Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (23)
勇気くん以外に指摘する人はいないのかって?…それがね、困ったことに周囲の誰もが認めざるをえない稀代の天才、頭脳明晰の私が失敗をするなんて思考…研究員の誰もが脳の片隅を突いても出てくることがない。
誰もが分かる程に無茶がある内容であれば指摘してくることはある、その程度であれば、当然、私自身も気が付いている。
たまにね、試しに気が付いていても研究員を育てる意味で敢えて言わないってこともしてきたんだよ?
でも、気が付かないのか気を使っているのかわからないけれど、指摘されない。気が付いて欲しいのに指摘してこない。
そこから導き出した結論が、研究員の多くが私を超える発想力を持ちえていないし、観察力や発想力、研究者として必要なモノが育ちきっていない。
故に、私が気が付かないミスってやつは誰も気が付くことが無く誰からも指摘されることが無い。
もしかしたら、今まで作った魔道具の中には、重大な危険を宿しながら放置されている可能性があるってのが、問題なんだよね。
これが、命の危険性のないモノだったら、まぁまぁって、なるけれども、戦場で命を預ける兵装っとなるとね。話は別だよ。
どうしてこの欠陥に気が付かないのだろうか?って、やつもあった…
もしかしたら、研究員達は使用する人の命なんて何一つ考えていないのかもしれない…その可能性を疑ってしまうたくなる人達だからなぁ…
優秀な人員が欲しいから背に腹は代えられない未来の為にってことで、長に無理を言って長が持っている伝手を頼ったのがいけなかったのかな?って思う時がある。
いや、あの時の状況を思い返せば致し方ないよね、私自身も彼ら以上に優秀な研究者はいないんじゃないかなぁって思ってたりしていた時期があるから、何度思い返しても致し方ないって思う、頭脳に関しては確かに優秀なんだよね…頭脳はね…頭は良いんだよ、頭は…
今日みたいなお披露目会を手伝ってくれる研究員達はね、まだ人の心があるから、この子達が育ってくれれば未来は明るいかもなぁ…
そんな愚痴をこぼしつつも私も彼らと同類だと認めているからね?
彼らと同様に何も考えずにインスピレーションに流されるままに魔道具を造ってしまうとねー…
特に何も考慮せずに考えて作られた兵装をぶっつけ本番で使った結果…
現場で問題が発生することがしばしばあった、はい、反省しています!若気の至りです!!
お母さんにもめちゃくちゃ怒られたし、現場を指揮するカジカさんにも随所で嫌味を言われたので反省しています。
インスピレーションだけで生み出された魔道具がね、使用時における部隊や、周りに対する影響っていうのを完全に度外視しちゃってさ、一部の人に怪我させちゃったんだよね。
その反省を生かす為に、こうやってお披露目会と言う実験を行うようになったの。
これを通じて、現場の意見をいただき死の大地で使っても問題ないのか、大多数の前で試験を行うことによって本番での事故を未然に防ぐ。
幾ら時間が無いからって焦るのは良くなかった。怒りの衝動に任せて扱う人の事を考慮しなかった私が悪い。
その教訓を胸に抱いてこうやって実験する場を設け続けているし、設けてみてよかったなぁって、前々から思えている。
いろんな視点からの意見を貰うのって大事なんだねって試験を通じて勉強になった、これを研究塔の皆も体験して考えを改めて欲しいっていう、二次的な作用も期待している部分もある。この試験会、通称お披露目会は私の反省点でもあるから、まだ…余裕がある限り、こういう場は設けていきたいし、ちょっとした交流会にも繋がるから、この街に来て間もない人達の良い場になればいいっとも考えている。
ってなわけで、反省の心を込めて、周囲に与える影響にもしっかりと考慮して、考えに考えて作った此度の兵装は、彼の目にはどう映るのだろうか?…いつものように後日、私達三人だけの反省会時に駄目だしは…免れないだろうなぁ…
そういう意味も込めて、お披露目会ってやつは、ワクワクもあるけれども、ちょっと怖い部分もあるんだよね。
彼のダメだしってけっこう心に刺さるんだよなぁ…好きな相手だから、かな?有象無象に言われてもふぅん?そういう考えもあるよねっでスルーする自信があるもんなぁ。
過酷な運命を幾度となく立ち上がり、お互いが倒れそうになれば手を取り、励ましあい歩んできた時を超えた協力者は実験場の真ん中に仁王立ちしている…私の騎士…私達の関係は恋仲という関係よりも深い、運命共同体である彼の隣に立つと
「…いつも爺さんの相手をさせてしまって悪いな、嫌な思いはしていないか?」
声は心配そうにしているけれど、表情は薄く微笑んでいる…まぁ、外だから愛想良くする為に口角を気持ちあげているって感じかな?
本当は大して心配していない癖に、お爺ちゃんに絡まれた後の第一声はいつもそれだね、いいよ、多少のセクハラくらいなら気にしないし、お爺ちゃんって私の体には本当に興味無さそうだから、そっち方面のセクハラは!無いんだよね!
…彼の相手をするのは、そういう意味でもちょ~っと…疲れちゃうけれど、疲れるだけで後味が悪いっというか、尾を引く様な悪い気はしないのが不思議なんだよね…メイドちゃんは完全に尾を引いて超絶完全に分厚い壁を作ってるけどね。
セクハラの件は置いといて、得に嫌な思いはしていないと、伝えるとサクラは優しいなっと微笑んでくれる。
慈愛に満ちた微笑みを見ると私が知る始祖様の顔と重なってしまって私の中にある何かが騒めいてしかたがない。
この微笑みが私だけじゃないと嫌!!ってな感じで、嫉妬の心が湧きたってしまったりしたらきっと…私は狂うのだろうなぁって思ってしまう程に罪深い微笑みだよね、はぁ、脈が速くなっちゃった。
そんなやり取りをしているとメイドちゃんが私の近くへと近づいてくる。
「・・・」
近づいてきたけれども、何かを話すことは無い、メイドとして直ぐにでも私の指示で動けるように近づいたと見せかけて、お爺ちゃんから距離を取り、尚且つ、私が直ぐにでも助け船を出せる場所に移動したのだろう。
大きな心の壁を展開し、絶対にお爺ちゃんを寄せ付けないように小さな威圧感を醸し出しながらもメイドちゃんは私達の傍に居るんだけど、表情に緊張が走っている。張り付けた様な笑顔がより一層、私に関わるなオーラを強くしてるよね。
話の流れでお分かりの通り、メイドちゃんはお爺ちゃんが苦手。
過去に起きた様々な出来事によって、たぶん、苦手と言うよりもちょっと嫌っている…ごめん、ちょっと…どころじゃないかも…
理由はね単純明快、お爺ちゃんがドスケベだから!!
あの人の困った癖と言うか…自分の屋敷では、そうしていたのか、こっちでも隙あらばメイドちゃんにセクハラをしていた時期があったんだよね。
メイドちゃんの立場的にどうすればいいのかわからないってことで、相談されたからにはアクションを起こしたんだけど、結果は…
いや、頑張ったよ?かなり注意したよ?勇気くんにも手伝ってもらったよ?…でも、うん…
いや本当に注意したんだよ?
私としてもメイドちゃんのストレス値をこれ以上増やしたくないから、時間を作って、ちゃんと向き合って幾度となく注意したよ!!
注意したけれど…彼の癖なのか、それともそういう心の病なのか…純粋に直す気が無いのか、覚えていないのか、はなから話を聞いていなかったのか、注意した後もセクハラされてしまったから、これはもう、自衛するしか逃れる術はないよねってことで、お爺ちゃんには極力近寄らないようにしてもらっている。
手が届く範囲にいると隙あらばセクハラしてくるからね。こまったエロ爺だよ。
どうしてそういう事をするのか、理由さえわかれば対処が出来るってことで、幾度となくお爺ちゃんの行動原理などを思い返して、色んな人の意見をいただき、様々な角度からどうしてそうするのか考察しても…どう考えてもお爺ちゃんが悪い、ただのドスケベだからっていう答えにしか辿り着けない。
まったく、あの時は本当に焦ったよ…あのメイドちゃんが困った顔で助けを求める様に相談をしてきたんだから!
何か深刻な事態にでもなったのかと思ったんだよね、あの当時はまだメイドちゃんに大国との橋渡しをお願いする前でね、大国との対話をする準備を進めていたから、もしかしたら大国に先手を打たれたのかと…心に冷や汗が流れて話を聞いたら
まさかの爺セクハラ事件…
メイドちゃんから愚痴というなの相談話を聞かされた時はね、軽いボディタッチくらいじゃないの?大袈裟に言ってない?って、思ったんだけど、よくよく考えると軽いボディタッチくらいじゃこの子は気にしないだろうから、こうやって愚痴をこぼすってことはそれ以上か?それに、忙しい私に世間話のように見せかけた相談をしてくるくらいだから、よっぽどだろうと判断して、注意するべきだろうと判断したわけ。
具体的に何をされたのか聞いたら納得だよ…近づいちゃダメ!ったくエロ爺め…
密告内容を奥様連合にチクってやろうかと思ったんだけど、その程度ならって言われそうだし、この程度なら許してほしいって金色のお菓子をメイドちゃんのエプロンポケットに強引に、ねじ込み懐柔されそうな気がしたのでやめたんだよね。
お金で心揺れるメイドちゃんじゃないけれど、上流貴族の奥様達からそういう風に圧をかけられてしまうと、メイドちゃんとしては抵抗するわけにはいかなくなっちゃうからね。涙を流しながら受け入れようとする、そんなの私が許せないからね!大切なこ…妹分を泣かせるわけにはいかねぇってね!
お爺ちゃんに注意したけれどさぁ…彼としては度を越えないラインであれば問題無いみたいな言い訳をしてきたんだけど?
彼にとってどのラインから越えてはいけないラインなの?つまむのはアウトだよね?いや、流石に服の上、からだよ?
でもね、いつか、度を越えてしまうんじゃないかって不安はいつも感じては、いる。度を超す前にお爺ちゃんを制御するために奥様連合を呼び寄せたい!
けれども!…呼び寄せれないよね、自慢の愛していた息子が、月の裏側へと旅立った大地に赴く心情にはなれないだろうから、声はかけれないし、仮に奥様連合が集合してしまったらお母さんのストレス値も跳ね上がるので出来そうもない。
ってなわけで、メイドちゃんはお爺ちゃんの話題すら聞きたくない話したくない関わりたくないってくらい嫌っている。
一応ね、私がいない場所で、尚且つ勇気くんが近くにいる時は助けてくれるようにお願いしている、彼もそういうことならと快く引き受けてくれている。
お陰様でね、嬉しい報告は届いているよ?ありがとう。
幾度となく、メイドちゃんがお爺ちゃんに絡まれそうなったらそれとなく救出してくれている。もう、頼りになる!好き!




