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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (7)

此方の意図が伝わらない歯がゆさと、大国の洗脳技術の高さに苛立ちを感じ、つい、その苛立ちを言葉に乗せてしまう。

「私は止まらない、幼く見える人物が人を殺すなんて想像できていないの?一連の流れでわかるでしょ?私は…人を殺すことに抵抗はない、私がただの女ではないのは、知っているでしょう?長い事、監視していたのだから、わかっているだろう?貴女が選ぶべき選択肢は!」

必死に呼びかけるが…彼女の体の動きが私の心を苛立たせる。

右足に重心が移動したので立ち上がらせない様に右足のアキレス腱も切る、声のない絶叫と共に彼女の呼吸が荒くなっていく、痛みに耐える為の特殊な呼吸法ってやつかな?どうして、私の想いが伝わらないのだろうか?


心の中で大きな舌打ちをし、直ぐにでも頸動脈を引きちぎって絶命させてしまいたくなるのを我慢し、声をかけ続ける。

「この私が!…お前たちに気が付いていないと思っていた?残念ながらとっくの昔から気が付いている、私に害がない間はどうでもよかった、お前たちは踏み込み過ぎた」

此方の呼びかけ何て一切、意に介していないかのように、自分の意思を貫こうと、左手の手のひらを地面につけ、力を込めようとするので、念動力によって重圧を加え、地面に寝ころぶように抑えつける、肺から空気が漏れる様な音が聞こえてくる、うっかり、潰さない様に加減するのも面倒だってのになぁ…まったく、早く心折れろよ

「だが、お前たちは調子に乗り過ぎた、これが最後の警告だと思え、次は無いぞ!」

嫌な予想って当たる。

こいつらは…この人達は…深く深く洗脳されている、自分たちの命はないモノだと心の底から思っている。

そんな人物に痛みを与え、苦悩によって選択肢を突き付けたところで、自分の使命を全うすることだけを考えて、洗脳により固められた心は砕けない。

っていうか、ここまでやって、心変わりをするような素振りを一切見せないなんてさ、人としてどうなの?

調教や、洗脳などによる影響かな?前頭葉壊れてんじゃね?ってくらい、先の事をかんがえようとしない。

言われたことを遂行するだけの道具として機能している、個が完全に消失している可能性もあるが…


もう一度、わからずやの馬鹿にも、わかりやすく教えてみて、駄目そうなら…仕方がない。これ以上付き合ってられない。

メイドちゃんも戻ってくる頃合いだし…


こんな絶望的な状況だろうと打開策を求め体を動かそうとしている。その仕草を見て、抑えつけているのが人ではなく虫のような生き物じゃないかと錯覚しそうになる。

地面に抑えつけられながらも、任務を共にしている相方だか、組織の人間だかに合図を送る笛から視線を外さそうとしない、もしかしたら、それが最後の希望なのかもしれない。

心を折るために、隙あらば拾おうとしている笛のすぐ横に移動すると、一瞬だけ視線が此方を見てくるので、表情を崩すことなく、冷酷に笛を踏みつぶす!…思っていた以上に硬かったので、一回では、壊れなかったのでもう一度、踏みつぶす様に踏む動作をしながら踏む力に念動力も加算して完全に笛を踏みつぶす。

パキンっと破裂するような音ともに砕けた笛の破片が周囲に散らばってなお、彼女は懸命に動こうとする…指を笛だったものに伸ばそうとしている。


…執着がある。ってことは、貴女の心はまだ残っている?砕かれた笛に縋ろうとしているのだろうか?

だったら…だったら!心折れてよ!言うこと聞いてよ!抵抗しないでよ!!


「仲間ともども…祖国すらもこうなってほしくないという心があるのなら…」

目線を合わせる為に屈んだ瞬間…彼女の動きを見て私の心が真っ黒に染まる。

顎先を此方に向けようとする?はぁ…心はある、だが、それ以上の闇が、彼女の心を真っ黒に塗りつぶして、植え付けられた行動以外がとれないのだろう。


新たな選択肢を選べない…道具として動くことしかできない、与えられた使命を全うしないといけないだけの人ではないモノ…

可哀相に…これ以上、人としての尊厳を考えるのであれば、慈悲を貴女に


体と言う器に真っ黒な液体が流れ込んでいき心の隅々まで真っ黒に染まっていく

目の前にある虫が必死に体を動かそうとしている、ゴギギっと何かが削れている音が聞こえる、首の骨にヒビでも入ったのか、折れていっているのか、わからない不可思議な音を出しながら、必死に顎先を此方に向けようとしている。

急激な圧によって眼球が飛び出そうとしているのか目が充血して血走っている、どんな状況でも諦めないその姿は虫ではない足掻き藻掻き命を賭すのは人だよ…

この状況で考えられる彼女が持つ最後の切り札、唯一の攻撃手段が出来る状況に持って行くまでこの後の事…自身の未来全てを捨ててまで首を動かしていく、人が動かして良い可動域を越えつつある。

そこまでして…彼女が今まで生きてきた中での経験則から切り札が届く位置にまで顔の角度を変え、届くと確信したのか口腔の奥から舌と同時に針が少し見えるとほぼ同時に針が此方に向かって飛ばされる。


ごめんね、そんなにも遅い動作では私を殺せないの、でも、貴女が貫こうとする意志はちゃんと受け取ったよ。

貴女にも譲れないモノがあるのね。それが何かはわからないけれど、引くわけにはいかない、死ぬまで…


飛んできた針を念動力によって空中で掴み、瞬時に針の先端の向きを変え弾き返すよ。

弾き返す方向は決まっている、含み針っという暗器を用いてきた相手に向けて針を飛ばす。

空中で制止した針は空中で向きを変え、彼女の舌先に針が刺さる。

刺さった瞬間に彼女の舌が震え、すぐに舌を噛み切ろうとしたので、念動力で顎の動きを止めると…

口の端から石鹸の泡のような小さな泡が出てくると…彼女の呼吸する音が消え、心臓の音が小さくなっていく。


神経毒の類だろう。筋肉を弛緩させ動けなくさせる、類の毒、かな?そんな危険な針を体内に仕込み生きるなんて、想像したくないよね。


抑えつけている彼女の動きが完全に止まる。

解放しよう、力なく横たわる遺体に慈悲を込めて目を閉じさせ、仰向けにさせると足音が聞こえてくる。パタパタとした、なじみ深い音が近づいてくる、近づいてくるが、一定の距離になると、歩く足音が小さくなっていく、目の前に広がる光景から状況を理解したのだろう。

「…ひめさま」

後ろから悲しいのか絞り出すような声が聞こえる、嗚呼、もしかしたら同僚なのかな?知り合いだったのかも。

「同僚?」

「…いえ、私の同僚はもういません。ですが」

こんな場所で横たわっているのだから、どういう状況なのか直ぐに理解はしているだろうし、唐突な命令を言われた手前からこうなるんじゃないかって予想はしていただろうに、ショックを受ける事かな?…受ける事なんだろうな、私だって、知りはしないが同郷の人が殺されていたら何かしら感じるもんね。駄目だな、命が軽すぎる、私は…命を軽く扱い過ぎている。


自分の歩んできた道のりは、どうしようもない暗い世界であるのだと再確認させられてしまう。こんな世界を望んだことなんて一度も無いのにね。

「姫様は…」

この落胆とした様な声は、私だったら彼女を殺さないで救う手段があったんじゃないかって期待を込めていたって、言いたいの?

だとしたら、買いかぶりすぎ、ここまで念入りに調教されて人格破壊されている人を救うには年単位の時間が必要。

たった一人の人間にそこまで時間を割く暇も無ければ、監視する人もいない。予算だけならあるけどね…


殺すのが…最も効率的だっただけ…殺すしかね…彼女を止める方法はなかった、なかったの。

今になって、彼女を止める方法はあったのではないかって考えるのは非効率的、過ぎたことは受け止める。


さぁ、気持ちを切り替えて行こう、ここで停滞するのが一番良くない、この状況下で複数の人が集まってくると、色々と面倒なことになるし、メイドちゃんの立場や、大国が潜ませた隠者の立場が悪化する、そうなると…魔女狩りが始まる。この大陸の人はね、以外と冷酷だよ?メイドちゃんは…知らないだろうけどね。

冷静に考えると同郷である人物の遺体処理をメイドちゃんにお願いするってのも、残酷な話だけどね、でも、メイドちゃん以外に頼める人はいないので、冷酷にお願いしますか、それに、私は使った魔力を補充しにいきたいし。


ゆっくりと立ち上がって、振り返り、見たくは無いけれど、メイドちゃんの顔を見る様に顔を上げると…驚いたそんな表情をしているとは思っていなかった。

「私も…姫様に殺されるのですか?」

震えるような事も無く淡々と冷静に、眉一つ動かすことなく感情を押し殺し、真っすぐに此方を見つめている。

恐怖心が表に出ていなければ、耐えている様な雰囲気でもない。目の前にある死を素直に真っすぐ受け止めている


嗚呼、そうか、メイドちゃんもまた、彼女と同じく、死に対して恐怖心が薄いのだろう

もっと、死を悼むような、同郷の死を悲しんでいるのかと思ってた


「いつか、こういう日がくると初めてお会いした時に感じてはいました」

一瞬だけ、遺体に視線を移したけれども、感情がゆらめく様なことはない。彼女もまた…大国の過酷な訓練を乗り越えてきたってことだよね。

「私も同じようになるのはいいんです、でも、未練が残ります、私はまだ使い道があると…居てもいいと…私は…思っています。まだ、使い道があると」

死に対する恐怖はないが、与えられた責務を全うできないのが辛いのだろう。それが彼女の生きる世界。

まったく、どんな教育を受けたら命よりも与えられた任務を大事にしろだなんて植え付けらるんだろうね。

彼女の忠誠心の高さはそういう教育が極まっているんだろうね。

「そうだよ、メイドちゃんは、まだまだ働いてもらうからね?殺すわけないじゃん」

きょとんとした顔で此方を見ている、どうやら、完全に処分されると思っていたのだろう、不穏分子は断罪する、如何にも大国の考えそうな考えかた。


制止している勘違いお馬鹿さんに再度、誰がボスなのか認識してもらいますか

「貴女の所属は?はい、呆けていないで返事は?」

「…ぇ、あ、死の大地からの脅威を守る為の最前基地を守護するさく…姫様の補佐をすること、です」

朧げで儚げな雰囲気を醸し出しながらも、ちゃんと言いつけを守っている偉い偉い、私の名前を無暗に声に出さないってのも覚えてるし実行できている、偉いじゃん。

「でしょ?彼女と貴女は違う、使い捨ての駒になんてさせない、させるわけがない、貴女はまだまだ使い道があるんだからね?」

そう、私と一緒、貴女も最後まで私と共に地獄を歩んでもらうんだから。

「くだらないことを悩んでいないで、彼女を貴女の背後にいる人に引き渡して、余計なことをするなって伝えてきて」

パンパンっと手を叩き意識を切り替えさせる

「ぁ、はい…ちなみに死因は?」

指先で舌に刺さったものを見ろと指をさすと、ぁぁっと納得する声が聞こえ

「手を出したのなら向こうが悪いですよ、潜入、監視、調査任務なのに、調査対象に手を出すのは命を奪われても文句言えないですよ」

成程、姫様が目障りで殺したわけじゃないんですね、よかったっと小さな呟きが聞こえてきたけど、無視しておく。

正直に言うと目障りだったっという動機は否定することが出来ない、結果的に殺すしかなかった、出来れば殺したくは無かったけどね、飼いならせるのなら二重スパイとして欲しかったし。

「では、彼女は丁寧に埋葬させていただきます、姫様の配慮に感謝を」

スカートの端をつまんで丁寧にお辞儀をしてくるのでその意図を汲み、ではよしなにっと一声だけ添えてからその場から離れる。



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