Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (14)
うんうん、反応はとっても良好、驚きの表情に楽しそうな雰囲気、それだけでも此方も笑顔になっちゃう。
クロスボウに触れた人たち全員が装填のしやすさ、照準の合わせやすさに驚いているね。
どんな様子かって言うと、騎士達に集まった人達に扱っている弦の強さを感じてもらう為に、頑丈な手袋をつけて手で弦を引いてもらおうとしている。
予想通り誰一人として弦を腕の力で動かすことはできていない、顔を真っ赤にして全力で引こうとするがピクリとも動いていない、君たちじゃ無理無理。
貴方達と私達では、根本的にね違うんだから。貴方達には始祖様の血が流れていない、故に弱い、この大地にいる人達とは膂力に違いがありすぎるんだよね。
背筋の力を使ったりしても動かない程に固くてビクともしない弦をくるくる回すだけで簡単にセットし打てるっというクロスボウの凄さ、硬さを体験したがゆえに感じる勘当、驚きの声、そして、これを産み出した人に大きな賛辞が送られている光景を見ていると、自己肯定感が高まっていき、ふっふーんっと鼻が高くなってしまう。
絶賛の声を聴きながらちょっとした悦に入っていると、研究員の人から次の準備が出来ましたと声をかけられるので、次の実験&お披露目会をしちゃいますか。
天幕を潜り外が目に入る、何時だって希望の様に道を照らしてくれる光、暖かい光、その光は会場に集まる人々が私達に向ける視線と同じように感じる。
私達が会場に姿を見せると全員の音が止まり席へと戻っていくが、視線や表情は期待に満ちたように笑みを絶やすことがなく次の実験がどの様な実験なのか楽しみだという囁きだけを会場に置いて行く、全員が観客席に戻るころには先ほどまで試運転をしていたクロスボウなどの撤収が終わっていた。
クロスボウと入れ替わる様に天幕から運ばれてきたお披露目の兵器がクロスボウのような大きな武器ではない為、全員が不思議そうな顔をしている。
軽い説明をする前に研究員が手に持って見やすくする為に天に掲げる様に持ち上げる。
あの不思議そうな、本当にそんな小さな小槌が武器になるのか?っという疑問を抱き始めている、その顔が驚きの表情に変わるのが楽しみだね。
さて、会場の皆から伝わってくる期待感、今か今かと待ち望んでいる、その望みに応えてあげないとね。
研究員に小槌を持たせながら会場にいる人達に説明を開始する
次にお披露目するのは、接近戦用の武器。
お披露目となるこちらの主な使用目的は明確にしてある。
小型の獣に接近された時に非戦闘員及び、後方支援組が扱う取り回しが良く誰でもある程度簡単に扱う事を想定した小型の槌、っていうか簡単に言えばトンカチ。
小型とはいえあくまでも槌だからね、槌の大きさも釘を打つトンカチよりも一回り大きいって、感じかな?
違うところは、普通の槌は叩くところは平坦で突起物は無い、だけど、この槌はそこを変更している、槌の叩く部分をトゲトゲ状にしている、わかりやすく言うとスパイク状になっている。
他の槌と違うのはそこだけなのかって?そういう声が出てくるのは至極当然。
もちろん、それだけじゃないよ?その程度なら何も脅威じゃない、普通の小槌や槌とは、大きな違いがある。
ここを見て欲しい、小さくて見えにくいかもしれないけれど、持ち手の部分を見て欲しい、小さなスイッチがあるよね?この持ち手の部分にあるスイッチを握り込む様に押しながらスパイク状の槌の部分で対象物を殴りつける…では、研究員の方にどうなるのか実践してもらう。
私達が開発したインパクトアタックを披露してもらうので見守る。
研究員の目の前に用意された、的である兜に向かって大きく振りかぶって槌を兜に叩きつけるとバンっと大きな音が辺りを圧倒するような衝撃を鼓膜に響かせる、この程度の爆発じゃお腹の芯に迄は響かないか、もう少し火薬の量を増やしても良かったかな?でも、あのサイズに詰めれるのはあれが限界値なんだよね。
衝撃を身近に感じながら改良点を閑雅ている間に小さな煙が立ち上って直ぐに虚空へと消えていく。
白い煙が消えてくると、的となった兜の姿が徐々に鮮明に見えてくる、兜の姿が無残な姿を見たからか、どよめきが会場を包み込んでいく。
小さな硝煙が晴れて見えた兜は大きな穴を広げ圧倒的な力によって潰れる様にへしゃげている。
兜が兜の意味をなしていない、こんな小さな小槌一つで兜を砕く、戦争時にこれがあれば剣なんていらないかもしれないね。
小槌の構造としては、実はけっこう単純な仕組み。
スイッチを入れることでセーフティが解除されると持ち手の中に仕込んである魔石が反応する。
解除された状態で槌の部分が一定の衝撃で当たると、その衝撃によって術式が刻んである箇所に魔石から魔力が注がれてスパイク状の槌の中で一瞬だけ小さな火種を発生させることによって槌の内部にセットしてある火薬が爆発して振り下ろした槌の衝撃をより強くするって構造。
小型種である鼠をイメージとして、対象をスパイクで殴りつけることによって敏捷性の高い対象の動きを止めてから、確実に火薬の衝撃によって敵の内臓へと衝撃を飛ばして圧殺しつつ、スパイクで骨をかち割るって感じかな?表面と中に向けての二重衝撃、相手は死ぬ!って感じかな?
見てわかる通り、これの弱点は明確だよね、連打ができないのが欠点。
こういった小型の軽い武器って手数が大事だと思うんだよね、何度も何度も打ち付けるのが正義、なんだけど、これは一度使ったらすぐに二発目のインパクトは出せない火薬を装填していないから。火薬が無い間は普通のスパイク状の小槌として使うことになる。そうなると一回使ったらその場に捨てて次の小槌を取り出すのかっていうとそうじゃない。
火薬のカートリッジは用意してあるので手早く火薬カートリッジを交換すればすぐにでも先ほどのインパクトは打てる。
打てるんだけど、問題があるとすればある程度、交換する練習をしていないともたつくかも?一応、簡単に直ぐに交換することが出来るようにしてはあるんだけどこればっかりは訓練がいるかな?威力としては、これくらいの衝撃で充分、鼠とか、兎くらいの小型種であれば、体の何処を叩いても仕留めれる、かな?何処でもっていっても尻尾は意味ないからね?
衝撃の音だけ肌で感じたら物足りないって感じてしまったけれど、目に見えた結果を見て、これくらいの衝撃で在ればいけるっと、確信に至ったのは良いんだけど、ついでに弱点も浮き彫りになってしまった。
インパクトを放った研究員が痛そうに腕を支えている。この兵器はちょっと難ありだと浮き彫りになる。
作用点の問題で上腕骨に衝撃が残っちゃったか…筋肉のない方を想定して作ったのであればその衝撃が持ち手に伝わらないように改良しないといけないね。
やっぱり参考にした銃の機構をもっと近づける様に模範するべきだった、拳銃のブローバックみたいに随所にバネとか仕込んで小槌の部分が後方へとスライドするようにして衝撃を後方に逃がしつつ自動で火薬カートリッジが装填される仕組みにするべきだね、んー、実現するのは難しいかもなぁ、課題が残る。
当たり前だけど衝撃ってのは反動で返ってくるよね~、予想はしていたんだけど、想定以上の反動。ある程度であれば耐えれるでしょ?っていう考えが甘かったか…
衝撃が強すぎたかも、火薬の量を増やすどころじゃないね。この手の武器は、色々と課題が残るなぁ~。
腕を支えている研究に向かって医療班が直ぐに駆けつけ処置に当たってくれている。
痛そうに腕を支えているけれど、研究員は何処か嬉しそうだった、自分が想定していた内容よりも凄かったから嬉しかったのかな?笑みを浮かべることが出来る程度の怪我で済んで良かったと考えるべき、何だけど、これ以上火薬を減らすと…ん~、衝撃を減らす工夫が必須かな。
研究員が退場していくなか、一瞬悩んだけれども、怪我をしてでも体験してみたい人ってのはいるかもしれないので、念のために会場で見ていた人に呼びかける、触ってみたい人はいる?っと、しばし待てど試して見たい人が名乗り上げるのか待ってみるが、予想通り、流石にね、先の光景を見て自分もやってみたいと思う人は出てこない。
怪我をした様子だけなら、やわな研究員だからだろって腕自慢が名乗り上げてくるんじゃないかなって根性…ううん、これは無謀かな?そんな人が出てくるかなぁってちょっと期待しちゃったんだけど、火薬の衝撃って怖いよね。
火薬を使った兵器はみんなの想像を超えているみたいでしり込みをしちゃったかもね、馴染みのない概念だもんね。
次の兵器…大丈夫かな?殲滅力だけ見れば、これ以上なんだけどなぁ…
それとさ、兵士志望の人達には悪いけど死の大地で武勇を上げる様に前線で戦いたいのなら、この程度で怯んでいたら戦えれないよ?人型の拳を真正面から受け止めたら一撃で鎧を貫通して胴体を貫くからね?
周囲の様子は未だに違って静まり返ってしまったまま、クロスボウの時に比べて刺激が強すぎたかなぁ?
お披露目するのは後にするべきだったか…やっぱり、周りを鼓舞するのにが上手い彼がいない時にするべきじゃなかったかも?
順番を間違えたかぁ、馴染みのある武器からお披露目するべきだったかと反省しながらも、次のお披露目はどうしたものかと、腕を組みながら会場の状態を遠巻きに見るようにしつつ、んーっと小さな声を漏らし、悩む様に困っていると「姫様」っと、呼ばれる声が聞こえたので視線を向けると、メイドちゃんがパチパチっとウィンクする様に目くばせをしてくれる、どうやらお目当ての彼が帰還したみたい、タイミングいいなぁほんっと。
なら、私はこのまま、お披露目会を続けて行こうかな、周りの人達が意気消沈しようが、彼なら上手い事、彼らを鼓舞してくれるでしょ。




