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最前線  作者: TF
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切り札を…使う!!覚悟は決まっている!

あいまいで あいまいが あいまいだ 何も かも が 曖昧!

視界に映る全てが歪み、感じるもの全てから伝わってくるものが、自分が感じている物なのかわからない。境界線があいまいで、自分が何処にいるのか、自我を見失っている。


ダメだ!このままじゃ溶けてなくなる!!自我を、自分を保たないと!!


実体のない体だけど!意識を正すには普段からしているルーティンが大事、だよね!頬を叩く様にして自分が自分である、曖昧な境界線を消し去るために気合を入れる!

曖昧な境界線が緩やかに消えていき虚ろな感覚は正されて行き、自我を、自分が誰なのかはっきりと認識すると、怒涛の様に押し寄せてくる懺悔という感情。

見えてしまった私の罪、知らなかった私の罪、誰も許すことが出来ない私と言う存在が生み出してしまった悪、人類を幾度となく滅ぼしてしまった…私の罪!!


今いる、私が、実際にしたことではない、私が望んで、選んだ未来では無いけれども…

何処かの私がしてしまった罪なのは変わらない、そして…その結末は何時でも…

常に全てを終わらせるための罠が花開く可能性が私には秘められている…


そんなの…人類から見たらただの厄災、厄介者、呪物…私と言う存在は歩く爆弾だ…敵の先兵だと断罪されるべき存在。

居てはいけない、存在するだけで罪。生きている価値のない物質…夢も希望もない、破滅を呼ぶためだけの異物、それが私だったんだね。


自分という存在が危険極まりない物であると認識してしまったがゆえに生まれる疑問


わからないことがある。どうして…どうして?…どう、して…私を守ろうとしてくれるのだろうか?私にはわからない、姫様の真意が…

私が居なくなると、No2が悲しむから?女将が嘆くから?…それとも、恋心が故に?お兄ちゃんを傍に置いて置きたいから?

…わからないよ。姫様がどうして、私を守ろうとしてくれたのか、どうして、私と友達になってくれたのか、私の事を…本当の妹の様に接してくれていたのは…


真意はわからないが、最も可能性が高いのは何か、考えるまでもない、賢い姫様が選ぶ選択肢は一つ


私が、わたしが…世界を滅ぼす種だから?監視するのが目的だからなのかな?…

わからないわけじゃない、わかる。それ以外に考えられない…

姫様は、単純に、世界を滅ぼす為の道具、厄災を振りまく種を監視したいからだ。


借りに私が姫様の下から離れ王都で暮らす様にしても何かの弾みで、目覚める可能性もある。

私の家系が王家の血筋であるために、それを利用しようとする者が出てくる可能性もあった…


私は、何処に居ても危険な存在。だからこそ、姫様は近くで監視するために、傍に居た。


今までの、私達が…この街に来てから、私達は、本当に、長い、長い…長い付き合いだった。

一緒に歩んできた姫様との思い出がフラッシュバックしていく…

あの笑顔は、あの優しさは、あの暖かさは、いっぱい一緒に遊んできたあの楽しかった思い出は…

それだけじゃない、暗くも共にしてきた…一緒に、いっぱい、いっぱい…色んな事を研究してきた…何年も一緒に…共に歩んできた、その全てが偽りだと、叩きつけられてしまった…


ないはずの胸が締め付けられる様になり、ない筈の呼吸が乱れる感じがする。

信じてきたものが崩れていく、嗚呼、だから、姫様は隠したかったんだ、弱い私だと、破滅しか呼ばないから。


私のせいで、大好きで、尊敬している…私の…唯一の…腹を割って話せる、親友だと、本当の姉妹だと感じていた…そんな大事な人が…姫様が苦しんでいた、苦しんできていた。

私の中にいるもう一人、男性の部分は、本当に男性の魂で…私をずっと見守ってくれていた。知らなかった。教えてくれても良かったのに…私は何も知らなかった。

それじゃ、今まで私の中にある猛る感情、荒々しい部分は、きっと彼の怒りが私に伝わったから影響もあるんじゃないかって、言い訳したくなる、が、たぶん、その辺は私の本音な気がする。


うん…私は、この世界に必要が無い

噛み締める、世界を滅ぼした罪が


うん…やっぱり、私は、犠牲になるべき存在だ

突きつけられる、大切な人を不幸にさせた罪が


うん…私は、いらない

希望なんて無い、敵の駒に慈悲は無い、敵に用意された爆弾という罠が


うん…悲しい事に、色んな感情が一斉に殴りかかってくれたおかげで、曖昧な感覚が無くなり、研ぎ澄まされているのがわかる。

私なんて、消えてなくなれと言ってくる。痛みが、私の感覚を鋭くさせる、罪が、懺悔するために贖罪の為に動けと心を縛っていく。

罪には罰を…罰せれるのは姫様だけ、その過去を、消えてなくなった泡沫の罪捌けるのは私と…姫様だけ。


私が、選んだ選択肢は間違っていなかった。何処かで、察していたのかもしれない。

ううん、こうなるってお兄ちゃんが教えてくれていたのかもしれない。



捧げよと、罪を洗い、贖罪を求め、命を…捧げろと…



自身の犯した痛みと罪によって、私の自我は懺悔と後悔によって硬く縛られる。

罪の意識によって自我を強く保てるようになってくると、ゆっくりと、曖昧だった視界が定まり、何処まで潜ることが出来ているのか、見えてくる。


見えている光景は、初めて見る世界、潜ることが出来なかった未知なる領域、人体の…生命の神域、触れれば壊れてしまうと感じてしまう煌めく空

魂との境界線から抜けたのだろうか?神経節から抜け出たのだろうか?あちこちに小さな光が一瞬だけ、ほんの一瞬だけ光っては、消えている…まるで、ある日、星を見る夜会をしたときのようだ…


神秘的な光の流れ、その光の流れを見て、今私がいる場所が何処なのか、確信へと至る。


ここが脳だ。私はここまで深く潜れたことが無い。

ここまで潜れたことに、誰に感謝を捧げればいいのか、わからないほどに、嬉しさが込み上げてくる。

ここまで、くれば、姫様を救えると!!


だけど、浸透水式で、ここまで人体の奥地へと踏み込んだことが無い、ではなぜ、ここが脳だとわかるのか。


姫様が教えてくれたから、神経とは電気、電気とは光。


そして、外からであれば、私たちは、死んだ人の体を…死んだ人の胸を借りるように、解剖を幾度となく行っている。

だから、解剖学は頭の中に徹底的に刻み込まれている私達に胸を貸してくれた人達の想いを踏みにじるわけにはいかないから、徹底的に忘れない様に叩き込んである。

そして、何処がどの脳なのか、どの部分がどの様に作用するのか、脳の機能については姫様が教えてくれた。


今にして思えば、どうして、どの部分がどの様に作用するのか姫様が知っているのか、何処でそんな知識を得たのか、小さな疑問を感じたことがある。

今の私からすれば、そんな疑問何て評価委の様に解けている。彼女の、誰にも明かしていない能力を知ったから。


きっと、地球と言う星から得た情報なのだろう、姫様を介して見えた地球の…脳裏に浮かんだ、風景に懐かしさを感じてしまう。

ちきゅうのえいぞうは…わたしは 知っている気がした…


っとと、今はそんなことを考えている場合じゃない!!

今は、いまは、姫様の脳、その状態を検査していく!時間に猶予は無い!

急いで、何処かに詰まりがあるのか、神経の流れが悪くなっているところが無いか、血管に血の塊がつまっていないか、酸素や栄養が渡らなくなって壊死している部分が無いか探す!!


そして、見つけ次第、治す!浸透水式用の液体はここまで浸透しているのか、わからない。浸透していれば出来ることは数多くあるが、していないとなると…

仮に浸透していなくても!回復の陣は頭に叩き込んでいるし…姫様の理論が正しければ、壊死した箇所も治す手立てはある…それが、私の切り札だ…それまで、持ってくれるといい…じゃない!不安になるな!持たせる!持たせてみせる!!


時間に余裕はない!急いで検査をしていかないと!!急ぎ足でされど、見落としなく!!

前頭葉から、順番に探っていく!!


血管の流れに乗り、神経の流れを辿る様に前頭葉へと向かって行く


隈なく検査は出来た。だけど、前頭葉には大きな、損傷個所は無い…光は綺麗に流れて行っている。血流も問題ない。なら、次!!次へ!!急ぐ!!

不思議と焦る気持ちは無い、心は冷静に!さぁ、次にいく!急いで向かう!!脳に到達してから、嫌な予感って言うのかな?感覚だけれど、嫌な感覚がこびり付いてきている。これは、警告だと思う…だとすれば、長くは潜れない…


本体からの警告が届いている、嫌な予感としてね!!


それが何なのか…感覚でわかっている、どんどんとごりごりと、削られているのが感覚でわかるから、脳に到達してからなのか、私の中の魔力が他の臓器へと潜っているときよりも、大きく削られていくのが分かる。想定以上の魔力消費、急がないと…まだ、切り札を切るのは早い!!もう少し、もうすこしもって!!


急ぎつつも、丁寧に、漏れが無いように、見逃したりしない無いように、迅速で、されど念入りに、検査を続けていく。


側頭葉も、後頭葉も大きな問題は、ない、多少、光が動いていない部分があるが、ほんの些細な部分、完全に光っていないわけじゃない。血管の流れも悪くはない。つまりは、動いている、ただ、今はその機能を使っていないから光が弱い、だけだと思う。


ここまで検査をして、何処に問題があるのか…予想は、予感は、当たっていたとみるべき、だけど…うん。

やっぱり、昏睡状態として問題があるのではないかって、最も可能性が高い部位としてNo2も睨んでいた箇所…


脳幹


脳幹に出血が発生した可能性がある、より深く潜る、中脳へとむかわないと、むきをか…え・・・


ぐわんっと、何かに吸い寄せられるような感覚によって、意識が飛びそうになる。

恐らく、セーフティネットが私の意識を本体へと戻そうとしている!!原因はわかっている!


魔力が…魔力が足りない!!


セーフティ機能によって戻されそうになった経路を逆手に取って利用する!

こうなることは…予想していた。だから、私は使う!!!切り札を!!…ここで、ここで戻るわけにはいかないの!


引き戻されそうな感覚がした部分を逆手に取り、意識をその先へと分断させるようにして飛ばす…うん、出来る!

意識の一部を切り離し、自分の体へ向け飛ばすと、瞬時に、奥底の…触れてはいけない箇所に辿り着く。


スイッチの前には誰もいない…お兄ちゃんの姿が見えない。きっと…お兄ちゃんはあの時に、力を貸してくれたのだろう。もういない。

時間はない、躊躇う必要はない、姫様がしたみたいに、どの臓器を消せばいいのか、選定はできない…っというかするつもりもない。


脳と心臓と肺以外ならどの臓器だろうがもっていけ!その代わり、私に魔力を寄こせ!!


スイッチの目の前に立つと…自然と笑みが零れてしまう。

お父さんもこんな気分だったのだろうか?大切な人を…未来を託すという気持ちは…こういうことなのだろうか?


後ろを振り返る…誰もいない。それが当たり前。

お父さん…息子は…ううん、娘は、最後まで頑張るから、月の裏側に行ったら褒めてね?



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