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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (11)

廊下を歩いていると質問される、メイドちゃんとしても綺麗に立ち回るために内容を把握しておきたいよね。報告連絡相談は大事。

歩きながらで悪いけれど、試験の流れくらいは話しておくべきかな?つっても、凡そっというかぼんやりとしか考えてないんだけどね、現場に到着してから判断したいんだよね。

「今回の試験は…どうされるんですか?全て行うのでしょうか?戦士長はまだ戻ってこられておられませんのですが」

言いたいことはわかる、危険を伴う試験だから、もしもに備えて警護する人が居なくても大丈夫なのかっていう部分だよね、大丈夫、隠者達が襲撃して強奪してくることなんてない、奪われたところで彼らに量産する技術は無い、発想は得られるだろうけどね。

さらに言えば、警護するための騎士は配置についてもらうし、10人程度が一斉に襲い掛かったところで私達の敵じゃない。命を奪っていいのなら瞬時に終わらせれる。

「試験に参加するために予定を空けてもらっている人もいるんだから、当然、行うよ、全部ね」

「全部、ですか…」

不安そうな顔をしないの、危険な試験ではあるけれど、事前にしっかりと入念に準備しているからもしもはない。

試験に使われる素材も無限にあるわけではないからね~、気軽に何度も何度でも出来る内容じゃないしね。


一番危惧しているのが、何処にいるかもわからない私達を監視し情報を得ているであろう獣だよ…事情を知り得る人にしかこの推測を言えないのが辛いって思う事もあるけれど、知れば知り渡る程、敵は警戒する、理解者は一人だけ居ればいい。彼が…彼らだよね、一人じゃない二人いればそれでいい、彼らが私の心を埋めてくれるから、それでいい。会いたいな…声が聞きたいな…私の唯一の…


っとと、いけないいけない、思考が逸れてセンチな気持ちになっちゃう、気を引き締めて行かないとね。駄目だな、今代の私は感情が溢れやすい。

そんなわけで、危険な実験は出来る限り回数を少なくしたい、私としても敵に情報を与えたくない、だからといって破邪の力は無暗に使う事が出来ない、あれはここぞって時だけにしたい、地下に保存してある魔石を守るために使っていたい。今まで、地下が襲撃されなかったのが奇跡だと思わないとね、定説では始祖様の壁は地下にまで影響を与え地下を突き進むワームの進行を食い止めているっていう定説がある、私もそれを鵜呑みにしてきたけれど…一番怪しいのって地下だよね?…私は地下に獣共の隠者が潜んでいる気がして仕方がない。潜み情報を収集する事しか能が無いから、地下の研究所や、魔石倉庫が襲われなかっただけじゃないかって推測している。


ってなわけで、そういった込み入った事情があるからね、出来る限り回数は減らしたいって考えになるわけ。周りには私の時間が無いからと、素材を無駄にしたくないからって理由で納得してもらっている。当然、メイドちゃんもうそう思っているし、大国に情報を渡したくないのだと思っている。

私としては別に大国に兵器の情報が流れたところで何も危険視はしていない、あいつ等の技術力は完全に把握していないが、基本的な考えが私達と違い過ぎるから再現はできないと思うよ?まぁ、新たな着想を得ることは出来るだろうけどね。

仮に新しい着想を得たとしても大国みたいなところは新しく何かを開発する環境を整えるには王を説得しないとだめでしょ?

王の理解を得て予算と技術者を集めプルジェクトを発足したとしても完成するのに2,3年はいるでしょ?

っは、おせぇおせぇってね、鈍足で足踏みしている程度の連中、脅威じゃない。それまでに決着をつけるから問題なし、不穏な動きがあれば即座に獣の次に断罪してあげる。


っとと、いけないいけない、殺意が溢れ出てきてメイドちゃんが瞬時に感じ取り指先をモジモジといじり始めた、抑えないとね。

大雑把な私の予想通りなら、無駄な時間なく綺麗に試験を行えると予測と予想は出来ている。

元々予定していた試験を行う順番を変えて行けば、綺麗に収まる。

予想通りなら、危険な試験を実施する前には、人型を討伐に向かった戦士長一団は帰還して、何時も通りのほがらかな雰囲気で試験場に顔を出すでしょう。


っま、推測の域段階だけどさ、何処でどうやって観察し情報を会得しているのか知らないけれど、土の中にいると仮定して更には上空も警戒プラス隠者対策として、ちゃんと消音の術式は展開するけどね。

実験内容が視認しにくくするための視界もずらせれたらいいんだけど、それをすると、遠目で試験内容を見ている研究員達が見えなくなっちゃうから出来ないんだよね。

なので、消音だけを展開する。敵に何かをしているってのは昔っから伝わっているから具体的な内容さえ把握されなければ問題ないでしょ?

今のところ、私達の研究が全て筒抜けになって対応されたり対策されたような動きは一度足りとて無いからね、きっと、具体的な内容までは知りえていないんじゃない?

…もしくは、知ったところで相手にする必要が無いって舐め腐っているのかもね。先生なら、そう考える可能性が高い、相手を油断させといてここぞという時に八方塞がりにして封殺してくる。先生なら…


っは、いけないいけない、思考の渦に飲み込まれるところだった、ここは盤上の上じゃない、敵の駒を把握しきれることができない以上、考えすぎてはいけない。

無限の可能性ばかり出てきて抜け出れなくなる、無駄に脳のリソースをそっちに割くわけにはいかないの。


思考の渦に吸い込まれない様にぺちぺちと上機嫌にリズムを取る様に太ももを叩いて意識を切り替えていく。

「メイドちゃんも知ってるはずだよね?今回さ、行う試験も即座に実践投入するわけじゃなくて、テスト段階…それすら怪しい物もも含まれているからね?準備をする研究員も何度も何度も仕度したわけじゃないからね、失敗しないために入念にチェックしながら準備するから時間はかかる、それに人が集まる会場のセッティングって、地味に時間がかかるし、会場に集まった人達に説明してもらうのも、まだまだ不慣れだろうから、手間取るって見とかないとね」

「はい、そうですね。会場に入られる方達に大まかな説明をしてもらう方も慣れていらっしゃらないですからね」

そうそう、口下手な研究員が多いからね、私達の所は。毎度ながらこういった説明する係は誰がするのかっていうのだけでひと悶着するんだよね。

研究塔の長はフワァっとしているから、向いていないし、娘さんは人見知りだし!こういう時に頼りになるのが医療の父であるセレグさんだけど、セレグさんは手が空いている時間は医療班の座学に出てもらっているから、毎日喉が枯れている、これ以上、頼めないよ。


「ってなわけで、幹部達に見てもらいたい、完成済みの兵装をお披露目するころには戦士長含め、全員が勢揃いしてるよ」

なるほどっと、頷いてから、手のひらに収まるメモ用紙を広げて何か確認している。皆のスケジュールとか、かな?

「では、私のすべきことは、幹部の皆様が勢揃いしたらお伝えしたほうがよろしいですか?」

あー、まぁ、伝達係として立ち回るべきかってこと?

…ついでに隠者の動きをチェックしようとか、考えてるな、いいよ、そういうのはしなくていい。メイドちゃん独りで動く方が危険な方向になる。

大国の隠者はある程度自由に動いてもらって大丈夫、メイドちゃんに圧を加えたり私に直接的な危害を加える気が無ければある程度、泳がせてあげていいよ。

「なるべく、私の傍に居てもらいたいんだけど?なるべく、独りにならないでね?」

「ぇ、ぁ、はい」

もじもじと嬉しそうにするのは…どういう意味なのか気にはなるけど、深くは突っ込まない、が、釘は刺しておく。

「会場内での伝令係としても、準備も出来る限り手伝って雑用係としても動いてもらう予定だから、会場の外にまで出るくらいうろちょろしないでね?後、万が一もあるんだから、浮ついてフワフワと危機感無く私の手の届かない範囲から動かないようにね?」

「はい。それはもう、勿論です、気を引き締めます!だって…姫様が用意されていく武器は…その…殺傷能力が高すぎて、怖いです、あれが…」

ぐっと、口をつぐみその先を口に出さないのは良い事だよ、口に出すと現実味が出てくるし、言葉が結果を引き寄せちゃうよ?見たくない結末を、考えたくない終焉を。

「その先は考えないように、私だって幾度となく葛藤したんだからね?でも、こうすることしか無かったんだもん、人が弱すぎるから…あいつらと闘うには人以上のポテンシャルを持った敵を駆逐するには、驚異的で強烈で皆の心を奪う程の…」

「…はい、この世にいる全ての人が善性で在れ、ですね」

それからは、考えたくない未来を思い描いてしまったのか、俯いてしまい、両手は何かを手放したくないのか、きゅっとスカートのすそを掴んでいる。

現場に到着する迄…メイドちゃんと共に、一言も言葉を交わすことなく歩いていく。


大国と幾度となく関りが出来たからこそ相手の考えていることがある程度は読める。野心しかいない覇道を歩み続けようとする力無き権力者は全てを欲している。

無理難題ばっかり吹っ掛けてきたけれど、それに近しい物を献上すればころっと態度を変えてきた辺り相手が求めている物がすぐにわかっちゃったからね、ある意味わかりやすくて扱いやすいんだけど、やり口が清濁併せ吞んでいるのがうざい、本気でうっとおしい、まるでコバエがずっと耳元で飛んでいる様なうっとおしさ。


当然、力を欲している力無き王が考える事なんて簡単、私が開発する兵器の数々が欲しい、可能であれば私達の全てが欲しいのだろうが、それら野望や野心がこの大陸に及ばないようにするための抑止力として情けない男が機能しないといけないの…うっかり牙を圧し折って根元から引っこ抜いてしまったのがいけなかった、抑止力としてまったくもって機能しなくなっちゃんだもん、ほんっと情けない男…

かといって宰相が上手い事、取りまとめきれるとは思っていない、あの人は基本的に甘えたなんだもん、良い所見せたいのならちゃんとしてよね、あの人が私を守る直轄の騎士じゃなくてよかったなんて口が裂けても言えない、言ったらたぶん膝から崩れ落ちて塞ぎ込む、ああ見えて自分の真なる名前に誇りを持ってるみたいなんだよね、聖女を守る騎士!…そんな肩書に拘ろうとするなっての。

っま、大国との繋がりが強くなったら、こうなるんじゃないかなぁって嫌な、予想通り隠者まみれとなりました!ってね…

当然、何時から潜んでいるのかわからない大国のスパイ組織として機能していたメイドちゃんの古巣も恐らく王都で復活しているんだろうね、尻尾を掴まなくても何となく流れでわかるよ…一度繋がってしまったパイプってのは大元を根絶しない限り機能し続けるってのが良く分かった。ほんっと目の上のたん瘤だよあの国、滅ぼしてぇ…


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