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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (5)

う~ん、聞こえてくる話題は何時だって代わり映えが無い。主に聞こえてくる声の殆どが、大浴場に対してのお言葉。思っていた以上に、好評みたいで嬉しい限りではあるんだけど、それ以外の声もさ~もっと聴きたいんだけどなぁ、私が居るからって変に気を使って畏まったりしているのかな?

まぁ、そりゃ、感無量となるのはわかるよ?王都だと、この規模の大浴場ってさ、貴族でしか入れないからね~。

平民の人達からすればタダで利用できること自体がありえないんだよね。他にも、この街にある設備の豊富さ、食事の美味さ、住むところは全部綺麗ってね!驚きの連続って感じかな?こうやって周囲の人と一緒に感想がダダ洩れになるくらい感情のままにさ、声に出すってことは最近、この街に来た人なんだろうね。


この大陸以外で生きてきた人達もさ、自国から徴兵されて、無理やり連れてこられてこの街に住んで働いてもらっている。

宰相には、大国を通していろんな国に交渉を持ちかけてもらっている、当然、向こうの条件を私達が飲む代わりに此方が要求しているのはマンパワー!

この街を支えるために必要なんだよ…人が欲しい。


国益に関する取引によって、金銭でのやり取りではなく、自国の領民を売ったってのは、売られた人達からすれば自分達は、自国を支える為の生贄として選定されたのだとしか、思えれないよね。自分達はいらない存在だって鬱になってやってきた人も数多くいたもんなぁ…

死の大地で非業な死を遂げてこいと生贄を捧げる様に連れてこられた人達ってのは、私達からすれば当然っというか、そういう人達でこの街は支えられてきたんだよなぁ。

なのでまぁ、扱い方も慣れたもんだよね、困ったことと言えば、最初は、言葉の壁があったくらいかな?

でもね、そういう人達と打ち解けてきて支えあってきた人達が豊富にいるこの街だからこそ、お互いの境遇を理解しあうことが直ぐにできるってわけ。

思いやる心に言語の壁なんて無いし、そもそも、この街の設備ってのはオーバーテクノロジーもいいところなんだよなぁ~、連れてこられた人達全員、想像していた場所とは違ったって声しか、幹部会に届いてこないんだもんなぁ。


最初こそ、戸惑ってたりしたけれど、一週間もすればなれるし、言葉も徐々に覚えてくれるから、自分の出来ることを一生懸命、頑張って働いてくれている。

畑仕事や、掃除、料理の下ごしらえなどなど、雑用を頑張ってくれている。お陰様で戦士達をそういった雑用に回さなくてもいいから、研鑽する時間も作れるし、連携を磨くこともできる!それらを取りまとめる戦士長は大変じゃないかなぁって不安を感じてたりしたけれど、流石って感じだよね、彼なら何人でも任せれる。


でもね、そんな彼でも、ううん、幾ら私達でもさ、他国からやってきた人達の中で全英を務めれる戦闘要員はいないんだけどね。

いや、志願者は、居たんだよ…彼らだってプライドがある!すぐ圧し折れたけどね!!

自国で誰よりも戦闘経験を積んできた、その辺の素人と一緒にするなっていう自称強者もいたよ?いたんだけど…私達の基準からすれば、前衛を任せれるほどの力量を持った人がいない、正直、彼らは弱すぎた。身体能力も魔力も…全てにおいて、前に出たら最後1秒も耐えられないんじゃないかな?


死の大地では、使い物にならない。魔力も微々たるものだし、膂力なんて荷物運びですら、限界寸前、歩くことしかできないくらいに、余裕がなくいっぱいいっぱいって感じ。


っでね、さっき言った自称強者ってやつは毎度毎度、出てくるんだよね。

昔の女将みたいにさ、この街にやってきて早々に、村一番の力自慢とか、村一番の実力者だの、自国の闘技大会で上位入選だのやらが鼻息を荒くして息巻くんだよなぁ。

全員第一声が同じだったもんなぁ、思考回路がショート寸前じゃないの?ってくらい、頭に熱がこもってんだよなぁ。

第一声がね、”この街にいる一番の強者と戦わせろ”っていうんだよね、面倒なことに自国の言葉でしか話さない人もいるけれど、何を話しているのか雰囲気で、ああ、こいつもかってわかるくらいにね、慣れすぎちゃったよ。もはや風物詩じゃね?ってくらいにね~。

今では、通りがかった戦乙女志願の新兵にちょいともんでやれって軽くあしらわれてんだよね、しかもだよ?相手が一番得意とする勝負を選んでもらったりするんだよね、力が自慢だったら、おんなじ物を持ち上げたり投げたり色々と勝負させてあげてる、相手が満足する迄ね。

当然、結果は見えている。私達が鍛えても居ない戦乙女志願の新兵に勝てなかったほどに…


死の大地が無い、私達が住む大陸の以外で、生きる人達は弱い。

これも偏に始祖様の血があるかないかだとおもう。私達は自分自身で全てを解決するための力を与えてもらったっていうのにね。

人の業は深い。


色々と、見てきたけれど、総じての評価は漏れなく、あの程度じゃ、死の大地にいる、兎…いや、鼠一匹ですら、手も足も出ずに負けかねないってね。無駄に死を晒すだけだって感じ。

ってことで、この街に来てもらった力自慢たちは、雑用を主に頼んでいるよ、適材適所、何事も効率的にね。

それでも戦う為に来たのだからってことで、根性のある人は、訓練にしがみつく様に参加している人もいるよ。

死の大地の恐怖に何度も何度も挑んで、多少は動けるようになった人もいるけれど、身の丈は弁えている、無駄に死を求める様に勇猛果敢に敵に飛び込むような無謀なことはしていない、そういう人は絶対に前に出さないように教育してからじゃないと、ね?ここまで育てて面倒見てやったんだから、勝手に死ぬなってのってね。


そう、他国からこの街に人が流れてくるようになり、来る最終決戦に向けての準備を全力で動いて動き続けて、もう、何年経ったのか、わからない。

全力で走り続けてきた影響もあって、今までの私達が歩んできた道とは大きく異なりすぎている。

こうなってくると、ある程度の未来予測なんて出来ようが無い、何が起こるかなんてわからない、だけど、油断はしない、相手の一手先を読むために私達は常に議論しあっている、この先に何が起きるのか、この先をどうすればいいのか…


今代の私で全てを終わらせるために…永劫の地獄から私はもう…



抜け出たいから



噛み殺された痛み、

大切な人達が幾度となく目の前で殺されていく痛み、

この世の地獄を再現したかのような世界が生まれ、積み上げてきた世界が崩れる痛み、

好きな人が、愛している人が敵の手に落ちて苦しむ姿を見せられた痛み、

ありとあらゆる苦難苦痛…それはまるで、燃え滾る様な…煮え湯を飲まされるなんて生ぬるい、燃え滾る様な油を耳の穴に流されるのもぬるい…

焼けた鉄を押し付けられるのもぬるい!…腕を捥がれ、足を捥がれ、臓物を食いちぎら得る事すらぬるい!!!


それ以上の痛みを味わい続けてきた…表現が出来ぬほど!言葉で言い表せぬほどの、痛み、悲しみ、苦しみ、絶望…

もう、終わりにしよう。流石の私も心が軋んできているのが分かる、甘い死を、破滅を望もうとしている…


私の夢何て、所詮は夢、叶わぬ夢…もういい、もういいよ…あいたいけど、もういい。こんな私をお母様が見たら、どんな顔をするのか、想像したくない。だから、もういい。

…もういいけれど、全てを諦めたわけじゃない、まだ、折れるわけにはいかない、甘き死を飲み干すにはまだ、私の心は、心の力は尽きていない!!

注がれ続けるこの苦しみを、敵にぶつけない限り、私の溜飲が下がることはない!私の心に満たされ続けている苦しみを力に変え、私は進む。お前たちを駆逐する迄とまるものか…とまれるものか!!!



腸が、臓物が、煮えたぎってしまう程に湧き上がる熱を飼いならそうとしていたら

「ひめ、さま…」

声が聞こえたので、意識を日常へと切り替える。

震えるような音がした方向へと視線を向けると、私の為に水を汲んでくれたであろう手が震えている。わざわざ汲んできてくれたコップから水が零れている。

ゆっくりと上半身を起こし、震える手を包み込む様にしコップを受け取り

「どうしたの?」

優しく微笑むと、震えが止まる、殺意に敏感はメイドちゃんを怯えさせてしまったいけないいけない、この程度で表に出していたら気取られるよね。

「ぁ、ぅ、ぃ、いえ、何も…ない、です」

「そ?お水、ありがとうね」

怯えた表情がすぐに何時もの作り笑顔に切り替わる、表面だけでも、落ち着きを取り戻したみたい。まったく、殺意や殺気に弱いうえに敏感なんだから。

こんな弱い子に、背負えれない程の何かを背負わされようとしているって考えると、メイドちゃんの小さな背中に圧し掛かる前に、向こうが何かアクションを起こす前に釘を刺しておくべきかな~?…うん、するべきだよね。されてからじゃ遅い、私は何時だって一手遅いからね。


さて、どうやって釘を刺してやるべきか、大まかにかんげると直ぐに策が思い浮かぶ、問題は、どのタイミングでやるべきかな?まぁ、早めって考えるとこの後すぐが一番かな?っとなると、思い浮かんだ策を気取られないようにしないとね。

ゴクゴクと冷たい水と一緒に考えた作戦を胃の中に流し込み、メイドちゃんに悟られない様に腹の中にしまう。

色々と、鋭すぎるのも問題ってこ~と、メイドちゃんが気がついちゃうと、メイドちゃんを監視している人も異変に気がついちゃうからね。

今代のメイドちゃんは祖国との関りが濃いせいで、芯が脆そうだからね、ポーカーフェイスとか出来なさそうだもん。


んふぅっと、鼻から息を漏らし、いつだって眉間に小さな皺を作ってしまっている弱い子を見つめてしまう。


飲み干したコップをメイドちゃんに渡し、手をメイドちゃんの前に出すと、腕を取って優しく椅子から立ち上がらせてくれる。

うん、鋭すぎるのも問題だけど、メイドとしては、意図を汲むのが上手いから重宝せざるを得ないんだよなぁ~。彼女を切り捨てるっていう選択肢は選べない、彼女のサポートが無くなるのは効率的じゃないよね?うんうん。感情的にも守ってあげたいし、合理性の部分でも守るべきって判断だね。満場一致。メイドちゃんを守ることに対して異論は誰からもなし!さぁ、人肌、お姉ちゃんが脱いであげますかっと。

立ち上がったさいに、此方に向けられた視線の数を密かに数え、誰が見ていたのか、眼球を一瞬だけ動かして把握する。

うん。浴槽に向かって歩いている、あの人は単純に私達を眺めていただけだろうから、違う。

湯船につかりながら私達をぼんやりと眺めているあの人は昔っからこの街にいる人だから違う、医療班の人だから、何か面白い事があればお母さんとの話のネタにしようとしているだけ、それよりも、眼球を動かした瞬間に視線を外した人が一名、あれだな。

手を引かれ、脱衣所で何時もの様に体を拭いてもらい、髪を乾かしてもらう。



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