Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (6)
うん…きな臭いのが二人、髪を乾かしている間に一人増えた。メイドちゃんの死角に陣取るのは良いんだけどさ、あからさまにこっちに視線を向け過ぎだっての、馬鹿じゃないの?そりゃ、まぁ、私からしても死角で見えない位置だけどさ、私を舐めてんのかっての、術式を使って音を反射させるエコーロケーションで位置把握出来てんだっての。
監視がついているってのは前々からわかっているけれどさ、隠れる気があるのかってくらいわかりやすいなぁ。まったく、バレバレだよなぁ。
こうまで、あからさまだと、誘われてるんじゃないかって勘ぐっちゃうよね。まったく…あんな利己的な国、滅ぼしたほうが手っ取り早いんだけどなぁ~…
だけど、その選択肢だけは選べれないんだって、あの大国があるからこそ、より遠い他の国々との繋がりが出来るんだよなぁ。
おかげで、他の大陸と繋がりが出来るんだけどね、ただなー問題があるとすれば、他の国の大使とかと直接取引したいんだけどなぁ、私がこの大陸の外に出るのは難しいんだよね。そこだけが良くない、私が直接出向ければメイドちゃんが曇ることもなかったし、あいつだって、情けない男にならなかったんじゃないかなぁ?んなこたぁないか。
かといって、大国の偉いさんとは一切合わないのかってなると違うよ?極稀に王都まで出向いてくる時があるから、その時くらいかな?会ってたりするんだけど、大国の連中は全員、自分の欲望しか見てない、隙あらば強奪強襲簒奪、私の経営している上流階級専用のホテルの備品ですら持って帰ろうとしやがるからなぁ…なんでもござれだもんなぁ~…
死の大地にいる死の獣がいなかったら間違いなく、あの大国がこの星の覇者になろうと動くだろうね、戦争大好き、略奪大好き、命も財産も土地も奪う事こそ人生の華ってのが向こうのお家芸であり文化、自国の文化を、自国の欲を満たすために、全ての国に何時でも燃えさせるための火種っという粉…ううん、あれはもう火薬だよ、直ぐに燃やす為に、燃える水をいろんな国にかけまくってるんだろうね、あ、勿論、こっちにも常に舐めた態度ぶちかましてくるよ?
ほんっと、めんどくさい国、油断できない国、目の上のたん瘤だよもう。
あーもうやだ、イライラするぅ、、、滅ぼしてぇ~…力任せに蹂躙してぇ…でも、できねぇ…
人同士で争っている暇なんてねぇってのになぁ…ったく。取り合えず、釘を刺しますか~、多少は痛い目を見ないとわからないんだろうけれど、おかしいなぁ?これまでに結構牽制はしてたんだけど?わからせるしかないのかな?…情けない男が増えそうで嫌だなぁ。
何時もよりも念入りに髪の毛の水気をとったり、髪の毛を櫛でといたり、お肌に乳液を染み込ませたりと、献身的に手入れを施されてるとようやく終わったのか、終了の合図として声をかけてくれる。
「それじゃ、行きましょう姫様!」
まぁ念入りにしてくれたことですこと、お陰様で思考を巡らせる時間が出来たからいいんだけどね、そう、釘を刺す為に二手三手先を考えることができました。
さて、手を引かれ脱衣所から出ようとするので、まずは一手ってね。メイドちゃんに気が付かれないようにポケットからハンカチを取り出して、篭の中に放り込む、メイドちゃんに見つからない様に、更に、気の利いた人が多いからそちらもしっかりとね!周りの人が見えない様に軽く細工を施す。
お風呂で火照ったから正直、離れて欲しいけれど、彼女の心を守るために我慢し、腕を組まれながら私の部屋に向かって歩いていく。
さてさて、視線が一つ、遠くに不自然な場所で待機している人物の足音が聞こえたね。メイドちゃんも気が付いていると思われるのが一人、後ろから監視している人、これはお風呂場からずっと付いてきた人だね、メイドちゃんもこいつらの視線から逃れないようにわざとゆっくりとお風呂に浸かったり、普段よりもより丁寧に髪を乾かしてくれたりしてたもんね。
視線を向けてきている人はメイドちゃんでも問題なく制圧できるレベル、問題があるとすれば、通路の先にもう一人いるヤツが厄介かな?
恐らく此方が上司的な立ち位置じゃないかな?だってこっちの方に潜んでいるやつはあのメイドちゃんでも気が付いていないだろうからね。
敵も隠者としての経験が高いのだろう、メイドちゃんが索敵できる範囲をしっかりと把握している、その範囲外から息を殺して耳を澄ませている…残念だけどね、私には丸見えなのよね~…経験豊富なタイプかぁ、説得出来ればいいんだけどなぁ。難しいだろうなぁ、洗脳されているタイプの可能性が高いんだよね。
メイドちゃんすら気が付くことが出来ない隠者をどうして私が見つけれるかって?そんなの単純だよ。
術式を用いれば私に見つけれない人はいない、この星に住む人たちは術式に疎すぎるってね、お前たち特有の異常に落ち着いた心臓の音と、異常に落ち着き音を殺そうとしている呼吸の音がね、残念ながら、他の人はわからなくても、私には、全て聞こえている。この時点でお前たちの負けだっての。
さて、通路の位置的にもちょうどいいかな?一手目をここでつかって、後は出たとこ勝負ってね、いっちょやってやりますか。
「あつーぃ、メイドちゃんそんなにくっ付かないでよ~汗でてきちゃったじゃん」
手を団扇の様にパタパタとふり、くっ付かれている方の腕でポケットの中に手を入れ、ハンカチを出そうとする、勿論、先ほど脱衣所の籠の中に放り込んだから無い。
「あれ?…ハンカチがないや」澄ました顔と声で言うと
「では、私のハンカチをお使いください♪」
素早く差し出されるハンカチ、メイドちゃんがハンカチを二枚、三枚と、持ち歩いていないわけがない、こういう返答が返ってくるのも、もちろん想定済み
差し出されたハンカチを受け取る前にすかさず私の汗を拭こうとしてくるのを手で制止する
「汗を拭ってくれるのは嬉しんだけど、あのハンカチって貰い物だから、ほら?その、ね?無くすと困るん、だよ、ね~…この意味、わかるよね?わかってくれる、よね?」
気恥ずかしそうに上目遣いで恥じらう様に伝えると
はっと、何か気が付いたみたいで一瞬だけ、ニマっと不敵な笑みを浮かべ私の汗をささっと拭いて
「脱衣所にあるはずですよね!誰かに拾われる前に取りに行きます!ええ!それはもう全速力で!!」鼻息を荒くしながらスカートのすそを持ちながら足音を最小限にして脱衣所に向かってかけていく。
メイドちゃんが走っていくのを追っていくように一つの気配が離れていき、遠くにいた気配が此方に向かってくる。急な動きに慌てながらも気配を消している。
分かったことが一つ、意思疎通の伝達方法は音か、一瞬だけ、日常で生活をしていれば絶対に聞き取れない、特殊な訓練でもしないと聞き取りにくい音が私の横を通り過ぎて行った、術式で聴力を向上させていなかったら聞こえなかった。
超音波の一種だろうか?それとも、人がきけない音域?かな?色んな技術を持っている…その技術を少しは野望の為以外にも使えっての…
…っま、私も人のこと言えないよね、対人に対しての技術ばっかり向上していっている気がする。
それも、まぁ、仕方が無いんだけどね、獣共って種類が多すぎてAっていう獣に特化しちゃうとBっていう獣に足元をすくわれる。
弱点がどの獣にも共通してるとか、そういうのがあれば楽なんだけどなぁ~…はぁ、本気で気が滅入って来るよね。あんなのと闘わないといけないって考えるとね。
だから、お前のような小物とじゃれている時間なんて無いんだっての。
臭いを消す、音を消す、風を消す…視界を外す。
ここに”人が居る”という認識を術式によってずらす、認識阻害の術式を発動する。これにより私と同等クラスの術者じゃない限り、私を見つけることはできない。
唯一出来るとすれば地球程の化学ってやつかな?それ程の超常なる技術でもない限り見つけれないよ、サーモグラフィーだったかな?あれは対策のしようがない。
だから、蛇タイプは嫌い、あっさり見つけてくるからね。
気持ち歩く速度が速くなっている音を聞きながら姿を顕わ宇野を待っていると、通路の角から何食わぬ顔で顔を出してくる。
でも、この状況は予想していなかったみたいで、女性が此方を見て驚いた表情を見せ直ぐに次の行動へと移し始める、慌てた様子で笛のようなものを口にくわえようとするので瞬時に念動力でデコピンをするように使い、笛を叩き落す。
急に手元から落ちてしまった笛を拾おうとする敵の背後に回り「動くな」心臓を鷲掴みにするような圧を加え乍ら声をかける。
屈んだ姿勢を直ぐに正そうと立ち上がろうとするが、させるわけないでしょ、念動力によって敵を潰さない程度に抑えつけ動けなくする、加減が上手くなったもんだよね、うっかり潰さないように気をつけないとね。
さて、生殺与奪の権利も得たことだし、圧をかけていくとしましょうか。圧倒的優位な状況でこそ、詰めれるってね。
「お前の偉いさんに伝えろ、これ以上、目障りな動きをするなってね」
此方の呼びかけに微動だにしない、こいつ、自分の命が危ないってことがわかっていない?ああもう、ったく!動くなっての!
隠者の左手首が動いたので、即座に念動力で小指を圧し折ると、声のない絶叫と共に、カツーンっと床に針が落ちる。
動ける箇所を瞬時に把握して攻撃手段を考える辺り、私の事を舐め腐っているか、自分の命が奪われることが無いと思っているのか…
その何方も違っていたら、自分の命を…元より天秤に乗せられていないのだろう、そうなると交渉は無駄となる。
念動力にもう少しだけ魔力を注ぎ、力を強くする、体に伝わる圧力で感じ取ってほしい、命を無駄にするな。自分の命を天秤に乗せて。
「もう一度言う、これ以上、私を怒らせるな、私を苛立たせるな、これ以上、足を引っ張るな」
言葉にも圧を込め、殺気を込める…だが、相手には伝わっていないのか、逆に殺気を込めてしまったのがいけなかったのだろうか
隠者の左カカトが1ミリ浮いたので何かしらの抵抗をされる前に、闘う意志を削ぐためにアキレス腱を切る、声のない絶叫によって隠者の全身が小さく震えている
こういった、拷問に近いことは私の仕事じゃないから、正直に言えばメンドクサイ、一思いに殺してしまいたくなる、なるけれども短絡的に動いてはいけない楽な方に行けば行くほど、戦争は近づいてくる。
「この状況下で、どうにかして拘束から逃れすごすごと帰ればお前の命が無いっということは、私だってわかっているし、貴女だってわかってるよね?戦うという選択肢を選ばないで、ここで抵抗してもお前は死ぬ、お前が死ねば次の隠者が配置され、等しく私に殺される、死の連鎖を止めたいと思わない?貴女の同僚たちが殺されていく未来を選ぶのは愚かだと思わない?抵抗はしないで、大人しく私達に身を委ねて」
殺気だけではなく、慈悲を込めて願う様に声をかける…だが…
右手首が動いたので上腕二頭筋三頭筋の腱と近くにある神経もついでに切る、私達の技術だったら後に繋いでリハビリも出来る、でも、貴女達の国ではその様な技術は無い、未来を、生きるという選択肢を選ぶのなら私達に身を任せて欲しい。
神経と腱が切断された痛みは想像を絶するほどに痛みを伴うのに、彼女は一言も声を出さない、声のない絶叫と共に右腕がだらんと垂れ下がる。
もしかして、声帯が機能していないって可能性も僅かにあるが、声を出せない人物を隠者として敵の拠点に配備するなんてありえない。その可能性は忘れるべき。迂闊に確認しようと拘束を解くのを待っている可能性の方が高い。




