研究塔代表 姪っ子ちゃん視点
慣れない場所からゆっくりと降りていく。
正直、何があったのか覚えてない…あちきは…前に出るのが苦手なんだよぉ、、、
気が付くとおじー、、、手を離してる、、、そばにいてくるってぃったのにぃ、、、
情けないことにこれだけの出来事で涙が溢れそうになる。
どうして、こんな、よわいあちきがぁ、、、ぇらばれたのかぁ、わかんないよぉ、、、
あちきは、どーせ、研究塔のTOP、長が出ると思ってた、、、あちきには、関係ないって思ってた、、、でも、、、あちきだった。
深い経緯はあちき、聞かされてない。。。聞かされたのがあちきが一番若くて運動神経も良いからって理由、、、
…ぁれ?…あ、れ?…
ふらふらと歩いて、気が付けば、会場の隅っこ、あれ?一緒にあがってた人達がいない…
頼りになって優しくていい人達ばっかり、あの人たちがいるからあちきはこの街で頑張れてる尊敬する人達
そして、今日戦わないといけない人達
叔母様とおじーの先輩…
伝説の一団、粉砕姫こと伝説の人、そんな人が引退して、この街の片隅?で、食堂を営んでいる女将さん
あちきには食べきれない食事にお酒ばっかりだから、滅多にいくことがなぃお店。でもね、素材を採取しに農場に顔をだすことがあちきにもある、採取が終わった後は、よく女将さんとこの子供達に遊びに誘われる。あちきよりも、たぶん、年下だけど、どう見ても向こうの方が年上に見えるのがむかついたけれど、、、あちきにとっては友達、、、だと思ってる、、、
その友達の~、、、お母さんって感じなんだよぉ、友達のお母さんに攻撃なんて出来ないよぉ…
おじーだってそうだよぉ、あちきがこの街に来てからずっと優しく接してくれてるぅ…
そんなおじーと敵対するなんて、、、なぁんて、、、ぁ、おじーは出来そう。
思い返してみると、おじーにはよくパンチしたりキックしたり叩いたりしている、それの延長線上と考えると出来る!
メイドの人は…あちき、よく知らない。でも、敬愛し尊敬する姫様に唯一許された人だから、たぶん、凄い人。
常に姫様の御傍に居ることが許されているって点だけで、尊敬できる。
団長さんも同じ、あちきはお世話になることが無いけれど、副団長であるNo2さんは叔母様が尊敬し敬愛し一生頭が上がらない人って教えてくれた。あの人が居たから今も幸せだって。凄い人、その人の上に立つ人、凄くないわけがなぃ、、、
ティーチャーさんは、あちきが尊敬してやまない研究塔のTOP、の旦那様
会って、話したこと、、、ほとんどない、、、でも、おじーがあいつは出来るやつだってよく褒めてる
凄い人しか褒めないおじーが褒めるってことは、凄い人、、、勝てる気がしないょぅ、、、
そして、あちきも幼いころから聞かされ続けている、わが国の秘宝を守りし盾にして剣、あの王家を守り続けている一族が代表、、、
ぁ、今はもう代表じゃない、かぁ、、、あちきの家とも関りはあるけれども、お会いしたことは一度もなかった、本当に存在しているのか霞みの様に見えないし掴めない人だと思ってた、、、でも、この街に来てから、時折、ふらっと顔をだしてるとお聞きしたことがある。筆頭騎士様、、、
まさか、そんな人に勝たないといけなぃ?むぅりぃ!!!叔母様のお師匠の御父上でもあるんでしょぅ!?
むりだよぉ、、、
誰もいない片隅に居ると、心の奥底から得体のしれない何かが語り掛けてくる。
お前では無理だ、お前のような矮小な存在がいるほうがおかしい、今すぐ終われ、逃げろ、さぁ、今すぐ消えろ、お前なんぞ要らない
過去のトラウマが頭の中で何度も何度も響いていく、、、
「…おい?おい?大丈夫か?」
ぺちぺちと、頬を叩かれる音と感触に目の前が開け、研究塔で共に切磋琢磨する先輩の顔が目の前にある
「ああ、よかった、声をかけても掛けても、反応が無くて心配したんだぞ?」
優しい声に頬から伝わってくる暖かい手のひらに涙が溢れそうになるが、あちきは、あちきは武家の女!こんなことで泣かない!!
「こういう場所に立つなんて慣れていないのに、まったく…俺達研究員の中で一番、運動神経が良いからって、押し付けられて、辛いよな?」
優しい言葉だけど、その言葉があちきの心に刺さり痛みが生まれる、傷口が抉られる様に…
あちきは、いらないこじゃない!!
うんぅぅ!!っと頬に優しく触れられている手を振りほどき
「あちきだって、できる!!!あの閃光姫の姪!!武家の血筋!!あちきだって戦える!!!」
馬鹿にすんな!!っと、態度で示す様に大股でズカズカと歩いてき、ドアが目の前にあったので力を込めて豪快に開き外に出ると
「あ!いました!探したぞぉー姪っ子ちゃぁ~ん」「何処に行ってたんだーい?作戦会議しましょうぞしましょうぞ、ぶひひ」
あちきと一緒で代表へと押し付けられた仲間が駆け寄ってくれる。
「んふぅーんふぅー」「こ、こちらぼっぼぼぼ、僕たち、考えた」
ぐぃっと押し付けられる紙を受け取り、瞬時に読み取り
「だぁ!馬鹿!攻撃系統の魔道具ばっかりじゃん!姫様の事を考えなってよぉ!ダメに決まってるぅでしょぉ!」
っめ!っと額をこづくと嬉しそうにするなよぉ!も~!!
目の前にいる人達もあちきと同じ武家の出自って理由で今回のイベントに押し付けられてしまった人達
普段からちょこちょこと関りがあって、あちきが一人で何かしていると声をかけて、気にかけてくれている人達の人達。
慣れない街にきて、暫くしてから声をかけてくれた人達、でも、おじーや他の人達があちきの近くに行くと絶対に話しかけてこない。
あと、農場に採取に行くと何故か帰るときに声をかけてくれて素材を運ぶのを手伝ってくれる、優しい、、、のかな?
あちきの目線に合わせる様にしてくれるから、、、嫌いじゃなぃ、、、んだけどぉ、、、
姫様の事も、じっとりと見てることがあるからぁ、きっとあちきと同じで姫様の事を尊敬してる人だぉ、思っているんだけどぉ?
何だろう?あちきも良くわからないけれど心の底から好きになれない、、、そんな事を言うのは失礼だけどぉ、、、そんな人たち。
経験の少ないあちきがどう表現していいのかわからない雰囲気の人達。
おでこを小突いたのに嬉しそうにする辺り、あちきのことを見下したりはしていない、し、友達になりたいと思っているのかと思わない事も無いんだけどぉ、、、あちきの何処かわからない所が友達かというとっと失礼な言葉がでてくるぅ…
「紙とペンあるぅ?」
今はそんな事よりも作戦会議!!の、前に移動したほうがぃぃのかなぁ?
「ぶ、ひひひ、いど、移動ししし、っましょうぞぉ?」
うん、、そう、だよね。ここで相談すると耳のいい戦士達に聞こえる、よね?
頷くと二人が私の前を歩いてく、二人について行けば、会議しても問題ない場所に案内してくれそう。
二人の後をついていくと、後ろから視線を感じたので振り返ると、先輩が優しく手を振ってくれる。
たったのそれだけなのに、ちょっと頬が熱くなる。痩せてて何処か幸薄くて、でも、いつも励ましてくれる先輩。
そうだよ、、、あちき、研究塔の人達にいっぱいいっぱい、教えてもらった、助けてもらった、支えてもらった!
恩を返したいから、代表者になるのを引き受けた!押し付けられたような雰囲気だったけれど!最後の最後はあちきが決めた!!
武家としてあちきだって頑張ってトレーニングしたんだもん!あちきが一番、あの場所で動ける!!
お世話になった先輩達と一緒に遊ぶためにも!あちき頑張る!!
湧き上がる闘志と決意を胸に抱いて駆け出す!!心臓もそれに呼応するようにドクん、トクんっと、強くなる!!
あちきが駆け足で追いつくと「かけっこですか?」「ふひ!まま、っまっけないぞぉ?」一緒に走ろうとしてくれる!
一生懸命走って、辿り着いたのがあちき達のホーム!ドアを開けると
「「待ってたぞ!!どれを持って行くんだ!!!」」
敬愛する頭脳の持ち主たちがありったけの魔道具を持って出迎えてくれた!!
この光景を見て、あちきは押し付けられたと勘違いしていたけれど、違った!
みんな、、、あちきに期待しているんだ!!あちきだったら、勝てるって!!!
涙が頬を伝っていく、拭うことなく叫ぶ
「あちきにーーー、、、まっかせてぇ!!!」
敬愛する姫様の伝説、その叙事詩に書かれている名言!!いつか、何処かで大声で叫びたかった伝説の言葉があちきのお腹から抜け出てあちきの夢がひとつ、叶った瞬間だった。
研究塔にいる全員で話し合った、ううん、正確には姫様と長がいなかったし、姫様に連れて行かれた人達もいる。
たぶん、何か仕事を押し付けられているんだよね?みんな、頑張ってる!あちきも頑張る!!
何度も会議し、あちき達がピックアップしたのは徹底的に隠れる為の魔道具!
攻撃系統、相手を傷つけたり、会場に被害出るのは全部禁止されると姫様の考えを先読みした結果
小型の認識阻害の術式を展開する魔道具を三点。魔石もセット済みなので、常時展開していても3時間は持つ
そして、お互いの認識阻害を邪魔しない様に波長も合わせているので、離れていてもあちき達はお互いを認識できる。
次に、足音を消す消音の魔道具、これで地面をける音、する音、着地する音を大幅に減らすことが出来る、靴型の魔道具!残念なことに、死の大地では大して活躍できないお蔵入りの魔道具。
最後に、念には念を!匂いを消す魔道具!あちき達の匂いを消す、ううん、減らす?魔道具!
あちき達は獣からすれば臭い!すぐに見つかる!それを減らす為の魔道具!人に対して、使ったことが無いけれど、効果はあると、、、思う。
後は、魔道具ってわけじゃないけれど、あちき達は戦士や騎士達に比べて目が悪いので、望遠鏡!!
この四つを持ち込んでも良いのか、リストを書き、姫様に渡してもらってチェックしてもらう様にいつの間にか合流していた先輩にお願いすると、行ってきますと、リストをもって走っていってくれる。その後ろ姿が見えなくなるまで見つめてしまう。許可が下りますように!!
返事が返ってくるまでの間、魔道具に不備がないか、念入りにチェックし、一つ一つ確認していると
「ALL OK!!」
息を切らせながら走っていってくれた先輩が戻ってきた。
「それと!広場に集まってっとの言伝だ!!ぁ、はぁ、ふぅ、きっちぃ…」
ぶわぁっと滝のような汗を出して、その場でへたり込む先輩の情熱にあちきも感化されたのか、頬が熱くなっていく。
心臓もドクドクと速く動いている気がする。
先輩の鼓動と同じようにきっと速くなっているのだと、思うと、あちき達の心が意志が繋がっていると感じられる、これが、一体感ってやつなのかなぁ?、、、だとしたら、あちきは、、、凄く嬉しい。あちきは、大勢の人と心を一つにしたことが一度もないからぁ、、、
幼い騎士候補達の合同訓練を一人、ついて行く事が出来ず、置き去りにされ続けてきたから、、、
共に戦う二人に視線を向けると眉毛にぐっと力を込め眉間に皺を寄せながら力強い視線が返ってくる。
あちきも同じように眉間に力を込めて頷き、研究塔の門を開き広場へと足を進めていく。
広場で姫様を待ち続けていても、あちきの心が乱れることが無く、精神が研ぎ澄まされていくような、今まで感じたことが無い程に集中力が高まっていくのを感じ、雑念が消えていく。今ならわかるよおじー、これが、水面を静かに、戦士としての心構えってやつだね。
姫様が集計と計算が終わった結果を発表している。
その順位を聞いてもあちきの心が乱れることは無ぃ!!誰も期待していないのはわかってる!!
研究塔のみに所属している人が圧倒的に人が少なぃ!!組織票で考えても、あちきに票が集まらないのは当然だよぉ!!
…そんなあちきが勝ったら、姫様、大喜びだよね?もしかしたら、褒めてくれるよね?もしかしたら、そうだよぉ、代表者は好きな人を誘っても良いっていってた!
…憧れの姫様と一緒に過ごす権利として使ってもいいよね?
その先にある夢、勝つことへの渇望、好奇心以外からくる欲求が強く膨らんでいくと、移動開始と姫様が言う
直ぐにその場を離れる!あちきは、広場の奥!病棟がある方向へ向かう!
広場を抜けて視線が隠れる物置に身を潜め、少しだけ顔を出して全員の動きをチェックする
あちき達の足が遅かったのか、広場にはもう筆頭騎士様しか、いなかった。そう、筆頭騎士様と一緒に参加している人の姿も見えなかった。
望遠鏡を取り出して観察していたら魔道具を発動させる時間がなくなっちゃうので、今は探している場合じゃない!
手早く認識阻害の魔道具を起動し、お互いの姿がわからなくなったのを確認し、お互いの波長を合わせていくとお互いが徐々にああ、そこにいたのかっと認識できるようになっていく。
足音を消す為の魔道具に履き替えて起動させる、その場で足を上げて地面を何度か踏んでみると、ぽすぽすっという感触だけが伝わってきて音がしない。
最後に、匂いを消す魔道具をベルトの様に腰に巻いて起動させる
うん!!完璧ぃ!!
全ての魔道具を起動させ、堂々と広場に姿を出す!!
うん!!筆頭騎士様はこちらに顔を向けない!!
勝利を確信するかのように両手を胸の前でぶんぶんっと小刻みに振っていると
「目標確認」「人影あり」
望遠鏡で周囲を見渡していた二人が状況を教えてくれる
筆頭騎士様の仲間は、周囲を偵察に出てたっぽい、っという報告、あちき達もここに長くいても仕方がないので移動を開始する。
広場の中央から先へ抜けていく勇気があちきには、無い
無謀なことはしない!ちゃんと、遠回りで移動!!抜き足差し足、忍び足!!
病棟の前を通り過ぎると、開始の合図が聞こえてくる
周囲を望遠鏡で警戒していると
「あ!姪っ子ちゃぁん、はぶぅ、む、向こうにききっき」「木箱発見!!いくましょういきましょういくましょう」
二人が同時に指を刺す方向を見ると、木箱らしきものが置かれているので、それを取りに移動を開始する!!二人を前にして
焦らずゆっくりと、抜き足差し足、忍び足ぃ!!
三人そろって、そろ~りそろ~りと歩いていく、病棟の前には観客達が集まっているけれど、誰もあちき達に気が付いていない
その光景が面白くなってしまった、つい、うひひっと声を漏らしてしまうと
「すぃーーー!」「っししししいーー!」
二人が同時に振り返り静かにーっという合図がより面白くなってしまい、声を殺して仕草だけで笑っていると二人もつられる様に笑いだす。
声を出してはいないが、笑いながら進んでも、誰も気が付く様子が無い、審判も何食わぬ顔で横を通り過ぎていく。
圧倒的有利な状況であちき達は心躍らせながら木箱を開くと、水風船は一つだけ入っていた、、、誰が持つ?そんなの決まってるあちきが代表、、、あちきが持つのが最適解、、、
一度限りの大勝負、、、これを使えば、相手を!確実に退場させるには、、、あちき達がどれだけ、近づけるかが勝負どころ!!
いくら、認識阻害の術式っていっても、触れられるとばれちゃう!!
何処に移動しようかと周囲を見渡していると、一人が広場を指さすが首を横に振る!!
あの人はむぅりぃ!何も考えずに挑んでいい相手じゃないでしょぉ!?
こらっと無謀なことを提案するなぁっと意志を込めて、べちっとデコピンして注意すると嬉しそうにするなよぉ、冗談だってことぉ?
小さな声で、いづれ、誰かが筆頭騎士様に挑む、そうなると、周囲を観察する余裕が誰もが無くなる!
その時を狙う為に、誰かを見つけて遠巻きで尾行するっという作戦を提案する
二人は、ないすぅ、さささぃここぽぉ、っと何度も首を小さく縦に振って肯定してくれる。
抜き足差し足忍び足ぃっで、移動しながらも適度なタイミングで望遠鏡で周囲を見回してもらっていると
「て、敵影発見」「じゅじゅ、式研究所」
二人が見つけた方向に向けて望遠鏡を覗き込むと、メイドさんを代表とする術式研究所に所属する人達が腰をかがめて何かを見ている。
あちき達が一番会いたくない相手!?でも、この距離で見つかるとは思えれない、それに相手はあちき達とは違う方向を見ている?
でも、二人だけ?代表者は?
三人で探してみるが、メイドさんの姿が見えない…メイドさんの姿さえ見つければ、後ろから奇襲をしかけて、、、
術式研究所の人達は先に倒したい!だって、彼らならあちき達の術を見破る可能性があるから!!
少し近づいては、望遠鏡を覗き込む、少し近づいては望遠鏡を覗き込んでいると
水の音が聞こえ、音がした方向に視線を向ける、、、驚きの余り声が出そうになるぅ!!
建物の角から出てきた長の旦那さんの上半身が真っ赤に染まってる!!
すると、すぐにピィィィーーーっと笛の音が鳴らされ、直ぐ近くの物陰から勢いよくメイドさんが通り過ぎていき、あちき達の心臓が止まるかと思う程に驚いてしまう、ぴぃっという小さな声が漏れてしまったような気がしたけれど、メイドさんが此方を振り返ることが無かったのできっと、気が付いていない気が付いていない、、、でもぉ、、、
腰が抜けてしまって動けないぃぃ、、、
へたり込む様に女の子座りで地面に座り、上半身を震わせてしまう。
心配する様に近づいてくれるのは、、、いいけどぉ、、、どっちかは周囲を警戒してよぉ~、、、
足に力が入る様になり、二人に支えられながら立ち上がると
「共闘しましょう、貴女の居場所はわかっています、既に認識阻害の術は見破られています、貴女にとって一番警戒しないといけないのは、私達術式班ですよね?」
突如、直ぐ近くであちき達だけに聞こえる様に話しかけられ驚きの余り手に持っていた水風船を離してしまい、濡れないように三人がその場から飛びのくと、水風船が地面に当たり飛び散ることは無かったが裂けてしまい、地面に緑色の水溜まりを作ってしまう。
「はい、これでゲームセット、私の提案は受けて頂けますか?」
首のあたりに冷たく柔らかい流動性のある何かが触れる、、、先ほどまで手に持っていたからあちきにはわかるよぉ、、、
水風船だぁ、、、退場すると諦めていると「そそその、提案のののりましょうぞぉほぅ」「ですです!!」二人の声がしたので視線を前に向けると、二人も掴まっていて、首元に水風船が押し付けられている
そんな絶望的な状況でも、二人はまだ諦めていない、絶望的に不利な状況でも、諦めない、その心をあちきが踏みにじることなんて出来るわけない!!
コクリと頷くと
「はい、では、一緒に行動を共にしましょう、貴女達がいれば、私達もより一層、勝ちの目が厚くなっていきます」
優しい言葉と裏腹に、水風船は首にセットされたまま、冷酷に冷静に、裏切らない様に生殺与奪の権利を手放さないぃぃ、、、
「では、此方の要求はシンプル、貴方達の魔道具の範囲に私達も入れてください」
言われるがままに、認識阻害の術式の範囲を少しだけ広げてから頷く
「よろしい、範囲を狭めたり消したりしたら直ぐにでも貴女の背中が緑色に染まるでしょう、私達は一瞬で見抜きますからね?」
後ろから優しく丁寧に子供が暴れない様に諭される…丁寧な言葉遣いなのに心がどんどん恐怖で染まっていくよぉぉ、、、
小さく震えていると
「では、貴女達に、必要なモノを取りに行きましょう」
首に水風船を押し付けながらメイドさんがあちきの斜め後ろにきて空いた方の手であちきの手を握り腕を動かし進行方向を示してくる、まるで、貴族会でペアとなって踊る様な姿勢で、、、
「木箱が置いてある場所はある程度、予測済みです、では、参りましょうエスコートしますよ、レディ?」
優雅な夜会の様に、人のぬくもりが傍に感じられたらステキだとあちきも思う、でも、首から伝わってくるのは人肌とは程遠い、冷酷な今の状況を示すかのように冷たかった、、、
意気消沈し、誘われる様に移動していると少し離れた場所で誰かが低い姿勢で駆け抜けて行った
その後ろ姿を見て、あれって有りなの!?っと驚いてしまう
「リュックサック?どこで?…広場に居た時は…」
「あちき達以外にも道具って、ぁ、でも、攻撃目的じゃないからぁ?」
二人同時に、団長が背負っている物が反則なのではないかと考えるが、駆け抜けていった後ろをついていくように審判も走っていく姿をみて、あれはルール上、問題ないのだと、、、その光景を見てお互い閃いてしまう
「何処かに戦況を覆すアイテムが隠されている!」
「用意しても良かったんだぁ!!」
ん?…あれぇ?あちきが思った事とメイドさんが思った事が違うぅ?
「探しましょう、姫様なら水風船以外も用意し隠していると、っく、メイドとして主の趣味趣向を読めきれなかった…!流石は、団長、私よりも深く姫様を理解なさっておられます」
「…ぁ」なるほど、メイドさんの言う事の方が正しい、団長がルールの裏を突く様な違反ともとられる様な事をするとは思えれないし、持ち込み禁止のルールの隙間を突くような行為とみなされたら審判が止める、よね?
なら、姫様が用意して何処かに隠してあるって考えるのが普通、だよぉ。あちきは、ばかだなぁ、、、
「さて、貴女なら何処に隠します?」
移動しながら聞いてくるけどぉ、向かってる先って修練所だよね?考えを肯定して欲しいってことぉ?
ん~、、、確かに、修練所だったら、ありそぅ、あそこは物陰も多いし、木箱が混ざっていてもぉ、問題なさそう?
「ありそうな、気が、します」
思った事を言うと
「ですね、直ぐに向かいたいところですが、他にも心当たりがあります、移動しますよ」
ぐんっと腕を引っ張られ歩く速度が速くなる!?転ばない様に必死についていかないとぉ!!
「幸いにして団長が向かった場所は公園の方向、私達が向かう場所とは違います…やっぱり修練所の方から探索しましょう」
言われた場所に向かって走っていくと、木箱をもって何処かに走っていく人が見えた、あちきはてっきり姫様が指示をだして運営の人が木箱をセットしに向かっているのだと思っていたら
「なるほど、敵が現れないうちに物資を確保ですか、狡賢いですね、っとなると、修練所に向かっても時すでに遅しですね、進路変更です、行きますよ」
その後も、振り回される様にあちこちを移動し続ける、展開が早すぎてついていくのでいっぱいいっぱい!!
広場を抜けて、病棟の裏手、白線のギリギリのところで木箱を見つけた、道中にも蓋が開かれていない木箱を見つけたが、あからさまな場所だったので当たりの箱では無いと読み、スルーして奥へ行ったのが正解だったぁ!!
だって、見つけた木箱の上には
【良く見つけたね、やるじゃん】っという、姫様のサインが書かれた紙が貼られていたんだよぉ!後で、この紙、貰えないかなぁ?かざりたいぃ!!
箱を開けてみると、あちき達でも扱いやすく小さな水風船が大量に入っている。
全てを手で持つのは不可能、でも、二人係なら運べる、そして、私達は周囲から見つからない
「運びましょう」
初めてメイドさんと意見があった!それだけでも嬉しいと感じてしまう。
「ただし、遠くは無理です、この間も戦況は動き続けています、恐らく、そろそろ、強者同士が惹かれあい強者同士の戦いが始まるとみていいでしょう」
戦況が読めているメイドさんの考えに反対する理由なんて無く、言われるがままに運び、道中で見つけた木箱も持ち上げて二つの木箱をもって広場へ向かう。
気が付くと、首元が冷たくなかった、、、いつの間にか水風船が外されていて
気が付くと、手を握られていた、、、暖かい、うん!あちきもメイドさんとは一蓮托生!二人で優勝するぅ!!!
広場に到着すると、既に戦いは始まっていて、女将さんと筆頭騎士様がにらみ合っている。
この間にあちきらは配置につくべき、、、うん、、、
「メイドさん」
移動している最中も考えていたことを口にする
「優勝するには筆頭騎士様を倒さない限り無理だと、あちきは、思ってます」
メイドさんは静かにあちきが話終わるのを待ってくれている
「倒そう!二人で!みんなで!!」
感情を込めて熱く語り掛けると
「それに関しては私も願っているところです、この展開こそ私が望んでいた勝ち筋です、あの二人が争い、何処かで隙が出来る、一網打尽!一度に攻め切りましょう!!各員!各々認識阻害の術式を展開!私は彼女と共に行動します!五か所に別れます、作戦は天空落しです」
女将さんと筆頭騎士がにらみ合っている間に、当たりの木箱を持った人が各々の足元に水風船を置いて行く。
配置した箇所は強者が衝突するであろう地点よりも少し離れた場所にじんどり二人の攻防を見守り、ここぞというタイミングを探し続ける。
流れ弾に当たらない様に、神経を尖らせるだけで精一杯なあちきに対して
メイドさんはずっと目を離すことなく二人の戦いを見ている、、、あちきも、こんな立派な女性になりたいと感じてしまう。
視線をメイドさんに向けていると、手を挙げ、指先を伸ばすと術式班が一斉に広場の中央に落ちる様に水風船を上に投げ始めるのであちき達も慌てて上空に向かて投げると、ちょうど落下地点に二人が制止しており
天空で数多くの水風船がぶつかり、まるで奇跡の様に、光り輝く色とりどりの液体が二人に向かって降り注ぎ、笛が鳴る
中央で呆気に取られている二人をよそ目に歓喜の余りお互いを抱きしめあい大きな声を出して喜ぶと、あちき達の仲間が集まって一緒に喜んでくれる!!!
これ程迄の達成感を感じたことなんて、ない!!ここまで、綺麗に思惑通りに物事が運んだことなんてあちきの短い人生で一度だってなかった!!!嬉しすぎて涙が溢れてくる!!楽しすぎて声を抑えれないよ!!!
だけど、歓喜の瞬間は、すぐに…絶望に変わる。
笛の音が鳴り、よくわからない声と共に皆がしゃがんでいく
メイドさんが直ぐに離れ、後ろを振り返ると「あぷぅ!?」顔面に衝撃が走り、背中にも小さく押される様な衝撃と共に、冷たい感触が皮膚に届く、、、
何が起こったのか、直ぐに察し、皆と同じように伏せると笛の音が鳴り響く…
あちき達が迂闊に大きな声をあげるから、認識阻害の術式が見破られてしまった
程なくして、笛の音が鳴り響き、、、あちき達の戦いは終わったのだと、、、
ゆっくりと立ち上がると、観客達全員が集まってきているのを見て、イベントそのものが終わったのだと
閉会式でもあるのかと棒立ちしていると観客達が手に持っている何かを投げてきて、バシャバシャと地面を緑や赤、黄色に染めていく。
降り注ぐ水風船の中、研究所の先輩が木箱をもって駆けつけてくる
「遊ぼうぜ!!」
木箱から取り出した水風船を受け取り、観客に向かって投げつける!!!
「どふふふっふうふ!締め付けられた抑圧の解放かいほー!」
「でぇひひひ!!みんな濡れちまえぇ!!!」
「優勝できなくてごめんねー!!!あちき、頑張ったよーー!!」
色んな言葉を叫びながら水風船の投げ合い合戦が続いていく。
こんなにも楽しいイベントは初めて!あちきの色んな初めてが詰まった最高のイベントだった!!
色とりどりに染まっていく、大地に寝ころび笑い続ける
楽しかった!!




