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最前線  作者: TF
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毒を飲みほし、理解してこそ薬となる




『観てらんないわね』




声が聞こえた瞬間、暗い世界、閉ざされていく世界なのに、自分の自我が強く保たれるような感覚と共に、何かと繋がり、誰かの意識が流れ込んでくる。

今まで感じたことのない、不思議な感覚が私を包み流れていく…何かが切り替わった?『魂の同調よ』たましいのどうちょう?それに近しい単語なら知っている。

同調現象?…そうか、辿るために足跡を探すのではなく、彼女達と混ざればいい、そうね、そうよね!そうじゃない!混ざってしまえば声は届く。

『舵は私がするわ、貴女は届けなさい、一言だけでいいから、届けて見せなさい!』もう一人の私は、力強く私を鼓舞してくれる。敵対していたわけじゃない、きっと、この時に備えて蓄えていたのだろう。そして、私に喝を入れる為に、決意をみなぎらせるために、覚悟を奮起させるために接してくれていたのだと…なら、それにこたえる、応えて見せる!!


任せてよね!!

自然と、私が知りうる限りで一番信頼のおける言葉が出ていた。


今まで感じたことのない不思議な感覚、団長の、思い出が一気に私の中を駆け巡っていく。

その最中で、私は愛する娘が死んだ物語を垣間見えたような気がした。


二人の旅路を駆け抜けていく!流れる様に入ってくる二人の旅路が私の中に溶け込む様に入り込んでいく、母として二人の軌跡を受け止めるべきだと思うが、今はそんな悠長なことはできない!感傷に浸るつもりはない!


全力で、今までこれ以上を出したことがない程に高まる集中力で駆けていく、二人の旅路がゆっくりと細くなっていく…

か細い道を駆け抜けると、見たことのない世界へとたどり着く、まるで、星空のような…色んなところが光っては消え、光っては消えているような、星空のようで違う。不可思議な世界に辿り着くと、一つだけ、光っては消えるのではなく、光り続けている光の粒が漂っている。

不思議と、それが何かわかる、近づくと、光の粒は、祈るような姿勢を取っているようにみえる、今にも消えてしまいそうな光の粒

今にも消え入りそうな程に、ゆっくりと、小さく小さく、消えないように必死に光を輝かそうとしている光の粒…


光の粒を抱きしめるようにし、声を掛ける


「貴女が犠牲になるのは間違っている!誰が、だれが…返ってきた人を抱きしめるの?貴女がいないとわかったら、あの子がどんな顔をするの!?貴女を犠牲になんてさせやしない!伝わってきているでしょ?みんなの、想いが!みんなの、願いが!貴女には聞こえているはずでしょ?」

弱く、消え入りそうな魂の輝きに語り掛ける、何度も何度も。


『魔力は…想い』


反応が返ってくる!なら、大丈夫、これで、貴女なら気が付くでしょ?いくら、鈍感な貴女でも、この街にいる全員の純粋な祈り。

人を…私達が敬愛し、失いたくない…純粋に、愛しているからこそ、失いたくない人がいる、その人を助けるために闘っている貴女も失いたくないって!!

伝わってきてるでしょ!みんなの願いが!!


「まだ!諦めるな!人生を!貴女は犠牲になっていい人じゃない!共に、帰ってきなさい!!わかったわね!!後輩!!」

意識を取り戻したのか光の粒が呼応するかのように変化していく、粒ではなくなり、人の形となる…

改めてみると、貴女の心は…大きいわね。貴女は立派な女性よ。立派な人よ…誰が何と言おうと貴女は私達の大切な人



いきなさい



強く光り輝く姿を見届けると同時に、一瞬にして意識が体へと戻ると

「っか…ぁ、は…」

呼吸が乱れ、視界がまわる、急激な魔力消費と限界を超えた集中力によって脳を酷使した、このままだと意識がもっていかれそうになる、それを防ぐために痛みを与える!

パンっと両頬を叩き、痛みによって意識を保ち、浅くなっていたであろう呼吸を正す為に大きく深呼吸をする、刺激と酸素によって脳が目覚める!ここで気を失うわけにはいかないの!!

「状況は!!」

前を向いて現場にいる人達に声を掛ける。声に反応してくれた人が状況を説明してくれる

どうやら、10人ほどが全力で魔力を注ぎ終え、部屋の片隅で寝ころんでおり、今も、全力で数人体制で魔力を団長に注ぎ続けている。


魔力を測定する魔道具と団長を繋げるように指示をだし、どの程度、魔力が流れて出て行ってるのか計測を開始させる。

数値が出る前に、用意してある魔力回復促進剤を一つ、二つ、三つ、四つ、五つと開けては飲み干していく。

もう、味なんてわかんないわね!


「魔力の数値は…どう、判断したらいいですか!?」

数値の動きを見せてもらう…これは、よくないわね。

注ぐ量と消費する量が釣り合っていない、徐々に減っていっている。

流石は、団長ね、自身の中にある魔力がこの先へ向かうのに足らないと判断して、直ぐに、動こうとしたってわけね、魔力がなくなって意識が溶け込むのもいけないし、気絶する様に引き返させられるわけにもいかない、だからといって、判断が早すぎるのよったく、少しは私達を頼りなさいっての。 

ここ迄、判断が早いってことは、鼻から覚悟、決めていたってわけね、自分を殺してでも助ける。

死の一撃を、救うための奇跡として、我が身を犠牲にして、奇跡を発動するために必要な魔力を…命の本流を使うつもりでいたのね。


現時点で、団長は奇跡を発動させるのを躊躇ってくれている、けれども、消費量が供給量に追い付いていない、このままでは時間の問題、魔力が尽きる。

注ぐ量を増やさないといけない、だけれど、私や団長の様に魔力が豊富な人は医療班にいない、医療班と言えど、全員が魔力量が多いわけじゃない!


…足りない。魔力が足りない…足りないのなら…足りないのであれば…生み出すしかない。


答えは、一つ、この中で…それが出来るのはきっと、私だけ、何故なら、私は、一度、奇跡を起こしている。なら…


私が行くべきなのだろう、だけど不安がある、この陣から出てしまうと、セーフティネットとしての機能を失う。かといって私以外の誰がその役割を担えるのか…出来る人が居ない。No3では、不可能、陣に乗って意識を潜らせるだけで卒倒する、それ程までに団長は深く潜っている。


でも、このままじゃ…駄目だ、判断が、決断が出来ない、何か…他に何か策はないの?私では気が付かない何か…


私独りでは策を講じれない、なら!語り掛けるは奇跡の体現者、奇跡を紡ぐ真なる聖女様!

ねぇ!何か無いの?この状況で『…無茶言うんじゃないわよ…私だって、もう、うごけないわよ…』魂の同調の影響だろう。力弱い声しか、聞こえてこない。駄目ね、彼女の消耗が激しすぎる、これ以上は当てにしてはいけない。


なら、どうする?…いったん、離れて、魔力を全力で渡して…最悪…そうよね、私が犠牲に…『それは、させない、わよ…愛するだーりんの子供をそだておわるまで』…

力弱い声の中に殺気が込められている、全力で私の意識を刈り取ろうとしてるのが伝わってくる、いいわね。初めて貴女を認識したときみたいじゃない。渡さないわよ?


ここで、口論を続けれるほど時間の余裕は無い、ならもう、動くしか無いわね。

魔力回復促進剤でどれだけ魔力が回復しているのかわからないけれども、無いよりかはましよね、セーフティネットには後から私の何かを失ってでも再度潜って、繋ぎ合わせればいい、一度、助けがあったからとはいえ、潜れたのだから、もう一度、その深さに潜れないなんて道理はない!やってみせるわよ!!

陣から一歩出よう、足を前に

「動くんじゃないよ、先生。後は、あたしに任せな」

バンっと勢いよく肩を叩く様に掴まれてしまい、力強く頼もしい声によって陣から出ることが出来なかった

私の動きを制止した古くからの友人、恋のライバルでもあった人…嗚呼、きっと、騎士様が彼女を連れてきてくれたのだろう。

頼もしい背中がドシドシと大きな音を出しながら進んでいく、彼女の体から大きな魔力が迸る様に感じる…


この目は…色が見えない、でも、不思議なモノが見える時がある…

彼女なら任せれる…まったく、いつの間に、貴女って人は、苦手な魔力操作を会得したのよ。


大きな肉体に宿った魔力は、相当なもの、数値が安定していく。

団長の体からは命の本流が溢れ出そうな予兆が消える!あの子にも伝わったみたい。

良かったって一安心したって呟きたくなるわね、それにしても…

団長って、いつの間にそんな技術を会得したのかしら?器用よね、どうやって、意識の一部を自分の肉体へと繋げたのか?それとも、何かしらの思念体でも生み出したのかしら?潜りながらにして肉体を動かそうとするなんて、魂が二つでもない限り不可能よ?私の予測が正しければ、今は、予兆は無いが、いつでも発動できるようにしているように見える。


何かはわからないが、何か、意思を、団長の背中に見えるのよね、複数の…何かが。


団長の様子を観察していると、次々と、後ろから足音が聞こえてくる

「吾輩もいるので安心するのである、魔力譲渡法…何となくであるが原理はわかっているのである」

のしのしと、歩いていく坊やの背中が頼もしいと感じたのは、これが初めてかもしれないわね。

「私達だっています!」「いこう」

長に、ティーチャー君…貴女達がこの街に来てからずっと、見守ってきたけれど…大きくなったわね。初めてこの街に来た感じとは違う、頼もしい。頼れる大人になったわね。


次々と集まってくる人達が魔力と言う名の祈りを捧げるために、団長を中心として円を組み、祈りを捧げる様に、膝をつき、魔力を放出していく

「みんなの魔力は、あたしが搔き集めるよ!どんどんきな!!」

団長の真後ろを陣取っている巨躯の女性が大きく深呼吸をするように両腕を広げると、祈りによって生まれた魔力の渦が彼女の呼び声に呼応するかのように集まっていく。

彼女の前に魔力の塊が生まれると、それにかじりつく様にし、体内へ取り込み、巨躯の女性の腕を通して…団長へと魔力が流れ込んでいく…


遠くにある、魔力を測定する数値をみると、普段見ることがない程に魔力が高まっているのがみえる。

これなら!これなら…まだ、闘える!!まだ、まだいけるわね!後輩!!根性みせなさいよ!


誰かが、犠牲になっていいわけない!!私達は、この辛く苦しい世界を生きる!!!負けるわけにはいかないのよ!!





分けた魂から、熱い想いが感じる事のない心臓の様に伝わってくる、流れてくる、滾る血潮の様に伝わって来たよ…みんなの想い…みんなの願い…

姫様が体験してきたとおり、魔力は想い、魔力は願い、人の意志を背負い、人の願いを叶える。


魔力は、万能。魔力は、奇跡。


そう、だよ。人の願いは奇跡を呼ぶ。

人の想いで生み出される物質が奇跡を起こせなくて、何が起こすんだってのって姫様なら言う気がする。


私は…奇跡を呼ぶ、奇跡を起こす、世界の全てを背負ってただ一人抗い続けてきた人を助ける。

それが、私が出来る奇跡!!絶望なんて無い!諦める事なんて無い!!希望は何時だってある!!


注がれてくる奇跡を願う想いで私の中が満たされていく。

それに応えるために、集中力を高めていく。


力強く目を開き、視界に映し出される世界を見据える。


…いま、から…行くね。お姉ちゃん。待っててね。

より深く、大脳に守られるようにある、人の記憶領域よりも深く…生命の柱へと踏み入れる。


大脳を通過しようとしたとき…記憶が…ひめさまの、最後の記憶が…眼前に広がっていく…


あれで・・・おわりじゃ・・・なかった・・・の・・・?・・・・


激動の感情が渦巻く…闘いの記憶へと私の意識は飛ばされていく。


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