると眼前に水風船!?

「んがぁ!!」

首を思いっきり動かして何とか避け  なんだ?いま、何か光らなかったかい?

避けた時にあたいの真横を通っていく水風船から何か光が反射するようなものが見えた?

パァンっと背中が当たる衝撃と冷たい感触!?そして、あたいの肩に…糸か!?糸付きの水風船って、そんなのありかい!?

「わしの勝ちじゃろ?」

不敵な笑みと声が聞こえるが、終了の笛がきこえない…まだ染まり切っていないのなら!!

笛の音が聞こえないことに、終了の合図が無い事に審判に視線を向けた!!


その隙を逃すことなく、最後の一歩を蹴る!!


活路何ていらねぇ!これがあたいの!最後の一歩をぉぉぉ!!!

「おおおおお、らぁぁああああ!!!」

パァァアアンっと手に持ち続けてきた必殺の大玉を目の前で割る!!

それも!お互い手を伸ばせばすぐ届く超近距離でなぁあ!!!


死なば諸共!!!これで引き分け!!

あたいは一歩進んださぁ!!!


ひき・・・わ、け?・・・


弾けてあたい達を濡らす様に飛び散った水の色は透明?…と、うめい?…色ついてねぇ!?

綺麗に洗い流されたあたいの拳…これ、まだ終わってねぇ!?

アイツもこれには驚いたのか、直ぐに次の弾を寄こせと手を伸ばそうとする


っが…


あたい達の戦いは終わっちまった

頭上から降り注ぐ赤や緑の液体によってな…


終了の合図が鳴り響いてやっとあたいも状況がわかっちまったよ…

まさかねぇ、アンタ達が潜んでいたんだねぇ…無我夢中になりすぎて気が付かなかったさぁね


「っは、俺らの負けじゃの」

「ああ、してやられたねぇ」

拳をガツンっと合わせ、あたい…あたし達は広場から離れていく。

敗者がずっといるのもおかしな話だろう?


お互い考えることは同じ、真っすぐに寮にある大浴場に向かって肩を並べて歩いていく。

「…あ、忘れてた、爺さん、あたしのケツに触ったこと、あたしの旦那と、爺さんとこの嫁さん達に報告すっからな」

「何!?おい!それはやめろ!!色々と誤解されるだろ!」

「知らねぇよ、事実は事実じゃねぇか、姫様ならそういうだろ?」

「っが!?っぐ…狡賢くなりおってぇぇ…何が欲しい?」

「いい酒くれよ」

「…わかった、秘蔵のワインをくれてやる」

「っしゃ!」


ぐっと力拳を作り、天に向かって勝利のポーズを決める!!

あたしの勝ち!!!


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