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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (3)

「始めるよ、何年も…何年も…準備を続けてきたんだから」

そう、何代も何代もね…私と彼だけが知っている。私が幾重にも…ね…

「王都から集まった志願者達はどう?他の大陸の人達はどう?死の大地から溢れ出てくる恐怖に心が縛られていない?」

街の人が増えれば増える程、全てを把握するのは困難だからね、人類の心を一つにするなんて大それたことはできないけれども、この街にいる人達だけでも、心は一つになっていてほしい。恐怖に負けないで明日を信じ、手と手を取り合って立ち上がり続けて欲しい。

「何とも、言えないです。その辺りは医療班の方達が一番親身になってくれているので」

困った声、仕事以外の事を聞かれても困りますって感じ。うん、そうだね、質問をする相手を間違えた。


大国と関りを取らないのであれば、こういった情報収集はメイドちゃんが一番の適任だけど、今回は主に、祖国との橋渡し、権力者からの伝令係を務めてもらっている。

大役を任せているんだから、そこまで手が回っているとは思えれないよね。これは、私が悪い、ついつい、過去の私達が期待していたことを期待してしまった。


相手に過度な期待を押し付けてはいけない、特にメイドちゃんみたいに責任感の強い相手にそれを求めてはいけない。

それに応えようとして己のキャパシティーを越えて動かれると、この先…私が見据える闘い迄…心も体も持たなくなってしまう。

長期戦になるのはわかりきっている、一年、いや、理想としては、半年でケリをつけたいが…未知すぎて、先が見えない。予測なんてつけようがない。


っま、それに関しては私にも言える事、この段階で感情を昂らせたり、気負い過ぎても仕方がないのはわかっている。

精神も体も今は温存するタイミング、消耗しては本番に全力を出せなくなってしまうのが目に見えている…けれども、積み重なった恨み辛みが消えるわけなんてね、無いけどね。

今すぐにでも、敵に向かって駆けだして鬱憤を晴らしたい衝動が腹の底でグツグツと煮えたぎってるけどな!

それを御してこその指揮官ってことだよね。うんうん、そうと決まれば、色々と動かないとね~…まだるっこしいが、無暗に突っ走ったら負けるだけだもんね!…

相手は全てにおいて私よりも上手だ、ポーカーフェイスは必須、情報を少しでも相手に渡すわけにはいかないっての。


「ありがとう、メイドちゃんも疲れたよね?部屋で休んできなよ」

振り返って、何時もの様に温和で優しそうな雰囲気をだして功労者を労う。この瞬間だって、見られているかもしれない。

そう考えると一挙手一投足に気を配らないといけない、自由奔放に生きていけないってのは…はぁ、イライラする。


「いえ、私は姫様のメイドです、姫様が休まれるまでは」

必死に作り笑顔で応えてくれる…その作り笑顔が私の心を締め付けてくる。

今代のメイドちゃんは、独りでいるのが不安みたい、まったくもう、困った妹だよね、仕方がないな~

直轄の人材だものね、メンケアも私の仕事だよね~、世話が焼けるなぁもう。


「はいはい、わかったよもう、んじゃ、一緒にお風呂入りに行こ、ね?その後は、一緒に軽くお酒でも飲んで寝よ」

「はい!」

嬉しそうな顔をして…仕方がないから付き合ってあげよう。

嬉しそうな返事をしたと思ったら直ぐにお風呂に向かう為に必要な着替えなどの準備をしてくれる。


メイドちゃんが不安になるのもわからないこもとない、私のせいでもあるからこそ、多少の我儘くらいは叶えてあげたいと思っている。

私が知る限りメイドちゃんは教育されているので多少の心得を会得しているので独りでいることに対して怖がったりはしないのだが、メイドちゃんの立場を考えると、彼女にとって望ましくない選択肢を容赦なく配慮無く選びまくっているせいで、メイドちゃんの立場にちょっと…いや、そろそろ暗殺されかねない空気を前々から感じてはいる。


心得があるとはいえ多勢に無勢っという状況を恐れているだろうし、自分のせいで誰かに迷惑をかけるのが嫌なのだろう、っていうか、普通に考えれば命を狙われ始めているのを感じていてたら、独りでいるのって怖いよね。

情けない男が王としての責務を果たさないせいで、私とメイドちゃんの祖国である大国との繋がりが強くなった影響として、大国からすればメイドちゃんの立場を利用したいはずなんだよね。


最も簡単な方法が、私達に見つからないようにメイドちゃんを暗殺して、瓜二つの人物を用意して私達が気が付かないうちにってね。

考えたくは無いが…虎視眈々と作戦を遂行するために、隠者が潜んでいるんだろうね。っていうか、それっぽいのちょいちょい見かけるんだよなぁ…

私に対して敵意をあまり見せないから放置しているけど、そろそろ、何かしらのアクションを起こしそうなんだよなぁ…

めんどくせぇから、こっちから先に動いて下手なアクションを起こさせないように釘でも刺しておこうかな?


かといって私が先手を打とうにも下手に攻撃しちゃうと相手に私達を攻める口実を与えることになっちゃうもんなぁ…

でもなぁ~彼女の身辺を警護するために騎士一人をつけた方がいいかなぁって、考えたりはしたんだけど、それはそれで、色々と問題が起きそうなんだよなぁ…

ってことで、メイドちゃんを警護する人を傍に置くのは、やめたんだよね。

身辺警護の騎士をさ、私じゃなくメイドちゃんを警護してって言っても、騎士達からすると意味不明な命令になるから不信感を与えちゃうし、メイドちゃんってさ男の人、嫌いでは無いけれど、苦手意識を持ってそうなんだよね…たぶんだけど、下手に色仕掛けの方法とか学んでいるからじゃないの?って思っちゃうよね。

騎士とメイドの新たな恋路…そんなめんどくさそうな展開やだよ、平和になってからしてくれっての!ってなるから、嫌!


思考を強引に平和そうな日常的な思考へと切り替えていると、お風呂の仕度が出来たみたいなので、一緒に大衆浴場へ向かう。


向かっている最中も近くで足音や気配を殺しながら歩いている人物がいる。

私の索敵範囲を舐めんなっての…はぁ、誘き出した方がいいのかなぁ?

ほんっと、あの国ってめんどくさぁーい!!手段選ばないんだよなぁ…


平和な解決策が、思い浮かんではいるが…隙間なく教育されていたら…はぁ…やるしかなさそうだよなぁ…

不穏な気配を感じつつも、仲良く手をつないで歩いていく。





大衆浴場はかなり大きめに作ってあるけれども、想定外だったな~、大浴場もう一つ作ればよかったかも…

かなりの人数を呼び寄せているんだから、当然、寮以外の人が生活をするための建物として居住エリアにある、モデルハウス群にはちゃんと一軒ごとにお風呂を用意してあるんだけど、あまり利用されていないのかな?それとも、大きなお風呂が好きっていうのは万国共通なのかも。


大衆浴場には今までとは、考えられない程に大勢の人が利用していて、今も人が溢れている。

他の大陸の人も、この大陸にいる人も分け隔てなく和気藹々と楽しそうに利用してくれている。

この部分だけを切り取ったら世界は何て平和で豊かなのだろうっと満面の笑みを浮かべ良きかな良きかなっと、頷きたくなるんだけどなぁ…


予想はしていたよ?隊員が増えたらこうなるとは予想はしていたけれど、さぁ…いざこう、目の当たりにすると…多いなぁ…隙間ないじゃん…

情緒あふれる大浴場だってのに…風情もへったくれも無いよなぁっと、ついつい、目の前にいる大勢の人だかりを見て心の中でため息をついていると、テキパキとメイドちゃんに服を脱がされ、脱いだ服は瞬時に綺麗にたたまれて籠の中に入れられ、仲睦まじい姉妹の様に腕を組まれ、浴場へと連れていかれる。


浴場へと連れていかれる間も色んな人が姫様姫様と楽しそうに笑顔で挨拶をしてくれるんだけど…やべぇ、流石に人が増えすぎて全員の顔と名前が一致しない。

こういう時は取り合えず愛想を振りまくのが鉄板!っと、言わんばかりに一切声を出さずに笑顔で手を振り続ける。

優雅に愛想を振りまいていると気が付けば、体を洗う場所に連れていかれ、流れる様に椅子に座らされ手慣れた手つきで体を洗ってくれる。

洗体技能も当然、一流なんだよね~、医療班直伝の洗体技能は完璧だぜ?

後は、純粋に好きこそ物の上手なれって感じかも?誰かに尽くすような技能全般が、本当に好きなのかもね。

だって、いつも、いつだって、メイドちゃんが尽くしてくれる時は上機嫌なんだよね、今だってさ、鼻歌を歌いながら上機嫌に奉仕活動をしてくれる。

こういう部分を長年、何代も、見てきたからこそ、可愛く思えてきて情が湧くってもんだよね。


大人しく、されるがままにしていると

「はぁ、姫様って本当に髪の毛綺麗でいいですよね~」

艶のある溜息と共に褒めてくれるのは嬉しいけれどさ、それに関しては素体云々よりも、手入れを徹底的にしてくれるメイドちゃんとお母さんのおかげなんだけどね

研究の為に犠牲になった私は、こんなにも髪の毛に艶なんて無かったし、肌もガサガサだったよ?

今代の私が綺麗なのは、二人がいつも気にかけてくれるから、綺麗にしてくれているからだよ。


「ありがとう、これも偏にメイドちゃんが気を使ってくれているからだよ」

ワシワシと髪の毛を洗われているので目に石けんが入ってこないように目を閉じながら思ったことを口に出すと

「えへへ、お褒め頂きありがとうございます~、お湯かけますね~」

声のトーンが上がった。たった、この一言でより一層上機嫌になる…

根は素直で良い子なんだけどなぁ、どうして、この子の周りは…常に変なしがらみが付きまとうんだろうなぁ…

まぁ、その一端は私のせいでもあるんだけどね。力も無く才も無く、生きるために必死に技能を磨き続け、平穏を求める様に水面を足掻いている。

誰も気が付かないように頑張って隠し通そうとしているけれど、随所で滲み出ているんだよね~、まぁそういう隙があるところが愛嬌があるんだよね。意外と隙が多いんだよ。この子は。



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